仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~   作:K/K

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長くなったので後一話続きます。


アナザーディエンドコンプリート2018 その9

 絶体絶命。その言葉をアナザーディエンドCPは身を以って体験している。

 アナザーディエンドCPの頭の中でこれまでのことが映像のように流れていく。

 海東大樹からディエンドの力を奪い、それを用いて強力な手勢を増やした。海東が黒ウォズと手を組む前に黒ウォズを自らの中に封印し、計画の上で最も邪魔になる敵を事前に消去した。

 後は記憶を失ったゲイツを上手く動かし、救世主の力を取り戻した所で全てを奪う。

 そうなる筈であった。

 しかし、現実はアナザーディエンドCPの思い描いたものとは何一つ違っていた。あれだけあった手駒は全て失い、最強に近いアナザーディエンドCPは限界まで追い込まれ、体力も残り少ない。怪人たちを吸収して得た力も尽きかけており、分身を生み出す力も残っていなかった。

 そして、そんなアナザーディエンドCPを追い込むように封じていた黒ウォズが仮面ライダーウォズとして目の前にいる。しかも、救世主となったゲイツマジェスティと力を奪った筈のディエンドディケイドと共に。

 

(悪夢を……悪夢を見ているのか? 私は?)

 

 そんな現実逃避をしたくなる程に目の前の光景はアナザーディエンドCPの計画とはかけ離れている。

 

「言葉も出ないようだね。それとも悪い夢でも見ていると思っているのかい? 残念ながらこれは現実だ」

 

 ウォズがアナザーディエンドCPに容赦なく現実を見せて来る。同じウォズ故に相手が何を思っているのか的確に読めており、現実逃避すら認めない。

 

「君は敗北する。私たちによってね」

 

 私たち、という言葉が酷く癇に障った。まるでこちらを憐れんでいるように、蔑んでいるように聞こえた。

 アナザーディエンドCPの被害妄想であるが、傷付いた体に鞭打つ理由になる怒りを燃え上がらせるのに十分な一言である。

 

「ふざけるなぁぁぁぁ!」

 

 アナザーディエンドCPは怒声を上げ、両手を前に伸ばしながら走り出す。

 追い詰められたアナザーディエンドCPの最後の抵抗にゲイツマジェスティが構えるが、ウォズが手で制する。

 

「ここは任せてくれないかい? ゲイツ君」

 

 白ウォズを相手に不覚を取った。その雪辱を晴らす為にウォズは敢えて一人で挑む。

 

『ジカンデスピア! ヤリスギ!』

 

 仮面ライダーウォズの専用武器である槍を召喚し、アナザーディエンドCPを待ち構える。

 冷静さを失い、最早獣同然の動きで襲い掛かるってくるアナザーディエンドCP。

 伸ばされている手がウォズを鷲掴みにしようとするが、ジカンデスピアがその手が届く前に払い、がら空きになった胴体を穂先で斬りつける。

 

「がぁ!?」

 

 アナザーディエンドCPの動きが止まった所にジカンデスピアによる連続攻撃。刃がアナザーディエンドCPの体表を走り、傷と傷が交差する点が生じればそこをジカンデスピアで突く。

 監禁された鬱憤を晴らすかのような激しさと緻密さのある動き。また長期間監禁されていたとは思えない程に動きにキレがあった。

 十の斬撃の後、五の刺突を受けたアナザーディエンドCPはよろけながら後退し、片膝をつける。

 

「この、私が……! あんな私如きに……!」

「褒めているのか貶しているのか分からなくなるね、自分自身が相手だと」

 

 現実をまだ直視出来ていないアナザーディエンドCPに、ウォズはあくまでも冷静に相手をする。

 ウォズは散々好き勝手してきたアナザーディエンドCPに今までの借りをきっちりと返す──という雰囲気はなかった。それどころか追い詰められているアナザーディエンドCPに憐憫を抱いている。

 

「──こうも差が出るとはね」

 

 ウォズの呟いた声にアナザーディエンドCPは過敏に反応する。

 

「何だ!? 何が言いたい!? そんなに今の私は醜悪か!? 滑稽か!? お前と私! 一体何が違うと言うんだ!?」

 

 それは怒りでもあり嘆きでもあった。同じ自分の筈なのに生じる差。まるで自分が偽者かのような、失敗作のような錯覚と劣等感を覚えさせられる。

 

「私と君との差なんてほんの僅かなものさ」

「何だ!? その差は何なんだ!?」

「私は君よりも出会いに恵まれた。その幸運さだ」

 

 アナザーディエンドCPは絶句した。

 出会い。たったそれだけの違いでこのような差が生まれたということに。そんな馬鹿な、とは否定出来なかった。何故ならばアナザーディエンドCPの傍には誰も居ないからだ。ウォズの傍にはゲイツマジェスティ、ディエンドディケイドが居るというのに。

 出会いに恵まれなかった。その紙一重の差が黒ウォズと白ウォズの明暗を分けた、分けてしまった。

 

「そんな……そんな幼稚でつまらない理由で……!」

 

 頭では理解出来ているが、どうしても否定してしまう。それを肯定することはこれまでの自分を否定することに繋がる。だからこそ、アナザーディエンドCPは納得してはいけない。

 

「まあ、納得出来ないだろうね。所詮は運が良かった者が言う戯言さ」

 

 その達観したような物言いが気に入らず、アナザーディエンドCPの逆鱗に触れる。

 

「──ッ!」

 

 アナザーディエンドCPが発したのは最早人の言語ではなかった。追い詰められ、苦しみ、悲しみ、そこから絞り出された耳を覆いたくなるような絶叫。

 ウォズはそれを受け止め反撃しようとするが、そうなる前に一発の発砲音が鳴り響いた。

 アナザーディエンドCPの肩に生えるマゼンタ色の杭。何が起こっているのか理解出来ずにアナザーディエンドCPは呆然と自分の体から生える杭を見ていた。次の瞬間、脇腹と大腿部に同じ杭が打ち込まれ、アナザーディエンドCPはその場で崩れ落ちる。

 

「何一人で盛り上がっているんだい?」

 

 ディエンドディケイドの冷めた声。アナザーディエンドCPの体に撃ち込まれた杭は、ネオディエンドライバーから放たれたもの。本来ならば光弾なのだが、ディケイドの力の影響で銃口から伸びた刃を弾代わりに撃っていた。

 

「……任せてくれと言わなかったかい?」

「ゲイツにはね。僕は言われていない」

 

 平然と言っているが詭弁にしか感じられない。

 ウォズが責めるようにディエンドディケイドを見るが、ディエンドディケイドの方は理解出来ない、と言った態度で肩を竦める。

 

「感傷で戦うのは止めたまえ。そもそも後からポッと出て来た君が、さも主役のように戦うのが気に入らない」

 

 ディエンドディケイドの自分勝手な言い分にウォズの纏う雰囲気が変わる。

 

「そもそも勘違いをしないでくれ。これは僕たちの戦いだ」

 

 もう一人の自分だからこそ感情移入してしまうのだろうが、この戦いはウォズ一人のものではない。この戦いの中心となっているのは間違いなくゲイツである。彼を差し置いて決着などあってはならない。

 ディエンドディケイドの冷静にして空気を読まない発言。ウォズは沈黙したまま立ち尽くす。

 

「……君も同じ考えかい?」

 

 ウォズはゲイツマジェスティにディエンドディケイドと同じ考えなのか問う。

 

「……」

 

 ゲイツマジェスティは即答しなかった。言葉を選ぶように数秒間黙っていたが、やがて口を開く。

 

「──ああ。これは紛れもなく俺たちの戦いだ、ウォズ」

 

 俺たちという言葉の中にはウォズもまた含まれていた。何もかも背負うな、というゲイツマジェスティの気遣いが言外に込められている。

 それに気付いたウォズは仮面の下で苦笑する。

 

「──やれやれ。君たちに気遣われる日が来るとはね」

 

 直情的ですぐ感情的にもなるゲイツの理解ある対応に、ウォズはゲイツの人間としての成長を感じる。いずれは王となる常磐ソウゴに忠誠を誓った身だが、ゲイツの成長には常磐ソウゴの王としての素質の開花と同じような感心を抱いてしまう。

 

「心苦しいが決着をつけさせてもらうよ……仲間と一緒にね」

 

 ウォズはアナザーディエンドCPを見ながら後退する。ゲイツマジェスティ、ウォズ、ディエンドディケイドとアナザーディエンドCPという三対一の構図。これこそがアナザーディエンドCPが叫んでいた覆すことの出来ない(黒ウォズ)(白ウォズ)の差であった。

 

「これで終わりだ」

 

 幕引きを告げるのはゲイツマジェスティ。彼はゲイツマジェスティライドウォッチに触れていた。同じくウォズもビヨンドライバーのレバーを握り、ディエンドディケイドはライダーカードを取り出している。

 ゲイツマジェスティはゲイツライドウォッチ、ゲイツマジェスティライドウォッチのスイッチを押してからジクウドライバーを回転させる。

 

『フィニッシュタァァイム! マジェスティ!』

 

 ウォズはビヨンドライバーのレバーを引いて倒す。

 

『ビヨンドザタイム!』

 

 ディエンドディケイドはネオディエンドライバーにライダーカードを装填。

 

『ファイナルアタックライド・ディ、ディ、ディ、ディエンド!』

 

 ライダーカードを読み込んだネオディエンドライバー。その銃口をアナザーディエンドCPへ向ける。銃口から放たれるマゼンタの光弾。アナザーディエンドCPに命中すると光弾はディエンドの紋章へと変化し、アナザーディエンドCPを紋章に磔にする。

 

「うん? ……ああ、そういうことか」

 

 予想していたものとは異なる光景にディエンドディケイドは首を傾げたが、すぐに察すると小声で『こういうのは柄じゃないんだけどね』と愚痴る。

 三人の仮面ライダーが跳躍する。合図など不要であった。戦いの中で培われた経験がどのタイミングで攻撃するのが最善なのか分かっており、声に出さなくともタイミングを共有する。

 右にウォズ、左にディエンドディケイド、そして中央にゲイツマジェスティという並び。蛍光色に発光するウォズの右足からキューブ状のエネルギーが放たれ、紋章に磔にされているアナザーディエンドCPを内部に閉じ込める。

 アナザーディエンドCPを磔にしているディエンドの紋章からディエンドディケイドに向けて連なるカード型のエネルギー。中央にはディエンドの紋章が描かれていた。

 そして、ゲイツマジェスティの背後にはゲイツマジェスティによってサブライダーたちが召喚された。ゲイツマジェスティを中心に円形の陣になり、その陣は金色の光を発する。

 ゲイツマジェスティがキックの体勢に入るとそれに同調してサブライダーたちも同じ体勢になる。

 

『エル・サルバトーレ! タイムバースト!』

 

 召喚されたサブライダーたちが、ゲイツマジェスティへ重なっていき、ゲイツマジェスティは彼らと一体となる。

 一際強い光が放たれ時、ゲイツライドウォッチ、ウォズ、ディエンドディケイドは空中から必殺のキックを繰り出しながら急降下。

 ゲイツマジェスティの仮面に収まった『らいだー』の文字が扇状に展開され、ゲイツマジェスティはそれを背にし光の輪を生み出しながら空中を突き進む。

 ウォズの右足からは強い蛍光の輝きが放たれながら、足裏に描かれた『キック』という文字が実体化する。

 ディエンドディケイドはカード型エネルギーを通過する度にそのエネルギーを内に取り込み、キックの威力を増加させていく。

 三つのキックがアナザーディエンドCPに炸裂。眩い光が全てを照らす。

 ゲイツマジェスティのキックが命中すると同時にゲイツマジェスティに重なって浮き上がるサブライダーたちの姿。G3から始まりクローズまで一気に駆け抜け、最後に仮面ライダーゲイツの姿が現れる。

 三人のライダーたちのキックにアナザーディエンドCPの体は耐え切れることは出来ず、一瞬の停止の後にゲイツマジェスティたちのキックはアナザーディエンドCPを貫いた。

 

「私が……負ける? ぬああああああ──」

 

 最後の最後にその現実を直視した時、アナザーディエンドCPの体は内から噴き出したエネルギーにより爆発した。アナザーディエンドCPの断末魔を全て呑み込んで。

 爆発が収まった後、爆心地には変身が解けた白ウォズが立ち尽くしている。顔や手など傷だらけになっており、白い衣服が煤で汚れ、焦げている部分もあり大分薄汚れていた。

 白ウォズは短く呻くとうつ伏せに倒れる。すると、白ウォズの手からアナザーディエンドCPウォッチが転がり落ち、少しの間地面の上を転がった後に倒れ、亀裂が入った後に爆ぜるように壊れる。

 アナザーディエンドCPの力を完全に失ったのを見て、ゲイツたちは変身を解除した。

 

「やれやれ……やっと取り戻せた」

 

 海東の手にはいつの間にかディエンドのライダーカードがあった。アナザーディエンドCPを倒したことにより奪われたディエンドの力が戻った証である。

 

「それで? 僕から仮面ライダーの力を奪ったこの不届き者はどうするんだい?」

 

 海東は冷たい目で白ウォズを見下ろす。海東の指はネオディエンドライバーの引き金に掛けられており、その気になればいつでも発砲出来る状態になっており、怪盗なのに盗まれたことが相当腹に据えかねている様子。

 白ウォズは顔を上げ、悔しそうに海東を睨む。

 

「待て」

 

 海東にゲイツが待ったをかけた。

 

「こいつをどうするのかは俺に決めさせてくれ」

 

 ゲイツは白ウォズの処遇に対する決定権を求める。

 海東はゲイツの方を見た後、黒ウォズを見る。

 

「君はどうなんだい?」

「ゲイツ君が任せろというのなら、それに従うだけさ」

「ふーん……」

 

 海東はそれ以上何も言わず、ネオディエンドライバーの引き金から指を離した。海東もまたゲイツに任せるという意思を見せる。

 二人から許可を得たゲイツは白ウォズの前まで行き、しゃがむ。

 

「白ウォズ。お前の負けだ」

「わざわざ……言う必要があるのかい……?」

 

 敗北を突き付けるゲイツを白ウォズは忌々しそうに見る。

 

「お前は拗らせているせいで黒ウォズ以上に性格が最悪だ」

「……それは私も性格が悪いと言っていないかい?」

 

 白ウォズを通して性格批判されたことに黒ウォズは抗議するが、ゲイツは聞こえないフリをする。

 

「どうしてお前がそんな風になったのか俺は知らん。だが、そうなるようなことがあったんだろう」

「知ったようなことを……!」

「なら話してくれるのか?」

「……」

 

 知ったようなことを言われるのは嫌だが、自分の過去を語るのはそれ以上に嫌らしい。

 

「お前は頭を冷やせ」

「冷やしたら……どうするんだい?」

「俺と向き合ってちゃんと話をしろ」

「話をして……どうにかなるのかい?」

「お前を救うかどうかはその時に決める」

 

 ゲイツの言葉に白ウォズは目を丸くする。

 

「救う……? 私を……?」

「ああ。そうだ」

「何故……?」

「お前が言い始めたことだろうが?」

 

 迷うことなく真っ直ぐ白ウォズを見詰める。

 

「俺は救世主だ。守るべき者、救うべき者が居たら手を差し伸べる──それだけだ」

 

 堂々と言い切るゲイツに白ウォズは言葉を失い。彼の目から逃げるように顔を背ける。

 

「──ということだ」

「了解した」

 

 ゲイツの決断を聞き、黒ウォズは異を唱えることをせずに頷く。黒ウォズは微かに笑っていた。

 ゲイツと入れ替わるように黒ウォズが白ウォズの前に立つ。

 

「さて、君には暫くの間反省をして貰おうか」

「……最悪だね」

 

 黒ウォズが白ウォズに向かって息を吸い込む。すると、白ウォズの体が緑色の粒子となって黒ウォズへ吸い込まれていき、最後は黒ウォズに呑み込まれてしまった。

 

「ここで大人しくしていてくれ。それとゲイツ君に感謝するんだね」

 

 白ウォズを吸い込んで一体化した黒ウォズは何事もなかったかのようにゲイツたちに話し掛ける。

 

「これで終わった」

『……』

 

 ゲイツたちの返答は無かった。

 

「元々人間離れした奴だと思っていたが、まさかここまでとは……!」

「君、実は人間に擬態した怪人じゃないよね?」

 

 黒ウォズの謎の能力を目の当たりにし、彼が人間かどうか疑い始める。

 

「そんな目で見ないでくれ。私は至って普通の人間さ」

 

 黒ウォズの言うことを一ミリたりとも信じられなかった。

 

「景都ぉぉぉぉ!」

「明光院君っ!」

 

 大声で名を呼ばれ、ゲイツは声の方を見る。ソウゴとツクヨミがこちらに向かって走って来ているのが見えた。

 

「無事だったか……」

 

 目立った傷も無い様子にゲイツは安堵する。嘗ての力を取り戻せても戦いは素人。万が一の場合もあったが、ソウゴとツクヨミは無事に切り抜けた。

 

「景都ね……これからはゲイツって呼ばせるのかい?」

「彼奴らにとって俺は明光院景都。それでいい、今はな」

「──そうかい」

 

 歴史を改変する前の記憶は未だにゲイツしか思い出せていない。ソウゴとツクヨミの記憶を蘇らせる方法もあるだろうが、無理にそれをさせる気はゲイツには無かった。いつか来るその時まで二人には平和な世界の学生であって欲しい、とゲイツは思っていた。

 ゲイツの思いを聞き、海東はただ了承する。

 

「景都ぉぉぉおおおおおっ!?」

 

 手を振りながら近付いて来たソウゴの声が途中で叫びに変わり、驚きで目を丸くする。

 

「ウォズさん!?」

 

 ツクヨミは黒ウォズの存在に気付き、身構える。ソウゴも黒ウォズを警戒して隙だらけな構えをとっている。

 黒ウォズと白ウォズが別の存在だと知らない彼らからすれば、未だにウォズは敵という認識であった。

 

「待て。このウォズはあのウォズとは違う」

 

 ややこしいことになる前にゲイツが説明に入る。

 

「違うって……どう違うの!?」

「あのウォズは悪い奴がこのウォズは……」

 

 ゲイツは黒ウォズの方を見て眉間に皺を寄せる。

 

「良い奴……なのか?」

「そこは自信を持って言ってもらいたいところだね」

 

 善人判定を出せず疑問符を付けるゲイツに黒ウォズは顔を顰める。

 すると、黒ウォズはソウゴたちの前に出る。

 

「久しぶりだね、我が魔王。そして、ツクヨミ君。私はウォズ。最高最善の魔王となる常磐ソウゴの忠実なる家来さ」

 

 大仰な動作で挨拶をする黒ウォズ。

 

「何か……本当に違うみたいね」

「──うん。そんな気がする」

 

 白ウォズとは異なる雰囲気を感じ、あっさりと信じる二人。或いは嘗ての記憶が影響しているのかもしれない。

 

「あのウォズは白っぽいから白ウォズ……黒っぽいウォズだから……黒ウォズだっ!」

「……君のネーミングセンスが相変わらずで何よりだ」

 

 区別する為のあだ名を付けるソウゴに黒ウォズは何とも言えない表情を浮かべていた。

 ソウゴとツクヨミが黒ウォズと会話している間に海東は人知れず去ろうとする。

 

「待て」

「──何かな?」

 

 黙って去ろうとする海東をゲイツは呼び止める。

 

「結局のところ、お前は自分の力を取り戻す為に俺や俺の仲間たちを利用していたんだな?」

「だとしたら?」

 

 悪びれる様子もなく素直に認める。

 

「忘れ物だ」

 

 ゲイツは拳を握り締める。それを見た海東は身構えることはしなかった。

 放たれる拳。それを甘んじて受け入れようとする海東であったが、来る筈の衝撃はなかった。

 ゲイツの拳は寸止めされていた。

 

「これで勘弁してやる」

 

 そう言ってゲイツの拳は海東の頬を軽く押す。

 

「良いのかい? 折角の機会なのに」

「色々と言いたいことはあるが、お前に助けられたのも事実だ。その分チャラにしないと不公平だろ?」

 

 不機嫌そうな表情で言うゲイツ。上手く利用されたことに納得し切れてはいないが、だからといって全てを許さない訳ではないと海東の所業を呑み込んでいる。

 

「あと、次からはちゃんと言え。力ぐらい貸してやる」

 

 ゲイツの厚意を聞き、海東は小さく笑った。

 

「気に入ったよ。今回のことは君への借りにしておく。僕に借りを作ったことを光栄に思いたまえ」

 

 海東はゲイツから離れて行き、その背が見えなくなる間際に振り返る。

 

「また会おう」

 

 銃を撃つジェスチャーを再会の言葉を残し、海東は去って行った。

 

 

 ◇

 

 

 ゲイツたちから離れ、この世界とも別れようとしていた時、カシャという音が鳴り海東は足を止める。

 物陰に背中を預けている男性。首から二眼レフのトイカメラを提げており、先程の音はシャッター音であった。

 

「俺もお前が頭を下げてお願いしたら、手を貸しても良かったぞ?」

「盗撮に盗み聴き。随分と狡くなったじゃないか、士」

 

 男の名は門矢士。仮面ライダーディケイドであり、海東とは腐れ縁な関係である。

 

「君に頭を下げることなんて永遠に無いさ。そもそも借りを作るのなんて死んでもごめんだね」

「ふん」

 

 海東の憎まれ口を士は鼻で笑う。

 

「……まだ持っていたんだな」

「うん? ──ああ、これのことかい?」

 

 海東はディケイドのライダーカードを取り出し、士に見せる。

 

「とっくの昔に捨てたもんだと思っていた」

「捨てる訳ないさ」

「さっさと捨てて忘れればいいものを……」

「忘れる訳もない」

 

 士が顔を顰める。そのディケイドのカードには士も思うところがあった。

 

「仮面ライダーなんて基本的には皆お人好しだからね。君のしたことなんて簡単に水に流してしまう。だからこそ僕が代わりに君への戒めになってあげているんだ。二度と同じ事をしないようにね」

 

 薄っすらとだが滲み出る海東の怒り。士もその怒りは正当だと受け入れているのか反論はしなかった。

 

「──で? 力を取り戻した後はどうするんだ?」

 

 これ以上この話を続けるのは分が悪いと思い、士は話題を変える。

 

「そういえば、君に新しい後輩が出来たそうだね?」

「──おい。何を考えている?」

「なに、ちょっと挨拶をね」

 

 すると、銀色のオーロラが出現し、海東はその中へ入っていく。

 

「おい! 待て海東!」

「追い掛けて来なよ、士」

 

 海東はそう言い残し、オーロラの中へ消えていった。

 士は溜息を吐き、同じくオーロラを出現させる。オーロラに入る間際、士はある方向を見た。

 

「じゃあな。魔王に救世主」

 

 士はオーロラを通り、海東を追ってこの世界から去った。

 




戦いは終わり、次は後日談となります。
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