仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
引き伸ばされた矢という文字が赤く光りながらカイザに迫る。比喩でも例えでもなく本当に伸ばされた矢という感じが本物の矢のように飛んで来ているのだ。
脅威というよりもシュールな光景に脳が一瞬情報処理するのを止めるが、すぐに我に返ったカイザは、得体の知れない攻撃に触れるのを嫌がって回避を選ぶ。
半身に構えることで文字の矢がカイザの横を通り過ぎていく。そして、木の幹に命中すると貫通してしまった。
数十センチある木の幹を容易く貫く威力。見た目はふざけているように見えるが、威力自体は本物であった。
「ちっ! 本当に何者だ!」
カイザが見てきたアナザー武神鎧武やアナザーセイヴァー、アナザーオーガとも全くタイプが異なるアナザーデューク
『Burst Mode』
腰に装備していたΧ字型複合武器──カイザブレイガンを手にし、手前のコッキングレバーを引く。銃撃形態にすると引き金を引き、カイザブレイガンから黄色の光弾を数発発射する。
光弾が発射されるとアナザーデュークDEAの体が変化。密集していた文字部分が離れて隙間を作ったり、また文字が『ア ー マ ー ド ラ イ ダ ー』『デ ュ ー ク』といったように連なった文字に空白部分が生じる。
カイザの撃った光弾は、それらの隙間を通過していき森の奥へ消えていった。
「何っ!?」
自らの密度を変えることで攻撃をすり抜けるという意表を衝いてくる回避方法にカイザは声を出して驚く。やはり、カイザにとって前例のない敵であった。
しかし、今の銃撃が無駄になったとは思わない。アナザーデュークDEAは文字の部分に触れないようにしていた。文字の矢を飛ばした時もそうだが、もしかしたら文字部分は実体の可能性がある。
銃撃などの点の攻撃は今のように躱される。ならば、とカイザはカイザドライバーにセットされたカイザフォンからミッションメモリーを抜き、グリップ下部にあるスロットに挿し込む。
『Ready』
グリップ下部から伸びる黄色の刃。生成されたエネルギー──フォトンブラッドを内包しているので黄色に輝く。
ミッションメモリー挿入によりガンモードからブレードモードに切り替わった。
「はぁ!」
カイザブレイガンを逆手に持ち、アナザーデュークDEAに接近する。銃撃の点ではく斬撃による線の攻撃。これならばさっきのように文字の密度を変えての回避に対応出来る。
カイザブレイガンによる袈裟斬りがアナザーデュークDEAに放たれる。アナザーデュークDEAは回避せず、手──と思われる部位──が持つ『創世弓』という文字でカイザブレイガンの刃を受け止めた。
そのまま鍔迫り合い状態になるが、こうなると若干だがカイザの方が有利になる。
カイザブレイガンの刃は正確には刃ではないフォトンブラッドを溜めておく為の器のようなものであり、斬るのではなくフォトンブラッドが発する熱により焼き切っている。
鍔迫り合いという至近距離でカイザブレイガンの刃を向けられると、刃から放たれる熱がアナザーデュークDEAの体をじわじわと炙る。
見た目は文字の集合体であるアナザーデュークDEA。一見すると変化が分からないが、カイザブレイガンの熱を浴びせられ続けていると文字の一部に泡のような膨張が見られ、文字の一部が破損する。
カイザの推測通りアナザーデュークDEAの文字は実体を持っている。しかも、熱などの影響を受ける。
活路が見えてきたカイザはこのまま押し切ろうとするが、アナザーデュークDEAの方も黙ってやられてはいない。
カイザが力を込めたタイミングでアナザーデュークDEAは逆に引く。思わぬタイミングで力を抜かれたことでカイザは前のめりの体勢になった。その瞬間、アナザーデュークDEAはカイザの懐に入り込み、肘打ちと思われる強烈なカウンターを打ち込む。
「うっ!?」
耐えようとしたが隙間だらけの見た目に反して重い一撃に呻く。カイザは見た目に騙されているが、アナザーデュークDEAの体重は本物のデュークと変わらない。
アナザーライダーは基本的に成り代わった仮面ライダーと同じ身長と体重なのだが場合によっては本物よりも遥かに巨大になったりする。アナザーオーガなどが良い例である。アナザーデュークDEAの場合、本物と全く同じなのにそう見えない所が判断を狂わせた。
耐えずに受け流すべきであったとカイザは判断を悔やむ。耐える為に踏ん張ったせいでダメージが増した。
内臓に染み渡っていくような重い痛みに歯を食い縛りながらアナザーデュークDEAの次なる攻撃に備えようとする。
ただ、アナザーデュークDEAの動きは迅速であった。カイザのダメージが抜け切る前に既に次なる攻撃を繰り出していた。
カイザ目掛けて振るわれる『創世弓』の文字。カイザは防御しようとするが、体を動かした瞬間に肘打ちを受けた箇所から痛みが発生し、一瞬体が硬直して反応が遅れる。
カイザの動きが僅かに止まった間に『創世弓』の文字がカイザの胸部装甲を通過した。
カイザはその感触に覚えがあった。金属の装甲に食い込み、そのまま滑っていく冷たい感触。通り過ぎた後はその冷たさが熱のような痛みに変わる──斬られた感触に良く似ていた。
「ぐあっ!?」
『創世弓』が滑った後をなぞるように火花が散る。見た目からして弓だと思い込んでいたが、実際は実体刃を持つカイザブレイガンと同じ複合武器だということを身を以って知る。
カイザは知らないが『創世弓』は斬月が持つソニックアローの異名。文字だけでは弓以外の機能は想像出来なかった。
『創世弓』を切り返して来るアナザーデュークDEA。これ以上のダメージは不味いと思ったカイザは、逆袈裟で来る『創世弓』をカイザブレイガンの刃で受ける。鳴り響く刃を打ち合う音。『創世弓』という文字からそれが鳴っているので認識がおかしくなる。
再び起こる鍔迫り合い。しかし、今度は両者とも膠着させるつもりはなかった。
カイザは引き金を引き、アナザーデュークDEAは弦を引く。互いに至近距離から撃ち合い、二人共命中の衝撃で吹っ飛ぶ。
「くうっ!」
文字の矢がカイザの肩部分に刺さると同時に爆発を起こた。カイザは背中から地面に落ちるが体を巧みに動かし、転倒の勢いを利用して立ち上がり、すぐに対応出来るように片膝立ちの状態で構える。
同じくカイザブレイガンの光弾によって後方へ飛ばされたアナザーデュークDEA。至近距離で発射された光弾への対応が間に合わず、実体部分に命中していた。
急いで体勢を立て直したカイザとは異なり、アナザーデュークDEAは仰向けに倒れている。すると、アナザーデュークDEAを構成している文字群が次々と飛び出していき、特定の箇所で再び集合する。倒れているアナザーデュークDEAの体は分解され、瞬く間に文字群は立っている状態のアナザーデュークDEAを再構築した。
「気持ち悪い化け物が……!」
アナザーデュークDEAへの本音を吐き捨てる。こちらの動揺を誘っているのかもしれないが、立つという単純な行為をああも気持ち悪くやられると思わず感情的になってしまう。
撃たれた箇所と思われる『ューク』の文字。元は『デューク』という文字だったが『デ』が完全に消えている。すると、時間の巻き戻しのように『デ』という文字が復活し、元の『デューク』に戻った。どうやら文字が残っていると再生するらしい。
一文字も残さずに消滅させる。それがアナザーデュークDEAを倒す方法だと知るが、非常に面倒な方法であった。
(何か他に弱点はないのか……!?)
このままでは否応なしに耐久戦を強いられる。この戦いに命を懸ける義理はカイザにはないが、アナザーデュークDEAがカイザを見逃す理由はない。
生きるには必死になって戦うしかないのだ。
そのどうしようもない現実を受け入れ、カイザはカイザブレイガンから光弾を連射しながらアナザーデュークDEAに接近する。
弱点も作戦もない以上、こうなれば虱潰しにでもアナザーデュークDEAの文字を消していくしかない。
案の定アナザーデュークDEAは文字の結合を緩めて光弾をすり抜けさせる。そうなることはカイザにとっても想定内。
カイザは狙いをアナザーデュークDEAの腕部に集中させる。アナザーデュークDEAは同じように文字の密度を減らし、カイザの光弾を躱した。
それで良い。今の攻撃によりアナザーデュークDEAの腕は限界まで細まっている。カイザは素早くカイザフォンを抜き、ノールックで番号を入力。
『Single Mode』
構えると同時にカイザフォンの上部が横向きになり銃形態であるフォンブラスターとなる。そして、アンテナ兼発射口から黄色の光線が発射された。
精密射撃に特化したシングルモード。光線となったフォトンブラッドが細まったアナザーデュークDEAの腕を狙う。
しかし、アナザーデュークDEAは僅かに腕を動かし、フォンブラスターの光線の射線の上に逃れた。だが、その程度では完全に回避したとは言えない。カイザはフォンブラスターを上に振り上げる。光線もまた射線を上げ、アナザーデュークDEAの腕を下からレーザーカッターのように切断した。
『創世弓』を持つ腕が切り飛ばされる。これによりアナザーデュークDEAは武器を失った。
カイザは一気に距離を詰め、残った腕も斬り飛ばしてアナザーデュークDEAを完全に無力化しようとする。
横薙ぎに払われるカイザブレイガン。アナザーデュークDEAの腕が高熱により焼き切られる──筈であったのだが。
「何だとっ!?」
カイザブレイガンの斬撃が止まる。アナザーデュークDEAの腕に刃が進まない。良く見ればアナザーデュークDEAの腕が真っ黒になっている。
真っ黒の腕を凝視すれば、そこに大量の文字が蠢いているのが分かるだろう。アナザーデュークDEAは文字の密度を減らして回避していたが、今度はその逆。文字の密度を高めることによりカイザブレイガンでも切断出来ない程の硬さを得た。
予期せぬ事態にカイザの動きに硬直が発生してしまう。
アナザーデュークDEAは硬質化した腕でカイザブレイガンを弾き飛ばし、その腕でカイザを殴りつける。硬度だけでなく力まで増しており、カイザはあっけなく殴り飛ばされた。
「がはっ!」
思わぬ反撃に大きく後退させられるカイザ。アナザーデュークDEAはその間に腕の断面を切断された『創世弓』を持つ腕に向ける。すると、『創世弓』の文字とそれを持つ腕がバラバラの文字になって飛んで行き、腕の断面に付いていくと元の状態に戻ってしまった。
切断程度では大したダメージにはならない。与えるならもっと大きなダメージが発生する攻撃を。
カイザはカイザフォンを素早くベルトに戻し、すかさず『Enter』のボタンを押す。
『Exeed Charge』
フォトンブラッドがカイザの二重のラインを伝わり、右手のカイザブレイガンに供給される。
カイザブレイガンのレバーを引いた後、アナザーデュークDEAに向けて発射。アナザーデュークDEAは三度体の密度を薄め、カイザの光弾を通してしまおうとする。
光弾がアナザーデュークDEAを通過する直前、光弾が突如として展開し網状になってアナザーデュークDEAの全身を捕らえる。
網目状になったフォトンブラッドの拘束によりアナザーデュークDEAの文字群は一か所に固められた。
カイザは逆手に持ったカイザブレイガンを振り上げる。フォトンブラッドの供給により刃が一層強く発光する。
カイザは構えたままアナザーデュークDEAに突撃しようとし──一歩目で踏み止まった。
アナザーデュークDEAを拘束する光の網。僅かな隙間からアナザーデュークDEAの文字らが脱け出しているのを目撃した。
一文字となって次々と拘束から脱出し、捕らえられているアナザーデュークDEAの体は萎むように小さくなっていく。
「くそっ!」
このまま攻撃しても仕留めきれないと判断したカイザは攻撃を中断する。無駄なエネルギーを消耗する訳にはいかない。
その時、突如として大きな揺れが起こった。
「何だ!?」
アナザーデュークDEAが何かをしているのかと思ったが、アナザーデュークDEAの方も揺れに翻弄されているように見える。
すると、虚空に虫食いのような穴が開き始める。穴の向こうにはドームの席のようなものが見えた。
穴は次々と出来ていき、また穴の大きさも徐々に広がっていく。そして、穴同士が繋がっていき、大きな穴へと変わっていく。
森と繋がる異空間。その先はドーム内部と思われる現代的な空間であった。
そして、カイザは見る。そこで戦っている斬月とアナザーオーガの二人を。
斬月はアナザーオーガの棍棒によって壁に押し付けられ、絶体絶命の危機に陥っている。
「──ちっ」
カイザは斬月を助ける義理はない。しかし、斬月が倒されてしまうとカイザはアナザーオーガまでも相手にしないといけない。アナザーデュークDEAですら苦戦しているのに、そこにアナザーオーガまで加わると戦況は絶望的になる。
『Exeed Charge』
カイザは舌打ちをした後、再びフォトンブラッドがカイザブレイガンにチャージ。光弾をアナザーオーガに撃ち込み、動きを縛る。
そして、斬月と合流する為に森からドーム内へ移動。数歩歩いた後、足に何かが当たった。
足元を見れば錠前のような物体。カイザは斬月がこれと似たようなアイテムで変身していたことを思い出し、拾い上げる。
斬月はアナザーオーガの動きが止まっている間に壁際から脱け出していた。そんな彼に拾ったそれを投げる。
斬月の体に当たり、反射した所を斬月は素早くキャッチする。
「使えよ。お前のだろ?」
「草加!?」
斬月はカイザの登場に驚いていた。
「──感謝する」
「そんなのは後だ──来るぞ!」
その後に礼を言っていたが、そんなことはカイザにとってどうでもいい。それよりもフォトンブラッドの網から完全に脱出したアナザーデュークDEAがこちらを追い掛けて来ていることに気付く。
斬月はアナザーデュークDEAを見て驚いていた。態度からして何か知っている様子。
「草加……悪いが交代だ」
「何か因縁でも? ──まあいいさ。同じ事を考えていた」
アナザーデュークDEAと相性が悪いと判断したカイザはアナザーデュークDEAの相手を斬月に任せる。アナザーオーガも骨の折れる相手だが、直感だがまだこちらの方が勝てる可能性を感じた。
カイザはアナザーオーガを見て溜息を吐く。こうなってしまった以上、使うしかない。
「奴に借りをつくるようで癪だが……!」
カイザはドライバーからカイザフォンを抜き、変身を解除する。
代わりに取り出す新たなアイテムはスマートフォン。様々なアプリが表示されている画面で草加はカイザのマークをタッチする。
液晶画面が切り替わり、番号入力画面になると草加は『913』の後に『ENTER』をタッチする。
『Standing by』
これは海東から渡されたアイテムだが、中々使用することはなかった。草加が海東を信用していないのも理由の一つだが、それよりも嫌悪感を覚えたのは聞いてもいないのに海東がわざわざこれが誰が使っていたものなのか、入手経緯を説明したこと。
説明は省くが、この変身アイテム──カイザフォンXXは草加にとって敗北と屈服の証のようなものとなった。
今でも嫌悪感と忌々しさは消えない。しかし、勝って生きるにはこれしかない。
生きて戦う。これを止めてしまった時、草加は真の意味で死んでしまう。
胸の前に持ってきたカイザフォンXX。手首を返し、液晶側を相手に見せる。
「変身!」
『Complete』
カイザフォンXXがドライバーにセットされ、横に倒されることでドライバー内に収まる。液晶にミッションメモリーが映し出される。
ドライバーから伸びる黄色く発光する無数の細い線。草加の体を這うように動き、装甲の輪郭を作り上げると、草加の全身を光らせ変身を完了させる。
カイザの時に比べ、両肩のアーマーが大きく、鋭利になっている。顔面にはクリアバイザーが追加され、口部の形状も変化し耐えて食い縛っているように見える。
胸部の装甲は円形に変化しており、中央はカイザのマークであるΧを象っている。
新たな技術で進化させた次世代のカイザ──仮面ライダーネクストカイザ。
癖なのか、それとも新たな姿の着心地が悪いのか、首元を緩めるようなジェスチャーをした。
Qどうしてカイザと斬月を一緒に戦わせようとしたんですか?
A網目繋がりだから。