仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~   作:K/K

27 / 48
アナザーブラッド2018 その2

「そんなに邪険にしないでくれるかぁ? 敵って言っても俺じゃない俺のことだろ? 俺たちは仲良くやろうじゃないか、兄弟?」

「だから兄弟呼びは止めろっ! エボルトはエボルトだろうが! このエボルト野郎!」

「どういう意味だ、それ?」

 

 クローズマグマの変な返しに首を傾げるエボルX。声は渋いくせに態度は子供のようであった。

 

「ああ、くそっ! 何でこうなっちまったんだ……!」

 

 クローズマグマは後悔し、己の過ちを反省する。全ては彼の浅慮で短慮な行動が原因であった。

 クローズマグマがしでかした失敗。それが何なのか。それを知るには少し前に時間を遡る。

 

 

 

 

 合体し巨大なドラゴンとなったアナザーブラッドをグレートクローズは見上げていた。てっきりまた四対一で戦うことになると思っていたのだが、どうやら今の姿が本当の姿の様子。

 自分の何倍もある体格だが、グレートクローズは臆せずにファイティングポーズをとる。

 

「でかけりゃ良いってもんじゃねぇぞ!」

 

 グレートクローズは吼え、蒼炎を拳に宿らせてアナザーブラッドに殴り掛かる。

 赤い液体の体を持つアナザーブラッドにグレートクローズの拳が命中──したかに見えたが、当たる直前にその部位だけ大きく凹んだ。

 

「へっ?」

 

 当たったと思ったら全く手応えがないことにグレートクローズの脳は一瞬混乱する。すると、凹んでいた部分が急に戻り、グレートクローズの拳を体内に閉じ込めてしまう。

 

「ぬ、抜けねぇ!」

 

 蒼炎はアナザーブラッドの体液により消火され、再び灯すことも出来ない。目一杯力を込めて腕を引っ張るが抜ける様子はない。その前に肩が外れそうになる。

 

「この! 放せっ!」

 

 足の力も使ってアナザーブラッドから腕を抜こうとし、アナザーブラッドの体に足を掛けようとする。

 そんなことをすれば当然その足もアナザーブラッドの体に沈み込んでしまう。

 

「……しまったぁぁぁ!」

 

 やってしまった後に自分のうっかりに気付いてしまうグレートクローズ。ここに彼の相棒が居たら呆れながら『馬鹿!』と罵った後に手を貸してくれるだろうが、残念ながらその相棒は不在である。

 そのままズブズブとグレートクローズを体の中に沈め込んでいくアナザーブラッド。片腕、片足が使えない状態では抵抗しても殆ど意味がない。

 このまま引きずり込まれ、体内に閉じ込められたら間違いなく終わりである。

 

(どうする!? どうする!?)

 

 聡明とは言えない頭を働かせて脱出する方法を考える。

 ビートクローザーを使う──液体相手に斬撃は効果がない。

 ツインブレイカーを使う──クローズチャージに再変身する余裕はない。

 どんどん潰されていく選択肢。それでも考えようとするグレートクローズ。その時──

 

「そうだ!」

 

 天啓がグレートクローズに舞い降りた。

 

「これだ!」

 

 取り出したのは無骨な見た目をした橙色のブラストナックル。クローズマグマナックルという名の打撃武器のグリップを握り締め、打開策を見つけたグレートクローズ──だったのだが。

 

「あっ! やべぇ! ボトルが入れられねぇ!」

 

 クローズマグマナックル中央にはフルボトルを入れる為のスロットがあるのだが、片手が封じられた状態ではフルボトルを装填出来ない。

 

「どうするんだ! これ!」

 

 意気揚々と出したのは良いが肝心なところがすっぽりと抜けていたせいでピンチが続くグレートクローズ。

 

「考えろ! 考えろ俺!」

 

 どうにかしてクローズマグマナックルを持っている手を空けなければならない。それにはどうすればいいのか。

 その時、再びグレートクローズは閃く。

 

「そうか! こうすりゃいいんだ!」

 

 閃きと同時にグレートクローズはクローズマグマナックルを躊躇いなく宙へ放り上げる。これによりグレートクローズの片手は空いた。

 

「この間に!」

 

 黒曜石から削り出したかのようなフルボトルを勢い良く振る。ボトル部分にドラゴンの姿が刻まれたフルボトル──ドラゴンマグマフルボトルは振られることで中身の成分が活性化する。

 

「おっしゃぁ!」

 

 落下してきたクローズマグマナックル。丁度良い角度でスロット部分が下を向いていたのでグレートクローズは、ドラゴンマグマフルボトルを掲げた。

 狙い澄ましたようにスロット部分にドラゴンマグマフルボトルが挿さる。

 

『ボトルバーン!』

 

 フルボトルがきちんとセットされたことを告げる荒々しい声。

 

「よぉし!」

 

 思い描いた通りに事が進み、気分が高揚する。

 後はキャッチするだけ。マグマフルボトルが挿された衝撃でクローズマグマナックルが一回転し、これまた丁度良い角度になる。

 意気揚々と手を伸ばし、掴もうとして──指がクローズマグマナックルのグリップに当たり、取り損ねてしまった。

 

「あぁぁぁぁ!」

 

 この世の終わりのような絶叫を上げるグレートクローズ。もしも地面に落ちてしまったら片腕片足をアナザーブラッドに固定されているせいで拾い上げることも出来ない。

 無情にもクローズマグマナックルは地面に落ちる、かと思われた次の瞬間にグレートクローズは反射神経をフル稼働させて地面とクローズマグマナックルとの隙間に爪先を挟み、接触と同時にクローズマグマナックルを爪先で蹴り上げた。

 落下していたクローズマグマナックルが今度は打ち上げられる。だが、二度目は失敗することなくグリップを掴む。

 

『ボルケニックナックル!』

 

 蹴り上げるついでにクローズマグマナックル中央のボタンを押し込んでいたのでエネルギーの生成と充填が高速で行われ、そこにドラゴンマグマフルボトルの成分が加わる。

 

『アチャー!』

 

 アナザーブラッドにクローズマグマナックルを打ち込んだ瞬間、噴火を彷彿とさせる爆発が起こる。

 アナザーブラッドの体の爆発の衝撃とそれと共に発生した高熱により一部が完全に蒸発。グレートクローズも拘束を抜け、ボルケニックナックルの衝撃で吹き飛ばされることで脱出。

 アナザーブラッドから数十メートルも吹き飛ばされた自分の体に着いた火を慌てて叩き消す。

 

「あちちちちっ!」

 

 至近距離で使ったせいで火や爆発をもろに受けてしまった。結果として脱け出すことが出来たが、失敗していたら自爆で終わっていた所である。

 ただ、痛い思いをした甲斐はあった。アナザーブラッドには熱が有効である。そうなればグレートクローズが取るべき手段は一つしかない。

 ビルドドライバーからグレートクローズドラゴンを抜き、代わりに先程使用したクローズマグマナックルのグリップを上げ、空いたスロットに装填する。クローズマグマナックルは武器だけでなく変身アイテムとしての面も持っている。

 

『クローズマグマ!』

 

 ビルドドライバーに装填されると打撃面が左右に開き、ドラゴンマグマフルボトルが露出する。

 ドラゴンマグマフルボトルの成分が活性化し、黒曜石に似たボトル内部に溶岩のような橙色の光が灯る。

 ビルドドライバーのハンドルを回すとクローズマグマの背後にクローズマグマナックルに似た坩堝──マグマライドビルダーが出現。

 

『Are You Ready?』

「変身!」

 

 グレートクローズの掛け声でマグマライドビルダーからドラゴンマグマフルボトルの成分を変換させたヴァリアブルマグマがぶちまけられ、グレートクローズはそれを頭から被る。

 ヴァリアブルマグマは一瞬で冷え固まり、黒曜石の黒い固体に変化。それに覆われたグレートクローズをマグマライドビルダーが後ろから叩き割る。

 

『極熱筋肉! クローズマグマ!』

 

 ヴァリアブルマグマの熱を残したようなオレンジのスーツ。頭部、胸部、両肩、両腕、両脚にある黒いドラゴンの意匠。燃えるように輝く橙の龍の双眼。その背中には炎のような真紅の翼。

 

『アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!』

 

 周囲の温度が上昇する程の熱量。グレートクローズからクローズマグマへの再変身。

 

「これなら──負ける気がしねぇ!」

 

 熱と能力が跳ね上がると共にクローズマグマのテンションも高くなり、戦意の昂ぶりが言葉となって飛び出す。

 翼から炎が噴き出し、クローズマグマは飛翔。空中を飛び、アナザーブラッドの中で数少ない物体である仮面部分を殴る。

 

「おらぁ!」

 

 拳が接触した瞬間、爆発が起こりクローズマグマの倍以上あるアナザーブラッドの巨体が殴り飛ばされる。

 アナザーブラッドの四肢が地面を削りながら大きく後退していく中、クローズマグマは追撃する為にアナザーブラッドを追う。

 すると、アナザーブラッドの仮面が二つに割れドラゴンとコブラの顔に分かれる。二本首になるとコブラの面が口を開き、そこから毒々しい液体を吐き出す。

 見るからに毒と分かるそれを空中で回避するクローズマグマ。だが、クローズマグマが回避した先にはドラゴンの面が待ち構えていた。

 

「やべぇ!」

 

 咄嗟に両腕を交差させるクローズマグマ。ドラゴンの面から蒼炎が吐かれ、クローズマグマを呑み込む。

 蒼い炎に包まれたクローズマグマは空中から落下し、地面に落ちた。転げ回って蒼炎を消そうとするが、蒼炎はクローズマグマに纏わりついて中々消えない。

 

「このっ!」

 

 クローズマグマは全身を爆発させ、蒼炎を吹き飛ばす。

 安心したのも束の間、クローズマグマに差す影。クローズマグマが見上げると前脚を振り上げたアナザーブラッド。

 

「また吹っ飛ばしてやる!」

 

 アナザーブラッドの体が高熱に弱いことを知っているクローズマグマは、燃える拳を構えていつでも迎撃出来るようにする。

 アナザーブラッドが前脚を振り下ろす。その最中、液体である前脚が変質し金属の光を放つ物体へと変化した。

 

「なっ!?」

 

 それがアナザーブラッド・ゼブラの蹄だと気付いたクローズマグマは、迎撃を中断して蹄を受け止める。

 

「ぐおおおっ!」

 

 両腕で蹄を受けたクローズマグマは呻く。蹄の一撃は重く、クローズマグマの両足が地面に沈む。もし、拳で迎え撃ったとしても熱が通る前に踏み潰されていた。

 

「お、重い……!」

 

 歯を食い縛って重さに耐える。押し返そうにもアナザーブラッドの方は力も体重も上なので簡単には出来ない。

 重さで膝が笑い始める。このままだと潰されるのは時間の問題であった。

 

「このまま、やられて、たまるかよぉぉぉぉ!」

 

 持ち前の根性と不屈の精神を発揮させ、折れかけていた膝を伸ばす。アナザーブラッドの巨体が僅かに持ち上がった間にクローズマグマは片腕で蹄を耐えつつもう片方の手でハンドルを回す。

 

「うおらぁぁぁぁぁ!」

 

 叫び自体に意味はない。ただこうすると気合が入る。気合が入ると持ち堪えられる時間が僅かに伸びる──要は思い込みである。

 

『Ready Go!』

 

 活性化した成分によりクローズマグマの全身から紅炎が噴き上げる。

 

『ボルケニックフィニッシュ!』

 

 ハンドルを回していた手を拳に変え、蹄に打ち込む。接触と同時に爆炎が上がり、アナザーブラッドの蹄が微かに浮き上がる。

 

「おらおらおらおらおらぁぁぁぁぁ!」

『アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!』

 

 クローズマグマの拳は一発では終わらない。アナザーブラッドの体が浮き上がった間に左右の拳が連続して蹄に叩き込まれる。

 最初は耐えていた蹄も熱と拳打の威力に変形させられていき、最後には押し返されてしまいアナザーブラッドの巨体がひっくり返る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……どうだ!」

 

 息を切らしながらも威勢の良い態度を見せるクローズマグマ。しかし、アナザーブラッドに目立ったダメージはない。一方でクローズマグマの方は今の必殺技でかなり体力を消費させられた。

 

「くそっ! 全然応えてねぇな……あっ」

 

 クローズマグマは思い出す。ここに来る前に海東から手渡された物があったことに。

 

『もしもの時は使いたまえ。君を手助けしてくれる筈さ……多分』

 

 最後にゴニョニョと小声で何か言っていた気がするが、それを思い出す前にクローズマグマは手渡された物を取り出す。

 赤紫色と金の機構が施されたフルボトル。クローズマグマが使用するフルボトルよりも数倍大きい。しかし、クローズマグマはこれと同型のフルボトルを知っているので特に驚くことはなかった。

 

「……普通に使えばいいのか?」

 

 取り敢えずフルボトルのキャップ部分を回してみる。その瞬間、フルボトルから突如として赤い液体のようなものが噴き出した。

 

「うおっ!? 何だっ!?」

 

 フルボトルから飛び出した赤い液体は人型のような形になると、その腹部に浮かび上がるドライバー。

 

「それは!?」

 

 ビルドドライバーと同型であるが配色が異なるドライバー。クローズマグマは驚く。クローズマグマはそのドライバーを知っている。

 

『エボルドライバー!』

 

 フルボトルがクローズマグマの手から離れ、勝手に起動する。

 

『ネクストフェーズ!』

 

 フルボトルはそのままドライバーのスロットに挿し込まれた。

 

『エボルX!』

 

 ドライバーのハンドルが独りでに回る。フルボトルのボトル部分が色を変えながら激しい点滅を繰り返す。

 

『Are You Ready?』

「へ、ん、し、ん」

 

 濁った声だが確かに赤い液体から人語が発せられ、エボルドライバーから三つのリングが飛び出し、赤い液体の上下を囲む。

 

『蛟竜毒蛇のコブラヤロー!』

 

 縦に並ぶ三つのリングが光の筒となり、星座を思わせる光が浮かばせながら高速で回る。同時に周囲には正方体のブロックが無数に展開される。

 

『エボルX!』

 

 ブロックが集まり光の筒ごと囲い、棺桶のような長方体まるとXのマークが輝く。Xのマークが一際強く輝くと長方体は異次元の穴に吸い込まれて消え、一瞬の沈黙の後に再び異次元の穴が開き、中から変身した姿──仮面ライダーエボルXが現れる。

 

『フゥーコエーイ! 超コエーイ!』

 

 星座早見表のような光が浮かび上がった後、エボルXはクローズマグマの前に佇む。

 クローズマグマは絶句した。嘗ての宿敵でありクローズマグマから様々なものを奪った怨敵が現れたからだ。

 刹那の後、アナザーブラッドに向ける時以上の敵意と怒りが燃え上がる。

 

「エボルトォォォォ!」

 

 その名を叫ぶ。しかし、当の本人は名を呼ばれても不思議そうに首を傾げる。

 

「お前……俺のことを知っているのか?」

「ッ! ふざけてんのか!?」

 

 思いもよらない返しにクローズマグマの血管は切れそうになる。

 

「確かに俺はエボルト……という名前らしい」

「はぁ!?」

「実感が無いんだよなぁ。周りの奴らが呼んでるだけで」

「さっきから何言ってやがる……!?」

「ところで……お前は誰なんだ?」

 

 話が嚙み合わなかった所に予想外の質問をされ、クローズマグマは啞然としてしまう。

 

「お、俺のこと覚えていないのかよ!?」

「そもそも記憶が無いんだよ、俺。そのエボルト? って奴の記憶を完全に引き継げなかった失敗作のクローンらしい」

 

 本来ならば受け継ぐ筈のエボルトの記憶と戦闘技術。しかし、このクローンはそれを上手く引き継ぐことが出来ず、変身能力のみ授かった。クローンエボルトを創ったその組織は処分に困り、取り敢えずエボルXフルボトルの中にクローンエボルトを封印。その内処分か実験体にするつもりであったが、そうなる前に海東により盗まれてしまった。

 

「ク、クローン? って何だ?」

「簡単に言えば本物と同じ遺伝子を持った他人だな」

 

 クローズマグマは混乱してきた。同じ姿形だというのに全くの別人という事実に頭の中で処理し切れなくなる。

 

「うーん……」

 

 一方でエボルXの方は興味深そうにクローズマグマを見ている。

 

「何かお前を見ていると他人のような気がしないな……」

 

 エボルXはクローズマグマに既視感と親近感のようなものを覚えていた。

 その直感は正しかった。クローズマグマはとある事情でエボルトの遺伝子をその身に宿していた過去がある。

 

「俺のことを知っているみたいだし、もしかして俺の……パパ?」

「ぶっ飛ばすぞ! てめぇ!」

 

 鳥肌が立つ台詞にクローズマグマは激昂する。

 

「なら俺の兄弟か? おお、そうだ! 俺には兄弟がいたような気がする!」

「だから!」

「おい、危ないぞ兄弟」

 

 

 

 

 

 そして、時間は冒頭へ戻る。

 兄弟、兄弟と無邪気に呼び掛けて来るエボルXにクローズマグマは調子が狂いっ放しであり、刷り込みされた雛のようにずっと付いてくるのでストレスが常時溜まり続ける。

 正直、クローズマグマはエボルXが記憶が無いと言っているのを疑っている。人を騙し、手の上で踊らせて破滅させるのを楽しむ人外の倫理観を持っている侵略宇宙人の言うことを素直に信じる気にはなれない。

 こっちが油断したところを、ということがあってもおかしくない。

 

「また来るぞー、兄弟」

「だからうるせぇ!」

 

 クローズマグマはドライバーからクローズマグマナックルを抜き、アナザーブラッドに向けて拳を突き出す。

 

『ボルケニックナックル! アチャー!』

 

 クローズマグマナックルから炎のドラゴンが八匹放たれ、アナザーブラッドへ突っ込んでいく。アナザーブラッドは空へ飛び上がり、炎のドラゴンから逃げる。

 

「それ、かっこいいなぁ」

「あん?」

 

 クローズマグマナックルに興味を持つエボルX。

 

「俺も欲しー」

「お前も武器、持っているだろ!」

「武器ぃ? どうやって出すんだ?」

「知るか! 念じてみりゃいいだろ!」

「念じる……念じる……」

 

 すると、エボルXの左右にブラックホールのような小さな穴が開き、そこから短剣と短銃が飛び出してきた。

 

「おおっ。本当に出た」

 

 赤、緑、黄のパイプがグリップに付き、側面にバルブが設置された短剣──スチームブレードと、スチームブレードと同色のパイプが付いた銃身がほぼ無い短銃──トランスチームガン。

 

「……どうやって使うんだ兄弟?」

「それも覚えていないのかよ!」

 

 自分たちを散々苦しめて来た武器の知識すらないエボルXに呆れるクローズマグマ。エボルXはトランスチームガンをガチャガチャと触り、指がトリガーに接触。銃口から弾が発射され、クローズマグマに当たった。

 

「いてぇ!」

「あ、出た」

 

 不意打ちに悶えるクローズマグマ。エボルXは謝ることもせず、今度はスチームブレードをいじり始める。

 

「てめぇ!」

『アイススチーム!』

「ぶえっ!」

「また出た」

 

 スチームブレードのバルブを回すと冷気が噴射され、文句を言おうとしていたクローズマグマの顔面に浴びせられる。

 

「成程、成程ぉ」

 

 元々高い知能を有しているのですぐに二つの武器の特徴を理解する。そして、スチームブレードのグリップ部分を抜き、刃部分をトランスチームガンの銃口に差し、グリップを逆側に接続。

 

『ライフルモード!』

 

 これにより刃部分は銃身に、グリップはストックになる。

 

「ふーむ……」

 

 二つの武器が合体したトランスチームライフルを暫く眺めると──

 

「飽きた」

 

 ──新鮮味を感じなかったのですぐに興味が無くなる。

 

「それを貸してくれ」

 

 そう言い、クローズマグマの手からクローズマグマナックルを奪う。

 

「おい!」

「これは返す。あとこれを貸してやる」

 

 抜き取ったドラゴンマグマフルボトルと飽きたトランスチームライフルを投げ渡した。

 

「おおっ……」

 

 クローズマグマナックルのグリップを握りながら興味津々のエボルX。その時、ドラゴンたちを振り切ったアナザーブラッドがこちらに向かって飛んで来る。

 アナザーブラッドの翼が変化し、鋏に変わる。突進でこちらを切り裂くつもりらしい。

 エボルXはアナザーブラッドを一瞥した後、手を掲げる。そこに光が集まった後、エボルXの手には一本のボトルがあった。

 コブラの顔が付いたボトル──コブラエボルボトルをクローズマグマナックルのスロットに挿す。

 

『ボトルバーン!』

 

 クローズマグマナックルを持つ右手をだらりと脱力したように垂らす。

 

「しゅっ!」

 

 蛇の威嚇音のような呼気と共にエボルXの右手が消え、同時にアナザーブラッドの顔面が殴り飛ばされる。

 エボルXの右手が獲物を襲う蛇のようにアナザーブラッドを襲う。右手が明らかに通常時よりも伸びており、しかも関節の動きを無視した不規則な軌道を描き、文字通り蛇行している。

 

『ボルケニックナックル! アチャー!』

 

 アナザーブラッドも体を変化させて回避しようとするが、エボルXの右手は後出しでその変化に合わせて軌道を変えて追尾し、命中させる。高熱を帯びたクローズマグマナックルで殴っているので、殴られた箇所は噛み千切られたように消滅し、アナザーブラッドの体はどんどん穴だらけになっていく。

 アナザーブラッドは堪らず反転して退避する。

 

「兄弟! 撃て撃て!」

「命令すんな! あー! くそっ!」

 

 初めて触れるトランスチームライフル。銃身下部にあるスロットにドラゴンマグマフルボトルを挿す。

 

『フルボトル!』

 

 ドラゴンマグマフルボトルの成分がトランスチームライフルへ流れ込むと、クローズマグマはトリガーを引く。

 

「こうか!?」

『スチームアタック!』

 

 銃口から発射される弾はドラゴンの形をしており、距離を取ろうとしているアナザーブラッドを追う。

 アナザーブラッドの近くまで行くとドラゴンの弾を八つに分裂し、アナザーブラッドの体を八方から貫き、アナザーブラッドを空から落とす。

 

「ナイスショット!」

 

 手を叩いてクローズマグマを褒めるエボルX。クローズマグマはそれを複雑そうな眼差しで見る。

 

「俺たち良いコンビになると思わないか兄弟? いや、相棒」

「兄弟も相棒も止めろっ!」

 

 

 




個人的に好きなシチュエーションである武器交換やってみました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。