仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
「んんー?」
体をチーズのように穴だらけにされたアナザーブラッドをエボルXは凝視する。
「……どうしたんだよ?」
あまり会話したくないが、アナザーブラッドはクローズマグマにとっても脅威。エボルXも脅威だが、ひとまずはアナザーブラッドの方を優先する。
「まだまだ平気みたいだ。生命力が強い強い」
致命傷を負っているように見えるが、エボルXの視点からすると大したダメージを負っていないように映る。
「マジかよ……」
「大方、瀕死の振りをして近くまで誘い込んで油断した所を襲う算段なんだろうよ」
エボルXもクローズマグマもかなり良いダメージを与えたかのように見えたが、アナザーブラッドを倒すには足りない様子。
「そういや四体で合体してたな、アイツ……」
「なら単純に考えて四人分の生命力なんだろうさ。戦い甲斐があるってもんだろ? 相棒」
「相棒って言うの止めろっ!」
兄弟から相棒への呼び方の変化。聞いている分だとランクアップしたのかランクダウンしたのか分かりづらいが、より親しみを込めているように感じられたのでエボルXの中ではランクアップなのだろう。
「良いじゃねぇか相棒で。そもそも俺、お前の名前知らないし」
相手をこちらだけ知っているのでクローズマグマは失念していた。エボルXの言うことを信じるのなら万丈という名も知らないことになる。普通に会話してしまっていたので自己紹介をするタイミングを逃していた。
クローズマグマは葛藤する。兄弟も相棒も嫌だが、改めてエボルXに名乗るのも嫌であった。名乗れば今以上に絡んでくる気がしてならない。
苦悩の末、クローズマグマが出した答えは──
「……万丈だ」
──名乗ることにした、苗字だけ。
「バンジョーダか。改めてよろしくな!」
「何人だよ! 万丈! だ! 万丈っ!」
「万丈ね、万丈。カッコイイ名前じゃねぇか」
苗字を褒められ、酷く複雑な気持ちになる。悪くない気分の筈なのだが、言っている相手が相手だけに途端に噓くさく感じてしまう。
声や喋り方はエボルトなのだが、言動に幼さを感じることもあり最初に比べると少し印象も違ってくるが、やはり心許せる相手ではない。
「ん? 立ち上がるな……よし! もう一発だ!」
「おい! いい加減にそれ返せ!」
クローズマグマナックルをまだ持ったままなので返すように言うが、エボルXは聞く耳持たず前方に口の広がったチューブ状の図形を出現させると中に飛び込む。
エボルXの姿はチューブ内に消えると、アナザーブラッドの正面に図形が出現し、そこからエボルXが飛び出す。
図形はエボルXの能力で造り出したワームホールであった。
突然前方にエボルXが現れたことで驚くように二首を持ち上げるアナザーブラッド。それぞれの口から毒液、蒼炎を吐き出してエボルXを攻撃する。
「おっと」
エボルXが指揮者のように指を振るうと前方にワームホールが出現。吐き出された毒液と蒼炎はワームホールの中に吸い込まれる。
入口があれば当然出口もある。アナザーブラッドの真上にもワームホールが現れ、そこから吸い込んだ毒液と蒼炎が出てアナザーブラッドの全身に浴びせられる。
シャワーのように自分の毒と炎を浴びるアナザーブラッド。しかし、特に身悶えすることはせず、体に付いたそれらを鬱陶しそうに払っている。
「ま、自分の毒で死ぬ蛇はいないか」
エボルXからすれば想定内の反応だったので別に驚くこともしない。それよりも興味があるのは、今手に持っているクローズマグマナックルの方である。
エボルXはスロットからコブラエボルボトルを抜く。蛇のような軌跡を描く連続パンチは中々愉快であった。もっと自分の可能性やクローズマグマナックルの力を試したくなる。
「お次はこいつだ」
エボルXの手の中に出現する新たなエボルボトル。黒のボトルにシリンダーのような機構があり、ボトル側面には歯車中央にジグザグしたラインが入ったマークがある。
エボルXはそのエボルボトルをクローズマグマナックルに装填。
『ボトルバーン!』
全身に掛かっていた毒と炎を全て振り落としたアナザーブラッドに静かに歩み寄り、クローズマグマナックルを握った右手を大きく後ろに引くと、エボルXは独り呟く。
「ライダーパンチ」
『ボルケニックナックル! アチャー!』
アナザーブラッドの正面からクローズマグマナックルを打ち込む。一拍置いてアナザーブラッドの液体の体に波紋が広がった後、アナザーブラッドの後ろ半分が吹き飛んだ。
クローズマグマナックルの熱や爆発の力を全て衝撃に変換したエボルXの一撃。衝撃が突き抜けていく過程でアナザーブラッドの体の半分が霧状になるまで吹っ飛んだ。
「ふーはっはっは! こいつは凄い!」
自身の力とクローズマグマナックルの組み合わせ結果にご満悦な様子のエボルX。
「──おいおい。まだ生きているのか?」
拳を引いたエボルXは、まだ動くアナザーブラッドに呆れる。体半分が無くなっても活動出来る生命力は、エボルXにとって予想以上であった。
無くなった部分を再生させながらアナザーブラッドは二つの仮面を揃え、二首を一つに纏めると口から毒々しい色をした炎を吐く。
「おっと」
エボルXは後ろに跳んで炎を回避。炎は地面に付着すると瞬く間に地面を溶かす。
「おお、おっかねぇ」
溶解と融解を同時に起こすアナザーブラッドの毒の炎を目の当たりにしてエボルXはわざとらしく身を震えさせる。
「おい」
エボルXに追いついたクローズマグマ。声を掛けられたエボルXは、クローズマグマの方を見るとクローズマグマは不機嫌そうにエボルXを見ている。
「あんまりはしゃぐな」
「悪いな。新しい力に夢中になっちまった」
クローズマグマナックルを掲げるが、クローズマグマはそれを無視してエボルXを睨む。
「仮面ライダーなら敵をボコボコにしてはしゃぐなって言ってんだよ!」
「はぁ?」
クローズマグマが気に入らないのはエボルXの態度である。力を愉しみ、それを行使して敵を傷付けまた愉しむ。クローズマグマの中にある仮面ライダーとしての在り方に反するエボルXの行動が気に入らなかった。
エボルXからすればクローズマグマの発言は意味不明である。確かに仮面ライダーエボルXという名を与えられたが、エボルX自身は自分が仮面ライダーであるという自覚はない。
「仮面ライダーって……急に何言い出すんだ?」
「戦いを愉しんでいるのが気に入らねぇ!」
今まだ飄々としていたエボルXであったが、クローズマグマの突拍子のない言葉に困惑している。
「仮面ライダーの力ってのは何かを傷付けて愉しむ為のものじゃねぇんだよ!」
クローズマグマからの説教にエボルXは反発する余裕もなく、ただただ戸惑う。人生経験ゼロに等しいエボルXにとって初めて叱られるという体験にどうしていいのか困っている。
クローズマグマがエボルXに怒っている間にアナザーブラッドは再生し終え、咆哮を上げて二人を襲おうとするが──
「うるせぇ!」
『フルボトル!』
──クローズマグマは見向きもせず錠前の意匠があるロックフルボトルをまだ持っていたトランスチームライフルにセットして撃つ。
『スチームアタック!』
金色の光弾が撃ち出され、アナザーブラッドに命中すると光弾は実体を持った鎖となりアナザーブラッドを何重にも縛り付けた挙句、鎖を錠前でロックする。丁寧に口まで鎖で巻かれてしまったので咆哮も上げられない。
アナザーブラッドは液体の体を生かし鎖の拘束から脱け出そうとするも、体が変化せず鎖から抜け出せない。
ロックフルボトルの効果により一時的にアナザーブラッドの能力は封じされた。解除するには時間経過を待つしかない。
「そこで黙ってろ!」
「ひっでぇ扱い……」
雑に縛り上げられたアナザーブラッドにエボルXは同情したような台詞を言う。
「んで? 仮面ライダーの力ってのは何の為にあるんだ? 先輩?」
笑いを含め、皮肉を込めた呼び方でクローズマグマを挑発するような態度をとる。
「決まってんだろ! 愛と平和の為だよっ!」
「……」
クローズマグマの返答に饒舌なエボルXは絶句してしまう。
「……それ、本気で言っているのか?」
「本気だ!」
「マジかよ……」
迷い一つ無い即答にエボルXは天を仰ぐ。人生経験の薄いエボルXであってもその言葉が如何に無謀且つ絵空事なのか理解は出来る。
「はぁ……なら俺もその愛と平和の為に戦う仮面ライダーになれってことか?」
「ああ!」
「はぁ……」
エボルXは深々と溜息を吐く。
「……もう一度聞くが本気で言っているのか? この、俺が、マジで、そんな仮面ライダーになれるのか?」
自分がどういう存在のクローンなのか知っているエボルXは、そのことを強調する。
「幾つもの星を喰い潰して来た凶悪な侵略者で宇宙人がよぉ?」
問うというよりもクローズマグマを試すような言い方をするエボルX。
「……」
クローズマグマは、今度は即答しなかった。答えに詰まった訳ではない。彼には珍しく言葉を選んでいるのだ。
この返答次第で誰かの人生を左右するかもしれない。そう思うと慎重にもなる。
何を言うべきか。そう考えた、思い出すのはこれまでの自分の人生。そして、彼の人生の指針になった戦友の言葉。
「……これはどっかのナルシストな上に自意識過剰な自称天才物理学者のことなんだが」
「あぁ?」
「そいつは『ラブ&ピース』を掲げてた。それがどんなに脆くて弱いものだと知っていてもだ。それを謳いながら戦って、誰かがそれを信じる、信じられるようにする為に。愛と平和の世界を創れることを信じて戦った!」
何度も否定されようが『ラブ&ピース』を胸に戦って来た仮面ライダー。信じ、貫いてきたからこそ最後にはそれに近付くことが出来た。
「何が言いたいんだ?」
「結局、信じなきゃ何も始まんねぇってことだよ! どんなことでも! 無謀なことでも! ──よし! 決めた! 決めたぞ! チクショウ!」
何かを吹っ切ったクローズマグマはエボルXの両肩を掴み、彼を真っ直ぐ見つめながら、今決意したことを告げる。
「俺が! お前を! 信じてやる!」
クローズマグマはエボルXに向けて宣言する。
「愛と平和の仮面ライダーになれるって!」
それが茨の道なのは理解している。だが、誰かが一歩踏み出さなければならない。その最初の一歩を踏み出し、誰かが後に続く道にするのが仮面ライダーだとクローズマグマは思う。
エボルXは暫くの間沈黙し、やがてポツリと呟く。
「万丈……さてはお前……バカだな?」
「んな!? 誰がバカだ!」
「いいや、大バカだ。クローンとはいえ悪の宇宙人なんかにそんなことを言う奴はバカしかありえない」
エボルXの肩が小刻みに揺れ始める。やがて、その揺れは大きくなっていき──
「だが面白いバカだ! この俺が愛と平和の仮面ライダーになれるって!? はーはっはっはっはっはっ!」
エボルXは腹を抱えて爆笑する。生まれて初めての大爆笑であった。
「おい! 笑うな!」
「悪い、悪い……いいぜ」
「あん?」
エボルXは笑うのを止め、頷く。
「お前に信じられてやる。なってやろうじゃないか、仮面ライダーに」
エボルXもまたクローズマグマと約束を交わすように宣言する。
「それに俺を創った奴らが、ラブ&ピースを掲げる仮面ライダーになった俺を知った時の顔を見るのも愉しそうだしな」
「こいつ……」
愉快犯的な部分は変わっていないが、それでも仮面ライダーになるとは言った。ならばクローズマグマはその言葉を宣言通りに信じる。
「──という訳でだ」
「うん?」
『エボルX!』
「うおいっ!?」
いきなりエボルXフルボトルを空いていたビルドドライバーに挿され、クローズマグマは驚きの声を上げる。
「早速手本を見せてくれよぉ。一緒にあいつ倒そうぜぇ?」
「おいおいおい! 勝手に──」
「あんな啖呵切ってたんだ、カッコイイとこ見せてくれるよな? せ・ん・ぱ・い?」
揶揄ってくるエボルX。性格的にやっぱり相性が悪いと今更ながら後悔してしまうが、一度声に出したので無かったことには出来ない。
「ああ、くそっ! 分かったよ! ちゃんと見てろよ!」
「ああ。特等席で見せてもらうさ。大丈夫だ。俺とお前の相性はきっとベストマッチさ──んん? これも何処かで聞いたことがあるな」
ベストマッチという言葉に引っ掛かりを覚えながらエボルXはクローズマグマナックルをクローズマグマに返す。
ミシミシという音が聞こえ、アナザーブラッドを拘束している鎖が千切れ始めている。そろそろロックフルボトルの効果が切れる。
「おおっと。あんまり時間もないな。さて、素早く行こうぜ、万丈」
「やればいいんだろ! やれば! 目ぇかっぽじって見とけ!」
『ボトルバーン!』
再度ドラゴンマグマフルボトルをクローズマグマナックルに装填し、それを振り上げる。
「うおりゃあああああっ!」
地面にクローズマグマナックルを叩き付けると、地面に亀裂が生じ、そこからヴァリアブルマグマが噴射。クローズマグマとエボルXの周囲がヴァリアブルマグマに覆われ、高熱地帯と化す。
灼熱地獄の中でクローズマグマはビルドドライバーのハンドルを回す。
『マグマ』『エックス!』
起動するエボルXフルボトル。それに連動するクローズマグマナックル。
『バーン!』『フェーズ!』
二つのアイテムに備わった音声が自動的に選ばれ、鳴らされる。
『Are You Ready?』
「Go!」
「変身!」
クローズマグマは気迫ある声で、エボルXも意気揚々と告げるその体が青い粒子と化す。
『極熱』『コブラ野郎!』
エボルXフルボトルの活性化に応じて周囲のヴァリアブルマグマも活性。噴火のように火柱が無数に上がる。
青い粒子となったエボルXはクローズマグマの前後に星座早見表に似たエネルギーの円を展開。
円に浮かぶ無数の星々。それらが光の線で繋がっていき、星座のように形を浮かび上がらせていく。
円が前後からクローズマグマを挟む、浮かび上がる星座がクローズマグマを覆う新たな装甲と化す。
『クローズ』『エボル』『マ』『ックス!』
噴き上がるヴァリアブルマグマの火がクローズマグマであった者に吸い込まれていく。火が吸い尽くされた時、眩い光と大きな爆発が起こり冷え固まったヴァリアブルマグマが全て吹き飛ばされた。
『アチャー!』『超』『アチャー!』
ビッグバンを彷彿させる大爆発の後に立つのは新たなる仮面ライダー。
向き合うドラゴンの形をした黒の仮面。その縁は翡翠色で彩られている。
胸部中央には太陽を連想させるマーク。全身の殆どが燃えるような橙色なのだが、実際に橙色の部分からはプロミネンスのような炎が起こっている。
腰回りにも橙色のローブ──ではなく炎そのものを纏っており、今も煌々と燃えている。
「力が漲る……! 魂が燃える……!」
その言葉に応じて体から炎が噴き出す。
「愛と平和を目指す俺は……負ける気がしねぇ!」
『俺たち、だろう? 相棒』
二人で一人の仮面ライダー。万丈とクローンエボルトが生み出した新たなベストマッチ──仮面ライダークローズエボルMAX。
大体予想は出来ていたと思われますがクローズエボルを出しました。本家とは違ってクローズマグマがベースになっている感じです。
あと敵が仮面ライダーブラッドのアナザーなので、それに合わせて既存のアイテムの組み合わせによる変身にしてみました。
変身音声も二つの音声の継ぎ接ぎになっています。