哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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ポテトチップスにコーク。マイブームです。

モタモタしてたら東方二次出す前に淫ピ録発売してまた設定練り直さなきゃならなくなるェ……。
なのに今更インド人ダンス動画ループから抜け出せなくなるなんて……。


第十二章X節その二

 「――我が軍に降りたいと?」

「左様。既に我が盟友、孫堅の夢見た呉はあそこには無い。ならば、奴の遺志を継いだ儂の手で引導を渡してやるのが、孫堅へのせめてもの弔いであろう」

 

結局、黄蓋との面会は以前仮設された玉座の間で行われることとなった。聆の、春蘭たちを待つという提案がきっかけでいつの間にか魏の主要メンバーのほとんどが揃って、面会と言うより軍議みたいだ。来てないのは……春蘭と入れ代わりで哨戒に出た流琉に猪々子と、美羽と靑さんか。靑さんは正体を隠すため元々軍師だけの集まりにしか出てないから予想通りだけど。……面白いのは美羽だ。普段ならこういう騒ぎが起こったときは真っ先に首を突っ込んで来るのに呉の将だと聞いたとたん布団にこもってしまったらしい。

 

「周瑜との間に諍いが有ったと聞いたが……原因はそれか?」

「やれやれ、もう伝わっておるのか。……その噂、どこから聞いた?」

「そんなん言わんでもだいたい分かっとるやろ。それよりまずこっちの質問に答えぇ」

「そう急かすな。……心配せずとも事実だ。その証拠に、ほれ……」

「わっ!?」

 

ちょっと、こんな大勢の前で胸元をいきなり広げるか普通!?

 

「はっはっは。なんじゃ、女の乳房を見ることなど、別に初めてでも無かろうに」

「何の前触れもなく見せられたらびっくりするだろっ!」

「とか言いつつ目ぇ逸しもせぇへん変態長マジ変態」

「やっぱりどうしようもない変態じゃない!早く死になさい!!」

「とか言って俺が目を逸らしたらそれはそれで『何 公的な証拠提示の場で意識してんのよ!気持ち悪い!死になさい!!』とか言うんだろ?」

「あら、よく分かってるじゃない」

「……黄蓋、もう分かったから仕舞いなさい」

「やれやれ、孫呉はもう少し落ち着いておったぞ?」

「耳が痛いわね。……で、先ほどの傷が、周瑜に打たれたという傷?」

 

確かに、黄蓋の胸元には俺がイメージする蚯蚓腫れを数倍酷くしたような傷がたくさんあった。それに、長い髪に隠れて気付かなかったけど、同じような傷が背中にもある。普通、嘘のためにここまでやるとは思わない。俺は黄蓋の寝返りは嘘だって知ってるけど、そうじゃなかったら信じてしまうよなぁ。

 

「赤子の頃は襁褓も替えてやったというに……。我らの孫呉を好き勝手に掻き回した挙げ句、あろうことかこの仕打ちだ」

「なんだ。tdn私怨ではないか」

「それよりもまず、周瑜が孫呉を掻き回した、ってとこに納得行かんのやけど?……桂花さん、周瑜がこれまでに何か下手打ったとか言う情報有るか?」

「無いわね。目立つ奇策は今のところ無いけれど、その分堅実で失敗も無いわ」

「策や政の精度の問題ではない。例えば……そうじゃな。もし、曹操が志半ばで倒れたとき、……そこの優男」

「え、俺?」

「そう、こやつが曹操の後を受けたとする」

「北郷が華琳様の後を……?有り得ぬ!」

「そうよ。秋蘭か、せめてバカだけど春蘭ならともかく……それだけは認めないわ!」

「しかも、コイツが今までの方針……曹操の堂々たる覇道を撤廃し、諸国にセコセコと頭を下げて廻ったら……一体どう感じるか?」

「「殺す!」」

「おいおい……」

「と言うか、今死になさい!」

「どうして仮定の話で殺されなければならないのか……」

「むしろなぜ今死なないのか」

「俺には使命がだなぁ……まぁ、そんなことを漠然と考えてる。多分俺にはそんな感じのアレが有るんだって!」

「はぁ!?アンタがやることと言ったら、毎日毎日食料を排泄物に変えて偶に白子出すだけでしょうが!」

「桂花さん下品すぎやわぁ。もっと『生命の種子』とかそう言う感じの言葉使わな」

「ド屑を表現するのに言葉を選んでやる義理なんて無いわよ」

「そろそろ泣いて良いか〜?」

「……それより、そろそろ続きを言っても良いかのう?」

「あ、はい」

「ほら見なさい。アンタのせいで他人にも迷惑がかかってるじゃない」

「それは桂花が変な言いがかりをつけてくるからだろ」

「言いがかりじゃないわよ。純然たる事実よ、事実!」

「だからそれは桂花の主観d――」

「ォ゛ホン」

「サーセン」

「サーセン」

「ともかく、そういう思いをしておるのじゃよ。今の儂は」

「うむ……む?」

 

あ、春蘭は何の話をしていたか忘れたっぽい。

 

「……このような時代だ。戦に負け、滅ぼされるのは詮無きこと。袁術の元にいた頃も屈辱ではあったが、それを雪ぐ日を夢見て、恥を忍んで生きておった」

 

残念ながらこっちでも美羽が結構好き勝手やってるんだよなぁ。歌が上手いって分かってからは華琳も一緒になってかわいがってるし。

 

「じゃが、その雪辱を果たした先にあったものはどうだ……。儂は……あのようなヒヨッコに好き勝手させるために孫呉を再興させたのではない!」

「……んだらお前が仕切るために再興させたんけ?」

「何……?」

「占領から復帰して、その後を仕切るのがその時最高位の文官なんは当たり前……領主が戦闘特化な場合は特に、や。ほんで周瑜は……?」

「……そうだよな。俺みたいな、自分で言うのもなんだけどぽっと出じゃ無いし。それこそ黄蓋さんが言ってたように赤子の頃から孫呉にいたんだろ?」

「私の知る限り、孫策さんとも子供の頃から仲良しだったらしいですしね〜」

「……そうじゃ。そうじゃよ。確かにあやつは策殿と仲が良かった。………忌々しくも、それを利用しおったのだ」

「利用した、とは納得行きませんね。先程桂花殿も言った通り、周瑜は失策らしい失策など一度もしていませんし、今の地位に収まるのはもはや必然。それに、私が呉の地方を旅したときも、孫策と周瑜について不満を述べる者はほとんど居なかった。むしろ孫堅が蘇ったようだとすら言われていました」

「お主が旅したのはまだ袁術の支配下に有るときじゃろう」

「お嬢様がいるときといない時でそんなに態度が急変したんですかぁ?それならしかたないですけど、少なくともお嬢様がいる時は、むしろ黄蓋さんがサボってお酒を呑んでやりたい放題してるって情報が監視官から届いてたんですけど〜?」

「ん?おかしいなぁ〜〜?なぁ?黄蓋さん?」

「何が『あのようなヒヨッコに好き勝手させるために孫呉を再興させたのではない!』ですか……」

「そもそも周瑜が気に食わんからって魏に来るんがおかしいやろ。勝手に暗殺でもしとらんかい」

「ちょっと筋書きに穴あり過ぎですよ〜?」

 

聆、禀に七乃さんと、魏でも特に現実思考な三人が次々に黄蓋を叱責する。俺の知ってる黄蓋と周瑜の確執は演技だ。そして、それはおそらくこの世界でも同じ。いかな宿将黄蓋でも、白を黒と言い張ることはできない。できるとすれば、力で無理やり同意させるか、勢いで流しきるかだけど……そのどちらも今の黄蓋には無い。しかも、この流れでいくら本当だと主張しても、むしろそうするほど嘘臭くなる。

 ……この分なら、俺が出張らなくても赤壁の戦いは勝てるんじゃないか………?史実でも、『郭嘉が居れば赤壁で負けることは無かったかもしれぬ』って曹操自身が言ったらしいし。

 

「よくそんな策でのこのことここまで来れましたね?」

「目的は諜報か暗殺か放火か……はたまたその全てか………」

「なんにせよ敵意見え見えや。文字習うとっから兵法やり直し」

「はぁ……貴女たち、そう必死にならないでちょうだい」

 

と、ここまで沈黙を守っていた華琳が三人の言葉を遮る。

 

「私もこの者を信用しているわけではないわ」

「なら……」

「名の知れた大将軍、黄蓋を寄って集って罵倒した挙句に追い返したとあっては沽券に関わるのですよ〜」

「風の言う通り。……黄蓋ほどの将がここまでしているのだもの。もし計略だというならば、それを見届けた上で使いこなして見せるのも、覇王の器というものでしょう」

「……なるほど。華琳さんの思う覇王とはつまり夏虫のことっちゅーワケや」

 

さっきまでの空気はどこへやら。聆の周りの空気が、まるで戦場にいるときのように淀み、沈み、凍った。

 

「……へぇ、言ってくれるじゃない」

「そら言ぅたるわ。見えとる罠に掛かって自分が怪我するんは結構。やけど、それで死ぬんは兵なんや。『見届ける』って言いよったけど、そのためにどんだけ無駄な犠牲が出るか分かったもんとちゃうやろ。評判とか沽券とか、そんなん誰が言いよんよ。民にしたら、戦に駆り出された男共が帰って来ん方がよっぽど恐ろしい」

 

いつに無く真剣な聆。そして、その目の見据える先にいる華琳の様子を、皆が息を呑んで見守る。

 

「…………しかたないわね」

 

どれくらいたっただろう。華琳がため息混じりに呟いた。

 

「黄蓋、……と、そこの娘、……」

「ほ、鳳雛でsy、す!」

「そう、鳳雛。二人は、取り敢えず今日はここに泊まりなさい。そして、明日………からは、聆の下に仕えなさい」

「な……!?」

「そんなに不安なら、貴女が直接見張ったらいいんじゃないかしら?違う?」

「華琳様!聆の隊の特性上、何を企んでいるかも分からない部外者を入れるなど……危険過ぎます!」

「もう決まったことよ。気に食わないなら勝手に暗殺でもしてちょうだい。……他に何か有る?………無いようね。では、これにて解散。黄蓋と鳳雛は秋蘭の案内に従ってちょうだい」

 

そして華琳は有無を言わさず議論を打ち切って、さっさと奥の部屋に引っ込んでしまった。他のみんなも、それぞれ鎮痛な、或いは不安げな表情で玉座の間を去る。残ったのは、俯き歯を食いしばる聆…………と、大急ぎで酒を持ってきた侍女だけだった。




聆「だ…駄目だ まだ笑うな…
  こらえるんだ…
  し…しかし…」

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