仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~   作:K/K

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次回から最終決戦が始まります。


アナザーワールドXXXX

「まずはおめでとう。これで君は救世主として正しい道を歩み始めた」

 

 ウォズはゲイツを賞賛しながら彼に近付いていく。アクセルが警戒して動こうとする。アクセルからしたらウォズは初対面の相手なので警戒は無理もなかった。だが、それをイクサが制する。

 二人は小声で言葉を交わす

 

「……信じていいのか?」

「分からない。ただ、この場所に常磐君が居ることを教えてくれたのは彼だ……だが、信じ切るつもりはない」

 

 ウォズに対する不信感が拭い切れないイクサは、直接的な行動は控えつつ警戒は緩めない。アクセルもそれに倣って静観する。

 

「その姿は君の覚悟の証。救世主としての正式な姿だよ、明光院ゲイツ君」

「……さっきから名前を間違えているぞ。俺は景都だ」

 

 すると、ウォズは首を傾げる。

 

「おやぁ? 仮面ライダーゲイツになったということは、てっきり記憶も……いや、何でもない私の早とちりだったみたいだ」

 

 何か知っているような含みのある言い方。尤も、ウォズはゲイツが訊いても答えなさいだろう。顔にそう書いてある。

 

「そして、これで状況は整った。我が救世主の前に最低最悪の魔王となる常磐ソウゴ。しかも、お誂え向きに彼は縛り付けられている。まるで処刑場の罪人だね」

 

 ウォズの言葉に不穏なものが混じり出す。

 

「さあ、真なる救世主としての第一歩だ。今こそ悪しき魔王を討つ時だ」

 

 続いて出された言葉は、ソウゴの処刑を奨めるもの。見え隠れしていた不穏が露骨になる。

 

「……何を言っている」

 

 ゲイツはウォズのことを胡散臭い奴だという認識していた。それでも力をくれたり助言をしてくれたりなど心の何処かではウォズを信用し始めていた。

 その信用が、今のウォズの一言により崩れ出す。

 

「君の臣下として普通のことを言ったつもりさ。何か気に障ったかな?」

 

 ウォズはゲイツの反応に理解出来ないという風に首を傾げる。

 

「俺がそんなことを本当にすると思っているのか?」

 

 とぼけた態度のウォズにゲイツの語気が強まる。傍観していたイクサとアクセルもウォズの邪気のようなものが強まっていくのを感じ取り、徐々に距離を詰めていく。

 

「──まさか」

 

 ウォズはニヤリと笑い、指を鳴らす。すると、イクサとアクセルの足元に金の線で複雑な紋様が描かれた魔方陣が展開し、二人がその魔方陣から離れる前に二人の姿は消えてしまう。

 

「照井さん! 名護さん!」

 

 消えた二人の名を叫ぶソウゴ。それに応える声はない。

 

「貴様! 二人を何処にやった!」

 

 ゲイツは怒りのままウォズの胸倉を掴む。

 

「まあまあ。落ち着きたまえ」

 

 ウォズはゲイツの手首を掴む。次の瞬間、装甲が軋む程の握力でゲイツの手首を握り締めていく。

 

「ぐっ、うぅぅ! 何て力だ……!」

 

 ゲイツは抵抗するがウォズの手を引き離すことが出来ない。やがて、ウォズの握力に負けてゲイツはウォズの胸倉から手を離してしまう。ウォズはゲイツの手首を捻り、更なる苦痛をゲイツに与える。

 

「ぐおぉぉ……!」

「この本によれば救世主は最低最悪の魔王を倒し、未来永劫に渡って人々の上に君臨する」

 

『救世主伝説』の本をひらひらと振りながらゲイツに見せるが、やがてその本を投げ捨てる。

 

「真の救世主であるこの私がね」

 

 ウォズの掌打がゲイツに打ち込まれ、緑色の光が発される。人外の力で繰り出される掌打にゲイツの体は吹っ飛ばされた。

 

「ぐはっ!」

「景都!」

 

 ゲイツは廃工場壁面に叩きつけられ、そのまま崩れ落ちていくが途中で堪えて体勢を立て直す。

 

「色々と回り道や妨害があったが、ようやく計画も最終段階に入る。君の力を奪ってね」

「最初から……それが狙いだったのか……!」

 

 ウォズの口から暴露される真実。ゲイツは全てが仕組まれていたことを悟る。

 

「あのアナザーライダーたちもお前の差し金か……!」

「ああ、あれか。本当ならカッシーンぐらいで済ます気だったんだが、君が中途半端な変身をしてしまったせいで早速計画を変更せざるを得なくなったよ。おまけに君を助ける者たちまで出て来た。こっちとしては貴重な手駒を随分と消費してしまったよ」

 

 困ったもんだよ、と苦笑しながらウォズは肩を竦める。

 

「苦労した分、君からきっちりと頂くとしよう。その救世主の力を」

 

 ウォズは悪意に満ちた笑みのままゲイツへ近付いていく。

 

「来るな!」

 

 ゲイツは弓モードのジカンザックスを構えながらウォズに警告する。

 

「それ以上近寄れば……撃つ!」

 

 生身の相手に武器を向けることに抵抗感を覚えながらもそれを押し殺してウォズを牽制する。だが、ウォズはジカンザックスに狙われていても笑みを消そうとはしない。

 

「やれやれ……本当に君は甘いなぁ。いちいち警告なんてせずに問答無用で撃てばいいじゃないか」

 

 ウォズはゲイツの心境を見越した上で挑発をする。

 

「俺は本気だ!」

「ならその本気を見せてごらん」

 

 ウォズは徐に足を上げ、ゆっくりと一歩踏み出す。その瞬間、ウォズの顔のすぐ横を光矢が通り過ぎていった。あと数ミリ寄っていればウォズの顔が抉れていただろう。しかし、ウォズは肩を震わせて笑う。

 

「あははははは。勇ましいことは言っていた割には外しているじゃないか。君、まだ覚悟が足りていないんじゃないかい?」

 

 もし、ゲイツとウォズが初対面であったのなら今の矢はウォズに当たっていたかもしれない。ゲイツはウォズと何度も言葉を交わしてしまった。あまり信用はしていない上に胡散臭いと思っていたが、何度も交流をすれば多少なりとも情も湧く。特にゲイツのような性格であったのなら尚更であった。

 光矢を放つ直前、短いながらもウォズとの会話が蘇り、指先が震えてしまった。その震えが照準を狂わせた。

 ゲイツの覚悟を口ほどにもないと嘲るウォズ。ゲイツもまたそれを甘んじて受け止めいたが──

 

「黙れっ!」

 

 ソウゴの怒声がウォズの嘲笑を掻き消す。

 

「……今、私に向かって言ったのかな? 魔王?」

「お前が景都を笑うな!」

 

 ウォズの圧に全く怯むことなくソウゴは怒りのままウォズの言動に噛み付く。

 

「今のを外したことを俺は何もおかしいとは思わない! 例えあんたが敵でも景都は知っている相手は躊躇いもなく撃てるような奴じゃない!」

「それが甘いっていうのさ」

「違う! 景都は優しいだけだ! あんた言ったよな!? 景都は救世主になるって! 景都は優しいから皆を守ろうとしているんだ! だからきっと救世主になれる素質があるんだ!」

「常磐……」

 

 ゲイツは驚いていた。普段は飄々とし、穏やかながらも何処か底知れなさを秘めている男が今まで見たことがないぐらいに怒っていることに。しかも自分のことではなく他人のことで怒っている。

 

「お前は景都の代わりに救世主になるって言っていたけど、景都の優しさが分からないお前が救世主になんてなれるはずがない!」

 

 言い切ったソウゴ。そんな彼を見るウォズの顔からはさっきまであった笑みは消えていた。感情を排した冷酷な目でソウゴへ向けている。

 

「──やれやれ。折角私の苦労が報われ、良い気分になっていたというのに随分と水を差してくれるじゃないか。流石は最低最悪の魔王」

 

 表情は変わらず無であったが、その目には隠し切れない殺意が込められている。

 

「──そうだ、こうしよう」

 

 ウォズはノート型のタブレットを取り出す。

 

「不甲斐ない元救世主に代わって私が君を退治するとしよう。最低最悪の魔王に相応しい惨めな最期をプレゼントしよう」

 

 処刑宣言し、ウォズはタブレットに何かを書き込み始める。

 それに嫌なものを感じたゲイツは、ウォズのタブレットにジカンザックスを向ける。

 

「止めろ!」

 

 光矢を撃ち、タブレットを破壊しようとする。だが、何故か光矢の軌道が逸れて外れてしまう。ゲイツは本気で狙っていた筈なのに。

 

「一手遅いよ、ゲイツ君」

 

 ウォズはタブレットをゲイツたちに見せる。

 

『仮面ライダーゲイツの攻撃はウォズに当たらない』

 

 タブレットに書かれた内容がそのまま現実に起こっていた。

 

「何だと……」

「そういえば言っていなかったね。これに書かれたことは実際に起こる。これを使って上手く事を運ぼうとしていたが……何処かの誰かが邪魔をしてくれたせいでいつも台無しさ」

「そうやって俺を操っていたのか!」

「導いていた、と言って欲しいね」

 

 ウォズは再びタブレットに何かを書き込もうとする。ゲイツはそれを妨害しようとジカンザックスで射るが、ウォズが言うようにゲイツの攻撃全てが何かに導かれるようにウォズを避けていく。

 ゲイツの攻撃がことごとく外れていく中で悠々とタブレットに書き込んでいくウォズ。

 

『仮面ライダーゲイツの救世主の力はウォズに全て譲渡』

 

 される、という文字を書き加えるだけでウォズの計画は成就する──筈であった。

 

「やっと油断してくれたね」

 

 

 ウォズの背後から伸びてきた手がタブレットを奪い取る。

 

「何!?」

 

 慌てて背後を振り返るがそこに誰もいない。視線を正面に戻すと銀色のオーロラがソウゴとゲイツを通過し、彼らを何処かへ連れ去ってしまう。

 こんな事する奴はウォズの中で一人しか心当たりがない。

 

「海東大樹ぃぃぃぃぃ!」

「呼んだかい?」

 

 さも当然のように柱の陰から現れる海東。その手にはウォズのタブレットがある。

 

「何度も何度も私の邪魔をしてくれた挙句、私の物まで盗むなんてね……!」

「君に壊された僕のお宝を弁償してもらっただけさ」

 

 海東は悪びれた様子もない。

 

「──それに最初に僕から盗んだのは君だった筈だよ? 僕が盗むのは良い、怪盗だからね。でも、僕から盗むのは許されない」

「盗人猛々しいと良く言ったものだね……!」

 

 火花が飛び散りそうなぐらいの敵意をぶつけ合う両者。

 彼らが言うように二人の因縁が始まったのは今からではない。ウォズと海東が明光院景都の前に現れる前からあった。

 

 

 ◇

 

 

 何もない荒野にて聞こえて来る戦闘音。

 そこでは二人の仮面ライダーが一進一退の攻防を繰り広げていた。

 一人は角張った頭部や胴体にプレートが幾つも並んで刺さっている外見をした黒とシアンの仮面ライダー。

 もう一人は同じくシアンカラーの『ライダー』という文字を仮面に付けた銀と緑蛍光色の仮面ライダー。

 シアンの仮面ライダーの名はディエンド。海東大樹が変身した姿。緑蛍光色の方は仮面ライダーウォズ。その名の通りウォズが変身した姿である。

 ディエンドの銃──ネオディエンドライバーの至近距離からの発砲をウォズの槍──ジカンデスピアで防ぐが、その威力に後退させられる。

 

「流石はディエンド。ディケイドに匹敵する素晴らしい力だ」

「褒めてくれてどうも。でも、手加減はしないよ?」

「もっと褒めたらしてくれるのかい?」

「まさか」

「だろうね」

 

 ウォズは笑い、素早くドライバーに填め込まれたウォッチを変える。

 

『フューチャーリングシノビ! シノビ!』

 

『ライダー』の文字は紫の『シノビ』という文字に置き換わり、首には紫のマフラーが巻かれ、装甲は忍者を意識した意匠に変わる。

 仮面ライダーシノビという未来の仮面ライダーの力を宿したウォズは、指を組んで何かをしようとする。

 

「させないよ」

 

 ディエンドはネオディエンドライバーにカードを装填しつつ発砲。ウォズが何かをする前に光弾がウォズを貫いた。

 

「がはっ!」

 

 ウォズは仰向けに倒れる──と同時に白い煙が発生し、ウォズが丸太に変わる。

 

「何!」

「変わり身の術さ」

 

 いつの間にかディエンドの背後に回り込んでいたウォズ。その手にはブランク状態のライドウォッチ。

 

「これで終わりさ」

「──何てね」

『インビジブル』

 

 先に装填していたカードの効果をここで発動。ディエンドの姿は透明化し、押し当てる筈であったライドウォッチが空を切る。

 

『ファイナルアタックライド』

 

 次にディエンドが姿を現した時にはディエンドライバーの銃口がウォズのこめかみに押し当てられ、いつでも必殺の一撃が撃てる状態になっている。

 

「これで最後にしよう」

 

 ディエンドライバーのトリガーにかかる指に力が込められ──

 

「ああ。確かに最後さ」

 

 ──全ての時間が停止し、ディエンドはトリガーを引くことが出来なかった。

 時間停止の中でウォズは悠々と動き、ディエンドライバーの射線から離れる。

 停止した時間の中で動く者はウォズ一人ではなかった。こちらに向かって歩いて来ている人物が一人。

 マントを翼のようにはためかせながら歩く中性的な容姿の人物。

 

「上手くいったようだね」

「ご協力感謝するよ、フィーニス氏」

「君には色々と教えて貰った借りがあるからね」

 

 フィーニスと呼ばれた人物はそう言いウォズに微笑む。

 

「──さて」

 

 ウォズは改めてライドウォッチをディエンドに押し当て、その力をライドウォッチの中へ取り込む。

 時間停止は解除され、残ったのは変身解除した海東。

 

「くっ……まさか……タイムジャッカーと手を組んでいたとはね……」

 

 力を奪われた虚脱感で膝を着く海東。

 

「そういうことさ。君は最初から詰んでいたんだよ」

 

 海東を嘲笑し、その頬を手の甲で叩く。

 

「ぐう!」

 

 仮面ライダーの力で殴られた海東はそのまま地に伏せる。ウォズは海東を爪先で蹴り、仰向けにすると彼の懐を探る。

 

「あったね」

 

 ノート型タブレットを取り出し、地面に落とす。

 

「これは君が持つのに相応しくない」

 

 タブレットを踏み砕き、完全に使用不可能にする。

 

「これは私だけが持っていればいい」

 

 全く同型のタブレットを海東の前に出す。

 

「それで彼はどうするんだい?」

「そうだね……」

 

 海東の処分を決めようとした時、海東は突如として動き出し、ネオディエンドライバーで地面を撃って土煙を巻き上げる。

 舞い上がる土煙で姿を一瞬隠した後、銀色のオーロラを発動させて転移してしまった。

 

「──迂闊だったよ。まだあんな力を残していたなんて」

 

 海東の逃走にウォズは悔しさを滲み出させる。

 

「放っておけばいいさ。今の彼に仮面ライダーとしての力は残っていないのだから」

 

 フィーニスの方は既に海東を脅威と見なしていない。

 

「……まあ、後回しにすればいいか」

 

 ウォズもそう割り切る。

 

「これで君に借りを返したし僕はそろそろ行くよ」

「出身は違うが同じ()()()()()()()()の出の君と別れるのは少々名残り惜しいね」

「心にもないことを……」

「ふふ」

 

 ウォズの台詞に呆れた表情になるフィーニス。ウォズは真偽を隠すように笑う。

 

「君は救世主、僕は魔王。どちらがその力を手に入れられるんだろうね」

「競争と行こう。そっちの方が楽しめる」

 

 そしていずれは、という言葉を互いに胸の奥に仕舞い込み、一瞥し合う。そして、二人は背を向け、それぞれが目的の地を目指す。

 




自分なりの解釈で映画版の話ともリンクさせました。
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