仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
『ッ!?』
一瞬の間の後、ゲイツリバイブとアナザーディエンドCPは揃って驚いた様子で周りを見回し出す。
何かがあった、何かがいたことだけは朧気に覚えているが、それが何だったのか具体的に思い出すことが出来ない。
「まさか……!」
アナザーディエンドCPは慄いた様子を見せる。今まで傲慢な振る舞いをしていた彼からは想像も出来ないぐらいに見えない何かに怯えていた。
「おい! 何か知っているのか!?」
感じている違和感の正体を知る為にアナザーディエンドCPに訊くが──
「君が……知る必要など無い……!」
──感情を押し殺しながらそう言うと、アナザーディエンドCPはゲイツリバイブを置き去りにして走って行ってしまう。まるで、この場所に一秒たりとも留まりたくないと言わんばかりに。
「くそっ! 何なんだ!」
ゲイツリバイブも自分の中の違和感に苦しみながらも去っていったアナザーディエンドCPの後を追う。
戦いの最中なので彼らが真実に辿り着くことは叶わなかったが、つい先程この場所でクォーツァーによる歴史改変が行われた。アナザーディエンドCPが率いていた十万のアナザーライオトルーパーたちは、クォーツァーの王である常磐SOUGOによって纏めて別空間へ連れ去られ、アナザーライオトルーパーたちごとその事実を無かったことにされた。
しかし、常人ならばまず気付かない改変に対し、特別な存在であったアナザーディエンドCPとゲイツリバイブは違和感だけであるがそれを感じ取ることが出来た。
◇
辺りに人気が無いどころか人の出入りも殆ど無いと思われる空き地。何かの工事に使う予定であったパイプや錆びた鉄柱が置かれてある。アナザーディエンドCPはそこまで一息で駆け抜け、やっと立ち止まる。
運動ではなく動揺による息切れをしていたが、やがて呼吸も落ち着いてくると冷静になってきた。
「私としたことが……とんだ醜態だな」
闇雲に移動してきたことを自嘲する。
袂を分かった相手の残滓を感じ取ってしまっただけでもこの動揺。その力を間近で見て来た彼だからこそ簡単に過去を拭い切れない。
「随分と必死だな」
頭上からの声。重ねられた鉄柱の山の上にゲイツリバイブが腰掛け、アナザーディエンドCPを見下ろしている。
「お前も何か怖がるんだな。意外だ」
何かを恐れているアナザーディエンドCP。ゲイツリバイブはこれまでの彼の言動を知っているので、彼の人間らしい態度に軽く驚いていた。
「だがそんなことはどうでもいい。俺はお前を倒す! それで全て終わりだ!」
「──私を倒す? 随分と舐めた口を利くじゃないか……!」
「怯えているお前を見たら舐めた口の一つも言いたくなる」
事情は分からないが動揺が抜け切っていないアナザーディエンドCPに口で追い打ちをかけるゲイツリバイブ。しかし、アナザーディエンドCPはゲイツリバイブの皮肉を鼻で笑う。
「何も知らないからそうやっていられるのさ。無知な君が羨ましい」
「なら、教えてくれと言ったら教えてくれるのか?」
「これから私の糧になる君に言うと?」
「だろうな……こっちも最初から聞く耳を持つつもりはない!」
最初に仕掛けたのはゲイツリバイブ。疾風の速度で瞬く間にアナザーディエンドCPとの間合いを詰め、つめモードのジカンジャックローを突き出す。
「甘いねっ!」
突き出されたジカンジャックローが弾かれる。アナザーディエンドCPの前方にシアン色に輝く障壁──バリアが張られており、それがゲイツリバイブの初撃を阻んだ。
「ちっ!」
ゲイツリバイブは舌打ちをすると今度は一瞬でアナザーディエンドCPの背後に回る。そして、ジカンジャックローを振り下ろす。しかし、その攻撃もバリアによって防がれた。
「そう来ると思っていたよ!」
輝かせることでバリアは前方に張られていると強調していたが、実際はアナザーディエンドCPの全方位にバリアは展開されていた。そして、どんなに素早くとも攻撃した瞬間だけは動きが遅くなる。
アナザーディエンドCPは背後に指を向ける、指先からシアンの光弾が複数発射された。
発射された光弾はバリアを通過。ジカンジャックローを弾かれて硬直しているゲイツリバイブを射抜こうとする。
だが、眼前まで迫った複数の光弾。あと一秒にも満たない時間でゲイツリバイブに着弾する。しかし、猶予がゼロ秒でなければゲイツリバイブには十分過ぎる。
音を超える神速のバックステップでゲイツリバイブは光弾から離れる。眼前まで来ていた光弾は、瞬く間に数メートル先まで離される。
これでひとまずは光弾の脅威は去った──
「やっぱり甘いね」
──高速の世界に入り込んで来る嘲り。下がるゲイツリバイブに追い着くアナザーディエンドCP。
「何っ!?」
アナザーディエンドCPが疾風の速度に匹敵する速さで動けたことにゲイツリバイブは衝撃を受ける。
「ふっ!」
追い着くと同時にアナザーディエンドCPの掌打がゲイツリバイブの鳩尾を打つ。剛烈とは違って装甲が薄くなっているのでこの一撃はゲイツリバイブに深く入った。
「ぐぅ!」
掌打により打ち込まれた痛みで呼吸が止まり、ゲイツリバイブの動きが一瞬止まる。掌を捻じり込むようにして突き飛ばされ、ゲイツリバイブは数歩後退。すると、置いて行かれていた光弾も追い着き、アナザーディエンドCPの肩や脇の傍を通過し、動きが止まっているゲイツリバイブへ今度こそ着弾した。
アナザーディエンドCPの俊敏な動きに咄嗟に対応出来なかったゲイツリバイブにアナザーディエンドCPはほくそ笑む。
鈍重そうな動きに見えるアナザーディエンドCPだが、ゲイツリバイブ疾風に匹敵する速度で動くことが出来た。高速で動ける時間は極めて短いので使いどころが重要であったが、高速移動からの不意打ちと追撃は見事に決まった。
アナザーライダーや怪人の召喚がアナザーディエンドCPの主な戦い方だと思っていたであろうが、透明化、バリア、そして今の高速移動といったようにアナザーディエンドCP自身も強い。そもそも自分が召喚したものよりも召喚者が弱ければ反逆される。
ならば最初からアナザーディエンドCP自身が戦えば良いと思うだろうが、そこは変身者であるウォズの性格によるもの。重要なことはいざという時まで隠し、その時が来れば効果的に使う。
ウォズは最初からこうなることを想定していた。ただし、このような正面から戦う想定ではなく、ゲイツリバイブを背後から撃つつもりであったが。
事が上手く運び上機嫌であったアナザーディエンドCPだが、徐々にその機嫌も陰りが生じ、やがて反転して不機嫌となる。
「相変わらず隠し事が多い奴だ」
皮肉を言う無傷のゲイツリバイブを見たからである。
ゲイツリバイブは疾風から剛烈へ変わっている。着弾する一瞬の間に形態を変えていた。
「君はどうしてそうも私の思い通りにならないのかなぁ?」
「まず何もかも自分の思い通りになるという甘い考えを捨てろ」
声は穏やかだが言葉の端々に隠しきれない苛立ちがあるアナザーディエンドCP。ゲイツリバイブはそんな彼に挑発するような、或い窘めるようなことを言う。
「運命を改変する力を手に入れたお前の驕りだ。そもそも運命を変えるのはお前だけの特権じゃない!」
運命を改変するタブレットで事を自分の思い描くままに変えてきたことによる精神の歪みを指摘した上で運命を変えることは誰もが持つ権利だと言い切る。
「そんなこと出来るのは一握りの人間さ。救世主の力を取り戻して調子に乗ったのかな? 臆面もなくそんなことを言う君こそ驕っている……!」
ゲイツリバイブの言っていることこそ選ばれた者の驕りだと真っ向から否定するアナザーディエンドCP。
睨み合う二人。音を立てそうな程の視線と闘気の衝突。言葉の代わりに意志をぶつけ合うことで暫しの間、沈黙が流れる。
『──ふっ』
すると、一笑が沈黙を破った。その笑い声は二人の口から洩れたものであった。
「こうやって面と向かって本音を話してようやく分かった」
「ああ。私たちは決して相容れない」
「笑えるな。こんなにも合わない奴に救世主にさせられようとは」
「笑えるね。こんなにも合わない君を救世主として奉り上げようなんてね」
アナザーディエンドCPは完全にゲイツリバイブのことを見限っており、今の会話で自分の選択が間違っていなかったこと再確認したが、ゲイツリバイブは心の何処かでまだアナザーディエンドCPを改心させられるのでは、と願っていた。しかし、それが叶わぬ願いだとアナザーディエンドCP自身から突き付けられる。
互いに皮肉を言い終えた後、ゲイツリバイブは小さな、本当に小さな溜息を吐く。そこにはゲイツリバイブの中にあった僅かな悔恨が込められていた。
「──ウォズ。俺はお前を倒す」
「改めて言う程の台詞かい?」
ゲイツリバイブの決意の言葉。それに込められた意味を知らず、アナザーディエンドCPは嘲笑する。
『パワードのこ!』
ゲイツリバイブは何も言わずジカンジャックローをのこモードに切り替える。ギャリギャリと鳴る回転刃がゲイツリバイブの無言の殺気を代弁する。
ゲイツリバイブが走る。アナザーディエンドCPは全指でゲイツリバイブを指す。指から撃ち出される光弾。一指から複数の光弾が発射されており、ゲイツリバイブに壁のような弾幕が張られる。
ゲイツリバイブは回避も防御もせずに前進し、弾幕の中へ飛び込む。乱れ撃つ光弾の中を速度を緩めることなく突き進む。光弾の弾幕は足止めにすらならなかった。
「戦車か君は!」
剛烈の理不尽な防御力にアナザーディエンドCPは戦慄を通り越して腹立ちを覚えながら光弾の密度を増して何とか前進を止めようとする。
「効かん!」
『のこ切斬!』
一点集中させた光弾に自ら跳び込みながらジカンジャックローの一振りでまとめて掻き消された。アナザーディエンドCPを倒すという強固な意志がゲイツリバイブに際限ない力を与える。
救世主の力を取り戻したとはいえ、ついさっきまで一般人であったゲイツがここまで圧倒的な力を見せてくるとアナザーディエンドCPからすれば堪ったものではない。
ゲイツリバイブの前進を全く止めることが出来ず、跳んで来たゲイツリバイブが眼前まで迫る。
アナザーディエンドCPは咄嗟にバリアを張る。これで何とか時間を稼ごうとするが──
「無駄だ!」
ゲイツリバイブの拳一発でバリアは粉砕される。
身を守るバリアを一瞬で失ったアナザーディエンドCPにジカンジャックローの回転刃が突き出される。
あわや回転刃に削り取られるかと思いきや、ジカンジャックローは空を切った。
アナザーディエンドCPは間一髪で高速移動を使い、紙一重でジカンジャックローから逃れていた。
いつの間にか十メートル近い場所まで離れているアナザーディエンドCP。ゲイツリバイブは焦ることなく冷静に状況を分析する。
疾風並の動きが出来るが、それを積極的に使わない、使っても一瞬のみ。射撃を主な攻撃としているのに回避後あまり距離を移動していない。
それらの要素からゲイツリバイブは推測する。
「──どうやらその速さはあまり長く維持出来ないようだな?」
アナザーディエンドCPの体が強張る。気付かれたくない相手に気付かれてしまった。相手の僅かな変化を見て、ゲイツリバイブは推測が凡そ当たっていたことを悟る。
こういう事があるので手札を見せるのをなるべく避けていたのだが、ゲイツリバイブの強さに出さざるを得なかった。それでも数少ない状況から見抜いたのはゲイツリバイブのセンスによるもの。
「何も知らない無知な救世主だったら良かったのに……」
ずれにずれた計画の果てに最強状態のゲイツリバイブと真正面から戦わなければならなくなった状況を嘆く。しかし、それでも戦わなければならない。この機を逃せば、恐らくは救世主の力に手が届く時は無い。
必死に脳を働かせてゲイツリバイブを倒す手段を絞り出す。
ゲイツリバイブが構える。来る、と判断すると同時にアナザーディエンドCPは肩部の銃口から光弾を連射した。指で発射した時よりも大型の光弾が放たれる。
「無駄なことを!」
見た目が大きくなろうともゲイツリバイブには関係無い。全てジカンジャックローで一蹴しようとする。
ジカンジャックローを突き出そうとした直前、光弾が分裂して形を変える。
「何だと!?」
光弾は怪人の姿へと変わり、ゲイツリバイブにしがみつく。
アナザーディエンドCPの能力の応用であり、怪人をエネルギーのまま撃ち出し途中で怪人の姿へと戻した。
数十を超える多種多様な怪人たちがゲイツリバイブに圧し掛かっていく。一体、二体なら簡単に振り解かれるだろうが一気に数十、それも覆い被さるようにすればゲイツリバイブもすぐには対処出来ない。結果、トン単位となった怪人たちが塊となってゲイツリバイブを押さえ込む。
アナザーディエンドCPは怪人たちの塊へ指先を向ける。指の前に光の砲身が形成された。
指から放たれた力が砲身を通って光線となる。光線は怪人たちごとゲイツリバイブを貫くかと思いきや、光線に触れた怪人たちは次々と光線の中に吸収されていく。
エネルギーを怪人に変えられるのならその逆も可能。怪人たちをエネルギーへ戻し、光線の威力を上げる。
ゲイツリバイブを止めたまま高威力の光線で射抜く。アナザーディエンドCPが導き出したゲイツリバイブの倒し方。
全ての怪人たちが吸い込まれると同時に中心に居るゲイツリバイブへ光線が命中。大規模な爆発が生じた。
「ゲイツ君、君は知っているかな?」
爆発の中、アナザーディエンドCPの顔は爆発の光の加減により笑っているように見える。
「救世主は死んで完成するのさ」
ここから最終戦となります。年内完結する予定です。