哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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先に言っておきましょう!
ここがこんなに冷めてる代わりにSEKIHEKIは熱くなる()と!


第十二章戦闘パート……と言ったら嘘になる

 私の強みは何か。

それは、デカい身体と武装の豊富さである。

体が大きいということは、それだけで広いリーチと高い攻撃力、防御力を生み出すのである。……氣の力で物理法則を捻じ曲げる奴らには敵わないが。

そして豊富な武装は、相手の虚を突くと伴に、自分自身に安心感を与えてくれる。一手防がれればまた次、その更に次、というように。

 しかし、その長所は恩恵と同時にちょっとした問題も生み出した。

乗れる馬が限られるのだ。

私の隊は歩兵隊とは言え指揮官……つまり課長以上は馬に乗っている。もちろん私もだ。多少なりとも目線が高くなり、戦場を見渡しやすくなるし、もちろん指揮官として素早く移動できるようにする必要がある。

しかし、私の馬は私の巨体+武装を背に乗せ、戦場を駆け、時に武器を振るう私の下で踏ん張るという重労働に耐えなければならない。

よって、大きくタフな馬でなければ私の馬になれないのだ。

 その点、黒王号(仮)は優秀だった。

奴は、私が部隊長として召し抱えられることになった際に華琳から与えられた馬だった。その名の通り、濡れた鴉の羽より黒い毛並みと他の馬が仔馬に見えるような巨体が印象的で、大きすぎて私が現れるまで乗り手が無かったというほどだ。『寝る子は育つ』ということなのか、寝ることが好きであり、黒い毛並みのせいで温もりすぎるのを避けるためかよく日陰でうずくまっていたのを覚えている。普通、馬は立ったまま眠るというから、黒王号(仮)がどれだけ寝ることに全力を出していたのかが窺い知れる。

まだ装備の少なかった時期というのもあるだろうが、蹌踉めいたりすることは極めて稀で、安心して戦うことができた。が、残念ながら、反董卓連合の際のかゆうまとの一騎討ちで首を撥ねられて死んでしまった。全く惜しい馬を亡くしたものだ。余りに惜しかったものだから、ただ死なせておくのは勿体無いと思い、直後の宴会でそれと言わずに劉備陣営の皆さんに振る舞ってやった。

 次の黒王二号(仮)は……ギリギリ及第点といったところか。

元より、応急処置的に私の馬になったもので、黒王号(仮)より一回り小さく、また毛並みも特筆すべきことは無い、普通の栗毛だった。

基礎能力は単純に黒王号(仮)の下位交換だったし、何より問題だったのは、いつまで経ってもシャウトに慣れなかったことだ。私や部下が号令を出すたびにビクリと身体を硬直させていた。元来臆病な性格だったようだから、軍馬になったのは不幸としか言いようが無い。そんな不幸な二号はその最期も残念なもので、猪々子との戦いの間に斬山斬に巻き込まれて消し飛んでいたのだった。

 黒王三号(仮)は利口な馬で、シャウトにもすぐに慣れた。それに人懐っこく、私にもよく懐いた。てんでダメだった二号の次だったせいか、私も三号を気に入って、休みの日には遠乗りに出ることも多かった。……と言っても、袁紹を倒し、領土が広がって急に忙しくなった時期だったから休み自体が少なかったし、三号は蜀からの侵攻の迎撃戦で行方不明になってしまった。遠乗りは実際のところ十回もしてないと思う。三号のことだ……戻って来ないということは死んだんだろう。仕方ないから、代わりに敵から奪った白馬を料理しようと思ったが、その白馬は華琳に取り上げられてしまったので、結局馬刺にはありつけなかった。

 黒王四号(仮)には特別な思い入れは無い。有るとすれば、斑模様の毛並みがちょっと汚く見えたな、というくらいなものだ。何の不満も感動も無かったし、大きな戦は、私の出番は城内や山中などだいたい馬から降りての作戦だったからだ。そういうわけで四合は戦で命を落とすことは無かったが、この度五号と入れ替わりのためお役御免となった。

 そして、今私が跨っているのが黒王五号(仮)である。

初代にも引けを取らないほどの黒い毛並みを持ち、その巨体は正に『小山のよう』だ。重厚且つ堅実な足取り、時に驚く程の機敏さを見せる様は関取を思わせ、三日月形の角が最高にCOOL。

黒王五号(仮)は水牛だ。

定軍山から戻って以来、順調に装備を充実させていた私だったが、ついに靑さんに『馬の負担も考えろ』と怒られてしまった。そして、『じゃあもう馬なんか乗らねーよバーカバーカ』と内心逆ギレして新しい乗り物を探すことにした。

そして辿り着いた答えが水牛(次点で象)。初め、単純に頑丈そう、ということで試してみたのだが、使い易いことこの上ない。安定感が有り、突進力が非常に強い。元より、暫く飼い馴らせば虎にも圧勝するというほど戦闘力の高い生き物である。最強の名馬である赤兎馬が小型犬になってしまっているこの世界、当たり負けすることはほぼ無いと見て良いだろう。それに、水牛の頭の位置は低く、特に突進する時など地面スレスレまで下げる。これによって、私は殆ど思うままに武器を振り回せるのだ。胴の上にニョッキリと首が伸びている馬ではこうは行かず、騎馬同士での討ち合いの場合、動きがかなり制限される(だいたい突きばかりになる)ものだ。それが解消されたというのは、特に、多彩な技が売りの私にとっては大きい。一つだけ気掛かりだった速度の面も、多少は馬に劣るものの問題無いレベルだった。ゲップとクソがやたら臭い以外 五号は完璧だ。

今も、私が乗っているのを気にも止めずに足元の草を食んでいる。

 

「お前なかなかの大物やなぁー」

「モ゛ーーー」

 

首元を軽くたたきながら声をかけてやると、眠たげな声を返してくる。……牛って癒やし効果有るよな。臭いけど。

 

 孫尚香との戦闘はどうしたのか、って?

……前衛が全部やってくれました。しかも、その前衛も、圧倒的戦力差そのままに呉軍をガリガリ削って行き、敵も何の捻りも無く普通に撤退していったもんだから見せ場の一つも無い。いや、途中で甘寧が廻り込んでこちらの本陣を狙おうとするような動きを見せたには見せたが、ソッコーで霞に追いつかれて捌かれてしまった。

 我が隊の専門は迎撃と特殊環境下での戦闘。圧倒的勝利に終わった野戦ではもちろん出番は無かったし、相手は城からも完全に出払ってしまったため城内戦も無い。現在は、真桜率いる工兵隊が城の状態を確認する作業を行うのを待っているのである。

 何か、これ、大丈夫なのか?対袁紹戦の方がまだ盛り上がっていた気がするんだが。私なんか暇すぎて延々といらんことを考えていたぞ。

……い、いや、嵐の前の静けさだ。多分。何と言っても、次にはSEKIHEKIが控えている。つまりこれは本命の策の前に、ワザと気の抜けた戦いをさせることによってこちらの士気を下げる策!おのれ周瑜!さすが汚い!

 

「伝令!『城内の安全確認終了。鑑惺隊は華雄隊に継いで入城すべし』とのこと。また、入城直後に隊長格での軍議が有るとのこと!」

「お、おう。下がって良し」

 

こうして魏は何の困難も無く呉侵攻の拠点を手に入れた……。

……まぁ、犠牲が少ないことは良いことだな………?




魏ルートは後半になるほど盛り上がりに欠けますね。
原作では一刀さんの消失云々が効いてくるところですね。

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