哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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何か最近、また下ネタにハマりました。下品なことが言いたくて仕方がないです。

このイベントの後、拠点フェイズを再度挟んでSEKIHEKIに臨みます。


第十二章X節その一

 孫尚香との戦闘から数日経ち、補給線も治安もほぼ計画基準に達しつつある。随分早い気もするが、それもそのはず。この城の近辺は元々袁術派の勢力圏だったのだ。呉はちゃん美羽が孫堅から奪い取ったというイメージが強いが、実のところ、ちゃん美羽がトップになってから広がった領土も広い。もちろんそういうところでは孫家と民衆の繋がりも無いため占領作業に苦労することは無いのだ。ヤバイ。ちょろい。もしかしてフラグか?ここらで左慈ェが出張って来たりしないよな?

 

「ぬ、どうしたのじゃ聆よ。妾が話しておるというにぽへ〜っとしおって。ちゃんと聞いておるのかや?」

「聞いとる聞いとる。乗っ込み鮒の旬についてやんな?でももう過ぎたんとちゃう?」

「全然違うのじゃ!妾が話しておったのは春頃に川で見た魚の大群のことじゃ!」

「それが乗っ込み鮒っていうんですよ。お嬢様」

「む、そうなのかや?」

 

……まぁ、ちょろいおかげでこうしてお茶会(今回は補給部隊の護衛のため春蘭が欠席)ができるのだが。

 

「あー、なんか魚食べたくなってきたなー」

「そんだけ口ん中に菓子詰め込んでまだ魚食べとぉなるか……」

「魚は別腹だぜ」

「どうせ肉と野菜と穀物も別腹なんやろ?」

「へへっ、まぁな」

「だが嵬媼も他人のことは言えないだろう」

「何がーな」

「酒」

「でもそれはアレやん、えーと――

「報告っ!侵入者有り!数は二!少々の押し問答の後、門番を薙ぎ倒して侵入したとのことです!」

 

来たか……!

 

「レイ姉!」

「まぁそう焦るなや」

「何を言っているんだ嵬媼!拠点が襲撃を受けているのだぞ!」

「相手は正門から来とんや……こっちと真正面から当たるつもりやろ。ここは中庭……城の中央付近や。ゆっくり向かっても顔合わせることになるやろ」

「でも早いに越したことは無えじゃんか」

「相手は、こっちが焦ってバタバタ動くことを予想しとるやろからな。むしろ余裕こいて行ったら有利になれる」

「うーん、私は囮の可能性を心配してますけど……。伝令さん、華琳さんの警護はどうなっていますか?」

「はい!典韋様がなさっています」

「んー、んだらかゆうま、そっち行ってくれ。私と猪々子で様子見てくるから」

「……………分かった」

 

何かエラい間が有ったな。だが、警護にも廻ってくれるようになった辺り、かなり成長している。昔なら、今頃侵入者に突っ込んでいるところだろう。

 

「七乃さんと美羽様は……七乃さん、よしなに」

「はいー。任せてください」

「うむ。そちらも必ず賊の首を取るのじゃぞ」

「まぁそれは何とも。……行くで猪々子」

「おう!」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 最後の扉をくぐって正面の広場へ出た。一刀と秋蘭、真桜の前で侵入者の片方……黄蓋と霞がやりあっているところだ。……と言っては語弊が有るな。実際には、霞の攻撃は尽くいなされてカウンターをもらいまくっている。……って、あー、ぶっ倒された。原作でも『えっ?』ってなったが、実際見てみるとやはり恐ろしく強い。まず、もちろん霞への対応。あれは、『反応が早い』という感じの動きではない。正しく『相手がどう動くか分かっている』動きだ。むしろ誘導しているようにさえ見える。そしてもう一つ。霞の体をブラインドにして秋蘭の援護射撃を封じていたのだ。単純な戦闘能力に加え、周囲の状況を察知してゲームメイクする頭脳をも持ち合わせているということだ。そしてこれが弓や刀、篭手すらも装備していないガチ素手での戦果で有るというのも付け加わる。これは、ダメだ。マトモにやって勝てるワケが無い。私の能力では倒せない。

 

「きゃんっ!」

 

……って、代わって挑んだ真桜も瞬殺された。死んでないけど。

 

「レイ姉」

「分かっとる」

 

俄に殺気を噴き出しかけた猪々子の肩に手を置き落ち着かせつつ、タイミングを見計らう。どうせ無理だが袖の中の隠し刀の確認もして。……最も自分のペースに持って行きやすい雰囲気で登場するのだ。人間関係というのは七割方ファーストコンタクトで決まる。ここからの二,三言で黄蓋に対して優位を取らなければならない。

 

「さて、次は貴公が来るか?それともそちらの優男か?」

 

したり顔で秋蘭と一刀を挑発する黄蓋。

……今です!

 

「第三の選択肢の私が通りますよー、っと」

 

いかにも何でもないように、近所の河原に散歩に出かけるくらいの穏やかな態度で。

 

「聆!」

「ほう?これはこれは、何が出てくるかと思えば毛の長い熊か?やれやれ、曹孟徳も奇っ怪な趣味をしているものよ」

「なんだと……」

「ちょ、落ち着け秋蘭!」

 

一瞬で堪忍袋の緒がブチ切れたらしい秋蘭。私はその一歩前へ出た。

 

「そう言うタレ乳のお前は何もんや?」

「やれやれ、相手の名を聞く前にまず自分の名を名乗るものだろう。いきなり殴りかかってくるヒヨッコ二人の次が無礼な獣とは……魏とは厄k

「私は『何者か』訊いたんどいや。名前なんか訊いとらんわ」

「…………?」

 

勝った。

戦いに勝利し、魏メンバーを煽りに煽って勢い付いていた黄蓋に謎哲学を吹っ掛けることによって停止させることに成功した。

一緒に来た猪々子含め周りに居る全員がポカーンとしている。

 

「何ボケ〜っとしとんじゃ。早よ答えんかいや(半ギレ)」

「ならお主は何者なのだ」

「毛の長い熊」

「認めるのかよっ!」

「……何だこの茶番は………」

「悪いわね。この娘、真面目な場面でふざけるのが趣味らしいのよ」

「華琳!」

「華琳様!?……お前たち、どうして華琳様をこんな所へお連れした……!」

「しかたないだろう。曹操本人が行くと言って聞かなかったのだ」

「申し訳ありません。お止めしたのですが……」

「そう。私が自ら『行く』と言ったのよ。……それよりこのザマは何?」

「喧嘩Party」

「……オホン」

「はい自重しまーす」

「そちらは呉の宿将、黄蓋ね。私は魏国当主曹操。この者達の無礼、主として詫びさせてもらうわ」

 

実際、城に乗り込んで大暴れした黄蓋の方が無礼なのだが。華琳も逆上するのは相手の思う壺だと理解しているのだろう。

 

「うむ。主君はそれなりに話の分かるものではないか。少々安心したぞ」

「皆が貴女の姿を知っていればこのような無礼は働かなかったでしょうけれどね。……出来れば、初めに名乗って欲しかったわ」

「おお、それはすまん。ついいつものクセでn

「は?意味分からん」

 

とにかく黄蓋の発言にちゃちゃを入れる。

黄蓋は圧倒的戦闘力を見せつけた後尊大な態度を取ることによって今後の発言力を得るつもりのはずだ。だから、そのテンポを悪くしてやる。これによって黄蓋のペースを崩し、場の流れをコントロールしやすくする。多少私への警戒が強くなるだろうが、それまでのこと。黄蓋は作戦のせいで決戦まで動けない。恐れることはない。大丈夫だ。多分。

 

「聆、ここは前まで呉の領土だったから黄蓋さんは何も言わなくても通れたんだ」

 

一刀が説明してくれた。うん、それ知ってる。

 

「それで、その呉の宿将殿が何の用や?まさか、ウチらにケンカ売に来ただけ……っちゅうことはないやろ」

 

いつの間にか起きていた霞が黄蓋に問いかける。

……スタンバーイ………。

 

「うむ。儂は売られた喧嘩を買ってやっただけj

「私に対して開口一番『毛の長い熊』っつったんはケンカ売っとったんとちゃうんけ? 」

「レイ姉、さっき受け入れてなかったか?」

「そう言えばそーやったな。ごめん、続けて?」

「え、ああ。曹操殿、少々話をさせてもらいたい。良ければ、席を設けてはくれんかの?」

「いいでしょう。流琉、手配を」

「はい!」

「華琳様!我々もぜひ同席を……!」

「ええ。黄蓋殿、構わないかしら?」

「無論だ。s

「んだらせっかくやから春蘭さんとかにも参加してもらわん?ちょい遅なるけど。でも遅ぉても明日には戻ってくるやろ?」

「聆、先程からえらく食い気味だな」

「ちょい厠行きたいん」

「……行ってこい」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――

 

 「……おい」

「はい」

「この書簡を」

「了解いたしました」

 

…………さて、準備は整った。魏のため部下のため、何より黄蓋のために。苦肉の策、完封してやる。




ちなみに作者は祭さんのこと結構好きです。損な役回りにさせて心苦しい……。

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