仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
「常磐ぁぁぁぁ!」
ケイトの叫びを聞き、イクサはアナザーレイと戦いながら視線をケイトの方へ向ける。そこで見たのは、アナザースカルクリスタルによってソウゴが攫われる光景であった。
「くっ!」
イクサは悔しさを滲ませた声を洩らす。ケイトのボディーガードを頼まれたが、彼一人守ればいいとは思っていない。彼に関わる者たち全てを守る覚悟で挑んだが、みすみす誘拐されたことに強い屈辱を覚える。
ソウゴが連れ去られ呆然としているケイト。その背後ではカッシーンが三叉槍を振り上げていた。
「ちぃ!」
イクサはアナザーレイの爪を捌きながらイクサカリバーの銃口をカッシーンに向け、発砲。エネルギー弾がカッシーンの肩に命中する。
しかし、無理に援護をしてしまったせいでアナザーレイに隙を晒してしまい、アナザーレイの振り上げた爪がイクサの装甲を斬り付ける。
「くっ!」
火花を散らせながらもイクサはアナザーレイの腕を掴み、イクサカリバーでもう一方の爪を押さえ付ける。
力尽くでアナザーレイを抑えながらイクサがやったことは、ケイトへの叱咤であった。
「何をボーっとしている!」
イクサの鋭い声がケイトへ掛けられる。
「情けない! 貴方がそこで伏せていても彼が助からないのは分かっている筈だ! 彼を助けたいと本当に思うなら戦いなさい!」
友を攫われたことにショックを受けているケイトに掛けられる発破。
「それとも俺に全部任せてそうし続けているのか!?」
イクサはケイトを煽る。その間もアナザーレイは暴れ続けており、全身から冷気を発してイクサの装甲を凍結させていく。
「う、うおおおおおおっ!」
イクサの言葉が届いたのかケイトは雄々しい叫びを上げながらカッシーンにタックルをし、地面に押し倒す。
そして、マウントポジションから斧モードのジカンザックスを滅茶苦茶に振り下ろし出す。友人を攫われた怒りをカッシーンにぶつけているように見えた。
イクサ視点ではとてつもなく不恰好な戦い方だが、悲しみに暮れているよりも遥かにましである。
一先ず安心したのも束の間、アナザーレイがイクサの腕を振り解き、氷の爪でイクサを突く。
「ぐっ!」
突きの衝撃で拘束が緩み、アナザーレイが離れていく。イクサの装甲に僅かな凹みが生じる。ただし、代償としてアナザーレイの氷の爪は根本から折れていた。尤も、爪は氷で出来ているのでアナザーレイが冷気を吹きかければ瞬く間に元に戻る。
アナザーレイの冷気を間近で浴び続けていたせいでイクサの装甲は凍っており、関節の各部が凍結の影響により動きが鈍くなっている。
そんな不利な状態になってもイクサは勝利を全く諦めていない。斬撃や銃撃の衝撃を吸収するアナザーレイの体毛をどう攻略するのか考え続けている。
今ある方法でどうやって攻略するのか。次々と案が浮かび上がっていき、その中で確実なものが選択肢の中から選ばれていく。
そして、最後に残ったもの。それがアナザーレイを攻略する方法を導き出す。
イクサはイクサカリバーの切っ先をアナザーレイに突き付ける。アナザーレイは氷の爪を構えながらも体毛の防御力に自信があるのか守りを固めることはしなかった。
イクサはイクサカリバーでアナザーレイを突く──のではなく手の中でイクサカリバーをくるりと一回転させる。
攻撃は来ず、何故かイクサカリバーで手遊びをし出すイクサ。そういうのとは無縁と思われていたイクサの遊びのような行為にアナザーレイは困惑を隠せない。
イクサは巧みに指を動かし、イクサカリバーをガンスピンのように何度も回転させた挙句、アナザーレイの意識がイクサカリバーに集中したのを見計らってイクサカリバーを空高く投げ上げた。
イクサによる奇行。だが、アナザーレイは注目していたこともあってクルクルと回りながら宙を舞うイクサカリバーを目で追ってしまう。
アナザーレイの意識がイクサから完全に逸れたタイミングでイクサはベルト右横に設けられたホルダーからホイッスル型のキーを抜く。
フエッスルと呼ばれるソレをイクサベルトの上部にあるリーダーに挿し込み、イクサナックルを押し込んで読み取らせる。
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
イクサベルトからイクサナックルを外す。イクサナックルの打撃部位にある銃口のような二つのパーツ部分が発光し、それに伴いスパークし出す。
イクサはエネルギーが蓄積されたイクサナックルをアナザーレイ目掛けて突き出す。
アナザーレイはこの時になってイクサの行動に気付き、両腕を交差させて防御体勢に入るが、手遅れであった。
次の瞬間、5億ボルトという雷に匹敵するエネルギーがイクサナックルから放射され、アナザーレイはその膨大なエネルギーを浴びせられる。
全身を焼く灼熱のエネルギーにアナザーレイは絶叫を上げる。白い体毛は瞬く間に黒く焼け焦げていく。
イクサナックルからのエネルギー放射が終えると丸焦げになったアナザーレイがそこに居た。
倒すには至らなかったが、アナザーレイが氷の爪が溶け落ちた手を伸ばすと焼け焦げた体毛がアナザーレイの体から崩れるように抜け落ちていく。
イクサの狙い通り先程の一撃によりアナザーレイの防御力はゼロに等しくなる。
イクサはイクサナックルをイクサベルトに戻すと、そのタイミングで放り投げたイクサカリバーが落ちて来る。イクサは一瞥もせずそれを掌で受け止める。
「その焼け焦げた体でこのイクサの一撃を防げるか?」
イクサベルトに新たなフエッスルが装填され、イクサナックルが押し込まれる。
『イ・ク・サ・カ・リ・バー・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
胸部にあるエンジンがフル稼働し、そこから生み出されるエネルギーが胸にある紋章を赤く発光させる。
膨大なエネルギーにより高熱が発せられ、凍結していたイクサの装甲は瞬時に解凍され、氷は一瞬で蒸気と化す。
生み出されるのは熱だけでなく当時に強い光も放ち、アナザーレイはその光に目が眩む。
イクサの胸部にある太陽に似た紋章、そして強い熱と光。この時のアナザーレイは、イクサの背後に太陽が現れたような幻視をする。
エネルギーはイクサの腕を通じてイクサカリバーへと流れ込む。イクサカリバーの赤い刀身はエネルギーが満ちたことにより太陽の如く輝く。
「はぁ!」
イクサカリバーによる袈裟斬り。特性を失い黒焦げた体毛ではそれを防ぐことは出来ず、アナザーレイは為す術もなくその一撃を叩き込まれた。
太陽をその刃に宿したような灼熱の一刀両断。アナザーレイの体は断ち切られ、爆散する。
少々手古摺ったがアナザーレイを撃破したイクサは、すぐにケイトの様子を確認。
ソウゴを拉致され、ショックを受けていたケイトだったがカッシーン相手に奮闘していた。
マウントポジションからジカンザックスを振り下ろすケイトとそれを防ぐカッシーン。戦況的にはケイトが有利に見えたが──
「調子に乗るな!」
カッシーンは背部のサブアームを起動させ、それ使って無理矢理体を起こす。カッシーンの上から落とされるケイト。すぐさまカッシーンはケイトを蹴り上げる。
だが、ケイトはジカンザックスの側面でカッシーンの爪先を受け、ダメージを軽減させた。
カッシーンはサブアームから光弾を発射させようとエネルギーを充填させる。しかし、発射される前にサブアームの片方が撃ち抜かれた。
撃ち抜いたのはイクサカリバーから放たれたエネルギー弾であった。
片方が破壊されてもまだもう片方が残っている。カッシーンはそちらから光弾を発射しようとする。
「させるかぁ!」
一手早くケイトがジカンザックスを投擲する。投げ放たれたジカンザックスが、サブアームの砲口に直撃。エネルギーが逆流を起こしサブアームが爆発する。
サブアームの爆発を間近で浴びたカッシーンは大きくよろける。それによって出来た大きな隙。ケイトはカッシーンへ接近しようとする。
ケイトの接近を察知したカッシーンは、苦し紛れに三叉槍で突いてきた。しかし、崩れた体勢での突きなど威力も速度も無く、ケイトから見れば容易く避けられる。
ケイトは横に移動し三叉槍を躱す。そして、それを両手で掴む。
「うおおおおおおっ!」
両手に力を込めるとカッシーンの足が地面から離れた。ケイトはそこから三叉槍を担ぐようにして肩に乗せ、カッシーンごと持ち上げてしまう。
「何っ!?」
腕力のみの不恰好な背負い投げ。しかし、右足が完治していないケイトに出来る精一杯の柔道技。
咄嗟に手を離すことが出来なかったカッシーンは、背中から地面に叩きつけられる。その衝撃で掴んでいた槍を離し無手になる。
「が、はっ!」
受け身もとれないまま固い地面に叩きつけられたカッシーンは、体内から響くアラート音を聞きながら何とか仰向けになる。
ケイトはそんなカッシーンを燃えるような敵意で見下ろしていた。
『フィニッシュタァァイム!』
ケイトライドウォッチのスイッチを押し、ジクウドライバーを傾け、回す。
『タイムバースト!』
ケイトの振り上げた拳が赤色の光を放つ。
「おおおおおおっ!」
鬼気迫る声と共に振り下ろされた拳が、カッシーンの顔面中央に突き刺さった。
ライドウォッチのエネルギーと拳打の威力が合わさり、カッシーンの頭部は粉砕される。
頭部を失ったカッシーンの体は放電を起こし、それに危険を感じたケイトが離れると数秒後には爆発してしまった。
興奮冷めやらぬ様子で荒い息を吐くケイト。だが、間もなくして自分の失態に気付く。
「しまった! 常磐の居場所が!」
ソウゴを連れ去ったアナザースカルクリスタルに指示を出していたカッシーンならソウゴが何処に連れ去られたのか知っていたかもしれない。だが、激情に身を任せてそのカッシーンを破壊してしまった。これではソウゴを追い掛けることも出来ない。
呆然とするケイトの肩にイクサが手を置く。
「後悔している時間はあるのか?」
ショックを受けているケイトには少々厳しい言葉だったかもしれない。しかし、それぐらいでなければケイトは我に返らなかった。
「……常磐を探します。手伝ってくれますか? 名護さん」
「俺は君のボディーガードだ。君が行く場所に俺もついていく」
「……ありがとうございます」
ケイトは礼を言い、変身を解く。イクサも彼に合わせて変身を解除した。
「やれやれ、妬けるね。忠臣である私を差し置いて護衛を傍に置くなんて」
神出鬼没のウォズがまたしても気配もなく景都たちの前に現れる。
「……彼は?」
「ウォズ。俺も詳しいことは知りません」
名護は不審者を見るような眼差しをウォズに向け、景都に誰かと問う。景都もウォズの詳細について殆ど知らないのでそう言うしかなかった。
「未来の救世主である明光院景都の忠実な家臣さ」
ウォズの方から注釈を入れてくるが、名護の彼に向ける眼差しは変わらない。
「何を言っている? 君の戯言に付き合っている暇はない」
一蹴してソウゴ捜索に向かおうとするが、ウォズのある言葉が二人を引き止める。
「常磐ソウゴの居場所は私が知っているよ」
「何だと!?」
真っ先に食いついたのは景都であった。
「何故知っている!?」
「私も君の家臣として裏で色々と調べていたのさ。当然、彼らの拠点もね。常磐ソウゴは恐らくそこに連れ去れている筈だ」
全てを知っているかのような口振りに名護の不信感が募る。
「何か知っているのか? 知っているのならいいなさい」
「私だって全てを知っている訳じゃない。だが、この件に関しては裏で糸を引く黒幕が存在している」
「黒幕だと……?」
「ああ。その黒幕がカッシーンやアナザーライダーを操っているんだ」
「誰なんだ!? その黒幕は!?」
ウォズは手に持っている『救世主伝説』と描かれた本を開く。
「──残念ながらそこまでは私も知らない。ただ、黒幕の目的は凡そ予想がつく」
「黒幕の目的……何だそれは!?」
「最低最悪の魔王の誕生さ」
ウォズは本を閉じ、真っ直ぐ景都を見つめる。
「常磐ソウゴを最低最悪の魔王として覚醒させ、救世主である君を倒させて歴史を改変させる。そして、魔王を操って自分が全ての歴史を手に入れるのが目的なのさ」
「あいつを魔王に……」
ウォズから衝撃の事実を聞かされ呆然とする景都。一方で名護はウォズの言動全てに訝しんでいた。
幕間 ある三人の暇潰し
「……いつまでこうしている」
とある喫茶店内。若い青年が苛立ちを隠さないまま噛み付くように向かいに座る優男と太めの男に訊く。
「さぁねー。その時が来るまでじゃない?」
「俺は、知らん」
青年の質問に優男は飄々と躱し、太めの男は簡潔な言葉で答えた。
その返答にイライラが増していく青年であったが、次の瞬間弾かれたようにある方角に目を向ける。
青年が目を向けた方角を既に二人も見ていた。
「敵だな」
「良かったねー。暇潰しが来て」
優男がニヤニヤしながら言うが青年は無視する。
「行くぞ、潰しに」
太めの男は椅子から既に立ち上がっていた。
青年たちが見ていた方角。そこでは今まさにこの世界への侵攻が始まろうとしている。
大量のカッシーンが整列し、それられの先頭に立つのは黒い衣服に赤いスカーフを付けた男。
男がカッシーンたちに指示を出そうとした瞬間──
「いつかは言おうと思っていたが、いくら何でもカッシーンを利用され過ぎだろ?」
「出来が良いから皆パクっていくんだよねー? 困ったもんさ」
「コピー品だろうと潰すだけだ」
──それに待ったを掛けるように登場する三人。青年が黒服の男に話し掛けた。
「お前らハンドレッドだな?」
「──如何にも」
ハンドレッドと呼ばれた男はそれを認める。
「困るんだよねー、勝手に入って来るのって。最近調子に乗ってるみたいだし」
「今すぐ失せろ。でなければ俺たちが潰す」
三人はハンドレッドの男に警告をするが、ハンドレッドの男はそれを一笑した。
「ふん。丁度いい。これの試運転をしたかった所だ」
そう言いハンドレッドの男が取り出した物を見て三人は驚く。
『ジクウドライバー!』
彼らの良く知るドライバー。しかし、違和感を覚える。音声が反響したようなエフェクトがあった。
そして、次に取り出した物を見て三人の中で特に青年が強く反応する。
『ジオウ!』
左手に持ったライドウォッチを起動後、それをジクウドライバーの左側にセット。ジクウドライバーを回転させ、変身する。
「変身」
『ライダーターイム!』
纏うエネルギーがスーツに実体化し、『ライダー』の文字が仮面へと収まるが鏡に映ったように文字が反転している。
『仮面ライダージオウ!』
ジオウへと変身したハンドレッドの男。その姿は文字と同じく全て鏡に映ったように反転していた。
「うわー、マニアック」
反転したジオウの姿に心当たりがあるのか、感心と呆れを混ぜた感想を洩らす優男。一方でジオウを見た青年は口の端を歪めながら怒っているのか笑っているのかどっちにも見える表情をする。
「よくも俺の前でその姿に変身したな……!」
燃え上がるような敵意。こうなってしまうと優男も太めの男でも彼を止められない。
「こいつら全員消すぞ!」
「まあ、最初からそのつもりだったしね」
「いいだろう、やるぞ!」
彼らもまたライドウォッチを取り出し、スイッチを押す。
『バールクス!』
『ザモナス!』
『ゾンジス!』