仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~   作:K/K

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アナザーゴーダ2022

 アナザーゴーダの群れ為すハチの手がバースとプロトバースに向ける。右手を前に出し、左手は後方へ引く構え。その構えはバースたちも知っている。

 

「オーズの真似か? あんま似てねぇぞ」

 

 プロトバースはアナザーゴーダの構えに静かな怒りを覚える。バースも言葉には出さないものの同じ気持ちである。

 悪意を持ってやっているのかは知らないが、真似するにしてもアナザーゴーダの真似には芯のようなものは感じ取れない。ただの見様見真似という印象しか受け取れず、本物に対して二つの意味で質の悪い侮辱であった。

 しかし、アナザーゴーダは二人の怒りなど全く意に介さず、その構えのまま体が激しく上下に浮き沈む歩き方で距離を詰めてくる。

 虫の集合体なのも気持ちが悪い理由だが、半端に人間を模した姿をしているので人間から外れた行動をするのが更に気持ち悪さを際立たせる。

 

「ちぃ!」

 

 背筋の寒気を押し殺し、バースはショベルアームを構え、アナザーゴーダが前に突き出している右手──もといハチの塊目掛けて伸ばし、バケットで握り潰す。

 ハチの塊なので呆気無く握り潰されるゴーダの右手。すると、残った左手がバースへ向かってくる。蠢くハチらを搔き分け、赤子ぐらいのサイズがあるハチの腹部が現れると腹の先から針が突出し、バースを狙う。

 

「何だと!?」

 

 現実的なサイズの虫の集合体だからこそ無意識に常識の範囲内で思考していたが、考えてみれば驚きはするが不思議なことではない。バースたちは敵の詳細を知らないが、相手はアナザーライダー。どんなに生物的な見た目であろうと怪人である。

 常識で測るような相手ではないのだ。

 滲み出る液体が滴る針。バースは即座にショベルアームを振り下ろして盾にする。

 ショベルアームのバケットがアナザーゴーダの針に突かれる。しかし、貫かれることはなかった。ショベルアームに用いられている金属はアナザーゴーダの針を通さない。

 安心したのも束の間、アナザーゴーダが一歩踏み込む。針を防いでいたショベルアームのバケットの一部がグニャリと変形し、防いでいた筈の針が突き刺さる。

 

「これは!?」

 

 バースの頭部に仕込まれたセンサーが貫かれたショベルアームから毒の反応を感知し、警告音を鳴らす。

 針から滴っていた液体はやはり毒液であった。しかもただの毒液ではない。ショベルアームの金属を短時間で熱せられた飴細工のように溶かす強力な溶解性を持った毒液である。ショベルアームで防がなかったら今頃どうなっていたか分からない。

 バースはショベルアームに毒針が貫通していることを利用し、手首を返してハチの腹部から毒針を引き抜く。

 根本から毒針を引き千切られ、ハチの腹部からは毒液とは異なる液体が噴き出す。しかし、アナザーゴーダは一切怯んでいない。痛がる素振りすらも見せない。虫らしく無機質な反応のままバースに手を伸ばしてくる。

 

「させるか!」

 

 それに待ったを掛けるのはプロトバース。いつの間にかバースから渡されていたバースバスターでアナザーゴーダを撃つ。

 光弾がアナザーゴーダへ命中。だが、普通なら着弾と同時に火花などが散るがアナザーゴーダの場合は体へと沈み込んだ後、籠った破裂音が響くだけ。当たっているがダメージの手応えを感じない。

 ただ着弾の衝撃は受けているらしく光弾が命中する度にアナザーゴーダの体はビクンと跳ねて後退し、衝撃が内部を駆け抜けているのかアナザーゴーダを構成している虫たちが波打つ。

 アナザーゴーダとの間合いが開くとバースは追撃のドリルアームでアナザーゴーダを貫こうとする。

 その瞬間アナザーゴーダは片足を上げ、足裏でドリルアームを受け止める。だが、アナザーゴーダの足はアリの集合体なのでドリルアームは容易くアナザーゴーダの足を貫く。ドリルアームが掘削する音は岩や金属を削るような音ではなくブチブチ、グチャグチャという水気を含んだ生々しく気色の悪い音。

ドリルアームがアナザーゴーダの膝の辺りまで侵入する。だが、ドリルアームが突き進めたのはそこまでであった。

 突如ドリルアームが動きを止める。

 

「どうなっている!」

 

 バースは急いでドリルアームを引き抜く。だが、掘り進めていた時とは逆に中々引き抜くことが出来ない。

 

「おおおっ!」

 

 ありったけの力を込めてドリルアームを引っ張るとようやく引き抜くことが出来たが、その際に何故抜けなかったのかが分かった。

 回転を止めたドリルアームに噛み付く無数のアリたち。しかも、嚙み付いているアリに更に別のアリが噛み付いており、無数の生きたロープとなって引き寄せていたのだ。

 そして、どうしてドリルアームが回転しなくなったのかも分かった。ドリルアームの細部に入り込む大量のアリの死骸。殆ど隙間の無い筈だが、極小のアリがドリルアーム内部に侵入して機械部分を故障させたのだ。

 しかもそれだけではない。ドリルアームの機械部分や先端部分から白煙が上がっている。バースはその原因をすぐに察した。

 

「蟻酸か!」

 

 アリが体内で生成する毒。酸性と腐食性を持った液体であり、アナザーゴーダの蟻酸は本来の物よりも遥かに酸性と腐食性が強い。ドリルアームはその蟻酸により精密機器を破壊されたのだ。

 攻撃力を失ったドリルアームをアリたちが引き寄せようとする。バースは敢えて踏み止まらず引かれる力を利用してドリルアームを叩きつけようとする。回転しなくとも鈍器としてまだ使える。

 すると、アリの群れから飛び出した一対の牙がドリルアームを挟む。蠢くアリの群れから顔を出す大きなアリの頭部。ドリルアームはその大アリの顎に止められていた。

 大アリの顎の力は凄まじく蟻酸により劣化してしまっているとはいえドリルアームに罅が入り始める。

 

「後藤ちゃん!」

 

 動きを止められているバースを助ける為にプロトバースはバースバスターの銃口を向ける。

 プロトバースの敵意を感じ取ったアナザーゴーダのムカデの塊になっている頭部が一瞬震えると後頭部から巨大なムカデが伸び、プロトバースの首に巻き付く。

 

「ぐお!」

 

 不意を衝かれたプロトバース。巨大ムカデはプロトバースの首にしっかりと絡み付き、締め上げていく。

 

「伊達さん! うおっ!?」

 

 プロトバースも襲われ、バースは声を上げるが他者の心配をしている場合ではなくなる。アナザーゴーダは後頭部から生えたもう一匹の巨大ムカデでバースの首も絞める。

 二匹の巨大ムカデがバースたちを苦しめる。酸欠で意識が遠のきつつある中、それぞれ脱出を試みる。

 プロトバースはまず自力で脱出しようと首と巨大ムカデの間に指を差し込もうとした。だが、巨大ムカデは長い胴体で巻き付くだけでなく力が緩まないように無数の足を食い込ませてしっかりと張り付いており、隙間すら与えない。

 力での脱出は無理だと判断するとプロトバースはバースバスターを巨大ムカデに押し当て引き金を引く。ゼロ距離での光弾が炸裂するが巨大ムカデの外骨格に焦げ目が生じるだけで絞めつけは緩まない。今の一撃で相当な弾数を撃ち込まなければならない事を察するが、それを為すにはプロトバースの時間は足りない。

 ドリルアームやショベルアームを併用すればもっと短時間で出来るかもしれないが、最大の問題としてプロトバースはそのどちらも使用出来ない。名の通りプロトタイプなのでプロトバースが使用出来るのはクレーンアームとブレストキャノンの二つのみ。攻撃手段の面ではバースよりも一歩、二歩劣る。

何か切り抜ける方法を考えながらも段々と視界の端が暗くなってきており、意識が曖昧になりつつあった。

 バースの方もプロトバース同様に巨大ムカデの絞めつけから逃れようとしていた。

 ドリルアームが使用不可能な状態で今使えるのはショベルアームしかない。バースは思考が途切れるそうになる頭とそれに連動している体を動かし、ショベルアームを持ち上げて巨大ムカデの胴体を挟む。

 

「くら、え……!」

 

 意識がまだある内にショベルアームで巨大ムカデを切断しようとする。しかし、巨大ムカデの胴体は想像以上に硬く、ショベルアームのパワーでも外骨格に僅かな罅が入るだけである。

 あと一歩パワーが足りないことに歯嚙みするバース。そんな彼に追い打ちを掛けるようにショベルアームにも異変が起こる。

 ショベルアームの機能が突然停止。機能停止により当然巨大ムカデを挟んでいることも出来ず、巨大ムカデが胴体をくねらせると跳ね除けられてしまう。

 

(何故……!?)

 

 最早声を発することも出来ないぐらいに頸部を圧迫されながらバースは原因を探る。そして、答えはすぐに見つかった。

 

(これか……!)

 

 ショベルアームを貫くハチの針。その周辺が熱したように溶けている。ハチの針に残っていた毒液が滲み出し、それがショベルアーム内の機械を破壊してしまったと思われる。

 動かなくなったショベルアームに群がるのはアナザーゴーダの腕を形成する多種多様なハチたち。それらがショベルアームに噛み付く。アナザーゴーダと直接繋がっているのでドリルアームのように縛り付けられてしまう。

 両手の武装を破壊された挙句に拘束される。これではブレストキャノンを撃とうにもまず装着が出来ない。

 

(まず、い……)

 

 相手が弱っていることに気付いて一気に仕留めに掛かってきたのか巨大ムカデの絞める力が強まる。それだけでなく巨大ムカデの頭部がバースを見下ろし、その牙から黄土色の液体を滴らせる。垂れた液体がバースの装甲に落ちるとジュッという音を立てて装甲の一部を溶かす。

 絞め殺されるのが先か毒液により殺されるのが先か。バースの前に最悪の選択肢を突き付けてくる。

 その時であった。

 

「ピンチは……チャンス……!」

 

 絞り出すような声でプロトバースが叫ぶ。バースは朦朧とする意識の中で首を動かしてプロトバースを見る。

 

「後藤ちゃん……! 頼んだ……!」

 

 プロトバースが最後の力を振り絞って投げたもの。それはバースバスター。だが、形状が少々異なる。銃身下部にセットされてある筈のマガジンが銃口に装着されており、銃身が延長されていた。

 プロトバースの言葉。そして、投げ渡されるバースバスター。バースはそれを見てプロトバースが何を頼んだのか全て理解する。

 

「う、おおおおっ!」

 

 朦朧としていた意識を無理矢理起こし、同時に両手の兵装を解除。ドリルアームとショベルアームが分解、転送されたことでアナザーゴーダの拘束から抜け出せ両手の自由を取り戻す。

 両手を伸ばし、飛んできたバースバスターをキャッチ。そのまま銃身をアナザーゴーダに突き刺した。

 

『CELL BURST』

 

 マガジンに詰められていたセルメダルが一つのエネルギーに集束され、アナザーゴーダの体内に撃ち込まれる。

 一瞬の間の後、アナザーゴーダの体は一気に膨れ上がり内側からの圧に耐え切れなくなって爆ぜる。その際にアナザーゴーダの体内に撃ち込まれた集束状態の大きなメダル型の光弾も爆ぜ、内包されていたエネルギーが散っていくアナザーゴーダを構成していた虫たちを焼いていく。

 

「ごほ! ごほ!」

 

 アナザーゴーダが四散したことでバースを苦しめていた巨大ムカデも力を失い、バースの首から滑り落ちていく。絞めつけから解放されたバースは喉に手をやりながらせき込む。後少し反撃が遅れていたら危なかった。

 

「流石、後藤ちゃん……!」

 

 同じく解放されたプロトバースが来て、掠れ声でバースを褒める。

 

「伊達さんの、おかげですよ……」

 

 プロトバースは自身の脱出が困難と判断した瞬間、全てをバースに託すことを決断した。残された時間でバースバスターのマガジンをセルメダルで満タンにし、セルバスターモードにしてバースへ投げ渡した。

 イチかバチかの賭けに近い行動であったが、バースを信じて躊躇うことなく実行に移した。

 

「なぁに、後藤ちゃんがやる時はやれる男だって、知っているからな」

 

 プロトバースからの信頼にバースは仮面の下で微笑を浮かべる──戦いの余韻を打ち壊す羽音が二人の耳朶に響く。

 咄嗟に身構える二人が見たのは、滞空しているアナザーゴーダの腹部に止まっていた虫のキメラ。

 頭部であるムカデの目がバースたちを見ている。バースたちにはそこに意思があるかのように感じられた。怒りの感情でこちらを睨んでいるようにしか思えない。

 

「しまった……! あれが本体か!」

 

 バースはバースバスターで飛んでいるアナザーゴーダ本体を撃とうとした。アナザーゴーダ本体は身をくねらせて反転すると凄まじい勢いで飛び去ってしまった。

 

「くそ!」

 

 仕留め損ねたことを悔やむバース。そんな彼の肩にプロトバースは肩を置く。

 

「気にすんな、後藤ちゃん。確かに逃がしたが、どうやら向こうも逃げるぐらいしか力が残っていなかったみたいだ」

 

 戦える余力があったらまたアナザーゴーダになって襲い掛かってきてもおかしくない。プロトバースが指摘したようにアナザーゴーダ本体には逃げ去るぐらいしか出来ないぐらいにバースたちとの戦闘で消耗していた。

 

「……また来るでしょうね」

「ああ。どうやら俺たちは奴の敵として認識されたらしい」

 

 アナザーゴーダ本体が去り際に見せた怒り。完全に標的としてロックオンされたのを直感で悟る。

 

「強敵ですね」

「そもそも何者なんだ奴は?」

「僕が教えてあげようか?」

 

 気配もなく壁の陰から現れる青年。人知れず景都の戦いを陰から見ていた青年。

 

「何者だ?」

「誰だ?」

 

 バースたちの最もな疑問に対し、青年は人を食ったような笑みを浮かべる。

 

「通りすがりの怪盗さ……今はね」

 

 




アナザーゴーダ
身長:201.0cm
体重:114.0kg
特色/能力:無数の虫とそれが分泌する毒を操る
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