仮面ライダージオウIF NEXT TIME~ゲイツマジェスティ~ 作:K/K
2号ライダーではないですが出したくて出しました。
グレートクローズから逃げろと言われた時、ケイトは言われるがままその場を離れるべきであった。だが、背後から感じてしまったプレッシャーに思わず振り返ってしまう。
ケイトを遥かに上回る巨体が長く尖った牙を見せながらこちらを見下ろしている。
蛇に睨まれた蛙というものがどんな気持ちなのかケイトはこの時嫌でも味わう。
(逃げろ!)
脳から出た指令が体を動かそうとする。だが、体はケイトの意思に反するかのように動かない。
恐怖で足が竦んでいる──という訳ではない。恐れは確かにあるが指一本動かせない程のものではない。恐怖を振り切り体を張ってグレートクローズを助けようとしたケイトが今更この程度の恐怖で硬直する訳がない。
碧色に輝くアナザーブラッド・コブラの眼光。それを浴びせられるケイトは気付く。
(まさか! あの眼か!)
催眠術のようなものをかけられているのでは、と推測する。しかし、その答え合わせをすることは出来ない。何故ならアナザーブラッド・コブラの牙が容赦なくケイトへ振り下ろされたからだ。
(逃げられん……!)
死という言葉が頭を過った時──
「うおおおおおおおっ!」
突っ込んで来たグレートクローズがケイトに体当たりをして強引にその場から動かす。
「ぐほっ!」
無防備な状態だったのでグレートクローズの体当たりは体がへし折れそうなぐらいに強烈だったが、牙を免れることは出来た。
しかし──
「万丈さん!」
ケイトは見た。自分に突き立てられる筈であったアナザーブラッド・コブラの牙がグレートクローズの背中を深く切りつけるのを。
「くっ……!」
背中の痛みですぐには立ち上がれないグレートクローズに、アナザーブラッド・コブラは牙を剥いてとどめを刺そうとする。
「させるか!」
『You! Me!』
弓モードのジカンザックスをアナザーブラッド・コブラに向け、光矢を連射する。細かな狙いはなく一発でも当たってグレートクローズが逃げられる時間を作れればそれで良かった。
頭、胴、尾へでたらめな狙いの光矢が飛んでくる。アナザーブラッド・コブラは当たるのを嫌がり体をくねらせて光矢を躱す。ケイトの妨害によってグレートクローズへのとどめが刺せずにいるアナザーブラッド・コブラは、それに苛立ちを覚えたのかケイト目掛けて尾を振るう。
鞭の如き速度で振るわれた尾にケイトは反応出来ず、尾先がケイトの胴を強かに打った。
「がはっ!」
ケイトの体はくの字に曲がり、地面を何度も跳ねていく。
邪魔をするケイトを排除したアナザーブラッド・コブラは改めてグレートクローズを始末しようとした。
「うおらっ!」
グレートクローズの拳がアナザーブラッド・コブラの顎にめり込み、そのまま突き上げる。
アナザーブラッド・コブラにやり返したグレートクローズ。このまま反撃かと思われたが、忘れてはいけない。
アナザーブラッドたちはあと三体も居る。
アナザーブラッド・ゼブラが両腕を地面に叩きつける。剛腕から繰り出される破壊は地面に亀裂を生じさせ、それがグレートクローズの足元まで伸びていく。グレートクローズの足元に辿り着くと地面を伝わっていた力が爆ぜ、グレートクローズの足元を壊す。
「うおっ!?」
突然地面が爆散したことに驚く。飛んで来た破片などによるダメージは無い。そもそもアナザーブラッド・ゼブラは攻撃の為に行ったのではなく、相手の注意を逸らすこと、そして相手が咄嗟に逃げられないようにするのが目的であった。
風を切り裂きながら一直線に飛ぶアナザーブラッド・シザーズ。下半身の刃を閉じ、グレートクローズを貫く為の凶器となろうとする。
「んなろっ!」
不安定な足場の為、スムーズに回避動作に移れない。それでも持ち前の反射神経と根性でギリギリまで諦めず、体を捻って何とかアナザーブラッド・シザーズの突進を躱そうとする。
その甲斐あってか紙一重で串刺しは避けられた。だが、グレートクローズが躱すと同時にアナザーブラッド・シザーズは下半身を広げ、ハサミの刃でグレートクローズの胴体を傷付ける。
脇腹付近を切られたグレートクローズはその場で膝をついてしまう。だが、敵が待ってくれないことを理解しているのですぐに立ち上がって構えようとする。
そんな不屈の闘志を持つグレートクローズの眼前に立つのはアナザーグレートクローズ改めアナザーブラッド・ドラゴン。
グレートクローズのビルドドライバーを鷲掴みにすると同時に蒼く燃える拳をグレートクローズの顔面へ叩き込む。
「がはっ!」
殴り飛ばされるグレートクローズ。しかし、ビルドドライバーはアナザーブラッド・ドラゴンに掴まれている。これまで蓄積したダメージと後方へ飛ばされていく衝撃によりビルドドライバーが外れてしまう。
当然ビルドドライバーを取られたグレートクローズの変身は解除され、万丈の姿へと戻ると生身で固い地面を転げ回ることになる。
万丈からビルドドライバーを奪ったアナザーブラッド・ドラゴンは、それを万丈とは反対方向へ投げ捨てる。それにより簡単に取り戻すことが出来なくなってしまう。
変身手段を失い、仮面ライダーからただの人間へと戻ってしまった万丈。それを見てしまったケイトの心の中に生まれるのは悔恨。
(俺が……もっと上手く戦えていたら……!)
仮面ライダーとしてちゃんと戦えていたらこんな窮地にまで追い込まれなかった。少なくとも万丈一人なら逃がす事が出来た筈。
ウォズはケイトを救世主といったが実態はそれとは程遠い。救世主どこから仮面ライダーとしても未熟。
「──はっ。そんな顔すんなよ」
悔やむケイトを励ますのは、誰よりも戦い、傷付いている筈の万丈。
「こんなの、ピンチにもならねぇ……!」
万丈は気力を振り絞りながら立ち上がる。
「こちとらラブ&ピースがモットーの仮面ライダーだぞ? こんな何考えているか分からない奴ら相手に……負ける気がしねぇ!」
仮面ライダーとしての矜持。それが万丈を支える芯であり自らを奮い立たせる。
「それになぁ、ビルドドライバーが無くとも戦える方法はあるっ!」
そう言い万丈は新たなドライバーを取り出す。ボルトが填め込まれた水色の外装。右側にはレンチ型のレバー、反対側には溜め込む為のタンクが埋め込まれてある。
ビルドドライバーと形が大きく異なるそのドライバーの名は──
『スクラッシュドライバー!』
──射出されたベルトで固定されるドライバー自身が名を叫ぶ。
次に万丈が取り出しのはグレートクローズに変身した時のボルトではなく『DRAGON SCLASH JELLY』という文字とドラゴンの横顔が描かれたパウチ。パウチ内には変身した際に使用したボルトと同じ成分がゼリー状になって封じられている。
ドラゴンスクラッシュゼリーのキャップ部分を指で捻り、スクラッシュドライバー中央にキャップ部分を下にして挿し込む。
『ドラゴンゼリー!』
ルーティングのように万丈はファイティングポーズを構える。
「変身!」
レバーを倒すとセットされてあるドラゴンスクラッシュゼリーが左右からプレスされ、スクラッシュドライバーにパウチ内の成分を流し込む。万丈の周りをビーカーの形をした変身空間が出現。ビーカー内がドラゴンスクラッシュゼリーの成分で満ち、成分がビーカーごと変化して万丈は銀色のアンダースーツを纏う。
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
変身した万丈の頭頂部からゼリー状になったドラゴンスクラッシュゼリーの成分が噴き出し、上半身のアーマーと頭部を覆う仮面を形成する。
ドラゴンスクラッシュゼリーのパウチを模した両肩のアーマー。胸部にはパウチにも描かれてあるドラゴンの横顔。仮面は半透明のクリアブルーとなっており、黄色の目が透けて見える。
『ドラゴンインクローズチャージ! ブルルルァァァァ!!!』
異なるドライバー、異なるアイテムによって変身するクローズのもう一つの姿──仮面ライダークローズチャージ。
アナザーブラッド・ドラゴンは別の姿に変身しても意に介せず自動的に攻撃を仕掛け、蒼炎の拳がクローズチャージに打ち込まれようとする。
「おらぁ!」
それを迎え撃つクローズチャージの拳。拳と拳が激突し、青い爆炎が生じる。
競り勝ったのは──クローズチャージの方であった。
「おらぁぁぁぁ!」
クローズチャージがそのまま殴り抜ける。アナザーブラッド・ドラゴンは大きく後退し、動揺しているかのようにクローズチャージを凝視する。
アナザーブラッド・ドラゴンはグレートクローズの性能や技術を忠実に再現している。性能で言えばグレートクローズの方がクローズチャージよりも勝っている。なのに力負けしたことが理解出来ず機械にエラーが起きたように固まってしまう。
動かないアナザーブラッド・ドラゴンの代わりにアナザーブラッド・シザーズがブーメランのように飛び込んでくる。
『ツインブレイカー!』
籠手に一対の砲身が付いた武器──ツインブレイカーを構えると砲身から光弾を発射。
アナザーブラッド・シザーズは一発では止まらない。しかし、クローズチャージはその場から動かずツインブレイカーから光弾を連射し続ける。
「おらおらおらおらっ!」
巨大な刃が眼前まで迫っているというのに一歩も引かず、一転集中の砲撃。クローズチャージの胆力の前にアナザーブラッド・シザーズの方が屈し、軌道を変えられて近くの壁に激突する。
先の二体に続いてアナザーブラッド・ゼブラが両手を振り上げて走ってくる。
『アタックモード!』
砲身を後ろに向けると中央に収められていたパイル部分が展開する。クローズチャージも走り出し、高速回転するパイルをアナザーブラッド・ゼブラへ叩き込む。
「うおらっ!」
アナザーブラッド・ゼブラは両手の手甲でそれをガード。しかし、ツインブレイカーの一撃は手甲に亀裂を入れ、衝撃を受け切れなかったアナザーブラッド・ゼブラを殴り飛ばす。
「つ、強い……!」
ケイトは今のクローズチャージをそう評するしかなかった。あれだけ追い詰められていたのに今は圧倒している。その雄姿と奮闘は胸を熱くするものがあった。
「言っただろう──」
クローズチャージはビルドドライバーから離れて戻ってきたグレートクローズドラゴンをツインブレイカーのスロットに挿す。
『Ready Go!』
「こんな奴らに──」
クローズチャージはスクラッシュドライバーのレバーを倒す。
「負ける気がしねぇぇぇぇ!」
『スクラップブレイク!』
『レッツブレイク!』
スクラッシュドライバーとツインブレイカーからの二重音声。突き出されたツインブレイカーから蒼炎のドラゴン──クローズドラゴン・ブレイズが放たれ、次々とアナザーブラッドらを蹴散らしていく。
「まだだっ!」
クローズチャージは跳躍。そして何とクローズドラゴン・ブレイズの頭上に飛び乗った。そして、アナザーブラッドたちも簡単には手が届かない高所から次なる攻撃の準備に入る。
『ビームモード!』
ツインブレイカーの砲身を戻し、スロットに今度は錠前が描かれた金色のボトル──ロックフルボトルをセット。
『シングル!』
「もういっちょ!」
更にグレートクローズドラゴンから抜いたグレートドラゴンエボルボトルも挿す。
『ツイン!』
その状態でグリップのボタンを押す。
『ツインフィニッシュ!』
ツインブレイカーとクローズドラゴン・ブレイズから発射される蒼と金色の光弾。その光弾が命中すると爆ぜた光が鎖となりアナザーブラッドたちを拘束してしまう。
「おらぁぁぁぁ!」
鎖はツインブレイカーの砲身と繋がっており、クローズチャージがそれを引っ張ると縛られているアナザーブラッドたちが引き寄せられ一か所に集まる。
クローズチャージはクローズドラゴン・ブレイズと共に高く飛び上がり、最高点に到達すると今度は急速落下。
『アタックモード!』
ツインブレイカーを再びアタックモードにし、スクラッシュドライバーのレバーを叩く。
『スクラップブレイク!』
『ツインブレイク!』
アタックモード時での必殺技の二重発動。高速回転するパイルが蒼炎で輝く。
「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
クローズチャージはクローズドラゴン・ブレイズを蹴って降下。すると、クローズドラゴン・ブレイズがその背に向けて蒼い火球を吐き出す。
クローズチャージはそれを纏い、蒼いエネルギーの塊となってアナザーブラッドたちの頭上へ落ちてくる。
「喰らいやがれぇぇぇ!」
叩き込まれるツインブレイカー。その瞬間、蒼い爆炎が全てを包み込んだ。
その光と爆風に目を閉じてしまうケイト。次に彼が目を開けた時には爆心地のようなクレーターの上にツインブレイカーのパイルを突き刺して一人立っているクローズチャージの姿。
「凄まじい……」
クローズチャージによる圧巻の逆転劇。ケイトはそれを呆然とした様子で見ていた。
クローズチャージの周囲に残る赤い液体の染み。それはアナザーブラッドたちの残骸。その中でクローズチャージは呟く。
「くそっ……仕留め損ねた……!」
「──何だって?」
悔やむクローズチャージの言葉に思わず聞き返してしまう。その直後に地面が割れ、そこからアナザーブラッド・コブラが這い出てくる。
クローズチャージの攻撃が命中する直前、アナザーブラッド・コブラは自身の体を縮小させることで鎖の拘束から脱け出し、地面の中に逃げ込むことでクローズチャージの攻撃を免れていた。
肩で息をするクローズチャージを見下ろすアナザーブラッド・コブラ。渾身の反撃を切り抜けられたクローズチャージ。疲労も大きく同じような攻撃をするのは厳しい状態である。
アナザーブラッド・コブラはそのままクローズチャージに喰らいつくのではなく体から血管のような管を伸ばす。伸ばした先には液体となっている他のアナザーブラッドたち。
突き刺した管がそれらを吸い上げていく。
クローズチャージ、ケイトの背中に最大級の悪寒が走る。今以上に良くないことが起こると本能が警鐘を告げている。
しかし、今の二人にはそれを止める術がない。
今度こそ逆転不可能な絶対絶命。
その時であった。
『メロンスカッシュ!』
何処から飛んで来た黄緑色に発光する巨大な盾。メロンのような意匠が施されたそれはブーメランのような軌道でアナザーブラッド・コブラの頭部を吹き飛ばす。
頭部を失ったアナザーブラッド・コブラの体はそのまま液体化し、地面に溶け込むようにして消えてしまう。
蓄積したダメージが大きくなり姿を維持出来なくなったのか、それとも謎の攻撃をしてきた相手を追いに行ったのか。
詳細は分からないが、少なくともケイトとクローズチャージはこの戦いを生き延びた。
「何だったんだ? 今のは……?」
クローズチャージは変身を解きながら疑問を口に出す。自分たちを助けてくれたメロンのような大盾も何処かへ飛んで行ってしまった。
「──まあいいか。助かったし」
細かいことは気にせず前向きに考える万丈。彼は既に変身を解いている景都の傍に駆け寄り、彼に手を差し伸べて起こす。
「大丈夫か?」
「……すみません。足を引っ張ってしまって……」
「はあ? 何言ってんだ? お前?」
そんなことを微塵も思っていない万丈は景都の発言に心底意味が分からないという表情になる。
「お前、俺のこと助けてくれたよな?」
「いや、それよりも足手まといに──」
「いいんだよ、細かいことは! 俺もお前も助け合った! それだけのことだろ?」
景都に負い目を感じさせない為にわざと明るく言っている、というよりも本当に本心からそう思っているとしか思えない万丈の言葉。
これ以上あれこれ言うのは無粋だと景都は判断する。
「──そうですね。その通りです」
「よし! あ、何か腹減ったしメシでも食いに行くか? 腹一杯肉食えるところを知っているから肉食いに行こうぜ!」
「え? あ! ちょっと!」
景都は万丈に半ば強引に連れられて肉を食いに行くこととなる。
そんな二人のやりとりを暖かく見守っている人物。ネクタイは締めていないスーツ姿だが、だらしなさはなく頭から爪先まで全く一分の隙が無い何処か貴族然とした男性である。
「あまり勝手に行動してほしくないんだけどねー」
やれやれと言った態度でその人物の背後に現れたのは、バースたちの前にも現れた自らを怪盗と呼ぶ青年。
その青年が現れた瞬間、暖かな眼差しは一気に刀剣の如き鋭さを放つ。
「確かに貴様に協力するとは言った。だが、指示に従うとまでは言った覚えはない」
突き放すような言葉に怪盗の青年は肩を竦める。
「君、協力者ならもう少し友好的に振る舞いたまえ。呉島貴虎君?」
「貴様を信用していないということだ。海東大樹」
という訳で貴虎も参戦します。
前作でバロン、デュークを出したので今作では斬月が助っ人です。