仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
新たなアナザーライダーを追加しました。
「ここは……?」
「どうなっている?」
先程まで廃工場に居た筈のアクセルとイクサは全く別の場所にいつの間にか移動させられていたことに驚く。
そこは数々のビルが並び立つビル群。アクセルとイクサはその一棟の屋上に立っている。しかも周囲は夜であり、空には大きな満月が出ている。時間帯としてもおかしい上にまだ満月の月齢ではない。
見渡す限りビルなどの建造物しか見えない。アクセルとイクサがいるビルは中程度の高さであり、周囲には見上げる高さの高層ビルが幾つもある。
屋上の縁に立ち下を見下ろす。下には真っ暗な闇が広がっているだけで地面が見えない。それとは対照的にビル群は輝きを発しており、無数のガラス窓から光が漏れ出ている。
「おかしい。異常だ」
「……どうやら普通の空間とは違うようだ」
何かしらの方法で異空間に連れて来られたことを薄々察する。そうなって来ると次なる問題はどうやって脱出するかである。
アクセルたちの居るビルの扉を試しに開けようとするが、扉は開かない。試しにアクセルがエンジンブレードで扉を斬ってみる。扉に斜めの傷が入るだけであった。どうやら扉に見えたものは張りぼてであり、壁が扉に見えるように装飾とドアノブを付けられただけであった。
そうなると周りのビル群もまた見せかけのものという可能性が出て来る。
いつまでも同じ場所に留まっても埒が明かないと感じ、別の場所へ移動しようと二人が考え始めた時、ビルとビルの間を何かが通過する。
「──見たか?」
「ああ。ハッキリとは見えなかったが……何かがいる」
アクセルはエンジンブレードを、イクサもイクサカリバーをガンモードにして周囲を警戒する。
視界の端でまた何かが動いたのが見えた。さっきよりも見えており、アクセルとイクサは白い残像を確認した。しかし、それよりも気になったのは──
「……でかいな」
「3メートルはある……」
イクサたちが見たのは白い翼のようなものであったが、離れていても大きさが分かるぐらいであった。
翼の主はビル群の後ろ巧みに飛び回りつつ確実にイクサたちとの距離を詰めていく。イクサとアクセルも動きを捉えようとしているが、相手が中々のスピードなので捉えきれない。
やがて、気配が止まる。あれだけ動き回っていた相手が急に慎重になった。
「……来るぞ」
「言われなくとも分かっている」
イクサとアクセルには何故相手が慎重になったのかが分かっていた。それは自分たちが敵の間合いに入っているからだ。飛び回っていたのはあくまで牽制と攪乱。それが終わり攻撃の時に移り、敵は攻撃のタイミングを図っている。
イクサとアクセルは背中合わせの状態になる。互いの視界を補うことで相手の奇襲に備える。合図も無くこの状態になったが、どちらも無意識に行ったものであり、戦闘経験が豊富な故に自然と最適な行動をとっていた。
周囲360度。不審な動きを見つければいつでも対処出来る。
その時、二人に差す影。空には爛々とした満月が輝いているというのに。
『上だ!』
イクサとアクセルは同時に声を上げ、弾かれるように離れる。直後、満月の輝きをその巨体で遮る飛翔体がビル屋上に落下してきた。
二人が立っていた場所に急降下し、屋上どころかビル全体を揺さぶる程の衝撃を起こす。
相手の奇襲を避けた二人はようやく敵の全体図を見ることが出来た。
それはまるで蝙蝠の骨格標本であった。皮膚と肉は削ぎ落され、白い骨だけが露出している。普通なら飛ぶことも叶わないが、白骨の蝙蝠の体には蔦のようなものが絡み付いており、そこから発する力によるものなのか骨の翼には炎のように揺らぐ赤色のエネルギーが皮膜代わりに張られている。
眼球の無い目は赤い光を放っており、それがイクサとアクセルを見ていた。蝙蝠の異形に対してイクサたちも睨み返していると思いきや、二人の視線はやや下に向けられている。
注目しているのは白骨蝙蝠の下半身。足のあるべき場所から生える鎖の塊。
隙間なく鎖で雁字搦めにしているので何を巻いているのか分からないが、形からして人型、しかも人の上半身に近い。この人型もまた白骨蝙蝠と同じくらい巨大であり、頭部と思わしき部分からは一対の捻じれた角のようなものが飛び出し唯一それが露出している部分である。
何かに逆さにぶら下がるイメージがある蝙蝠だが、この白骨蝙蝠はそのイメージに抗うようにややこしく聞こえるかもしれないが下半身に逆さになった人間の上半身をぶら下げている姿をしていた。
白骨蝙蝠と人型の繋ぎ目辺りに『ARC』と『2008』と刻印されており、それがこの白骨蝙蝠の名がアナザーアークと示す。
「またこの手の怪物か!」
「本当に悪趣味な……!」
アナザーライダーの造形を嫌悪しながらイクサはイクサカリバーから弾丸を発射し、アクセルもエンジンブレードからジェットの衝撃波を飛ばす。
アナザーアークは翼を羽ばたかせて浮き上がり、突き刺さっていた人型の下半身を抜く。そして、体を揺さぶることで人型の下半身を振り回した。
鎖で全身拘束されたそれに弾丸と衝撃波が命中しても鎖に罅一つ入らず、あっさりと二人の攻撃を弾いてしまう。
アナザーアークはそのまま飛び上がり、再び二人の頭上へ移動する。そして、その翼を振るうと翼から火球のような光弾が放たれる。
頭上から降り注いで来る光弾を回避または得物で防ぐイクサたち。ただ数が多いので打ち洩らしもあり、それらが足元に命中すると爆炎を上げ、強い衝撃と光を生じさせた。
周囲で幾つもの爆炎が上がるも直撃はしてない。しかし、それに気を取られてしまったせいで二人の視線は少しの間アナザーアークから離れてしまう。
攻撃が止み、二人が頭上を見上げるとアナザーアークが居らず、見失ってしまった。
「いない……」
「また何処からか仕掛けて──」
次の瞬間、ビル全体が大きく震える。
「何っ!?」
「この揺れは……!?」
二人が大きくバランスを崩してしまう程の揺れ。何が起こっているのか把握する前にまた大きな揺れが起こり、今度こそ立っていられなくなる。
もしやと思い二人はビルの縁から下を見下ろす。見失っていたアナザーアークが高速でビル目掛けて突進してくるとビルの目の前で急ターンし、人型の下半身をビル側面に叩きつける様子を捉えた。
三度起きる揺れ。しかもイクサとアクセルが目撃したのはそれだけではない。先程の一撃でビル側面に大きな亀裂が生じており、それが端から端まで音を立てて伸びているのだ。
「倒れるぞ!」
「くっ! 他のビルまで遠い!」
イクサはビルに飛び移ることも考えたが、不運にも──或いは意図してやられたのかもしれないが──イクサとアクセルが立っているビルはビル群よりもやや孤立していた。イクサの性能を良く知るからこそ距離が足りないのが分かってしまう。
「──跳ぶぞ」
「馬鹿な!? あの距離が見えないのか!?」
「俺に質問をするな」
この期に及んでもそう言い捨てるアクセルにイサクは自身の血管が切れかける音を聞いた。だが、すぐに別の衝撃によりそれも忘却してしまう。
アクセルは付けていたアクセルドライバーを外し、両手で持ちながら前に突き出す。
「はっ!」
その場で跳躍し、空中で後方一回転をする。その間にアクセルの背部にあったタイヤが起き上がり、向きを変えながら前方に展開。アクセルの両足部分に付けられていた分割されたタイヤはアクセルが両足を揃えると一つに戻る。
アクセルが地面に着地した時、前輪と後輪が備わったバイクフォームになっていた。
「あの蝙蝠と同じ位面妖な……」
「あれと一緒にするな……!」
アナザーアークと似たような存在と評価されたことにアクセルも腹を立て、足裏からその怒りが炎となって噴き出す。
その間にもビルの揺れは激しくなり、とうとうイクサたちの足元が傾き始める。
「ちっ。兎に角乗れ!」
「……気乗りはしないが」
アクセルの背中に渋々跨るイクサ。アクセルの首元辺りには掴む為のハンドルもある。イクサがそのハンドルを掴むと同時にアクセルは有無を言わさずに急発進。その加速力はイクサですら振り落とされそうになる程であり、イサクが乗る専用バイクよりも速い。
「しっかり掴まっていろ!」
傾く屋上を疾走し端まで辿り着くとそのまま加速の勢いのまま大ジャンプ。イクサを乗せたアクセルが空中を真紅の流星のように駆け抜ける。
別のビルまで相当な距離があったのだが、アクセルは容易くそれを跳び越えて別のビルの屋上に着地。そのまま車体を横向きにし急停止を掛ける。
二人が見ている前でさっきまで居たビルが音を立てて倒れていく。間一髪のタイミングであった。
「速度はかなりのものだが乗り心地が悪い。60点というところか」
「何様だお前は……」
上から目線であまり高いとは言えない評価点を出すイクサにアクセルは彼を振り落とそうかと本気で考える。
しかしそんなことをしている余裕などすぐになくなる。倒壊したビルの向こう側から現れるアナザーアークが二人を見つけてしまったからだ。
二人の立っているビルもいずれは倒される。いつまで一か所に留まっている訳にはいかない。
「──照井竜。君はひたすら走ることに専念しなさい」
「お前は何をする」
「俺は──」
イクサが口部に触れる。口部が取り外れたかと思えば、それは折り畳み式の携帯電話であった。取り外されたイクサの口部はシャッター状の金色の装甲が露出する。
「奴を迎え撃つ」
折り畳み式携帯電話──イクサライザーを開き、1、9、3の順でボタンを押す。
『ラ・イ・ジ・ン・グ』
という電子音声が鳴った。
◇
草加のサイドバッシャーに乗りツクヨミが連れて来られたのは廃工場。廃れてかなりの年数が経っており至る所が錆び塗れである。
「ここに明光院君や常磐君が?」
「恐らくは」
ツクヨミはヘルメットを外し、サイドバッシャーから降りる。
「草加さん、ありがとうございます」
「……別に礼を言われるようなことはしていない」
連れて来てくれたことに礼を言うが、草加はそれを素直には受け取らない。愛想の無い態度だがツクヨミはそれを謙遜と解釈した。
ツクヨミは急いで景都たちを探そうとする。廃工場の敷地はそれなりに広いが手当たり次第に探せば見つけられる。
ツクヨミが行こうとすると草加もサイドバッシャーから降り、彼女の後ろに付いていく。
「あの……付いて来てきてくれるんですか?」
「君には俺がこんな場所で放っておくような薄情な男に見えるのかなぁ?」
「い、いえ! ありがとうございます!」
草加という人物の性格がいまいち把握し切れていないツクヨミだが、この場に於いては協力してくれることは有り難い。カッシーンやアナザーライダーと遭遇してしまったらツクヨミ一人ではどうにもならない。
心強い護衛ができ、いざ探索に向かおうとした矢先──
「離れろっ!」
「きゃあ!」
声を荒げた草加に突然突き飛ばされてしまう。
何事かと思いツクヨミは草加を見る。草加は謎の光に包まれ、ツクヨミの目の前から消えてしまった。
「噓でしょ……?」
敵陣の中で突如一人残されてしまったツクヨミは、呆然とすることしか出来なかった。
◇
光が収まった時、草加は廃工場とは全く別の場所に移動していたことに驚く。
そこは薄暗い森。日光をほぼ遮る程に木々が生い茂り、そのせいか薄い霧が立ち込めている。また草加の知識には無い不気味な植物があちこちに生えていた。
「何だここは……」
草加は周囲を警戒しつつその手にスライド式携帯電話を握る。そして、腹部には既にベルトを装着していた。転移させられる前に事前に装着していたのが功を奏した。
草加は周りを見てツクヨミが居ないことに一先ず安堵する。転移には巻き込まれていないらしい。同時に舌打ちもした。敵地にツクヨミを置き去りにしてしまったことへの苛立ちから出てしまう。
どうにかして森から脱出しようとし何らかの行動を起こそうとした時、視界の端に光るものを捉え、草加は咄嗟に体を低くする。
その瞬間、頭上を何かが高速で通り過ぎ、射線上にあった木の幹を貫通して森の奥へと消えていく。
何者かが草加を狙撃した。
「誰だ!?」
草加は問いても答えは返って来ない。代わりに草木を踏み締める音がする。狙撃手がこちらへ向かって来ている。
草加はスライド式携帯電話──カイザフォンを開いて『913』と番号を入力。
『Standing by』
待機状態となったカイザフォンを腹部のベルト──カイザドライバーのスロットに挿し込む。
「変身!」
『Complete』
草加の体をカイザドライバーから伸びる黄色の光が覆うと彼を仮面ライダーカイザへと変身させる。そして、カイザはすぐさまカイザドライバーにセットされてあったX字型の複合武器──カイザブレイガンのスロットにカイザフォンから抜いた起動キーであるミッションメモリーを挿す。
『Ready』
カイザブレイガンから黄色に発光する刀身が伸び、カイザはそれを逆手に握りながら構える。
戦闘準備が整ったカイザの前に足音の主が現れるが、カイザはその姿に驚愕した。
「何だ、これは……」
現れたのは文字の集合体。そうとしか言えない怪人であった。全身が数多の文字によって構成されておりそれが繋ぎ合い、重なり合い、並び合うことで人型を形成している。
全身を構成する文字は様々であり、『アーマードライダー』『デューク』『天才』『インクレディブル』『戦極』『凌馬』『火龍果』『檸檬』『レモン』『れもん』『ファイトパワー』『ゲネシス』と漢字、カタカナ、ひらがな、数字問わないが何かしらの共通性を持つ文字によって構築されていた。
今まで見たことがないタイプの敵に流石のカイザも動揺する。文字の怪人は手と思われる部位で武器を握る。創生弓と文字をその見た目通り弓のようにして構える文字の怪人。引き伸ばされた矢という文字に赤い輝きが灯る。
矢を射られる瞬間、カイザは見た。文字の怪人の体の中で他とは違い赤い光で縁取られた文字を。
その文字は『DUKE―DRAGON ENERGY ARMS』、『2014』。
文字という