仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~   作:K/K

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アナザースカルクリスタル1999 その2

「て、照井さんも変身した……!」

 

 仮面ライダーアクセルへと変身した照井にソウゴは驚き、そして歓喜する。

 

「うおおおおおおっ! また仮面ライダーだ!」

 

 自分の置かれている状況も忘れて思わずはしゃぐ。

 

「我が魔王よ。お静かに」

 

 そんなのソウゴの後頭部に三叉槍を突き付けられ、ソウゴも黙るしかない。しかし、カッシーンは口では我が魔王、我が魔王と言っているが割とソウゴの扱い方が雑であった。

 

(何か嘘っぽく感じる……)

 

 カッシーンの動向に疑惑を覚えつつソウゴは黙ったままアクセルとアナザーライダーとの戦いを見守る。

 アナザースカルクリスタル。粘液のような体に骸骨の頭部。それ以外のものは一切なく人型のアナザーライダーの中でも特に異彩を放つ。

 アクセルは頭蓋骨に描かれた『SKULL―CRYSTAL』の文字を見てから酷く不機嫌そうであった。

 

「悪趣味な奴め……!」

 

 アクセルは吐き捨てるように言うと距離を詰め、アナザースカルクリスタルの頭蓋骨へエンジンブレードを振り下ろす。

 斬り裂かれるアナザースカルクリスタルの体。だが、頭蓋骨部分は粘液の中で片側に寄ることで斬撃を回避。またエンジンブレードで斬られた体もエンジンブレードを中に入れたまま元に戻っていく。

 

「ちぃ!」

 

 斬撃の効果が薄いと実感したアクセルは、すぐにエンジンブレードを引き抜こうとする。しかし、エンジンブレードを取り込んだ粘液の体はしっかりとエンジンブレードを固定し、アクセルに抜かせない。

 

「なら!」

 

 エンジンブレードを持ち上げると刀身部分が折れ曲がり、メモリを入れるスロットが開く。

 

『エンジン!』

 

 側面に『E』と描かれたメモリ──エンジンメモリをエンジンブレードに装填。柄部分にあるトリガーを引く。

 

『ジェット!』

 

 エンジンブレードの刀身から衝撃波が放たれ、アナザースカルクリスタルの体が内側から爆ぜる。

 内側からの衝撃波により四散するアナザースカルクリスタルの体。湿った音を立てて壁や地面に粘液が付着する。

 アクセルの目が追うのはアナザースカルクリスタルの肉片ではなく本体と思われる頭蓋骨。視線を動かし間もなくして地面に転がる粘液に包まれた頭蓋骨を発見した。

 

「これで終わりだ」

 

 アナザースカルクリスタルの頭蓋骨を叩き割ろうとエンジンブレードを構えるが──

 

「照井さん! 危ない!」

 

 ──ソウゴの叫びと同時に背後から気配を感じ、咄嗟に振り返る。

 

「くっ!」

 

 ガキン、という音と衝撃にエンジンブレードを持つ手が痺れる。高速で飛翔してきた何かがエンジンブレードにぶつかった。

 見れば散ったアナザースカルクリスタルの肉片が盛り上がり、先細めた触手を伸ばしている。その先端はアクセルに向けられていた。

 黒い粘液の中で段々と大きくなっていく白い塊。見間違いでなければ骨である。それが一定の大きさまで育つと触手先端から発射される。

 

「ぬぅ!」

 

 再びエンジンブレードでそれを防ぐアクセル。エンジンブレードに着弾すると骨の塊は砕け散るが、衝撃は残る。一発の威力は脅威とは言えないが、触手を向ける粘液は散らばった分存在し、それらが一斉に骨の塊を発射する。

 エンジンブレードで防げるものがあるが、撃たれる骨の塊の数も多いので防ぎきれないものもあり、防御をすり抜けた骨の塊がアクセルの体に命中する。

 アクセルが一歩後退してしまう程の衝撃。戦闘継続が困難になる程のダメージはないが、それでも数が集まれば厄介な攻撃であるし、飛び散っているせいで様々な方向から骨の塊に撃たれる。

 相手の能力の特色も分からず最初の攻撃で散らせてしまったことを失策だったと反省しつつも相手の観察も怠らない。

 肉片からの攻撃を浴びせられながらアクセルはあることに気付く。飛び散ったアナザースカルクリスタルの肉片の中で攻撃をしているものとそうでないものを見つけた。

 攻撃をしていない肉片は地面を這い、他の肉片と合流して一つになる。すると、触手が伸びて骨の塊を撃ち始める。

 今の動きで肉片は一定の大きさでないと攻撃が出来ないことを察したアクセルは、骨の弾丸を受けながらもエンジンブレードを突き出し──

 

『ジェット!』

 

 ──剣先から放たれる衝撃波で今まさに骨の弾丸を撃ち出そうとしていた肉片を逆に撃ち抜く。

 より細かな破片となると攻撃どころか這って動くことも出来なくなる。アナザースカルクリスタルの攻略法を見出したアクセルは、残りの肉片らも全て細かく吹き飛ばそうとするが──

 

「ぐぅ!?」

「照井さん!?」

 

 ──首筋に鋭い痛みが走り、アクセルの動きが止まる。

 

「こいつ……!」

 

 アクセルの首横にはアナザースカルクリスタルの頭蓋骨が噛み付いていた。横たわって動いていなかったので油断をしてしまったが、頭蓋骨もまた単独で動くことが可能だったのだ。

 アナザースカルクリスタルは凄まじい咬筋力でギリギリとアクセルの首を締め上げていく。痛みは勿論あるが、それよりも首を絞められることで血流が止まりかけ、アクセルの意識が朦朧とし始める。

 

「っ離せ!」

 

 エンジンブレードの柄を頭蓋骨に叩き込もうとするが、アナザースカルクリスタルの頭蓋骨は器用に頭だけで動き、アクセルの首筋へ移動する。

 アクセルの視覚に入ると同時にエンジンブレードも簡単には届かない位置。アクセルは体を動かしてアナザースカルクリスタルを振り落とそうとするが、相手の喰らい付く力は強く、簡単には落とせない。

 

「ならば!」

 

 アクセルの決断は早かった。自身にエンジンブレードの刃を押し当てると──

 

『エレクトリック!』

 

 ──エンジンブレードが電気を発生。アクセルごと頭蓋骨は感電し、感電の衝撃で吹き飛んでいく。

 

「嘘っ!?」

 

 自分ごと感電させる自爆行為にソウゴは驚愕の声を出してしまう。自分の攻撃なので威力を熟知していたのかもしれないが、それでも決断から行動までが早過ぎた。

 

「くっ……むん!」

 

 全身から白煙が立ち昇るアクセル。一瞬膝が折れかけたが気力で踏み止まり、よろけることなくアナザースカルクリスタルへ歩いていく。直接電気を受けたアクセルの方がダメージは大きい筈なのにアナザースカルクリスタルより何故か復帰が早い。アナザースカルクリスタルは未だに感電の影響で痙攣するように顎を震わせているというのに。

 

「すごっ……」

 

 アクセルのタフさにソウゴは先程とは別ベクトルの驚きを覚える。

 

「見た目の割には打たれ弱いな」

 

 もがくアナザースカルクリスタルに皮肉を言い、動けない内に今度こそ頭蓋骨を破壊しようとするアクセル。その時、アクセルの背中から火花が散った。

 

「ぐあっ!」

「油断したな」

 

 アクセルの後ろには三叉槍を振り下ろしたカッシーン。

 

「一対一と思っていたのか? 随分と甘い考えだ!」

 

 アナザースカルクリスタルに気を取られていたアクセルを嘲り、三叉槍を突き出す。

 

「くっ!」

 

 エンジンブレードでそれを逸らし、すぐに立ち上がってカッシーンを斬り付ける。

 重い斬撃がカッシーンに命中し、カッシーンはよろける。そこに踏み込んだアクセルの膝蹴りがカッシーンの腹部を突き上げる。

 

「ぐぬっ!」

 

 不意打ちでダメージを与えたにも関わらずそれをものともしないアクセルの動き。膝蹴りを受けたカッシーンは後退させられるが、数歩下がってところで踏み止まり、三叉槍を振り上げて反撃に移った。

 アクセルは地面が摩擦で摺動音と煙が上がる勢いでその場で回転。回転の際に振り回したエンジンブレードで三叉槍を弾く。三叉槍を弾くとすぐさま逆回転し、がら空きになっているカッシーンの胴体を斬った。

 

「邪魔だっ!」

 

 アクセルは回転を急停止させ、エンジンブレードの切っ先をカッシーンに押し当てるとトリガーを引く。

 

『エンジン! マキシマムドライブ!』

 

 エンジンブレードの先端から放たれるA字型のエネルギー。零距離からそれを受けたカッシーンの体は真っ二つに両断される。

 

「我が……魔王……」

 

 切断された断面から青白い火花を噴き出した後、爆散するカッシーン。

 カッシーンを撃破するとエンジンブレードの刀身が自動的に折り曲げられ、中に入れてあるエンジンメモリが排莢のように排出され、アクセルの手の中に納まった。

 

「うおおおおおっ! やった!」

 

 アクセルの勝利にソウゴも興奮した様子で喜ぶ。拘束されている状態で我が事のように喜んでいるソウゴを随分と神経が太い、と評しながら残っているアナザースカルクリスタルが居る方へ目を向ける。

 

「──何?」

 

 そこに居る筈のアナザースカルクリスタルの頭蓋骨が無い。カッシーンとの戦いに意識を取られて見失ってしまった。

 

「奴を見なかったか!?」

「ご、ごめんなさい! 見てないです!」

 

 ソウゴもまたアクセルとカッシーンの戦いに目を奪われていたのでアナザースカルクリスタルの動向を見ていない。

 アクセルは慌てて周囲を探すが潜んでいると思われる陰などにアナザースカルクリスタルはいない。

 だが、探していた気付いたこともある。あれだけ大量に散っていたアナザースカルクリスタルの肉片も見当たらない。廃工場内からアナザースカルクリスタルの痕跡が綺麗に消えている。

 アクセルはもう一度アナザースカルクリスタルの頭蓋骨があった場所を注視する。

 

「ん?」

 

 そして気付いた。地面の一部が不自然に盛り上がっていることに。

 アクセルは急いでその場所へ向かう。盛り上がっている部分を手で除けた。

 

「これは!?」

 

 盛り上がっていたのは瓦礫が重ねられていたからであり、その下には直径数十センチの穴が開けられている。この穴のサイズならばアナザースカルクリスタルの頭蓋骨も通ることが出来る。

 

「地中に逃げたのか!」

 

 カッシーンと戦っている間に穴を掘って地中へ身を潜めたアナザースカルクリスタル。頭蓋骨が入るのなら体はいくらでも変形させることが出来る。

 

「まだ居るな……!」

 

 アクセルは足元を警戒しながらエンジンメモリを再びエンジンブレードに装填する。逃走したとは思っていない。人質にしていたソウゴも敵であるアクセルもここに居る。息を潜めて奪還か奇襲を狙っているとアクセルは予測する。

 ソウゴと自分。アナザースカルクリスタルが狙うのはどちらか。アクセルは神経を研ぎ澄ませる。

 ピシリ、という罅割れる音がアクセルの耳に入って来た。音を辿ればそこにはソウゴ。そして、ソウゴの足元に亀裂が生じておりそこからアナザースカルクリスタルの体である黒い粘液が滲み出ている。

 

「狙いはそっちか!」

 

 アクセルはすぐさまソウゴを救ける為に動く。ソウゴは自分の方に向かって走ってきているアクセルに気付くが、同時にアクセルが調べていた穴から黒い粘液が這い出て来ているのが見えた。

 

「照井さん! こっちじゃない!」

 

 ソウゴが叫ぶが一歩遅かった。這い出た黒い粘液がアクセルの上から覆い被さる。

 

「ッ!?」

 

 突然全身を粘液に覆われ、身動きが取れなくなるアクセル。エンジンブレードを持つ右手は粘液の外に出ていたが、その腕に凄まじい圧がかけられエンジンブレードを手放してしまう。

 アナザースカルクリスタルの頭部が体の中に取り込まれたアクセルを見下ろしている。眼球の無い眼窩が心なしか笑っているように見えた。

 

(判断ミスか……!)

 

 ソウゴの近くに現れたのは伸ばしたアナザースカルクリスタルの一部に過ぎない。本体はずっと穴の奥底で待機していた。

 敢えてソウゴを襲うと見せかけることでアクセルの油断を誘う。アナザースカルクリスタルは仮面ライダーというものがどういう存在なのか理解していた。

 守る対象が居ればそちらを優先し、自分の身を疎かにしてしまう。

 アナザースカルクリスタルの粘液内で藻掻くアクセル。しかし、纏わりつく粘液は重く、少しずつしか体を動かせない。

 アナザースカルクリスタルはアクセルを捉えたことで次なる攻撃段階に移る。

 粘液内に発生する幾つもの骨の塊。それらが成長し、肋骨のような湾曲した形状になる。

 曲がった骨の先は鋭く尖っており、その先端がゆっくりとアクセルの体に押し当てられた。

 粘液の圧により骨がアクセルの体に徐々に突き刺さっていく。その光景はさながら中世の拷問器具のよう。

 アクセルの装甲自体が頑丈なので少しずつしか入っていかないが、だが確実にアクセルの命を奪う為に進んで行く。

 それを間近で見せられるアクセルにとっては生き地獄そのもの。しかし、アクセルはその恐怖に屈することなく生きる為、勝つ為に足搔き続けていた。

 アクセルの右手が重い粘液の中でゆっくりと動く。右手を伸ばした先にあるのはアクセルドライバーのスロットル。

 体を徐々に貫かれていくプレッシャーの中でアクセルはそのスロットルを握り、捻る。

 籠ったエンジン音がアナザースカルクリスタルの体内で響く。しかし、それだけで終わる。

 アクセルは一回だけでは終わらず何度もスロットルを回す。その度に唸るエンジン音。

 繰り返し行われるがアナザースカルクリスタルに変化はない──と思われていたが、少しずつだが変化が生じていた。

 アクセルの体の周辺で小さな気泡が出来ている。それはアクセルがスロットルを回す度に数を増していき、段々と気泡も大きくなっていく。

 アナザースカルクリスタル内で発生した気泡は表面部分まで上がり、弾ける。その際に白い蒸気が一瞬見えた。

 

「煮えてる……?」

 

 ソウゴが見ている間にもアナザースカルクリスタルの体から無数の気泡が爆ぜ始める。アナザースカルクリスタルの体は熱せられた水のように蒸発し始めていた。

 煮えたぎるアナザースカルクリスタルの体内でアクセルはスロットルを回すのを止めない。

 スロットルを回す度にアクセルから膨大な熱とエネルギーが発生しており、既に変身者に負荷が発生するレベルの熱エネルギーが溜め込まれている。

 アナザースカルクリスタルは体が高熱で煮えられていくことに耐え切れなくなり、身を捩り出す。

 アクセルの動きを鈍らせていた圧が弱まった瞬間にアクセルはアクセルドライバー左側のクラッチレバーを握る。

 

『アクセル! マキシマムドライブ!』

 

 今まで蓄積されていた熱エネルギーが全開放され、内側からの爆発のようなエネルギーの衝撃によりアナザースカルクリスタルの体が弾け飛ぶ。

 アナザースカルクリスタルの頭蓋骨が高々と舞い上がっていくのを見ながら解放されたアクセルはスロットルを回す。

 

「根負けしたか──やはり俺の知る仮面ライダーたちとは程遠いな」

 

 覚悟も信念も感じない形だけのアナザーライダーに表面上は静かに、だが体は内なる激情を体現したかのように激しく燃えている。

 アクセルは跳躍しながら空中で体を捻り、落下してきた頭蓋骨目掛けて飛び後ろ回し蹴りを繰り出す。

 加速のエネルギーを得たアクセルの右足は、タイヤ痕のようなエネルギーの軌跡を描き頭蓋骨に必殺のアクセルグランツァーを叩き込み、蹴り砕く。

 一回転して粉砕されたアナザースカルクリスタルの頭蓋骨に背を向けるアクセル。

 

「絶望がお前のゴールだ」

 

 その言葉を合図に頭蓋骨は爆散し、アナザースカルクリスタルは完全消滅した。

 




アクセルらしく体を張った戦いにしてみました。
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