仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
『ラ・イ・ジ・ン・グ』
イクサがイクサライザーのボタン入力完了をするとイクサライザーが認証と形態移行を告げる音声を出す。
イクサの胸部が展開し、内部に収められている動力ユニットでありイクサの心臓部でもあるイクサエンジンが露出する。
イクサエンジンの中枢部には両肩、胸部と繋がる供給用のラインが設けられており、イクサエンジンが燃えるように輝くと赤色のラインもまた同様の光を発する。
体の各部に膨大なエネルギーが供給されることで各装甲に放電現象が起こり、装甲スライドしながら浮き上がる。
膨大なエネルギーの供給はそれに伴い高熱を起こし、効率的な放熱の為に体の各部を覆う装甲がパージされ、その下からメタリックブルーの装甲が現れる。またパージされなかった部位もイクサエンジンから発生した電気を受けてメタリックブルーに変色し性質も変化する。
額、口部周辺に付けられた金色のパーツも変化し、口部周りのパーツは頬までスライド。額のパーツは向きを変え、左右に長く中央は短い三本の角と化し、頭部を守るヘッドパーツとなる。
最後にイクサライザーのスロット部分にセフティーロックを解除するライザーフエッスルを挿す。ロックが解除されると折り畳まれているスロット部分を展開させてグリップにし、イクサライザーのもう一つの形態である銃に変形させた。
イクサから強化形態のライジングイクサへ変形完了すると同時にイクサライザーを構える。アナザーアークを狙い、イクサライザーを発砲する。
イクサライザーから放たれた光弾は、アナザーアークの翼を狙い三発飛ぶ。最初に飛行能力と機動力を奪うのが目的であった。
すると、アナザーアークの下半身が持ち上がり、光弾の射線上にその身を置く。鎖で雁字搦め縛られた下半身に光弾が命中。ライジングイクサの狙いはこれにより防がれた。しかし、着弾の衝撃はアナザーアークの予想を上回るものであり、アナザーアークは空中で突き飛ばされたように後方へ移動させられる。
初撃を防がれたことにライジングイクサは舌打ちをする。すぐさま追撃しようとするが、イクサライザーの威力を警戒したアナザーアークはビルの陰に身を隠してしまう。遮蔽物のせいで狙えなくなり、ライジングイクサはイクサライザーを構えるのを止める。
アナザーアークは図体が大きい割に意外と動きは慎重である。だからこそライジングイクサやアクセルにとっては戦い難い。体の大きさを生かすしかない単調な相手だったのなら戦いの手段は幾らでもあるというのに。
ビルの向こう側から翼が羽ばたく音が聞こえ、ライジングイクサは反射的にイクサライザーを撃つ。イクサライザーはビルの壁面に命中するが貫通するに至らず。尤も、仮に撃ち抜けたとしても威力はかなり減衰してダメージにならなかったと思われる。
「……留まって戦っていても埒が明かないな」
飛行能力を有している時点で地の利はアナザーアークにある。一箇所で戦っていてもアナザーアークが有利になるだけである。
「照井竜! ここから離れる! 急発進しなさい!」
アクセルの返事を聞く前にライジングイクサはアクセルに跨る。
「お前! ちぃ!」
あまりに不躾な態度に文句の一つも言いたくなるが、状況が状況なのでそれを呑み込む。アクセルも留まって戦うのは不利だというのこと理解していた。
「精々振り落とされるなよ! 振り切るぞ!」
バイクフォームのアクセルは一言断った後、足裏からエネルギーを噴射させて急加速。屋上程度の幅など無いに等しく、一瞬で転落防止用の柵が二人の目の前に現れる。
減速することなく前輪の体当たりでフェンスを破壊し、屋上から飛び出すアクセル。ライジングイクサは急激なGを感じた後に浮遊感を覚える。
屋上から飛び出したアクセルだが、次のビルの屋上までの距離が足らない。そのまま落下していき、ビルの壁面に衝突しそうになる。
驚く声を上げる暇すらなく次の瞬間に起こる事故に覚悟を決めるライジングイクサであったが、予想よりも遙かに小さな衝撃と顔に当たる強風ですぐにその覚悟が無駄に終わったことを知る。
アクセルはビル壁面を重力を引き剝がしてしまう程の加速力で走っていた。乗せているライジングイクサ共々奈落のような地面に対して水平に疾走する。ビルの壁面の幅はそうないので端まで辿り着くと再びジャンプし、別棟のビルの壁面をまたも走る。
スピードは苦ではないが体が真横を向いた状態で壁面を突き抜けていくという曲芸と変わらない走り方にライジングイクサも咄嗟に声が出ない。
「おい! いつまでそうしている気だ! 来ているぞ!」
走っているアクセルの声でようやく周囲に注意を向けたライジングイクサは、背後から飛翔してくるアナザーアークの存在に気付く。
「俺としたことが……!」
距離にすれば十メートルにも満たない。アクセルに言われるまで気付けなかった自分の注意力散漫を反省し、すぐに挽回する為に行動する。
アクセルの背中のハンドルを振り落とされないようにしっかりと握る。
アナザーアークは翼から光弾を複数放つ。燃えるような輝きを発する光弾は、ばら撒かれるように放たれており、回避すればどれかの巻き添えを喰らうという嫌らしい攻撃であった。
相手の攻撃の悪意を見抜いたのか、ライジングイクサは乗車中という不安定な体勢でもイクサライザーで正確に光弾を射抜き、相殺する。
再びアナザーアークを攻撃する前に、ライジングイクサはアナザーアークの弱点を見つけ出す為、イクサライザーのディスプレイを九十度曲げて5678の順で番号を押す。
『ス・カ・ウ・ター・サー・チ』
情報解析モードになり、ディスプレイをアナザーアークの方へ向ける。十字のマークの中心にアナザーアークが入り込むとイクサライザーはアナザーアークの解析を開始。
身長 3.2m
体重 350kg
パンチ力 25t
キック力 60t
ジャンプ力 測定不能
一瞬の解析で凡そのスペックが判明するが、ライジングイクサにとっては特に重要な情報ではない。知りたいのは弱点となりうる部分である。
どうでもいい情報の中で一つ目を惹く情報があった。
アナザーアークの下半身。鎖で雁字搦めにされた人型の部位。そこから膨大なエネルギーを感知した。鎖で力を封じている状態であり、鎖を解き放たれれば封じられているエネルギーが牙を剥く。つまり、アナザーアークはまだ本気を出していないのだ。
いつまでも分析していたら攻撃を受けるので切り上げる。短時間で得られた情報はこれだけ。弱点を探ることは出来なかった。分かったことがあるとすれば、鎖が解き放たれるまで油断をするなということぐらいである。
アナザーアークが光弾を発射。アクセルの近くに命中し、爆風によりアクセルのタイヤがブレる。
「むっ!」
「くっ!」
タイヤが横に切られ、横断する筈であったビルの壁面を奈落の底目掛けて高速で駆け抜けていく。
「ぬぅ!」
九十度の壁面でアクセルは急ターン。しかし、百八十度向きを変えたことによりスピードは大きく削がれ、前輪が壁面から離れてアクセルは後ろに反っていく。
「落ちる……!」
「持ち堪えなさい!」
ライジングイクサはカリバーモードのイクサカリバーを出し、壁に剣先を突き刺して縫い止めようとする。
ほんの一瞬だけ反れていくのが止まる。アクセルにはその一瞬だけで十分であった。
足裏からエネルギーを噴射させ、それにより急加速。ウィリー状態で垂直の壁を駆け上っていく。
「──感謝する」
「礼よりも今は走ることに集中しなさい!」
一言余計に思われるかもしれないが、この場合はライジングイクサが正しかった。何故ならばアクセルたちのすぐ傍にアナザーアークが並走しているからだ。
ライジングイクサは素早くイクサライザーの2と描かれたボタンを押す。
アナザーアークの翼膜が光を帯びる。光弾が放たれる予兆。ライジングイクサはその翼膜目掛け、イクサライザーのトリガーを引く。
『ブ・リ・ザー・ド・モー・ド』
イクサライザーから放たれたのは光弾ではなく白いガス。噴射されたガスがアナザーアークの翼に触れるとその部分が瞬間的に凍結する。
白いガスは冷凍ガスであり、アナザーアークの翼を凍らせていく。
片翼が凍らせられ、自由に羽ばたくことが出来なくなりアナザーアークは空中でバランスを崩す。発射する筈であったもう片翼の光弾もバランスを崩してしまったせいであらぬ方向へ飛んで行ってしまった。
それでも上手く動かせない片翼を懸命に動かし、何とかアクセルたちに追い縋ろうとする。
ライジングイクサは、イクサライザーを構えて今度は0のボタンを押した。
『ファ・イ・アー・モー・ド』
モードが切り替わり、今度は銃口から火炎を放射する。
炎はアナザーアークの顔に掛かる。可燃性の物質が同時に掛かっているので一度点いた炎は簡単に消せられず、アナザーアークは顔面を火達磨にして落下していった。
「今だ! 一気に登りなさい!」
「言われなくとも!」
アナザーアークが暗い底に落ちていくのを見届けるよりも先にビルの壁面を駆け抜ける。
数秒後、ビルの壁面を走破したアクセルは屋上に降り立つと共にバイクフォームからライダーの姿へ戻る。その傍にライジングイクサも着地した。
「……生きた心地はしなかった」
ライジングイクサは思わず本音を零す。
アクロバティックや曲芸という言葉など生温い縦横無尽に壁走り。それを落ちたら何処へ行くのかも分からない暗黒の上で行っていた。時間にすればそう長いものではなかったが、加えてその状態で戦闘まで行っていたので精神的な疲労はかなりのもの。戦闘を数度続けてやったような疲労感が圧し掛かってくる。
「そっちは大丈夫なのか?」
「……俺に質問するな」
「──ふん。そうだったな」
アクセルの相変わらずの返答にライジングイクサは少し怒ったように鼻を鳴らす。実際、アクセルもライジングイクサと似たような状態であったが、プライドの高さ故かそれを隠していた。
「これで──」
終わったか、と言おうとした時、二人の耳に異音が飛び込んで来る。
空気を震わす甲高い音。まるでそれは──
「笛?」
アクセルが言うようにその音は正に笛の音。音を聞いていたライジングイクサは笛の音に強い悪寒を覚える。
「……構えなさい」
「何?」
「まだ終わっていない!」
ライジングイクサの警告の直後、奈落の底に落ちたと思われたアナザーアークがビルの端から飛び出し、二人の前に現れる。
白骨の顔は黒く焦げて変色しており、顔の一部が削れている。恐らくは消火する為に顔の表面部分をビルなどで擦り、燃えている部分をこそぎ落したと思われる。
瞳の無い骸骨の目だが、その暗い眼窩の奥底には二人に対しての悍ましい殺意が満ちている。
そして、音の正体はやはりアナザーアークであった。鋭い牙が並ぶアナザーアークの口から出ている鈍色の筒状の物体。そこから高音が出されている。
注意深く見ると、筒状の物体はアナザーアークの舌であり、それを丸めて笛代わりにして音を鳴らしている。
すると、今度は金属が割れる音が鳴った。アナザーアークの下半身を覆う鎖。それに亀裂が生じ、繋がっている部分が次々と割れて鎖が解かれていく。
スカウターサーチで確認したエネルギーの塊。その封印がアナザーアークの笛の音により解放される。
『ガアアアアアアアアアアアアッ!』
解放と同時に響いたのは咆哮、或いは絶叫であった。
アナザーアークの下半身、それはまるでタールを固めたような人型の上半身。目や鼻などの器官が見当たらない。
黒くドロドロとした粘性の液体がゆっくりと流動しており、武器替わりにしていた角の先端から滴として糸を引きながら垂れていく。
腐敗を通り越して液状化し始めているような肉体に強い嫌悪感を覚える。同時にアナザーアークがこの下半身を封じている理由も分かった。今も体は崩壊し続けており、肉体の崩壊を止める為の封印でもあったのだ。
アナザーアークの下半身に裂け目が出来る。口と思わしき部位が現れるが、そこからせり出すように巨大な目が出て来た。
黒い瞳孔をした目はギョロギョロと動き、ライジングイクサとアクセルに視線を定める。
危険を察知したライジングイクサは、イクサライザーのボタンを入力。
『レー・ザー・ネッ・ト・モー・ド』
発射と同時に網状に展開するレーザーネットがアナザーアークの下半身に覆い、動きを封じようとする。
すると、アナザーアークの瞳孔が急に大きくなる。瞳孔から引き寄せる力が起こり、下半身を覆っていたレーザーネットは瞳孔の中に吸い込まれてしまった。
アナザーアークは続けてビルに瞳孔を向ける。凄まじい吸引が発生し、ライジングイクサとアクセルは吸い込まれそうになる。
「す、吸い込まれる……!」
ライジングイクサは手摺に掴まり、吸引に耐える。アクセルもエンジンブレードを地面に突き立てて耐えていた。
吸引は更に強まり、ビルが崩壊を始める。大小様々なビルの破片が瞳孔に吸い込まれていくが、吸い込まれる際にまるで紐のように形を変えて吸い込まれていく。大きさなど関係なく吸い込んでいく様はまるでブラックホールであった。
ビルが崩壊していく中で踏ん張る二人。しかし、アナザーアークもただ吸い込んでいるだけではない。動かない二人など格好の的でしかないのだ。
アナザーアークは上半身の皮膜から光弾を発射。光弾はアクセルとアクセルの足元に命中。
「ぐあっ!」
エンジンブレードが地面から離れ、同時にアクセルも光弾により吹き飛ばされる。
「照井竜!」
ライジングイクサは咄嗟に手を伸ばす。しかし、伸ばされた手はアクセルを掴み損ね、アクセルはビルから落ちていった。
「馬鹿な……!」
暗黒空間に落ちていったしまったアクセル。空を飛ぶ手段を持たない彼の生還は最早絶望的──
『アクセル! アップグレード!』
その時、聞こえた。アクセルを更なる段階へ至らせる為の音声と──
『ブースター!』
そして、目撃した。全身から火を噴きながら飛翔してきた黄色いアクセルの姿を。
書きたい展開は書けたので次回決着になる予定です。