仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
予告で登場させた以外のアナザーライダーも出す予定です。
仮面ライダーケイトへと変身した自分の姿に未だ現実感が追い付かず夢か幻か確認するように体中を触って確認する景都。
そんな様子を物陰から眺める人物が居た。
白いジャケットを羽織った茶髪の青年。以前景都とウォズの初邂逅を監視していた者たちとは異なる新たなる登場人物。
ケイトを暫く観察した後、それ以上観察も介入する必要もないと判断したのか面白そうに一笑するとこの場から立ち去ってしまった。
ケイトの方はまだ変身した自分の体を確認しているが、ウォズの声が彼を現実に引き戻す。
「慎重に確認するのは結構だが、相手は待ってくれないよ?」
ウォズの言う通り、衝撃波によって吹き飛ばされたカッシーンがこちらに向かって歩いて来ている。
「ど、どうすればいい!?」
「どうすればって? 戦うしかないじゃないか」
ケイトの質問に呆れた様子で返すウォズ。直後、カッシーンがケイトに向かって走り出し、接近と同時にケイトを殴りつける。
「うおっ!」
ケイトは咄嗟に両腕を前で揃えてガード。カッシーンの鋼の拳を両腕で受け止める。ケイトは殴り飛ばされるが、その場から数歩後退しただけであった。
「これは……!」
腕には殴られた衝撃で痺れと痛みがあったが予想していたよりも小さい。身体能力が上昇しているのが分かる。
「なら!」
ケイトは前方に飛び込むような不格好な体勢でカッシーンの胸部に反撃のパンチを叩きこむ。
「ぬお!」
反撃を受けたカッシーンはケイトと同じように後退した。
「行ける! 戦えるぞ!」
手応えを感じたケイトはツクヨミへ叫ぶ。
「こいつは俺がどうにかする! 逃げろ! ツクヨミ!」
「でも、明光院君は足を怪我しているじゃない!」
「まだ痛み止めは効いている!」
何とかしてツクヨミが巻き添えにならないようにするが、ツクヨミもケイトが十分に戦える状態ではないことを知っており、ましてや医者志望故に怪我のケイトを放って一人逃げるなど簡単には出来なかった。
「救世主の優しさをあまり無下にするものじゃないよ、ツクヨミ君?」
「ウォズさん!?」
いつの間にかツクヨミの背後に立っていたウォズがツクヨミの肩を掴んで後ろへ下がらせる。
「ツクヨミ君は私が責任を持って守ろう。君は何も心配することなく思いっ切り戦うといい」
「言われるまでもない!」
ケイトは怯んでいるカッシーンの懐に入り込み、左右の拳を連続で打ち込む。人を殴った経験の無いケイトの不格好な連打であったが、それでもカッシーンを更に後退させるぐらいの威力はあった。
「調子に乗るな!」
カッシーンも一方的に殴られているばかりではなく踏み止まるとケイトに掴み掛かろうと手を伸ばす。
ケイトは戦闘の素人ではあっても戦いの経験が皆無という訳ではない。何年もの鍛錬により染み付いた動きが意識よりも先に体を動かし、カッシーンの伸ばした手を避けると同時に体を反転させながら腕を掴み、そこから足払いによる一本背負い──を放っていただろう万全のケイトであったのなら。
「っ!?」
カッシーンと自身の体重が右足にかかった時、ケイトの頭の中であの時の痛みがフラッシュバックする。
痛み止めは効いている。だが、心に刻まれた柔道選手生命を絶った激痛はトラウマとして嫌でも鮮明に覚えていた。
ケイトの中の景都は全身から汗を噴き出しており、カッシーンを投げる途中で固まってしまう。
「ふん!」
「ぐうっ!」
動きが止まったケイトの背中にカッシーンは肘を打ち下ろす。突き抜けていく衝撃にケイトは掴んでいた手を離す。腕が自由になるとカッシーンはすかさずケイトの背中を蹴り飛ばした。
「ぐおっ!」
地面に倒れ伏せるケイト。その体は小刻みに震えている。戦いへの恐怖ではなく柔道を出来なくなってしまった絶望が今のケイトの心を蝕んでいた。
「明光院君!? 大丈夫!?」
ツクヨミは倒れたケイトに声を掛けるが、ケイトの動揺は酷くツクヨミの声が届いていない。
「ふむ……変身は出来たがまだ救世主としての自覚が足りていないようだ」
「そんな他人事みたいに……!」
ウォズが何かをして景都が変身しているのをツクヨミは見た。しかし、ウォズが助ける様子はなく薄ら笑いを浮かべて観察している始末。ツクヨミはウォズを強く睨みつけてしまう。
「私はあくまで救世主を導く立場だからね。私が手取り足取り教えていたんじゃこれからの彼の為にはならない」
ツクヨミに睨まれてもウォズの余裕は消えない。
「しかし、私としても不本意な展開だ。さて、どうしようかな?」
ノード型のデバイスに目を下し介入しようかどうか迷うような仕草を見せる。
ウォズが悠長に迷っている間にカッシーンはケイトを強引に立たせ、肩を掴んで逃げられなくするとその顔面を殴打する。
「ここで貴様の運命を断つ! 我が大魔王の覇道の為に!」
「ぐあ! ごは!」
鋼鉄の拳は容赦なくケイトの顔面に叩きつけられ、その度にケイトは苦鳴を上げる。生々しい暴力にツクヨミは思わず目を逸らしてしまう。
ケイトは反撃しようとするも蘇ったトラウマのせいで体の震えが止まらず、またその状態で繰り返し行われるカッシーンの暴力のせいで段々と思考がぼやけていく。
「早く! じゃないと明光院君が死んじゃう!」
「やれやれ。世話の焼ける救世主だ……うん?」
ツクヨミに言われ仕方なく助力しようとしたウォズであったが、途中で何かを凝視する。ウォズの行動に釣られてツクヨミもウォズの視線の先を見た。
殴られ続けているケイト。その体が青いオーラにより包まれている。すると、青いオーラは火の玉のような無数の球体と化しカッシーンにぶつかってカッシーンを弾き飛ばした。
「ぬおっ!」
無抵抗であったケイトからの予想外の反撃によりカッシーンは転倒する。
ケイトを守った青い火の玉は、殴られ過ぎて棒立ちになっているケイトの手の中へと集まっていき一つとなる。青い火の玉は物質化しライドウォッチとなっていた。
ケイトはまるで操られているかのような生気の無い動作でそのライドウォッチを起動。
『ビビル!』
青いライドウォッチ──ビビルライドウォッチに導かれるようにジクウドライバーの空いているスロットにセット。
ジクウドライバーのロックを解除して両手でジクウドライバーを挟んだ。
「……変身」
掠れた声で呟きながらジクウドライバーを一回転。
『仮面ライダーケイト!』
『ビビルターイム!』
ケイトの目の前に召喚される青いアーマー。ケイトの心情を表すかのようにアーマーはガタガタと振動を繰り返している。
アーマーは独りでにケイトに装着され、ケイトのアンダースーツも青色に変色する。
両肩に付けられた巨大な目を思わせるショルダーアーマー。胸にも目の形したマークが追加され、脚にもデフォルメされた人の叫び顔のマーク。全身で目を見開く程の恐怖を体現しているかのような格好になっている。
『ビビル! ビ・ビ・ル!』
ケイトの仮面に収まっていた『らいだー』の文字は消え、代わりに填め込まれたのは『びびる』の文字。小文字であった『らいだー』の時とは違い、『びびる』は仮面一杯に収められていた。
「また変身した!」
「これは少し予想外だったね」
仮面ライダーケイトビビルアーマーの姿にツクヨミは驚き、ウォズも目を丸くする。
「な、何だ? 何だこのアーマーは?」
当の本人もいきなりビビルアーマーを装着したことに驚き、戸惑いを隠せない。
「こけおどしを!」
戦闘に復帰したカッシーンがすぐさまケイトへ殴り掛かる。
「う、うわああああ!」
ケイトは叫んだ。その恐怖の叫びとは裏腹にカッシーンの腹部にカウンターの拳を命中させている。
「おうっ!?」
「く、来るな!」
後退しようとするケイト。だが、その足はケイトの意思を無視して全身させ、前屈みになっているカッシーンの顔を膝で突き上げる。
「わああああああ!」
仰け反るカッシーンの胸部に頭からぶつかるケイト。頭突きによりカッシーンは大きく突き飛ばされる。
ケイトの意思とは真逆にビビルアーマーは自動的に動いて戦う。その際に湧き上がる戦いに恐怖する心など無視して。
ケイトの恐怖心が最高潮まで達したと判断したビビルアーマーは、ケイトライドウォッチとビビルライドウォッチのスイッチを続けて押す。
『フィニッシュタァァイム! ビビル!』
その場で跳躍したケイトの体が青いオーラに包まれる。両肩の目玉型のショルダーアーマーから同じ形をした青い火の玉が出た。
ケイトはその火の玉と共に空中を疾走。立ち上がったばかりのカッシーンに突撃する。
『ビビッ! タイムバースト!』
エネルギーの塊となったケイトの体当たりはカッシーンの体を容易く粉砕。ケイトがカッシーンを突き破った後、ケイトの背後で爆散する。
カッシーンを撃破したケイトはその場で座り込み、同時に変身も解除。ビビルライドウォッチも変身解除と共に消滅してしまう。
生身に戻った景都の表情に先程まであった戦いの恐怖は無く呆然としたものであった。
「明光院君!」
ツクヨミは急いで景都に駆け寄る。
「ツクヨミ……怪我はないか……?」
枯れ果てた老人のような生気の無い動きでツクヨミの安否を確認する景都。
「私よりも明光院君の方が大丈夫じゃないでしょ!?」
誰が見ても今の景都の様子はおかしい。戦闘直後だというのに興奮状態でも恐慌状態でもなく精神が摩耗したような無気力状態になっている。
ツクヨミは消耗している景都の肩を抱え、医者に見せる為に景都を運ぼうとする。
鍛えられた景都を運ぶにはツクヨミには文字通り荷が重い。そこでウォズの手を借りようとするのだが──
「ウォズさん! 手を貸し……って居ない!?」
ウォズはいつの間にか姿を消していた。
ツクヨミがウォズの姿を探す。その様子を柱の陰に背を預けて身を隠しているウォズは見向きもしない。
「ふぅーむ。カッシーンを倒したのは良いが、私の望んだ展開ではないね」
景都の勝利を喜ぶ様子は無く、寧ろ不満気であった。
「……もう少し追い込んでみるか」
景都を救世主と讃えた同じ口から呟かれた言葉は何一つ感情のない冷たいものであった。
◇
「何だあれは?」
ケイトビビルアーマーの奇抜で無様な戦いを見ていた青年は興味と呆れを半々に混ぜた感想を言う。
「あー。あんなのあったねー」
優男は知っているような口振りであった。
「無用の長物だ……俺たちにとっては」
中年男性にはどうでもいい様子。
「知っているなら説明しろ」
「えー。俺たちには関係ないものだよ? あれ?」
「得体の知れないものが備わっているかもしれないのが気に入らない」
優男はやれやれといった態度で首を振り、生意気な態度が目立つ新入りの青年に丁寧に説明をする。
「あれはジクウドライバーの補助機能だよ」
「補助機能? そんなものまで備わっているのか……」
「でもねーあれが起動する条件は、ジクウドライバー変身者の精神状態が戦闘継続不可能だと判断されるぐらい低下していないとダメなんだよ。彼の場合、恐怖で動けなくなったから起動したんだ」
その説明を聞き、青年の興味はほぼ失せる。戦いの中で恐怖するなど青年にとってあり得ないことだからだ。それでも優男は最後まで説明を続ける。
「あのアーマー自体に変身者の体を使って自動的に戦うようにプログラムされてある。その際に変身者の恐怖をアーマーのエネルギーに変換するんだ。まあ、カッシーンぐらいなら余裕だろうね」
「恐怖をエネルギーに?」
「そう。そうやって精神を消耗させて無理矢理恐怖を感じさせなくするわけ」
景都が戦闘終了後無気力になっているのは恐怖をエネルギーとして使い尽くされてしまったのが理由である。
「欠点として一戦闘ぐらいしか持たないってことだろうね。精神的疲労が凄いみたいだから。まあ、時間が経てば回復すると思うけど」
優男は他人事らしく深刻なことも笑って話す。
「だから言った筈だ……俺たちには無用だと」
説明を聞き終え中年男性の言う通りだと青年は思ったが、素直に肯定するのが癪だったので中年男性を無視し、誤魔化すように景都の方を見た。
「うん?」
青年は眉間に皺を寄せた。
二体目のカッシーンが景都たちの許へ向かっている。
◇
「噓でしょ!?」
ツクヨミは我が目を疑った。景都が必死になって倒したというのに何事もなかったかのように新たなカッシーンが現れたからだ。
「我が大魔王の命により救世主にはここで消えてもらう」
一体目と同じような台詞を言いながらカッシーンは迫ってくる。
ツクヨミは重たい景都を引きずりながら何とか逃げようとする。
「ツクヨミ……俺を置いて……逃げろ……」
「出来る訳ないでしょ!」
ほぼ限界まで精神を酷使されている状態でもツクヨミに逃げるよう促す景都。そんな景都を見捨てることが出来ないツクヨミ。
しかし、無情なるカッシーンは容赦なく彼らを追い詰めていき──飛び出した二つの影がカッシーンを蹴り飛ばす。
「おいおい。俺の病院で何してんだ?」
「すまない。避難誘導をしていたら遅れた」
景都の担当医の伊達──何故か牛乳缶を担いで──と中庭まで景都を送ってくれた後藤──両手で持つような携行火器を持って──現れる。
後藤が携行火器を両手で構えるとメダル型の光弾が連続して発射され、カッシーンに命中して火花を散らせる。
「ぬぐ!」
カッシーンが怯んだ隙に伊達と後藤はある物を取り出す。
中央部に上半分が透明、下半分緑色の球体が埋め込まれ、右側面にハンドルレバーが付けられたベルト。二人は出した同型のベルト──バースドライバーを腰に巻き付ける。
「何よ後藤ちゃん。非番なのにそれ持ってんの?」
「伊達さんこそ仕事中なのに持っているんですね」
軽口を言い合いながら二人は銀色のメダル──セルメダルをバースドライバーの左側上部にあるスロットに投入する。
『変身』
二人がハンドルレバーを回すと中央部の球体がカポンという小気味良い音で開き、原子レベルまで分解されていた物質が転送、再構築される。
バースドライバーの中央部にある球体と同じ物体が複数出現し、それらが胴、手足などの各部に移動するとそれを起点にしてスーツと装甲が装着される。
後藤が変身した姿は腕部や脚部、胴体、背部に埋め込まれた球体パーツ。アンダーアーマーは黒。それを上から覆う緑と銀の装甲。
頭部はベルトの球体と同じデザインをしており、その形に沿うようにU字型の黒のカメラアイ。
伊達が変身した姿は後藤とほぼ同じだが、手足には赤いラインが入っており胸部の球体を赤いラインが囲むという細かな違いがある。
「しゃあ。行こうか後藤ちゃん!」
「腕は鈍ってないでしょうね? 伊達さん?」
後藤が変身した姿の名は仮面ライダーバース。そして、伊達が変身したのはその原型である仮面ライダーバース・プロトタイプ。
嘗ての相棒が再びタッグを組む。