仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
ロックシードを使用する際のエネルギー効率などを改善させた次世代のロックシードであるエナジーロックシード。それの力を引き出す専用のドライバーも存在するが、今の斬月の手元にそれはない。代わりにゲネシスコアと呼ばれる拡張ユニットを戦極ドライバーにセットすることで同等に強化することが出来る。
それが仮面ライダー斬月ジンバーメロンアームズ。
エナジーロックシードで変身するライダーの共通の武器であるソニックアロー。弓と矢が一体となっている機械化した弓矢という見た目。赤い弓の両端には半透明の青い刃が付けられており、弦の中央にはグリップ型のトリガーがある。
アナザーセイヴァーの持つ黒の弓と似たような形であるが、間違いなくソニックアローが原型となっている。
アナザーセイヴァーは何の感情も感じさせない動きで弓に枝の矢を番える。アナザーセイヴァーの動きに合わせて斬月もソニックアローのトリガーを手前に引く。トリガーが引かれることで矢型の発射口に黄緑色に包まれた橙色のエネルギーが充填される。
アナザーセイヴァーが枝の矢を射る。斬月もまたトリガーから指を放した。ソニックアローの発射口から矢型のエネルギー弾が放たれる。
矢と矢が一直線上に突き進み、中間点で衝突。勝ったのは斬月の矢であり、アナザーセイヴァーの矢を真っ二つに引き裂いて本体に届こうとする。
だが、その矢が辿り着く前にアナザー武神鎧武の大太刀が弾き飛ばす。
ソニックアローの方がアナザーセイヴァーの矢よりも威力が上。そう判断したアナザーセイヴァーたちは迷うことなく斬月に接近する。接近戦の方がまだ自分たちに分があると判断しての行動を思わせる。
斬月はソニックアローのトリガーを引く──のを中断し、アナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武の挑戦を真っ向から受け取り、距離を取らずに接近戦を挑む。
交差するように衝突するソニックアローとアナザーセイヴァーの弓。弓に付けられた刃が火花を散らす。
間髪入れずにアナザー武神鎧武の大太刀が迫ってくるが、これを切り返したソニックアローで弾き、メロンディフェンダーで反撃のシールドバッシュ。ジンバーメロンアームズになったことで斬月のスペックは上昇しておりアナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武の攻撃も片手でいなせる。
またシールドバッシュの威力も上がっているのでアナザーセイヴァーたちは一撃で地面を滑るように後退させられ、止まった後もダメージですぐには動けず前のめりの状態で固まっている。
今度は斬月の方から近寄り、ソニックアローを振り上げる。
斬月のその動きにアナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武は待っていたかのように密かに目をぎらつかせる。
斬月とアナザーセイヴァーたちの間にある距離は斬月の足なら一秒も満たせずに埋められる。斬月は一歩目で最大加速近くまで達し、二歩目で最高速度に到達しようとする刹那、二歩目が地面を踏み込むタイミングでアナザーセイヴァーは左腕を振るい、それに繋がるアナザー武神鎧武が大太刀を伸ばして斬月の足首を刈ろうとする。
動けないように見えたのは演技。全てはこのタイミングで斬月に攻撃を仕掛ける為のもの。
正面から戦っても斬月は強い。ならば、少しずつ相手の力を奪う戦い方に切り替えた。手始めに斬月の足を斬り飛ばし、その機動力を奪う。
アナザー武神鎧武の大太刀が斬月の足を刈り取る──かと思われたが、大太刀の一撃は甲高い金属を鳴らし、阻まれた。
大太刀を防いだのは地面に突き刺さったメロンディフェンダー。大太刀から斬月の足をしっかりと守っている。
斬月は既にアナザーセイヴァーたちの狙いを見切った上で敢えて誘いに乗った。そこにはどんな攻撃をされても対処することが出来るという確固たる自信があった。事実、斬月は初見でアナザー武神鎧武の大太刀を正確に読み、メロンディフェンダーで見事に防いだのだ。
奇襲を見抜かれたアナザー武神鎧武は、仕方なく大太刀をメロンディフェンダーから離して改めて斬月に斬り掛かる為に上体を起こす。
メロンディフェンダーの背後。そこに立っている筈の斬月の姿が無い。上体を起こしている間、斬月から目を離していたがその一瞬で何処かへ消えてしまった。
アナザー武神鎧武は急いで斬月を探す。アナザーセイヴァーもギリギリまで目を伏せて演技をしていたせいで斬月の方を見ておらずアナザー武神鎧武同様に斬月を見失っていた。
左右を確認しても姿はない。視界前方にも後方にもない。ならば残された場所は一つ。アナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武は弾かれるように上を見た──空中でソニックアローを構える斬月がそこにいた。
メロンディフェンダーで奇襲を防いだ斬月は、メロンディフェンダーを踏み台にして高く跳躍していた。こうすればソニックアローを射る距離と時間を稼げる。
真上から見下ろしてくる斬月と目が合うアナザー武神鎧武。斬月がソニックアローのトリガーを引く直前、アナザーセイヴァーはすぐさまアナザー武神鎧武を後退──もとい左腕を引いた。
遅ければソニックアローでアナザー武神鎧武は射抜かれ、早ければソニックアローの射線を修正する猶予を与える。アナザーセイヴァーの引きはそのどちらも出来ない絶妙なタイミングであった。
斬月のソニックアローは垂直に放たれる。当然そこにはアナザー武神鎧武はいない。
だが次の瞬間であった。射られた矢がメロンディフェンダーに当たり軌道を変える。軌道を変えた矢はアナザーセイヴァーの左肩を貫いた。
「噓だろ!」
跳弾ならぬ跳矢という神技を見てしまった景都は信じられないといった声を出してしまう。
射られたアナザーセイヴァーは苦しんでいる様子を見せるが、アナザー武神鎧武もまた悶えている。同じ体を共有していることで感覚までも共有しているのか、そのデメリットが現れていた。
跳躍していた斬月は何事もなかったかのように降り立ち、突き立てていたメロンディフェンダーを抜く。
「私らしくない曲芸染みたやり方だったな」
先程の神技を曲芸と評する斬月。それどころか自分の戦闘スタイルではなかったと反省しているかのようであった。逆に言えば普段通りの戦い方ではアナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武の攻撃と防御を突破出来なかったとも言える。
「──だが、やった甲斐はあった」
その結果、相手にダメージを与えられたのであれば上々。
アナザー武神鎧武が突き刺さっている矢を強引に抜き、その手で握り潰す。矢は光の粒子となって消え去った。
矢が突き刺さった箇所からは赤黒い果汁が流れ出ている。おまけに傷口周りは矢のエネルギーにより焼け焦げている。
傍から見てもアナザーセイヴァーたちのダメージは大きい。景都はこのまま行けば勝てると内心思った時、肌寒さを感じた。
アナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武の目が射抜くように斬月を見ている。後がなくなってきた二体が最後の攻撃を仕掛けようとしている。景都が感じた肌寒さはその前兆である。
アナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武は、それぞれの武器を力なく垂らす。無抵抗になった訳ではない。次に全力の攻撃を放つ為に敢えて脱力して力を溜めているのだ。
それは斬月も分かっていた。
「──お前たちと戦って一つ感じたことがある」
斬月はカッティングブレードを指先で触れ、いつでも発動出来る準備をした状態で話し出す。
「お前たちからは意思というものが感じられない。与えられた指令通りに動く、正に人形だ」
斬月はアナザーセイヴァーたちとの戦いの中で生々しい敵意と殺意を全く感じ取れなかった。故に気付く、アナザーセイヴァーたちがただの傀儡であることに。
「お前たちを操っている者がいる。そいつの悪意が彼を狙っている」
度々景都に降りかかる災難。それを起こしているのは黒幕の悪意。斬月はそれに対し明確な怒りを表す。
「もし、その人形を通じて私の言葉が聞こえているのなら覚えておけ──お前の望み通りになると思うな!」
アナザー武神鎧武が吼える。その全身から赤黒い果汁を噴き出させ、持っている大太刀に伝わせて刀身が見えなくなる。
アナザー武神鎧武が大太刀を振り上げ、一気に振り下ろすと纏わせておいた果汁が赤黒い斬撃として飛ばされる。
『ソイヤッ! メロンスカッシュ!』
『ジンバーメロンスカッシュ!』
カッティングブレードを倒すことで二つのロックシードのエネルギーがソニックアローに流れ込み、刃の部分が橙と黄緑に輝く。
「はあっ!」
斬月が一歩踏み込んで繰り出すソニックアローの斬撃。弧を描くエネルギーが刃から放たれ、アナザー武神鎧武の斬撃を相殺する。
アナザー武神鎧武の攻撃は相殺されたが、まだ二撃目──アナザーセイヴァーの攻撃が残っている。
アナザーセイヴァーの弓もまた赤黒い光を帯び、それを横薙ぎにすると半円形の光の斬撃が飛ばされる。
斬月は更に一歩踏み込む。その際に体を捻りながらソニックアローを水平に構える。
まだ光を帯びているソニックアローから出される斬撃は、アナザーセイヴァーと同じく半円を描いており再度光の斬撃と斬撃が衝突する。
これもまた相殺され互いの必殺技は相打ちに終わる──ことはなかった。
斬月はソニックアローを横薙ぎに払いながらその勢いのまま一回転。その遠心力を利用してメロンディフェンダーを投擲する。
黄緑の光に包まれたメロンディフェンダーが高速回転しながらアナザーセイヴァー、アナザー武神鎧武に迫る。
必殺技を放った直後のアナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武は咄嗟に互いの得物を交差させ、メロンディフェンダーを受ける。
金属の削れるような音と火花を散らしながら回転し続けるメロンディフェンダー。武器を弾かれまいと耐えるアナザーセイヴァーたち。メロンディフェンダーの威力に押されていくが、直撃だけは避けようとする。
やがてメロンディフェンダーの回転は弱まっていき、最後には止まる。
斬月の三撃目の必殺技を辛うじて防ぐことが出来たアナザーセイヴァーたちだったが、その代償として防御に使っていた弓と矢に亀裂が生じてしまう。これでもう一度防ぐことが出来なくなってしまったが──
『ロックオン!』
──無慈悲な音声がまだ終わっていないことを告げる。
ゲネシスコアから外されたメロンエナジーロックシードがソニックアローのスロットに填め込まれていた。
斬月は、メロンエナジーロックシードから直接エネルギーを供給されているソニックアローのトリガーを引く。矢型の発射口には二色のエネルギーが集束し始める。
終の四撃目。その照準は既にアナザーセイヴァーたちに定められている。防ぐ手段もなく絶体絶命──かと思われたが、幸運はまだアナザーセイヴァーたちに味方をしていた。
武器を失ってしまったがアナザーセイヴァーたちの手には受け止めたメロンディフェンダーがある。アナザー武神鎧武は壊れた大太刀を捨てて両手でメロンディフェンダーを構えた。
メロンディフェンダーの防御力はアナザーセイヴァーたちも身を持って知っている。今度は斬月がそれに苦しむ番である。
メロンディフェンダーで身を守るアナザーセイヴァーたちを見て、斬月は小さく零した。
「──愚かな」
その言葉の後、突然ソニックアローの照準が変わる。アナザーセイヴァーたちではなくその頭上に狙いを定めた。
斬月の行動を理解する前にソニックアローから充填されたエネルギーの矢──ソニックボレーが射られる。
『メロンエナジー!』
当然、射られた矢はアナザーセイヴァーたちから大きく外れ、その頭上を飛び越えようとする。だが、矢が通り過ぎようとした瞬間、矢は形を変えてメロン型のエネルギー体となる。
頭上に出現したメロンに驚き、見上げるアナザーセイヴァーたち。そちらに気を取られている間に斬月はカッティングブレードを一回倒す。
『ソイヤッ! メロンスカッシュ!』
アナザー武神鎧武が構えているメロンディフェンダーが発光し、頭上のメロンをも包み込む電磁シールドを形成。張られた電磁シールドもまたメロンの形をしていた。
突然張られる電磁シールド。アナザーセイヴァーたちは気付いてしまった。如何なる攻撃を弾く鉄壁の守りが、今は外に誰も逃さない難攻不落の檻となって自分たちを閉じ込めたことに。
頭上のメロンが弾け、中から複数のソニックボレーが飛び出す。それらは四方八方に飛び散るが電磁シールドによって弾かれて軌道を変え、アナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武を射抜く。
角度やタイミングの違うソニックボレー。それを防ぐ手立ても逃げ道もなく次々と体を貫いていき、全身にソニックボレーが突き刺さるとアナザーセイヴァーの体はアナザー武神鎧武ごとゆっくりと倒れていき、最後には電磁シールド内で爆散。
電磁シールドは解除され、爆発の中から飛び出してきたメロンディフェンダーが斬月の手に収まる。
「ふぅ……」
斬月は一息吐いた後、変身を解除した。
「強い……」
こうやって傍観者の立場となってじっくりと観察した結果出て来た景都の答えはそれしかなかった。グレートクローズの万丈の戦いもそうだが、改めて先人の仮面ライダーたちの強さを目の当たりにした気分である。
「終わったぞ」
「もう? 早かったね」
貴虎がそう言うと海東が平然とした様子で戻って来た。
「お前……! っ、あの二人はどうした!?」
色々と文句を言いたかったが、まずはオーラとウールの安否を確認する。
「ちゃんと学校に帰しておいたさ。面食らっていたけどね。無事だよ、感謝したまえ」
「この……!」
海東の言い方に怒鳴り散らしたくなる衝動に駆られるが、そんなことよりも優先することがあったのでぐっと堪える。
「俺のウォッチを返せ!」
「これ?」
海東は盗んだケイトライドウォッチを景都に見せる。
「でも、本当に返していいの? 僕には君がまだ覚悟出来ていないと思うんだけどねー」
「くっ……!」
海東の指摘の景都は否定出来ない。仮面ライダー斬月の戦いを見て自分の未熟さをまざまざと思い知らされた。
しかし──
「確かに彼にはまだ十分な覚悟は備わっていないだろう」
──貴虎は厳しい判断を景都に下しながら海東の方へ歩み寄っていく。
「だね。だから──」
「だが、彼が進む道を決めるのは私でもましてやお前でもない」
海東の腹に手加減無しの貴虎の拳が突き刺さる。
「ふぐっ!?」
海東の体がくの字に折れ曲がって悶絶している間に海東の手からケイトライドウォッチを奪い取り、景都へ投げ渡す。
「進む道を決めるのは君自身だ。明光院景都」
景都はケイトライドウォッチを受け取り、貴虎の言葉を嚙み締めながらそれをジッと見つめる。
「……ありがとうございます」
「もう行きなさい。今からなら午後の授業に間に合う。学生の本分は勉強だ」
何とも生真面目な言葉に苦笑いを浮かべそうになるが、景都は貴虎に頭を下げて礼をし学校に戻ろうとする。
その間際──
「これを」
また貴虎から何かを投げ渡される。上手くキャッチしたそれは名刺。呉島貴虎と書かれているがそれよりも注目したのは、そこに記された社名。
「ユグドラシルコーポレーション!?」
三大企業の一角。そんな有名企業に属する人だと知り、驚愕してしまう。
「私の連絡先が書いてある。何かあったらそこに連絡をするといい」
名刺の裏には貴虎の携帯電話番号が確かに書かれてあった。
「──どうも」
景都は名刺を懐に仕舞うと今度こそこの場から離れていく。
景都が去るとボディーブローで苦しんでいた海東が顔を上げる。海東の顔はまだ残る痛みで引き攣っていた。
「やってくれるね……!」
「その程度で済んだことを感謝しろ」
お互いにとことん反りが合わないことを再認識する。
「いきなり殴るなんてね……! おかげで嫌なことを思い出したよ……!」
弟がいる兄という立場の貴虎からのボディーへのパンチは海東の苦い記憶を蘇らせるが、貴虎からしたら知ったことではない。
「そういえば、まだちゃんとした礼を言っていなかったな。援護、感謝する」
それは海東に向けられたものではないいつの間にか現れた人物に向けてのもの。
その男は壁に背を預け、貴虎たちに強い意志と深い昏さを混ぜた瞳を向ける。
「……別に。礼を言われる程のことはしてないけど?」
貴虎の礼に男は素っ気なく答える。慣れ合うつもりはない、という明確なスタンスを見せる男。最初からそういう態度なので貴虎は少なくとも海東よりかはその男は信用している。
男は殴られて顔色の悪い海東を見て、鼻で笑う。
「格好悪いなぁ」
貴虎と同じく海東とはあくまで協力関係であり仲間ではない男。だからこそ、平然と嗤うことが出来る。
男は海東に手を貸すことなくジャケットからウェットティッシュを取り出すと、汚れていない手を拭きだした。
アナザーセイヴァーとアナザー武神鎧武を撃破しましたが、貴虎の出番はまだあります。