仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
「ふっ。人の心配よりも自分の心配をした方がいいんじゃないかなぁ? 今は足手纏いなんだから」
珍しい海東の忠告に対してカイザの答えは、一笑した後の海東への嫌味であった。
普段は余裕そうな態度の海東もこれには口を真一文字の結び、露骨に不機嫌になる。
「もしかして……あんまり仲良くないの?」
「あまり深掘りしないでくれたまえ」
援軍に来てくれたカイザを海東の仲間だと思っていたが、今のやり取りを見る限りそういった間柄ではないのかもしれない、とツクヨミは思う。
アナザーオーガは横槍を入れたカイザを赤の単眼で睨む。しかし、その後にツクヨミたちの方も見た。
邪魔者を排除するか最初の目的通りツクヨミを捕まえるのか考えている様子。その証拠にアナザーオーガは単眼を左右に揺らしている。
カイザはアナザーオーガにχの形をした武器を向け、手前側にあるレバーを引く。カイザブレイガンという名の武器は、レバーが引かれた後音声を出す。
『Burst Mode』
銃口から放たれる黄色の光弾がアナザーオーガの弱点と思われる単眼を狙って撃ち出された。
生物共通の弱点であり、唯一防具で覆われていない箇所。巨体のアナザーオーガを倒すのなら狙うのはそこしかない。
しかし、アナザーオーガは鈍重そうな見た目とは裏腹に機敏な動きで単眼の前に掌を翳し、カイザの光弾を全て掌で防いでしまう。
鎧ではなく素手で防いだというのにアナザーオーガは軽く手を振るだけ。アナザーオーガの分厚い皮膚は光弾を数発受けた程度では火傷にもならない。
アナザーオーガはカイザを一瞥する。攻撃されたことによりカイザを意識したかのように見えたが──
「えぇっ!?」
ツクヨミが声を上げる。アナザーオーガはカイザにあっさりと背を向け、ツクヨミたちの方へ駆け出したのだ。
あくまでも目的はツクヨミ。カイザを無視して彼女を攫おうとする。
ツクヨミと海東は急いで逃げ出すが、距離が近いのでアナザーオーガの大きな歩幅であればすぐに追いつかれてしまう。
カイザは舌打ちをすると跨っているカイザと同じカラーリングのサイドカー──専用ビークルであるサイドバッシャーを発進させ、アナザーオーガを追い掛け出す。
先頭はツクヨミたち。それに続くはアナザーオーガ。そして最後尾はカイザ。
三つの追いかけっこが始まる──かと思いきや、突如アナザーオーガが跳躍する。
跳び上がってツクヨミたちの頭上を越える、のではなく後方に向かって跳んでおり、カイザの頭上を越えていた。
「何っ!?」
カイザが頭上を見上げた時にはアナザーオーガは通り過ぎた後であり、カイザの後方へ着地する。
ツクヨミたちを追い掛けようとしていたのはただのフリ。カイザを油断させて背後を取る為の演技。
戦う力を持たないツクヨミを捕まえるのはアナザーオーガにとって容易いこと。最初から邪魔なカイザを排除することを考えていたのだ。
蛮族のような見た目に反したクレバーな行動にカイザの動きが一瞬止まってしまう。
その瞬間、アナザーオーガは手に持つ武器を下から上に掬い上げるようにして振るう。武器の先端が地面を砕き、それらを弾にしてカイザに打ち込んで来た。
大小異なる地面の破片が散弾のようにカイザに襲い掛かる。
「くっ!」
右手でカイザブレイガンで破片を撃ち落としながら左手を腹部に伸ばす。カイザの腹部にはベルトに収められた携帯電話型の変身ツール──カイザフォンがセットされており、それを外してすぐさま番号を入力。
『Burst Mode』
カイザフォンの上部分を傾けることでフォンブラスターモードという光線銃形態に変え、カイザブレイガンとの二丁銃で破片を次々と撃つ。
小さな破片はこの際無視し、出来るだけ大きな破片を集中して落とす。人の頭よりも大きな破片を撃ち抜いて粉砕するが、拳サイズの破片がカイザの肩に当たる。
ダメージは装甲で防ぐが衝撃までは完全に殺せないので照準に狂いが生じる。
集中して破壊する筈であった破片を撃ち損じ、粉々に砕く予定が半分に割れてしまう。割れてもボーリングの玉ぐらいのサイズがあり、それがカイザの眼前まで迫る。
カイザは咄嗟に腕を交差させて防御するが、破片が命中するとその衝撃でサイドバッシャーの上から飛ばされてしまった。
「うっ!」
サイドバッシャーから落ちたことで背中を打つカイザ。その事自体にはダメージは無い。しかし、カイザが仰向けになったのを狙い、再びアナザーオーガは跳躍。武器を振り上げながらカイザ目掛けて落下してくる。
「危ない!」
ツクヨミは思わず叫んでしまうが、叫んだ所で目の前で起こっていることが止まる筈もない。
アナザーオーガは着地と同時に両手で持っていた武器を振り下ろす。爆弾のような衝撃が発生し、離れて見ていたツクヨミも突風のような衝撃波に襲われる。
「きゃあ!」
吹き飛ばされそうになるが、海東が咄嗟に掴んで彼女を引き止める。
「あ、ありがとう……」
海東に礼を言うが、海東は返事もしない。彼の目はアナザーオーガを凝視していた。
そうなるのも無理はない。今のでカイザが倒されたなら次の標的は自分たちになる。海東の頭はそうなった場合どう切り抜けるのかを考えていた。
爆心地のようになったアナザーオーガの振り下ろし。アナザーオーガの単眼は武器を振り下ろした先をジッと見ている。
武器からほんの数センチ離れた場所にカイザは横たわっている。アナザーオーガの振り下ろしを紙一重で回避していた。あと少し回避するのが遅れていたら、今頃は武器の下で地面の染みになっていただろう。
だが、カイザのピンチは続いている。間一髪避けられたのはいいが、カイザはアナザーオーガの攻撃に近過ぎた。爆発のような一撃の間近にいたせいで衝撃と音によりカイザの脳は直撃を受けずとも揺らされてしまっており、咄嗟に立つことが出来ない。
足が意思に反してガクガクと震え、それでも立ち上がろうと足掻くが、そんなカイザに黒い影が差す。
危険を感じ、すぐにカイザブレイガンとカイザフォンで撃ち抜こうとしたが引き金を引くよりも速くアナザーオーガの掌がカイザを上から押し潰す。
「がはっ!」
アナザーオーガの巨大な掌がカイザの胴体を拘束すると共に地面に叩きつけ、衝撃と圧迫でカイザは息を吐き出させられた。
体が圧し潰されそうになりながらカイザは藻掻くが、アナザーオーガの掌はカイザの両腕も拘束してしまっており動かすことが出来ない。
「ぐあああああ……!」
アナザーオーガに圧し潰されていくカイザが苦鳴を上げる。力も体格も重量もアナザーオーガがカイザを圧倒的に上回っている。カイザの力では押し退けることは出来ない。
「あの人死んじゃう!」
ツクヨミは海東にそう訴えかけるが、海東は動こうとしない。下手に動けばアナザーオーガの暴力はこちらに向けられる。
「大丈夫さ」
「大丈夫って……何を根拠に!?」
「彼の相棒が黙っていないさ」
「相棒?」
その時、搭乗者がいない筈のサイドバッシャーが独りでに動き出す。ハンドルを切り、向きを変えて自走。アナザーオーガ目掛けて走り出す。
『Battle Mode』
自走しながらサイドバッシャーが変形する。側車部分が脚部になり車体を立ち上がらせ、前輪と後輪が腕部となる。
大型爪の右腕マニピュレーターには四つの砲門があり、そこから光弾をガトリング砲のように連射しながらアナザーオーガに接近する。
「変形ロボット!?」
カッシーンとは別タイプの、それもサイドカーから変形した光景にツクヨミは驚きの声を上げてしまっていた。
カイザブレイガン以上の威力を光弾の連射を浴びせられ、アナザーオーガも武器を盾にして防御を固めてしまう。翳している腕により視界が遮られ、その間にサイドバッシャーは急接近し、アナザーオーガの胴体に体当たりをする。
金属の塊であるサイドバッシャーの全速力の体当たりに、体格では遥かに上回っているアナザーオーガも後退させられてしまう。それによりアナザーオーガの手が地面から離れ、カイザは脱出する。
カイザは休む間もなくサイドバッシャーに搭乗。ハンドルを操作してサイドバッシャーの大型爪でアナザーオーガを突く。
アナザーオーガはもう一歩後退させられたが、それ以上は退かなかった。カイザは密接した状態で光弾を連射する。
火花が散るが、やはりアナザーオーガは退かない。サイドバッシャーの体当たりの時は不意を衝かれたが、万全な状態であれば体格、体重と共に勝っているアナザーオーガはサイドバッシャーに押し負けない。
「ちっ!」
カイザはそれならばと一旦アナザーオーガから離れる。そして、ハンドル中央にある画面に何かを入力する。
「──不味い」
海東はカイザが何をしようとしているのかを察し、ツクヨミの手を引く。
「ここから離れるんだ! 巻き添えを喰らう!」
「え? えっ!?」
海東のただならぬ様子にツクヨミも焦り、されるがまま海東に引っ張られていく。
サイドバッシャーの左腕に付いている六筒のマフラーが稼働し、それらが上部に向けられる。
次の瞬間、マフラーから発射される六発のミサイル。火を噴きながら六発のミサイルが空に上がっていく。
ツクヨミもアナザーオーガも打ち上げられるミサイルを目で追っていた。すると、ミサイルは反転して落下。空中でミサイルが分解され、内部から小型ミサイルが複数放たれ、拡散する。
「噓でしょ!?」
ミサイルでさえツクヨミにとっては非現実的だったが、そこから広範囲の爆撃に変わりツクヨミは悲鳴染みた声を上げる。海東が焦ってここから離れようとする理由が嫌という程分かってしまった。
雨のように降って来る大量のミサイル。アナザーオーガの視線はそちらに集中してしまっていた。だからこそ、アナザーオーガは気付いていない。サイドバッシャーから降りて近付いて来ているカイザの存在に。
カイザはカイザフォンにセットされた起動用キー──ミッションメモリーを抜き、ドライバー左部に付けられてあるデジタルカメラ型ツール──カイザショットを外す。
中央部にミッションメモリーをセットすることで握り部分が展開し、ナックルモードとなる。
『Exeed Charge』
カイザの体にある二本線のラインを通じてカイザショットにエネルギーが充填される。
カイザはまだ上を向いているアナザーオーガの足元にスライディングで滑り込み、すれ違い様に脛部分へカイザショットを大振りで叩き込んだ。
閃光と同時にχのマークが浮かび上がる。巨体であろうとも人体の構造は同じせいか不意打ちで脛を強打されたアナザーオーガは絶叫を上げて倒れ込んでいく。
その間にカイザはアナザーオーガの股下から抜け、急いで離脱。次の時にはアナザーオーガの背中に無数の小型ミサイルが降り注いだ。
爆風と衝撃波が全てを震わす。直撃は避けたもののかなり近くでそれを受けてしまったカイザは吹っ飛んでいく。
海東、ツクヨミもギリギリのタイミングで壁に避難することができ、ミサイルの衝撃から身を守ることが出来た。
「み、耳が……」
キーンという音が頭の中で鳴り続けていることにツクヨミは顔を顰める。海東も似たような表情をしていた。
「で、でもこれで──」
そう言い掛けたツクヨミの言葉が止まる。彼女は見た。巻き上がる土煙の中で立ち上がる巨影を。
あれだけのミサイルでも倒せないのならばどうやって倒せばいいのか。継続する絶体絶命の危機。
しかし、予想に反してアナザーオーガは何もせずにここから離れていってしまう。
その時、ツクヨミの耳に入って来たのは喧騒。先程のミサイルの爆発が人を引き寄せてしまったらしい。アナザーオーガは──もしくはそれを操る者が──目撃されるのを嫌がり退いたのかもしれない。
だが、ツクヨミたちもいつまでもここには居られない。見られたら関係あると疑われるかもしれない。
「乗れ!」
いつの間にかサイドカーに戻っていたサイドバッシャーに跨るカイザ。ここから脱出する為に搭乗を促す。
「行くよ」
海東は側車の方へ乗り、ツクヨミは後部座席の方に乗った。
「あ、あの、ありがとうございます!」
カイザはツクヨミを一瞥すると何も言わずにサイドバッシャーを発進させた。
◇
「はあっ!」
イクサがアナザーレイと戦っている間、ケイトはカッシーンとの戦闘を繰り広げていた。
新たに使えるようになったジカンザックスを振るい、カッシーンに攻撃する。
振り下ろされたジカンザックスをカッシーンは三叉槍の穂先で受け止める。だが、その隙にケイトはカッシーンの脇腹に拳を打ち込む。
「ぬぐっ!」
ジカンザックスを一番危険視しているせいで他の攻撃への注意が疎かになっている。また、ケイトも仮面ライダーの力に慣れてきたのか初戦よりもカッシーンと互角に、否、それ以上戦えている。
パンチで後ろに下がった所にケイトはすかさずジカンザックスのモードを切り替える。
『You Me!』
斧から弓に代わり、光の矢が射られる。追撃の矢をカッシーンは避けられる、何箇所か射られて大きなダメージを受けた。
「よしっ!」
カッシーンと戦えていることに手応えを感じるケイト。何度も戦いを経験して来たことが無駄ではなかったと実感する。
「おおっ! 景都、凄い!」
その戦いっぷりを見ていたソウゴも思わず歓声を上げてしまう。怪我で不自由に動けなかった景都が、変身したことで自由に動けている。ソウゴはそれが嬉しく思えた。
ソウゴとケイト。どちらも形は違うが目の前のカッシーンに集中している。だからこそ、気付くことが出来なかった。
ソウゴの背後から忍び寄る悪意に。
「うわあああっ!」
後ろに居るソウゴが悲鳴を上げる。何事かと思い、ケイトは慌てて振り返る。
「なっ!?」
「け、景都……!」
ソウゴが黒い粘液のようなものに捕らえられている。体は粘液の中に完全に沈み込んでおり、顔と手だけが外に出ている。
光も吸収してしまいそうな重油のような黒。不安定な状態なのか体が常に流動しており、スライムを彷彿とさせる
黒い粘液の中を泳ぐように動く髑髏。光も通さない黒い粘液の中でその頭蓋骨は水晶の輝きを発している。
「常磐を離せ!」
ケイトはソウゴに当たらないように気を付けながら光矢を射る。光矢は水晶髑髏の体──黒い粘液に刺さるもとい沈むが、先端が入るだけでそれ以上先に進まない。粘液の抵抗力により威力を大幅に削がれてしまったのだ。
「くそっ! ぐあっ!?」
再度攻撃しようとした時、衝撃と痛みが背中に生じる。カッシーンが背後からケイトを斬りつけていた。
ケイトはその場で膝をつく。
「我が魔王を安全な場所へ」
カッシーンが指示を出すと水晶髑髏は粘液の体を伸縮させながら地面を這い、跳ねて壁に張り付くと地面を這うのと変わらない速度で壁を伝って何処かへ行く。
「景都ぉぉぉぉ!」
「常磐ぁぁぁぁ!」
ケイトの叫びも虚しくソウゴは連れ去られてしまう。
ソウゴが連れて行かれる間際、ケイトは見た。水晶髑髏の側頭部に刻まれた二つの刻印を。
年号は『1999』。そして名は『SKULL-CRYSTAL』
襲撃者の名はアナザースカルクリスタル。
エターナルを期待していた方には申し訳ないですが、マニアックな方を出しました。
スカルクリスタルは覚悟が無くて不完全でしたが、アナザースカルクリスタルはその弱さを強みに変えた感じです。
スカルの死体同然の体にする能力と不完全の組み合わせから連想して水晶髑髏入りのスライムという形にしてみました。