仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~   作:K/K

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これにて完結。


明光院ゲイツ2018

 海東が去っていくのを見送ったゲイツは、ソウゴたちの方を見る。黒ウォズが恭しくソウゴに礼をしており、自分がどのような存在かを詳しく説明していた。

 ソウゴは突然出来た家臣にテンションを上げて喜んでおり、ツクヨミの方は黒ウォズを若干胡散臭そうに見ながら、無邪気に喜んでいるソウゴに呆れていた。

 それは嘗ての光景と重なるようで重なり合わさない。ゲイツとは違って変身能力は取り戻したが記憶まで取り戻してはいない。ゲイツの知る彼らとは若干性格も異なる。

 しかし、安易に重ねるのもこの時間を生きる彼らには失礼だと思う。今の彼は明光院ゲイツだが、同時にこの時間を生きる明光院景都でもあるのだ。

 

「──盛り上がっているな」

 

 すぐに打ち解けているソウゴと黒ウォズを半眼で見るゲイツ。

 

「……そういえば奴らはどうした?」

「奴らって……ああ、飛流たちのこと?」

「それなら戦いが終わったすぐ後に帰ったわよ」

 

 飛流は決着が付く前に姿を消したが、ジョウゲンとカゲンはアナザーディエンドCPの呼び出した怪人たちを全滅させると何処かへ行ってしまった。

 

「……何か言っていなかったか?」

「うん、言ってた。『また会おう』って」

 

 ゲイツと黒ウォズは同時に顔を顰めた。

 

「加古川飛流はともかく、奴らは何者なんだ?」

「さてね。今のところは敵に回るつもりはないらしい」

「──おい、黒ウォズ。知ったようなことを言っているが、本当に分かっているのか?」

「勿論さ。彼を通じてある程度は外の様子を把握出来ていたからね」

 

 鳩尾の辺りを擦り、何処から見ていたのかアピールする。事情を知っているゲイツは気色悪そうに見ていたが、事情を知らないソウゴとツクヨミは言葉の意味もジェスチャーも分からないので頭に? マークを浮かべている。

 

「白ウォズは奴らのことを知っていた──お前も知っているな?」

「ああ。だが、どういう訳か我々の味方をしてくれた。本当なら襲ってきてもおかしくない筈なのに。どうやら向こうも忙しいらしい。原因は一体何なんだろうね?」

 

 詳細は語らず勿体ぶった言い方をする黒ウォズ。

 

「……ふん。やっぱりお前は俺の知るウォズだな」

「それはどういう意味だい?」

「全てを知っているような顔をしているのに断片的にしか語らない。俺がいつも殴ってやりたいと思っていたウォズだ」

「やれやれ。もう一人の私にも見せた優しさを私にも分けてくれても罰は当たらないだろうに──救世主なのだから」

「お前が言うと無性に腹が立ってくるな……!」

 

 鼻息を荒くし黒ウォズに詰め寄るゲイツ。気の置けない仲だからこそのやり取りと言える。

 嘗てを思い出させる和やかな空気が流れる中、突如として空間に金色の図形のようなものが浮かび上がる。

 

「うぇぇ!? 何!?」

「また敵!?」

 

 警戒するソウゴとツクヨミ。ゲイツと黒ウォズも身構えるが、黒ウォズは描かれている図形を見てある事に気付く。

 

「これは──」

 

 黒ウォズが何かを言う前に図形から何かが複数飛び出して来た。

 

「あぶねっ!」

「うおっ!?」

「くっ!」

「いてぇ!」

「うおっと!?」

「うっ!」

「ふん!」

「はっ!」

 

 

 飛び出して来たのは人であり、勢い余って転倒したり上手く着地したりするなどバラバラであった。

 出て来た者たちを見てゲイツたちは驚く。殆ど彼らが知る人物であったからだ。

 

「伊達先生に後藤さん!? 万丈さんも!?」

「照井さん!?」

「名護さん!?」

 

 ゲイツの主治医の伊達。その知り合いの後藤。トレーニング仲間の万丈。バウンティハンターの名護と刑事の照井もいる。

 

「あっ……無事だったんですね、草加さん」

「……まあな」

 

 ツクヨミを連れて来て到着と共に姿を消した草加を見つけ、ツクヨミは安堵する。草加の方は素っ気無い態度だったが一応言葉を交わす。彼の性格からすればまあまあ優しい対応である。

 

「あんたも来ていたのか……」

「ああ。君たちの手助けをするつもりだったが余計な回り道をさせられた……すまなかった」

 

 前に助けられた貴虎も居ることに気付いたゲイツ。貴虎の方は合流が遅れたことを詫びる。

 

「いやぁ、マジでやばかったな! 間一髪だった! キマイラには感謝だな!」

 

 仁藤が言うように彼らの帰還はギリギリのものであった。

 アナザーソーサラーを倒した仁藤。アナザーソーサラーが創り出した異空間から現実世界へ戻る──というお約束は無く、崩壊する異空間に巻き込まれて何処か分からない場所に落とされそうになってしまった

 キマイラに搭乗して難を逃れ、今度こそ帰還──という訳にはいかなかった。アナザーソーサラーが倒されたことで異空間同士を区切っていた壁が無くなり、連れて来られた他のメンバーを見つけてしまった。

 そこからは仁藤はキマイラを何とか説得して他のメンバーを崩壊する空間から拾い上げ、全員拾い終えると異空間から脱出した。完全に定員オーバーだったのでキマイラの機嫌を損ねてしまい脱出する間際、全員魔法陣の中へ投げ捨てられるという乱暴な方法で返されてしまったが。

 兎にも角にも生還出来たことを喜ぶ仁藤。ゲイツは仁藤をジッと見る。

 

「どうした?」

「……また助けられたな」

「また?」

 

 嘗ての記憶を持つゲイツとは違い、そんな記憶は無い仁藤は首を傾げる。

 

「──いや、こっちの話だ」

 

 ゲイツの方から一方的に話を切られ、仁藤は納得し切れていない表情をしている。

 

「なあ! おい! あいつ見なかったか!」

 

 そこに万丈が慌てた様子でゲイツに話し掛けてきた。

 

「あいつ?」

「海東の奴だよ!」

 

 万丈は何故か焦っている。何か良くないことでも起きたのかもしれないが、一歩遅かった。

 

「海東大樹なら帰った」

「帰った!? 何処に!?」

「分からない」

「えぇ……」

 

 海東に会うことが叶わず、万丈はがっくりと肩を落とす。

 

「おいおい。そんなに俺と離れたいのかよ。冷たい奴だなぁ」

 

 俯いた万丈が小声で呟く。声が小さくてゲイツは聞き取れなかったが、その声は万丈とは異なっており、また俯いている万丈の目は赤く輝いていた。

 

「おい! 勝手に喋ってんじゃねぇ!」

 

 顔を起こして急に声が大きい独り言を言う万丈にゲイツは怪訝そうな表情をする。

 

「──大丈夫か?」

「大丈夫っていうか、大丈夫じゃないっていうか、何というか……あああっ!」

 

 どう説明していいのか万丈の頭では整理出来ず、ヤケクソ気味に髪の毛をかき乱す。暫く見ない間に奇行が目立つようになった。

 

「……なあ」

「うん?」

 

 伊達がゲイツへ声を掛ける。

 

「平気なのか?」

「平気?」

 

 何を指して言っているのか分からず、ゲイツは眉間に皺を寄せる。

 

「足だよ、足」

「……足?」

 

 伊達が下を指差しているのでゲイツも視線を下に向ける。ゲイツの右足には今もしっかりとギブスが巻かれている。

 

「足……」

 

 戦いに夢中になり過ぎて自分の置かれている状況をすっかり忘れていた。戦闘の高揚で分泌されたアドレナリンが痛みを誤魔化していたのか。それともライドウォッチかライダーに変身していたからか。伊達に指摘されるまで足の負傷のことは頭の片隅にもなかった。

 しかし、気付いてしまったのなら魔法は解けてしまう。色々と酷使して来たツケが一気に来た。

 足の痛みが脳天まで一気に駆け上る。

 

「景都?」

「明光院君?」

 

 背筋を伸ばしたまま硬直するゲイツに二人は話し掛けるが反応は無し。暫くするとゲイツの体はゆっくりと後ろへ倒れていく。

 

「景都!?」

「明光院君!?」

 

 近くにいた伊達が慌ててゲイツを支える。ゲイツは白眼を剥いていた。痛みの情報がオーバーロードしてしまい、ゲイツは気絶していた。

 

「この馬鹿! 怪我人のくせに無茶し過ぎだ!」

「うわああああ! 景都!」

「明光院君!? 返事して! 明光院君!」

「救急車! 誰か救急車呼べ!」

 

 戦いの余韻を吹き飛ばす慌ただしさと混乱。

 救世主を巡る戦いは唐突に始まり、最後は賑やかに終わるのであった。

 

 

 ◇

 

 

 ジョウゲンとカゲンはクォーツァーの本拠地へ戻り、今回のことについて報告をする。玉座に座っているSOUGOは目を閉じたままそれを黙って聞いていた。

 

「そうか。ご苦労」

 

 報告を聞き終えたSOUGOはそれだけで済ます。詳細などを聞く様子もなく最後まで目を閉じたままであった。

『珍しい』とジョウゲンとカゲンは心の中で同じことを考える。普段は部下の前では傲岸不遜で常に覇気を纏っているSOUGOだが、それがいつもよりも弱い。部下であっても弱みを見せない男だというのに。

 

(もしかして──)

(──疲れているのか?)

 

 隠し切れない程の疲労。SOUGOにこれだけ消耗させられる相手は限られている。

 

(……加古川飛流がまだ戻ってないこと、言う?)

(止めておけ)

 

 自分たちの王を気遣い、飛流が勝手な行動をしている報告を後回しにするジョウゲンとカゲン。

 二人が飛流の名を出していた頃、飛流は独自の行動をとっていた。

 

「手に入ったか」

 

 額や口から血を流しているが拭わない。そんなことよりも目の前の物に飛流の意識は奪われていた。

 飛流が見ているのはライドウォッチ。そこには封じた仮面ライダーの顔が描かれている。

 かなり手古摺った分、得られた喜びは大きい。

 クォーツァーの監視が届かない間に飛流は自らの野望の為に裏で活動をしていた。監視の目を掻い潜っての行動は難しいが、ようやく野望の一歩目を踏み出せた。

 

「いつまでも飼っていられると思うなよ……!」

 

 クォーツァーへの反逆の意思が言葉となって零れる。クォーツァーの中で軽んじられていることは理解している。特にクォーツァーの王である常磐SOUGOからは完全に見下されている。適当なことを言われてバールクスの力を貰ったが、与えられた力で喜ぶ程飛流は子供ではない。

 飛流にとってバールクスの力も野望の為の踏み台にしか過ぎない。

 

「新しい時代を創るのはお前たちじゃない! ましてや常磐ソウゴでもない!」

 

 飛流はもう片方の手にブランクウォッチを握る。すると、黒い火花が散りブランクウォッチにアナザーライダーの顔が浮かび上がる。

 仮面ライダーとアナザーライダーの力。表と裏の力を揃え、真の王となる。

 

「新しい時代の王は俺だっ!」

 

 強く握り締めたライドウォッチとアナザーウォッチが飛流に呼応し、起動する。

 

『1号!』

『1号ォォ』

 

 

 ◇

 

 

 今より五十年後の未来。荒野に設けられた玉座に座り、瞑想するように目を閉じている老いた男性。彼は未来のソウゴでありオーマジオウ。

 

(……あの瞬間まで若き日の私と私の未来は重なっていた)

 

 タイムジャッカーのボスであるスウォルツとの決戦。戦いの最中にゲイツが命を落とした時、ソウゴはその怒りでオーマジオウへと覚醒した。

 これにより常磐ソウゴの未来はオーマジオウへと至ることが決定された。しかし、土壇場に於いてソウゴは一つの決断を下す。

 今までの思い出、経験。そしてオーマジオウの力を代償にして歴史を書き換えた。

 これにより常磐ソウゴがオーマジオウへ至る未来はリセットされた。

 しかし、未来に於いてオーマジオウは未だに健在。若き日のソウゴとオーマジオウとの関係が完全に断たれていないことを意味する。

 

(……厄介なことになったがな)

 

 歴史を書き換え、全てのライダーの歴史と取り込んだ結果、世界が崩壊することはなくなったが稀に見る混沌とした歴史を持つ世界が再誕した。

 ここまでならまだ何とかなったが、嘗ての戦いの爪痕としてスウォルツによって生み出された多数の並行世界がこの世界に目を付け、侵略者として襲撃してくるという新たな問題が発生してしまった。

 その影響かオーマジオウやクォーツァーですら認識していない仮面ライダーも登場する始末。

 どれ程の実力か試してみたが、四つ巴の戦いとはいえオーマジオウとバールクスでも倒し切れずに逃してしまった。おまけに久しぶりの疲労感も覚えた。

 あれクラスの仮面ライダーがこの世界に訪れることはそうそうないだろうが、目を光らせておく必要がある。

 

「前途多難だな、若き日の私よ」

 

 新生された世界は未だに多くの悪意や敵が息を潜めている。その戦いに巻き込まれないという保証は無い。

 

「しかし──」

 

 若き日の常磐ソウゴにはオーマジオウには居なかった仲間たちが居る。彼らの存在がどのように未来に影響を及ぼすのかオーマジオウの目でも見通せない。

 

「どのような未来を創造するのか。拝見させてもらおう」

 

 

 ◇

 

 

「何? 明光院が入院しただと?」

 

 進路指導室でスウォルツが怒りの表情をする。

 

「せ、先生! 怒らないで下さい!」

「怒ってはいない。明光院を心配しているだけだ」

 

 怒っているのではなくゲイツを心配して顔に力が籠っただけであった。

 

「それで? 明光院の状態は?」

 

 スウォルツはソウゴとツクヨミに容態を確認する。

 

「あの、ちょっと景都の怪我が悪化しまして……」

「日常生活に支障がないか精密検査の為の入院です」

「何故そんなことになった? まだギブスを付けたままだというのに」

 

 仮面ライダーに変身して怪人と戦ったせいです、とは言えないのでそれっぽい理由を捻り出す。

 

「ほ、ほら! 景都って松葉杖に慣れていなかったじゃないですか!」

「そ、そうです! 使い慣れていないせいでバランスを崩しちゃって、そのせいで!」

 

 上手く誤魔化せたとは思ったが、スウォルツの鋭い眼光が二人に向けられ、思わず息を呑む。

 

「それは……災難だったな」

 

 スウォルツの眉間に寄っていた深い皺が消えたのを見て一先ず安堵する。

 

「進路希望を聞きたかったがまた今度にするとしよう……決まっていたらの話だが」

「あ、それなら大丈夫だと思いますよ」

「何?」

「景都はやりたいことが見つかりました」

「ほう?」

 

 進む筈であった未来を失い、やりたいもハッキリと分からずに人生の迷子となっていたゲイツが自分の進む道を見つけた。スウォルツは教師として安堵すると同時に興味を持つ。

 

「景都は──」

「その話は明光院から直接聞くとしよう。近い内に俺から訊ねる、お前たちは明光院にそのことを伝えておいてくれ」

 

 二人は頷き、スウォルツに頭を下げて進路指導室から出て行った。

 一人残ったスウォルツは、虚空に向かって話す。

 

「──居るのだろう?」

「ええ。ここに」

 

 返事の後、何もない空間から浮き上がるようにゼインが出現する。今まで全く空間転移か透明化か。どちらにしろ直前までスウォルツにその存在を気付かせなかった。

 

「ふん。てっきりオーマジオウかクォーツァーに消されたと思っていたぞ」

 

 戦いの最中に見当たらなくなったゼインに嫌味を言う。

 

「あの戦いは私にとっても危ういものでした。救世主としての道を断たれる危険性もありましたが、貴方の助力で無事に切り抜けることが出来ました」

 

 ゼインが言うようにあの四つ巴の戦いではなし崩し的にスウォルツとゼインは共闘し、オーマジオウとバールクスに対抗していた──そうせざるを得なかった。

 侵略者と戦い、その力を奪って自らの力を進化させていたスウォルツでも何とか抵抗するのが精一杯であり、改めて敵の強大さを知る。

 

「とっととこの世界から去ればいいものを……合理的に見えて意外と危機感が薄いのか?」

「前にも言いましたが、この世界には私が求める悪の情報がまだ多く眠っています。それを解析するのが今の私の使命です」

 

 相変わらず得体の知れないゼインにスウォルツは眉間の皺が深くなる。正義や善の名の下に悪や悪意を駆逐することを目的としているが、ゼインの正義や善には熱を感じない。血の通った思想ではなく無機質で冷たいシステム的な印象しかない。

 

「……俺にお前の使命に付き合う義務は無いが?」

 

 前は成り行きで手伝いを認めたが、ゼインの力と考え方をより知ったことでゼインを危険視していた。下手をすれば侵略者たちよりも質が悪いかもしれない。

 スウォルツからすればとっととこの世界から去って欲しいのが本音であった。

 

「そう言われるのは想定済みです」

 

 鼻に衝く見透かし言動の後、ゼクスはスウォルツの前に何かを置く。

 

「正義や善は見返りを求めないものですが、貴方はまだそこに至ってはいないようなので私から貴方に見返りを用意しました」

 

 スウォルツの前に置かれたのは、ゼインドライバーとゼインプログライズキー。どちらもゼインに変身する為のツール。

 スウォルツは反射的にゼインの腹部を見た。そこにはドライバーもプログライズキーも在る。

 

「ああ、これは私の物ではありません。並行世界の私から()()したものです」

 

 さらりととんでもないことを言う。

 

「……俺に取り入る為にわざわざもう一人の自分から奪ったのか?」

「お気に召すかと思いましたので」

 

 奪われた並行世界のゼインがどうなったのかは語らない。スウォルツも訊いたところで不愉快な答えが返ってくると分かっていたので訊かない。ある意味ではこれも自己犠牲の一種なのかもしれない──歪んだ形をしているが。

 

「……そうか」

 

 スウォルツはゼインドライバーとゼインプログライズキーに触れる。ゼインはそれを同意と受け取った。

 

「ならば不眠不休で働いてもらうぞ。不平不満は受け付けんし、意見も求めん」

 

 今のやり取りでも伝わるようにゼインという存在は危険過ぎる。野放しにすればどんな被害が起こるか分からない。だからこそスウォルツはゼインを目の届く位置に置く。いつでも止められるように。

 

「ええ。これからよろしくお願いします」

 

 ゼインは友好を示すようにスウォルツへ手を差し出す。

 握手を求めている純白の手。スウォルツにはそれがどす黒く見える。だが、スウォルツは内心では笑っていた。自分の手もさして変わらない。

 スウォルツは差し出された手を強く握り返し、薄氷の如き協力関係が結ばれた。

 

 

 ◇

 

 

 押し寄せて来る悪意。彼らはこの世界を滅ぼす為にやって来た侵略者。その数は尋常ではなく見渡す限り敵しかいない。

 絶望が形になったような光景。しかし、それに立ち塞がる者たちが居た。

 最高最善になることを誓った魔王。そして全てを救うと決めた救世主。

 

『オーマジオウ!』

『ゲイツマジェスティ!』

 

 魔王と救世主の力を秘めたライドウォッチが起動。

 だが、戦う者たちは彼らだけではない。

 

『ツクヨミ!』

『ギンガ!』

『ウォズ!』

 

 魔王と救世主と共に長年戦って来た時の女王。そして、魔王と救世主に仕える白と黒の従者。

 援軍はそれだけでは終わらない。

 

『バールクス!』

『ゾンジス!』

『ザモナス!』

 

 敵対していた相手ですらも今回の戦いに手を貸してくれる。

 大敵を前に彼らの目的は一つとなり、声を揃えて叫んだ。

 

 

 ◇

 

 

「へん……しん……」

 

 病室のベッドの上で寝言を言うゲイツ。少し間を置いてからベッドから体を起こす。

 

「……何だったんだ? 今の夢は?」

 

 また変な夢を見た。ゲイツやソウゴらが戦うのはまだ分かるが、この間一緒に戦った得体の知れない連中まで混じっているのが良く分からない。

 

「……まさか、予知夢じゃないだろうな?」

 

 仮面ライダーに変身する前にも変な夢を見ていたことを思い出す。今後、夢に近い内容のことが起こるのだとしたら勘弁して欲しい。

 

「景都ー! 起きてる?」

 

 丁度、病室にソウゴとツクヨミが入ってくる。

 

「うん? ああ」

 

 ゲイツはベッドで座り直し、彼らを迎える。

 ソウゴとツクヨミは今日学校であったことを話す。スウォルツから近々進路の話があることも伝えた。

 

「──そうか。なら、その時にハッキリと言わないとな。俺は世界を救う救世主になる、と」

 

 憑き物が落ちたかのようにスッキリとした表情で言い切るゲイツ。柔道の道を断たれたことは既に過去の事になっていた。

 

「スウォルツ先生、聞いたら驚くでしょうね……」

「俺も王様になって世界を良くしたいし。景都! 一緒に頑張ろう!」

 

 ソウゴとツクヨミもゲイツの新しい夢を否定せず、寧ろ応援する。

 三人の仲はあの戦い以降より強く深まった。

 その仲睦まじい様子を隣の建物から黒ウォズが見守っている。

 

「普通の高校生常磐ソウゴ、明光院景都、月読有日菜。彼らは仮面ライダーとしてこの世界を救うという大きな使命と過酷な未来が待っていた。一度は歴史が改変され、新しく創造された世界。彼らの関係は元に戻りつつある。これが幸か不幸かは……私が決めることではないか」

 

 三人に暖かい目を向けながら黒ウォズは『逢魔降臨暦』を閉じる。

 

「これから先、多くの試練が彼らを待ち受けているだろうが……まあ、大丈夫だろうね。彼らにはちゃんと仲間がいる。そして、忠臣である私もね」

 

 黒ウォズは建物の縁に腰を下ろし、ゲイツたちを見る。

 

「その時までゆっくりと待つとしよう。出来れば一日でも長く続くことを願って」

 

 魔王の忠臣の家来にして預言者は、未来を見ることをせず、今あるこの瞬間瞬間を生きる彼らの幸福を祝い、願い続けるのであった。

 




今後イメージとしてはまだ終わっていない平成ライダーの物語を一緒に解決したり、クォーツァーと衝突したり和解したり、未知の敵と戦うという展開になっていく感じです。
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