仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
四方から生じる爆発はビーストハイパーの逃げ場を奪い、その体に容赦なく爆風と衝撃と叩き付け。
「ぐおおおおっ!」
表面だけでなく内側の臓腑すらも殴りつけられたような爆発。ビーストハイパーは全身から白煙を上げながら膝をつく。
「や、野郎……!」
かなり消耗した状態での魔法は効果抜群であり、ビーストハイパーもすぐには立てない。
(何しやがったんだ、あいつは……!?)
ミラージュマグナムの一撃で完全消滅したように見えた。しかし、その後に何事もなかったかのように復活してみせた。
(何かやった筈だ! じゃなきゃ納得出来ねぇ!)
消滅してからの復活などビーストハイパーも知らない魔法である。魔法なら大抵のあり得ないことが出来るが、それでもあり得ないことのレベルが違う。何かしらの理由がある筈である。
「考えろぉ……! 考えろ、俺!」
状況は圧倒的不利。だが、焦らずに冷静に思考しようとする。しかし、相手は大人しく待ってはくれない。
『
発動するアナザーソーサラーの魔法。発動した魔法の詠唱をビーストハイパーは聞いたことがある。
アナザーソーサラーの体が発熱し、直視出来なくなる程の高熱を放つ。
全身から高熱を発している状態でアナザーソーサラーはハルバードを頭上に掲げて回転させる。ハルバードもアナザーソーサラーの魔法の対象となっており、高熱を帯びたハルバードを回す度に空気が発火し、アナザーソーサラーの頭上に火の輪を作り出す。
炎の渦を見上げてしまうビーストハイパー。アナザーソーサラーがハルバードを振り抜くと炎の渦がビーストハイパーに向かって来る。
「うおっ!?」
ミラージュマグナムを発砲し、炎の渦に風穴を開けていく。込めてある魔力量の違いか炎の渦はミラージュマグナムで撃ち抜かれる度に勢いが削がれていく。
最初は圧倒されていたビーストハイパーだが、思ったよりもどうにか出来そうな感じが出て来たので心に余裕が生まれてくる。
その生まれた余裕でアナザーソーサラーを見た。ハルバードを振り回していたアナザーソーサラーが発見出来ない。
『
異音がビーストハイパーの背後から聞こえる。ビーストハイパーはすぐに振り向こうとしたが、その前にアナザーソーサラーの掌がビーストハイパーの背中に押し当てられた。
『
ビーストハイパーの背中に魔法陣が張り付けられ、そこから魔力の弾が撃ち出される。密着状態のビーストハイパーにそれを回避することなど出来ず、着弾の衝撃を同じ箇所に連続して撃ち込まれた。
「ぐあああああっ!」
ビーストハイパーは骨の大地を何度もバウンドする。勢いが弱まってバウンドが終わり、横たわっても今度はすぐに立ち上がることが出来なかった。ダメージが蓄積している状態で強烈な一発をノーガードの状態で受けてしまったのだから仕方がない。
「い、てぇ……!」
ビーストハイパーはダイスサーベルを杖にして立ち上がろうとする。ダメージで両膝が笑い、伸ばしている最中に片膝が折れる。
『
そんなビーストハイパーに非情なるアナザーソーサラーが魔法が向けられる。魔法陣から放たれる魔力の弾がビーストハイパーの周囲に着弾し、骨の破片を巻き上げてビーストハイパーを傷付ける。
「あの野郎……! 本当に容赦ねぇなぁ!」
しかし、これが返ってビーストハイパーに火を点ける。のそのそとやっていても的になるだけ。相手は欠片も容赦がない。それなら全力で足掻いて、足搔いて、足掻く。
全身に走る痛みを我慢しビーストハイパーは今まで通り、もしかしたら今まで以上の動きで魔力の弾を掻い潜る。
左右に避けるのではなく正面突破。ビーストハイパーの顔すれすれを魔力の弾が通り過ぎていく。
「ビビッて……たまるかよ!」
正面から来る弾を見極めながら速度を緩めずに突き進む。
ビーストハイパーの体を幾つもの魔力の弾が掠めていく。しかし、奇跡的に直撃はなかった。
アナザーソーサラーはビーストハイパーの躊躇いの無い動きに照準を狂わされていた。普通であったのなら立ち止まったり、方向転換するような場面であっても最小限の動きで最短のルートを走って来る。アナザーソーサラーは相手の臆する動きを無意識に想定しているせいで微妙に照準が外れてしまっていた。
ビーストハイパーも撃たれっ放しではなく当然撃ち返す。魔力が空になりかけているので、十分な間合いに入るまで温存していた。確実に当たる、と確信してからビーストハイパーはミラージュマグナムを撃つ。
ミラージュマグナムから発射された光弾。丁度、アナザーソーサラーが魔法陣から弾を放とうとしている所に命中し、魔力同士の衝突が誘爆を起こしアナザーソーサラーの至近距離で爆発が起こる。
「おっしゃ! ラッキー!」
狙ってやった訳ではなくビーストハイパーが言うようにただの偶然である。しかし、この幸運は敢えて危険の中を突き進んだことでしか得られないもの。ピンチはチャンスという彼の座右の銘を体現した結果である。
自分とビーストハイパーの魔力の爆発を近距離で受けてしまったアナザーソーサラーは、よろめきながら後退をする。
ダメ押しの光弾がアナザーソーサラーの右肩を貫く。これでアナザーソーサラーは魔法を即座に発動出来ない。
ビーストハイパーはミラージュマグナムにハイパーウィザードリングを填めようとする。しかし、填める直前に動きが止まった。
直感であったが、ミラージュマグナムで魔法を使用すれば自分の魔力が枯渇する気がした。そうなるとビーストハイパーの命が危ぶまれる。
ミラージュマグナムに填める筈であったハイパーウィザードリングの口を閉ざし、代わりにダイスサーベルを構える。
ダイスを回転させる。ダイスサーベルのサイコロはイカサマで目を決めることは出来ない。ダイスの目を決めるのは運命。だが、流れに乗っているビーストハイパーは運が引き寄せられているのを感じ取っており、運の流れに従いスロットに指輪を填める。
『シックス! ハイパー!』
「来た来た来た来たぁぁぁぁ!」
出た目は最高の目である六。ミラージュマグナムよりも魔力の消費を抑えつつ、匹敵する一撃が放てる。
「くらいやがれぇ!」
『セイバーストライク!』
展開される魔法陣。振り抜かれるダイスサーベル。魔法陣から放たれるのはバッファロー、ハヤブサ、イルカ、カメレオン。それらが一種類六頭もしくは六匹の計二十四。
バッファローたちは突進し、ハヤブサたちは空中を駆け、イルカたちは泳ぐように地を跳ね、カメレオンたちはその身は背景に溶け込ませる。
アナザーソーサラーに最初に仕掛けたのはバッファローたち。大地を蹂躙する力を突き進む力に変え、アナザーソーサラーに殺到。アナザーソーサラーはハルバードで咄嗟にガードするが、六頭のバッファローを一人では抑え切れずジリジリと後退させられる。
そこに急襲するハヤブサたち。翼と爪でガード出来ないアナザーソーサラーにダメージを与える。
ハヤブサたちの攻撃によりアナザーソーサラーは大きなダメージを受ける。そこに追い打ちを掛けるのはイルカ。
地面を水のように泳いで来たイルカたちは、四方八方から跳ねてアナザーソーサラーに体当たりをする。
そこにダメ押しするのはカメレオン。姿を消しているカメレオンたちは舌を伸ばし、鞭のようにアナザーソーサラーを打つ。
立て続けに攻撃されたアナザーソーサラーは遂に耐え切れなくなり、バッファローたちに力負けをする。
角で突かれて倒れてしまった所を蹄で踏みつけるられる。バッファローたちが駆け抜けた後は、地面に埋まるアナザーソーサラーが残されていた。
ハイパーウィザードリングにより強化されたセイバーストライクで二度目の撃破に成功したビーストハイパー。
しかし、勝ったビーストハイパーはそれを喜ぶ余裕はなかった。限界寸前まで消耗した魔力に蓄積したダメージ。ガッツポーズをとる力も無く、膝から崩れ落ちて四つん這いになっている。
「か、勝てた……」
息も絶え絶えの様子のビーストハイパーであったが──
『デュープ』
「……あ?」
──不吉な声が聞こえ、顔を上げる。そこには無傷のアナザーソーサラーがいた。
「……勘弁しろよぉ」
ウンザリした声を出しながら、それでも立ち上がってミラージュマグナムとダイスサーベルを構えようとする。だが、アナザーソーサラーが仕掛ける方が早かった。
『
翳されたアナザーソーサラーの掌の魔法陣から雷光が放たれ、ビーストハイパーを貫く。
「あががががががががっ!」
感電、痙攣するビーストハイパー。全身を駆け巡る電撃は疲労困憊のビーストハイパーを容赦なく責める。
何とか耐えようとするビーストハイパーであったが、アナザーソーサラーが両手を構えると放たれる雷の出力が増す。
雷の光がビーストハイパーの視界を白く焼いた時、ビーストハイパーの意識はプツリと消え、暗闇の中へと落ちていった。
◇
『──介。仁藤攻介』
「あん?」
目を開けると暗闇の中に立つ仁藤。その前には巨大な異形の獣が居た。
『随分とやられたな、仁藤攻介。我の力を使っておいて情けない』
アナザーソーサラーに敗北寸前まで追い込まれたのを嘲笑うのは彼の中に宿る力の源であり、ファントムと呼ばれる怪物に属するビーストキマイラ。
獅子の頭部と胴体に胸にはバッファロー、右肩にはハヤブサの頭と翼、左肩にはイルカの頭部と鰭、尾の部分には舌を伸ばしたカメレオンという複数の動物を掛け合わせた姿をしている。
ファントムとは魔力を持つ者が絶望することで誕生する怪物だが、ビーストキマイラはその中でも太古から存在している。しかし、ビーストキマイラは仁藤を絶望させることも乗っ取ることもせず、自分に魔力を与えるのなら力を貸すという契約を結んだファントムの中でも変わり者であり、同時に謎も多い存在でもあった。
「嫌味を言う為に呼び出したのかよ? それとも遂に俺を喰う気にでもなったか? 魔力もスッカラカンだしな」
この暗い空間は仁藤の精神世界──アンダーワールド。ビーストキマイラと会話する為の場所だが、過去に数回程しか呼ばれたことがない。
『お前に文句がある』
「はぁ?」
『いつまで我を待たせる気だ? 我の腹はもう底を突いている。それともこのまま我を餓死させる気か? 頭の足らないお前が中々小賢しい真似をするようになったものだ』
皮肉と謗りを混ぜたビーストキマイラの台詞。仁藤も言い返しそうになるが、ビーストキマイラの台詞に違和感を覚える。
「──ちょっと待て。待たせる気ってどういう意味だ? お前を呼び出せってことか? でも、あそこは──」
『あの世界に引き摺り込まれた時の最初の言葉を覚えているか?』
「最初の……ああっ!」
思い出し、思わず声を上げる。
「そういうことか!」
『鈍い奴め』
ビーストキマイラは仁藤を嘲笑する。
「それなら早く言えよ!」
『すぐに気付くと思っていたのでな。どうやら我の予想以上にお前は察しが悪いようだ』
「ぐぬぉ……! 言い返したいけど言い返せねぇ……!」
ビーストキマイラに言われるまで気付けなかったので反論出来ない。
『理解したのならさっさとやれ。我はもう辛抱堪らん』
「はいはい、分かったよ……うん? 辛抱堪らんってどういうことだ?」
最後に浮かんだ疑問が答えられる前に仁藤の意識はアンダーワールドから強制的追い出されてしまった。
◇
目を覚ましたビーストハイパーが真っ先に感じたのは全身の痛み。直前に電撃を流されたせいで体中が重度の筋肉痛のように痛い。
しかし、それよりも気にすべきなのは自身に差す影。アナザーソーサラーがビーストハイパーに今正にハルバードを振り下ろそうとしている。
「うおらぁぁぁ!」
ビーストハイパーは残された力を振り絞って跳び上がった。気絶していたビーストハイパーが急に跳んだせいで反応が遅れ、アナザーソーサラーは鳩尾のビーストハイパーに頭突きを受け、突き飛ばされる。
危機一髪の状況から辛うじて抜け出せたビーストハイパーは、すぐに右手に別の指輪を填める。
ビーストの紋章と四つの動物が彫られたその指輪をビーストドライバーに填める。
「来い! キマイラ!」
『キマイライズ!』
それはビーストキマイラを召喚する為の指輪。ビーストキマイラは現実世界では召喚出来ず、アンダーワールド限定で呼び出すことが出来るのだが、この異空間に於いてもそれが出来た。
『アンダーワールドか……?』
ビーストハイパーがここに訪れた時に抱いた感想。それは直感的に正しかった。アナザーソーサラーが創り出した空間は、アンダーワールドと似た性質を持っているのだ。だからこそ、ビーストキマイラを呼び出せる。
『ゴー!』
ビーストハイパーの正面に魔法陣が現れ、そこからビーストキマイラが飛び出す。ビーストキマイラが飛び出した影響でビーストの形態に戻る。
「行けぇ! キマイラ!」
飛び出したビーストキマイラは、そのままアナザーソーサラーに飛び掛かる──ことはせず、空中を飛び回り出す。
「おい! 何やってんだ! 敵はあっちだ! あっち!」
ビーストキマイラに指示を出すが無視して空中を飛び続ける。
『断る。散々、待たされたのだ。たらふく喰わせてもらう』
「たらふく喰う……?」
ビーストキマイラの謎の台詞の直後、異空間に変化が起こる。突如として異空間内に穴が開いたのだ。穴の向こう側には別空間が広がっており、そこには戦っているカイザの姿がある。
「何だありゃあ!?」
ビーストが驚いているとまた穴が開き、今度は斬月が戦っている様子が見える。
『くくくくっ! 喰っても喰っても尽きぬな!』
ビーストキマイラは上機嫌になっている。
異空間内の現象とビーストキマイラの言葉と態度。それらが繋がり、一つの答えが出る。
「そうか……この空間は全部魔力で出来ているのか……!」
ビーストの答えは正解である。自分が望んだ空間を創造する、それがアナザーソーサラーの魔法である。
魔法で巨大な異空間を創造し、そこを区切って各場所に仮面ライダーたちとアナザーライダーを配置していたのだが、ビーストキマイラが空間を構築、維持している魔力を食したせいで空間を区切る境界が薄まり、穴が開き出していた。
魔力を食べるビーストキマイラにとってこの空間は食べ放題の場所であり、同時にアナザーソーサラーの天敵でもある。
ビーストキマイラは異空間内の魔力をどんどん食し、異空間を不安定にさせていく。
「行け行け! どんどん喰え! バイキングの時間だ!」
ビーストもそれを応援するが、ビーストキマイラは急にピタリと食事を止めてしまう。
「……どうした?」
『……一気に喰い過ぎた。腹がもたれる』
「おい! 何だそりゃあ! もっと良く噛んで食べろ!」
ビーストキマイラの満腹宣言にビーストは呆れ、怒る。
『……少し戻す。受け取れ』
「戻す!? 止めろばっちぃ!」
その場から逃げ出そうとするビーストであったが、その体が急に金色に輝き出す。
「ぬおっ!? 何だこれ!?」
膨大な量の魔力がビーストに還元される。そして、その状態でしか出来ない魔法が発動する。
ビーストの左右に展開する赤、青、緑、橙の魔法陣。
『バッファ! ゴー! バッバ、ババババッファ!』
『ドルフィ! ゴー! ドッドッドッドルフィ!』
『カメレオ! ゴー! カカッカッカカッカメレオ!』
『ファルコ! ゴー! ファッファッファッファルコ!』
『ハイパー! ゴー! ハイッハイッハイッハイパー!』
各魔法陣から出現するマントを付けた仮面ライダービーストたち。ビーストも再びビーストハイパーとなっていた。
「うおおおお……こんなの出来たのかよ……」
自分の左右に並ぶビーストたちを見て、ビーストハイパーは啞然としながら呟く。
すると、ドルフィマントのビーストがマントを振るい、青い光をビーストハイパーにかける。ドルフィマントは治癒の魔法を持っており、その光によりビーストハイパーの全ての傷と疲労が回復する。ついでに魔力も補充されていた。
「ははっ! 希望の魔法使い気分だな!」
戦友と同じ魔法が使え、気分が上がる。ビーストハイパーがミラージュマグナムとダイスサーベルを構えれば、他のビーストたちもダイスサーベルを構える。
「おっしゃぁ! ここからはビーストタイムだ!」
ビースト版ドラゴタイムとなります。
後はどうなるかは……次回のお楽しみということで。