仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
斬月がソニックアローから射った矢はアナザーオーガの黒い鎧に突き刺さった。しかし、それだけ。アナザーオーガは刺さっても何一つ反応をしない。蚊に刺されたという例えがあるが、これはそれ以下であり刺されたことすら認識していない。
(効いていない!?)
ソニックアローの矢に対してここまで無反応なのは初めてである。斬月はそれでも何射か射り、相手の反応を確かめる。
鎧部分が分厚かったせいで届かなかったのかもしれないとなるべく生身の部分を狙う。武器を持っている手の甲、足の先、鎧の隙間などを狙って正確な射撃を繰り出す。
素早い連射により狙った箇所にほぼ同時に光矢が刺さる。しかし、アナザーオーガの反応は無。ただ、手の甲刺さった光矢だけは鬱陶しかったのか反対の指で弾いて抜いてしまった。
(痛みを感じないのか? それとも極端な鈍感なのか?)
ダメージを無視して戦ってくるとなると難敵である。だが、それよりも厄介なのはソニックアローが全く効いていないという結果になりそうなことである。何も通じなければそもそも勝てる見込みが無くなる。
(まだだ!)
まだ試していない箇所が一箇所ある。最も目立つ箇所なので警戒されないように後回しにしていたが、斬月の攻撃が効かないことで斬月を侮り始めたこの瞬間が最大の好機である。
斬月はソニックアローのトリガーを引き、アナザーオーガを警戒させない為に敢えて本命からずらした箇所を狙う。
矢型の発射口に光が集束されていき、トリガーを放す寸前に本来の狙いに戻す。
斬月が狙ったのはアナザーオーガの目。顔の大半を占める赤い単眼。当たれば大きなダメージを与えられるに違いない。
ソニックアローから放たれた光矢は、瞬時に照準を合わせたとは思えない正確さでアナザーオーガの単眼に吸い込まれるように飛んで行き──アナザーオーガは膝を曲げて、地を這うような体勢で簡単に躱してみせた。
「ちぃ!」
思わず舌打ちが出る。斬月ですら直前まで当たったと思う程であったが、アナザーオーガは巨体に似つかわしくない俊敏さと反射神経で光矢の下に潜り込んで避けた。
斬月は知らないが、アナザーオーガは単眼を狙われたのはこれで二回目である。カイザの時も同様に単眼を狙われ、防いでいた。
斬月の戦いに於いて冷静且つ無駄の少ない戦い方は奇しくもカイザと共通する部分があり、アナザーオーガはそこから学んだことを活かして斬月の行動を予測していた。
光矢を回避したアナザーオーガは、右手に持っている先端部分が二叉に分かれた棍棒を肩で担ぎ、避けた体勢のまま左手と両足で獣のように地面を駆け出す。巨体故に斬月との距離は一瞬で縮む。
アナザーオーガが回避したと思ったらすぐに接近されてしまった斬月。相手の素早さに離れる余裕などなかった。
アナザーオーガは担いでいた棍棒を払う。巨体と巨大な棍棒が合わされた間合いなど無いに等しい。
斬月はメロンディフェンダーを構え、アナザーオーガの棍棒が迫ってきたタイミングでメロンディフェンダーを斜めにし、棍棒を受け流してみせた。
斬月の巧みな技術による防御術であったが、当の本人は全身から噴き出す冷や汗で身震いを起こしそうになっていた。
アナザーオーガの先程の一撃は、技術など皆無の文字通りの棒振り。だが、技術を遥かに凌駕する力によって振るわれていた。
斬月は最初棍棒をメロンディフェンダーで受け止めるつもりであった。しかし、棍棒が間近に来た時に察した。
『まともに受けたら上半身が持っていかれる』
すぐさまメロンディフェンダーの角度を変え、棍棒を受け流すようにしたのだが、この判断もまた斬月に新たな苦難を与える。
(手が……!)
タイミングも角度も完璧に思えたが、棍棒の威力を完全に削ぐことは出来なかった。事実、斬月のメロンディフェンダーを掴む手は強く痺れており、棍棒とメロンディフェンダーが接触した際の衝撃が斬月の腕の骨の中に残留している。
一撃目をメロンディフェンダーで受け流されたアナザーオーガ。しかし、特に動揺もなく手首を返して今度は振り下ろしてくる。
横払いとは違って棍棒の重量に重力も加わった振り下ろし。受けどころが悪ければ体の半分は持っていかれる。
「くっ!」
斬月は極限まで集中し、棍棒の動きを見極める。神経が削がれるような重圧を感じながらメロンディフェンダーと棍棒が触れ合う僅かなタイミングでメロンディフェンダーを動かし、棍棒の軌道を変えて斬月の真横に振り下ろさせた。
二度目の攻撃も受け流されたアナザーオーガ。狙いを外された棍棒が地面を叩く。地面は盛大に粉砕され、地雷でも埋まっていたかのように地面の破片が大小飛び散る。
至近距離に立っていた斬月は、それをもろに浴びてしまい全身に散弾のような破片を受けて吹っ飛ばされる。
「ぐっ!?」
その際に斬月の手からメロンディフェンダーが離れる。たった二度攻撃を受けただけで斬月の手は握力を失ってしまい、いとも簡単に手放してしまった。
地面を数度転がった後に斬月は立ち上がり、すぐにソニックアローを構える。アナザーオーガは追撃をせず棍棒を地面に叩き付けた体勢のままその単眼だけを斬月に向けていた。
「強い……!」
一撃でこちらを戦闘不能に追い込めそうな脅威的な怪力。見た目以上の俊敏さ。何よりも厄介なのはこちらの攻撃が通じないということ。どんなに躱しても反撃の芽が無ければ意味がない。
巨体相手の戦闘経験が無い訳ではないが、それでも異常に戦い難い。相性と言うべきか相手との嚙み合わせの悪さを感じさせる。ルールの違う相手と戦っている気分であった。
さり気なくメロンディフェンダーの位置を確認する。距離が遠く、取りに行っている間に攻撃される可能性が高い。メロンディフェンダーの回収は二の次にする。
何か一つでも弱点もしくは有効打を見つけないとやられるのは時間の問題である。
斬月はまだアナザーオーガとの距離がある内に戦極ドライバーへ手を伸ばす。填め込まれてあるメロンエナジーロックシードを抜こうとするが、一瞬抜けなかった。
斬月は自分の掌を見る。アナザーオーガの打撃を二度受けただけで手が痺れて握力を失っていた。
すると、斬月は躊躇うことなく震える掌にソニックアローの刃先を突き立てる。
「くっ!」
痺れる手に無理矢理活を入れる。こうでもしなければまともに使えない。
痺れは痛みに変わるが、少しだけ握力は復活したので再びメロンエナジーロックシードに触れる。今度は外れ、メロンエナジーロックシードをソニックアローのスロットに填める。
『ロックオン!』
メロンエナジーロックシードが生成するエネルギーが、ソニックアローのトリガーを引くことで発射口にチャージされていく。
先程よりも高威力の攻撃が来ることを察したのかアナザーオーガは徐に構えた。
斬月はその状態で更に戦極ドライバーのカッティングブレードを倒す。
『ソイヤッ! メロンスカッシュ!』
メロンロックシードの力を足し、ソニックアローのトリガーを放す。
『メロンエナジー!』
ソニックアローから射られる橙の光の矢。アナザーオーガは片手に持った棍棒で矢を薙ぎ払う。しかし、棍棒が振り抜かれることはなかった。何故ならば矢が途中で抑え付けているからだ。
アナザーオーガにとっても予想外なのか斬月の矢は弾き飛ばされず、アナザーオーガと拮抗する。
「はっ!」
斬月は生まれた僅かな拮抗の間に跳躍する。すると、斬月と光矢の間に緑と橙の輪切りにされたメロンの形をしたエネルギーが交互に並んだ状態で発生する。
「はああああっ!」
斬月はそのエネルギーを通過し、先に射った矢の矢尻目掛けてキックを打ち込んだ。その衝撃にアナザーオーガの足が後退る。
果汁の飛沫のようなエネルギーが飛び散る。斬月は矢に加えてキックの威力で押し切ろうとする。
『オオオオオオオオオオッ!』
アナザーオーガが吼え、片手で持っていた棍棒を両手持ちする。すると、棍棒が先端から柄付近にかけて金色に発光し出した。
「何だとっ!?」
ただ発光しているだけではない。光は強い熱を発するエネルギーであり、先に射ち込んでいた光矢が棍棒の光によって蒸発するように削られていく。
不味い、と危険を感じたが空中にいる斬月に避ける手段はない。光矢が消滅すると同時に斬月は棍棒によって打ち返された。
地面とほぼ平行のまま人か判別出来ない速度で飛び、壁面に叩き付けられる。無人ドームの壁が斬月の形に凹んだ。
「か、はっ……」
そのまま倒れ込みそうになるが、寸での所で斬月は踏み止まる。アナザーオーガを前に寝てしまったら二度と立ち上がれない永眠になってしまう。
「はぁ……はぁ……」
間一髪であった。一撃で戦闘不能になってもおかしくないアナザーオーガの攻撃であったが、紙一重で直撃を免れることは出来た。
今にも倒れそうな斬月の体を支える左のソニックアロー、そして右手に握られる無双セイバー。アナザーオーガに殴り飛ばされる直前に取り出し、ソニックアローと共に棍棒に打ち付けたことで斬月は辛うじてアナザーオーガの攻撃を防御出来ていた。代償として両肩が脱臼するかと思うような衝撃と痛みを経験することとなったが。
アナザーオーガの攻撃はとにかく重い。大人と子供の力の差では済まない。未だに斬月が食い下がれるのは斬月の技量と経験が大きかった。
しかし、その足搔きもアナザーオーガが本気を出せば脆くも崩れる。アナザーオーガはしぶとい斬月に痺れを切らして斬月を本気で潰す気になった。
アナザーオーガは金色に輝く棍棒の先を斬月に向ける。次の瞬間、二叉の戦闘が斬月の目の前にまで迫って来ていた。
「くっ!?」
咄嗟に横に跳び、それを躱す。外れた棍棒の先端が壁に突き刺さる。アナザーオーガと斬月はかなり離れていたのだが、金色に発光する棍棒はその距離を伸びることにより無かったことにする。
棍棒が突き刺さった壁は光が放つ熱により融解、そして蒸発し始めていた。無機物でもこれである。生身に刺さったら一瞬にして灰と化してしまうだろう。
突き刺さっていた棍棒が引き抜かれる。すぐさま伸び、避けた斬月を狙う。斬月は壁伝いに走りながら後方から連続して突きを繰り返しながら迫る棍棒から逃げる。
伸縮自在の武器。これ程厄介な武器もない。アナザーオーガはその場から一歩も動かずに斬月を追い詰めていた。
(このままでは……!)
いずれ追い付かれる。そうなる前に何とかこの状況を打開しなければならないが、残念ながら斬月の手持ちにはそれを打破する為のカードは無かった。
とにかく時間を稼ぎ、低い確率であろうとも
しかし、相手はそんな猶予を与えてはくれなかった。
斬月は視界の端に飛来物が来るのを捉え、思わず足を止める。斬月の目の前を通過し、壁に当たる大きな破片。止まるのが遅れていたら斬月に直撃していた。
「──しまった!」
足を止めてしまった。そう気付いた時には遅い。二叉の先端が斬月を捕らえ、壁に押し込む。
「がはっ!」
胴体を挟まれた状態で壁に押し当てられた。これにより抜け出せなくなる。しかも──
「ぐあああああっ!」
金色の光が捕らえた斬月を炙る。
斬月の装甲が熱を帯びる。いずれ限界に達し、装甲は溶けるかもしれない。それよりも深刻なダメージにより変身解除の方が先かもしれないが。
絶対絶命の危機。しかし、斬月の心に諦めはなかった。
(まだだ……!)
死を予感したのは一度や二度ではない。その都度どんな形であれ乗り越えて来た。突き付けられた死程度では斬月の心は折れない。
斬月は身を捩って抜けようとする。高熱部分に触れることになっても構わず、前後左右に体を揺さぶる。しかし、先端はびくともしない。それどころか抵抗する斬月を見てアナザーオーガは更に壁に押し込もうとする。
斬月に新たな選択が増える。焼き殺されるのが先か、体は上下に分かれるのが先か。
その時、突然ドーム全体が揺れ始めた。大きな地震と思われるが、どういう訳か揺れに対して崩落などは起きない。
強いて言うなら空間そのものが震えているような不可思議な揺れ。
「何だ……?」
異常現象に思わず止まる斬月。アナザーオーガは構うことなく斬月を上下真っ二つしようとするが──
『Exeed Charge』
低い電子音声の後、飛んで来た光弾がアナザーオーガに命中。光弾はそのまま網状に展開しアナザーオーガの動きを拘束する。
突如として訪れた好機を逃さず、斬月はカッティングブレードを三回倒す。
『ソイヤッ! メロンスパーキング!』
メロンロックシードの力を限界まで引き出すと無双セイバーの刃から過剰供給されたエネルギーが飛沫ように散る。そこに既にメロンエナジーロックシードがセットされてあるソニックアローを足す。
『メロンエナジー!』
斬月を捕らえている先端に交差して振られる二つの刃。緑と橙の軌跡が金の棍棒をすり抜ける。
無双セイバーとソニックアローが振り下ろされると、斬月を押さえつけていた先端部分が崩壊し、連鎖するように崩れていく。最終的にアナザーオーガの持つ最初の棍棒の形へと戻る。どうやら棍棒を媒体にエネルギーを放っていただけであり、棍棒自体が伸びていた訳ではないらしい。
拘束から逃れた斬月は残心を取りながらいつでも反応出来る状態にし、周りを確認する。目線を動かした先、そこで見たものに内心動揺する。
先程までドームであった場所がいつの間にか霧深い森と融合した形になっていたのだ。空間と別空間が繋ぎ合わさった歪な光景が出来上がっている。
しかも、斬月はその森に見覚えがある。
「ヘルヘイムの森……!」
嘗て斬月に理由なき悪意というものがどんなものかを嫌という程に教えた忌まわしき森。もう二度と見ることはないと思っていたが、再び斬月の前に現れた。
すると、ヘルヘイムの森に目を奪われている斬月の体に何かが当たった。落ちていくそれを反射的に掴む。それは最初に無くしていたあのロックシードであった。
「使えよ。お前のだろ?」
「草加!?」
少し離れた場所に立つカイザ。かなり疲労しているのか肩で息をしている。
「──感謝する」
「そんなのは後だ──来るぞ!」
ヘルヘイムの森から何かがやって来る。文字の群体が人の形を成したアナザーデュークが空間の境界を超える。
「まさか……凌馬の……!」
面影など皆無に等しいが構成する文字という情報が何の、誰のアナザーライダーなのかを突き付けてくる。
「草加……悪いが交代だ」
「何か因縁でも? ──まあいいさ。同じ事を考えていた」
斬月の意識は既にアナザーデュークへと向けられている。
「随分と……あいつを虚仮にした姿をしているな……!」
思い浮かぶ斬月にとっての嘗ての親友。共に理想を追っていたがいつの間にか道を別ち、裏切られ、敵対し、最後には斬月の手によって引導を渡した相手。
人として非常に優秀な頭脳を持っていたが、人格面は下から数えた方が早いぐらいにエゴイストなマッドサイエンティストであったが、それでも斬月には数少ない友であった。
斬月は戦極ドライバーからゲネシスコアとメロンロックシードを外す。
生身となった貴虎は、カイザから渡されたロックシードを起動させた。
「あいつとの別れを──」
『カチドキ!』
モチーフ不明の緑の多面体フルーツが付けられたロックシードを解錠。戦極ドライバーにセット、施錠する。
『ロックオン! ソイヤッ!』
貴虎はセットされたシン・カチドキロックシードにカッティングブレードを倒す。
貴虎の頭上にクラックが発生し、空間を開いて新たなアームズが出現し、展開したアームズが貴虎に装着される。
斬月の時とは違い数が増した装甲。鋲が打ち込まれた緑の装甲が肩から腕、腰回りにも追加され、胸部も斬月の紋章が描かれた厚みのある装甲になっており、明らかに防御力が増している。
額の前立ては満月の形に変わり、金色に煌く。両肩部には緑の旗が付けられており、旗にも斬月の紋章が描かれていた。
「貴様などに穢させん!」
『カチドキアームズ! いざ出陣! エイ! エイ! オー!』
最強の斬月──斬月・カチドキアームズが今出陣する。
どうしてカイザが合流出来たのかは後々説明します。
最初は他のライダーみたいに海東から盗んだ変身アイテムを貰って
カチドキアームズになる前にプロトドラゴンフルーツエナジーロックシードで変身した斬月ジンバードラゴンフルーツアームズをやろうとしましたが
海東への貴虎の好感度を考えると受け取らなさそうと思って止めました。