仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
「全く……訳の分からない奴らがわらわらと」
変身の起点となっているベルトとアイテムは全くの未知。そんなゼインの存在に溜息を吐きながら紅の衣の男は玉座から立ち上がる。
男の名は常磐SOUGO。奇しくも常磐ソウゴと同じ名を持つ。
彼は歴史の管理者であるクォーツァーを束ねる長であり王。現在ソウゴたちと共闘しているカゲンとジョウゲンもまたクォーツァーのメンバーである。加古川飛流は彼らが偶然拾い、なし崩し的にクォーツァーに入った新入りという立場となっている。
全ての歴史を影で操る黒幕のような存在であり、ジオウですら彼らの企みによって生み出された。
しかし、その企みにより途轍もないイレギュラーが誕生した。
それがSOUGOの隣に立つ初老の男。六十年後の未来から来た常磐ソウゴである。
クォーツァーが齎す運命という計画の中で平成という時代に存在した全ての仮面ライダーたちの力を継承し、最低最悪にして最高最善の魔王──オーマジオウという唯一無二の存在となったのが未来のソウゴである。
本来ならば火と油などという生易しい関係ではなく生涯の宿敵としてすぐにでも争ってもおかしくはない両者だが、現在のクォーツァーの計画から外れた時代と世界のお陰で互いに矛を収めている。
「ハンドレッドといい、平行世界のタイムジャッカーといい、どいつもこいつも俺の世界に土足で踏み込んで来る」
現状を嘆くように言っているが、そもそもこうなった原因の一端はクォーツァー、ひいては彼らの王であるSOUGOにある。
「……いつからお前の世界になった?」
未来のソウゴの重い声が響く。互いに視線を合わせることをしなかったが、無言のまま両者の間では見えない火花と凄まじい重圧が発生している。
並みの神経の持ち主なら無意識に膝を屈していただろうが、生憎この場に於いてこの二人以外も普通の存在ではない。
「無駄話は終わったか?」
「話は終わりましたか?」
緊迫した空気をいとも簡単に掻き消す二人の強者──スウォルツとゼイン。空気を読むなどという真似などせず、寧ろ自分の存在感で場を塗り替えようとする。
「スウォルツ、お前がそんな得体の知れない奴を連れて来たから、こいつとつまらん会話する羽目になったんだぞ?」
「知らん。そもそも連れて来たつもりはない。こいつが勝手に付いてきただけだ」
スウォルツは横目でゼインを睨む。
「私は現在悪について学習している最中です。彼は私の観察対象として非常に興味深い。故に付いてきたのですが──」
ゼインの水色の無機質な目がSOUGOと未来のソウゴをジッと見る。
「その二人も大変興味深い。悪のサンプルとして観察させていただきます」
面と向かって二人を悪と言うゼイン。出会って数分も経っていないが、ゼインの中のAIが彼らを悪と判断する。
「ふははは! いきなり悪と来たか。まあ、大魔王である俺にとっては善悪など些細なことだ」
「他者から何を言われようと私の存在に揺るぎなどない」
二人は怒ることもなく片や笑い飛ばし、片や聞き流す。ゼインの言葉程度で揺るぐような心の持ち主ではなかった。
四人が自己紹介代わりの戯れを行っている中、アナザーライオトルーパーの一体が彼らの存在に気付く。すると、周りのアナザーライオトルーパーにもそれが伝播し、十万の視線が四人に注がれる。
圧倒されてもおかしくない光景でありだが、四人とも全く気にしない。有象無象たちの十万の視線よりも傍に居る自分以外の存在の方が四人にとっては脅威であり、存在感があった。
アナザーライオトルーパーの一体が手を銃の形にする。パキパキという音が鳴り、腕を覆う骨のような装甲が延長し、アナザーライオトルーパーの手を覆うようにして銃の形をした外骨格が形成される。
他のアナザーライオトルーパーも同様に手に銃の形をした武器を装備する。
十万の視線の後は十万の銃口が四人へ向けられた。
ゼインの中のAIは即座に計算を始め、どのような方法でこの攻撃に対処するのか導き出す。
スウォルツの眉間の皺が寄るもそれは恐怖からではなくこれから来る攻撃を鬱陶しいと思ったからであった。
未来のソウゴとSOUGOに至っては眼中に無いのか相変わらず互いを意識し、アナザーライオトルーパーを見向きもしない。
アナザーライオトルーパーたちの殺意は一糸乱れる動きで同時に解き放たれた。
十万の銃口から一斉に放たれる青白い弾丸。過剰過ぎる攻撃は全て四人を狙う。
視界一杯に青白い壁が迫るような圧巻の光景。物量に物を言わせた殺意が四人を撃ち抜く──未来にはならなかった。
四人を目前にして弾は止まっている。弾だけではない、アナザーライオトルーパーたちも止まっていた──時が止まったかのように。
「──ふん」
鼻を鳴らしたのは手を翳しているスウォルツ。この時間停止は彼の能力によって起こされたもの。
十万の兵と攻撃を片手で止めてしまうスウォルツの能力は脅威的だが──
「ご苦労」
スウォルツを労うSOUGOの声。尤も、労わるような感謝の意はなくやって当然という傲慢さを隠そうとしない。
時間停止した中で当たり前のように動くSOUGO、未来のソウゴ、ゼイン。彼ら能力の対象から除くなどという気遣いなどスウォルツはしていない。彼らが時間停止の影響を受けないのは自身の力によるもの。
ゼインはスウォルツの時間停止能力を興味深そうに観察していたが、SOUGOと未来のソウゴは歯牙にもかけない。
時間停止している中で動く彼らを苦々しく思うスウォルツ。そんなスウォルツの心境などお構いなしSOUGOと未来のソウゴは相変わらず舌戦をしている。
「クォーツァーの王はいつから自ら動くことを覚えたのだ?」
「可愛い家来たちが頑張っているんだ。偶には俺も見本を見せてやらないとな。何処かの誰かさんと違って」
「お前に出来る手本などあるのか?」
「全ての民は王に倣うものだ」
ギスギスとした空気が相変わらず二人の間に流れる。ある意味では対等だからこそそんな空気が流れているのかもしれない。
このまま二人はいがみ合い続けるのかと思われたが、二人揃って最初から合わせていたかのように話を打ち切り、ようやくアナザーライオトルーパーの群れに目を向ける。
「お前と話していても時間の無駄だ」
「同感だ」
SOUGOはジクウドライバーをいつの間にか付けており、未来のソウゴもまた黄金に翳されたジクウドライバーに似たドライバー──オーマジオウドライバーを装着していた。
SOUGOはライドウォッチを取り出し、半回転させてスイッチを押す。
『バールクス!』
飛流のライドウォッチと同じ音声が上がった。
「それは加古川飛流に渡したのではないのか?」
「相変わらず目と耳だけは良いな。あんな寂れた場所に引き籠っている割に」
遥か未来にいても現状を把握している未来のソウゴを褒めつつも最後は貶す。
「あれは複製品だ。ハンドレッドの連中が身の程知らずにもこれを複製した。壊しても良かったが出来は良いから少々勿体無いと思って保管していた。そうしたら、丁度いい相手がいたからくれてやった」
「──ふん。悪趣味な奴だ」
「加古川飛流には相応しいだろ。なぁ? スウォルツ?」
スウォルツに話を振るがスウォルツはSOUGOから視線を逸らして沈黙するだけ。
「何だよ、無視か? それとも少し丸くなったか?」
加古川飛流が道を外した元凶であるスウォルツなら皮肉や嫌味の一つでも言うのかと期待していたが、何も言わなかったことにSOUGOは少し不満気であった。
「いい加減無駄話は止めろ。私はお前とこんな意味のない会話をしに来た訳ではない」
「せっかちな奴だ。遊びの前に会話の一つも楽しめ」
十万の敵に囲われている状況でも遊びと言うSOUGO。この状況ですら彼が危機感を覚えることはない。
「──まあいい。可愛い家来が戦っているだ。王である俺も少しは手伝ってやろう」
SOUGOはバールクスライドウォッチをジクウドライバーにセット。SOUGOの背後に歪んだ秒針が付いた荘厳な時計型のエネルギーが出現する。
同時に未来のソウゴの足元にも時計盤が出現。マグマのようなエネルギーが噴き出し、時計盤が燃えるように輝く。
『変身!』
『ライダーターイム!』
SOUGOはジクウドライバーを回転させ、未来のソウゴはオーマジオウドライバーの両サイドを押す。
『祝福の刻!』
未来のソウゴは複数の輪状のエネルギーによって囲われ、SOUGOは太陽の如き輝きをジクウドライバーから発する。
『最高! 最善! 最大! 最強王!』
轟くような音声の中で黄金の輝きに包まれる未来のソウゴ。
『仮面ライダーバールクース!』
『オーマジオウ!』
どちらも真紅の『ライダー』という文字が仮面に填まる。変身完了と同時に放たれた衝撃は、スウォルツの時間停止を破壊。停止していた時が動き出し、十万の弾が再動するがそれすらも変身の余波が掻き消してしまう。
「化け物共が……!」
スウォルツは、容易く自分の力を解除してしまった二人の王に小声で吐き捨てる。その声にはどうしようもない畏怖が込められていた。
SOUGOが変身したバールクスは飛流のバールクスとは違いマントを付けておらず、また両腕に填められたウォッチもアナザーウォッチではなくバールクスに関わるライダーたちのライドウォッチであった。
未来のソウゴの黒と金を主としたオーマジオウの姿、グランドジオウよりも絢爛さでは劣るが、それを埋めるような覇気と威圧感で自らを飾る。
「さて──」
バールクスは前に出る。十万の大軍に歩幅を狭めることなく堂々とした歩みで自ら近付いていく。
「王である俺が直々に遊んでやる。俺を退屈させるなよ?」
王として何処までも上からの言い方。次の瞬間、アナザーライオトルーパーたちが殺到し、バールクスはアナザーライオトルーパーたちの中に埋もれた──かと思えば、アナザーライオトルーパーたちが一斉に宙へ打ち上げられている。
爆発が起こったかのように吹っ飛ばされたアナザーライオトルーパーたちの中心地で拳を突き上げているバールクス。
「その程度か?」
アナザーライオトルーパーの一体が腕から骨の刃を伸ばしバールクスに切り掛かる。バールクスはそれを予知していたかのように相手が踏み込んだ瞬間には拳を顔面に打ち込んでいた。
アナザーライオトルーパーはその場で数回転した後顔面から地面に落ち、灰となって消滅する。
バールクスはアナザーライオトルーパーたちの四方から繰り出される攻撃を余裕で避け、腕部から伸びる黒い刃で切り付ける。
その気になれば纏めて消滅させられるが、バールクスは敢えて素手で戦っている。
宣言通りバールクスは遊んでいた。
アナザーライオトルーパーたちに群がられるバールクス。しかし、アナザーライオトルーパーたちは触れることも出来ずに次々と消えていく。
オーマジオウはバールクスの戯れを見ながら無言で掌を突き出す。その直後にアナザーライオトルーパーたちは音も立てずに灰となって崩れ落ちた。
片手だけで相手を消滅させるオーマジオウの人外の力。だが、同じ力を向けられていた筈のバールクスは何事もなかったかのように立っている。周りにはアナザーライオトルーパーたちだった積もった灰の山の中で平然と。
「遊びを知らん奴だな」
「下らん戯れなど知らん」
瞬くよりも速くオーマジオウはバールクスの正面に移動していた。ゼインもスウォルツも片時もオーマジオウから目を離していなかったのに移動するまで気付けなかった。
「……解析不能」
ゼインの頭脳はオーマジオウの能力を分析しようとしたが無意味に終わってしまった。
スウォルツは舌打ちをする。これでもかと力を見せつけられた。しかも、二人は威圧する意図はない。彼らの基準で普通のことをしただけなのだ。基準が高過ぎるせいで圧倒されてしまう。
『ディケイドコンプリートフォーム21……』
しかし、スウォルツとて王を目指していた者。これぐらいで屈する程心は弱くはなく、王の座を奪う強い反骨精神も備わっている。
アナザーディケイドコンプリートフォーム21へ変身すると開いた五指をアナザーライオトルーパーたちへ向けた。
指先に展開される砲身状に並んだカード群。すると、アナザーライオトルーパーたちの正面にも同様の現象が起こる。
アナザーディケイドコンプリートフォーム21の指先から放たれるシアンカラーの光線。砲身を通過すると光線は通過することなく消える。消えた光線はアナザーライオトルーパーたちの前に展開されていた砲身から放たれ、数百のアナザーライオトルーパーたちが一斉に貫かれて消滅した。
三人がアナザーライオトルーパーたちを圧倒する中でゼインもまた静かに行動を開始。
『オーズ・プトティラコンボ!』
『鎧武・極アームズ!』
二枚のゼインカードを連続してゼインドライバーに装填。
『執行! ジャスティスオーダー!』
読み込まれたカードが断裁されると同時に二丁の銃火器がゼインの手に握られる。
ティラノサウルスの頭部をモチーフとしたメダガブリューバズーカモード。
大筒をモチーフとした火縄大橙DJ銃。
本来なら両手で持つ大型の銃だが、ゼインはそれを片手で持つ。
『プットッティラーノヒッサーツ!』
『フルーツバスケット! オレンジチャージ!』
メダガブリューから放たれるのは渦状の破壊のエネルギー。全てを無に帰す滅びの砲撃。
火縄大橙DJ銃からは果実型のエネルギーが大橙のエネルギーの奔流に乗って銃口から飛び出していく。
ゼインの発射した二本の光線は、バールクスとオーマジオウに襲い掛かろうとしていたアナザーライオトルーパーたちの群れを呑み込んでいく。射線上からはアナザーライオトルーパーたちが消え、海を割る伝説のようにそこだけ開けた道が出来ていく。
尤も、切り拓いた道はバールクスとオーマジオウを救う為のものではない。そもそもゼインは最初から二人に照準を定めて撃っていた。
二人の力を分析する為であり、あわよくばそのまま消えることを願っての砲撃。
ゼインの攻撃は二人まで届き、エネルギーの濁流に姿を消す。目的を達するとそれだけでは終わらない。射撃をしながらゼインは両腕を左右に広げる。
真っ直ぐ飛んでいた光線は横薙ぎへと軌道を変え、瞬く間に数千のアナザーライオトルーパーたちを屠った。
「……計算を修正する必要がありますね」
ゼインの視線の先には無傷のバールクスとオーマジオウが立っている。
彼らはゼインに攻撃されたことに対して特に驚いた様子はない。それよりもゼインの能力の発動方法に注目していた。
仮面ライダーの力を封じたカードを断裁して能力を発動する。これを見た二人の反応は真逆であった。
オーマジオウは低く唸り、嫌悪感を露わにする。
一方でバールクスの方は声を上げて笑っていた。
「はははははははっ! 誰が創ったかは知らないが──」
バールクスは細かく刻まれたゼインカードを指差す。
「良いセンスだ」
予告のときと変更して飛流のバールクスはコピー品にしました。
ハンドレッドの存在が都合よかったので。
そういえば昭和ライダーもライドウォッチになりましたね。
シャドームーンのライドウォッチが現実になしました。