哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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缶の中にゼリーが入ってて、振ってから飲むやつあるじゃないですか。
アレ美味しいですよね。お酒で同じようなのってあるんでしょうか。

さて、今回は久しぶりに2000字未満です。
というのも、ここから作者は何をとち狂ったかパターン分けしてパラレるんです。
そういう都合できりのいいトコで切ったらこの短さになりました。
長い言い訳は要らんから良い文を書け、って?
ゴメンネ!


第十二章X節その三

 「――こちらです」

 

謁見の後、黄蓋と鳳雛の二人は客室に案内された。侍女が恭しく戸を開き、入室を促す。

 

「二人一部屋……ということで、宜しかったでしょうか?」

「うむ。見知らぬ地で一人で眠れるほど、この娘は肝が座っておらんからな」

「あわわ……」

「左様でございますか。……では、何かご用向きがございましたら、気兼ねなくお申し付けください。私はこれにて」

 

長い赤髪を揺らすことなく一礼し、音もなく去った。

 

「………行ったか。……それにしても、とても確実に裏切ると評された者への扱いとは思えんの。先程の者、側仕えの中でもかなり高位と見える」

「この部屋も……相当」

 

部屋の中をサッと見回しただけでも、その調度品の質の高さが覗える。派手ではないのだが、どことなく高級感が感じ取れる。住みたい部屋に順位をつけるなら間違いなく上位三位以内には入るだろう。

 

「そうじゃのう。魏の基準がどうであるかは分からんが、呉でこれと同じだけの部屋を用意される客人は……それこそ同盟国などの領主くらいであろう。……簡単にじゃが茶と菓子も用意してある」

「周りからの評価はどうあれ、曹操さんは黄蓋さんを客将として扱う気のようですね」

「その辺はお主の予想通りじゃったか。罠だと忠告されて尚、儂らを受け入れると……」

「魏軍がここまで強大なのは一種風評の力でもありますからね。曹操さんもそれを自覚しているでしょうから、常に必要以上に堂々とする傾向にあります」

「強者も辛いということか……。まぁ、そこまでは良いのじゃが、鑑惺の下に付けられたのはちとまずいのぅ」

「いえ……そう悲観することでもありません。多少は動きにくくなるでしょうが……、この待遇から推測しますと、恐らく、鑑惺さんにも、私達の自由をある程度保証するように命じられているでしょう」

「なるほどのぅ……。それにしても鑑惺、侮れぬ奴よ………」

「あの曹操に啖呵を切ったのもさることながら、終始私達の話の流れを遮るように発言していました」

 

友人の言や武将たちの評価、定軍山の一戦を頭の中で反芻する。狡猾で冷酷な蛇なのか、民を守るために全力を尽くす烈士なのか。……或いはその両方か。

 

「その辺もそうなのじゃが……儂が言いたいのはどちらかと言うと戦闘の方じゃ」

「戦闘、ですか?でも、まだ構えを見てすら居ませんよね……?」

「うむ。……いや、アレはそうと言えるのか……、鑑惺と最初に顔を合わせたとき、覚えておるか?」

「はい。夏侯淵との間に割って入ってきたときですね。……やっぱり、構えてなかったような?」

「そうじゃ。奴はそれこそ、その辺に散歩に行くかのような足取りでやってきて、その後も少し立ち話をする程度の立ち姿じゃった」

「………??」

「……儂ほどになるとな、気配やら殺気やら……そういうもので相手の行動を読めたりするものだ。奴は、『臨戦態勢』じゃった。だが、奴の姿勢はどう見ても動けるものではない。関節というものは曲げるにしろ伸ばすにしろ余裕がある状態でないと十全の力を発揮せんからの。自分が感じている危機感と、相手の姿の齟齬……一体どういうことなのか……何か儂の知らぬ武器や術を持っていると見て相違あるまい」

 

 暫しの沈黙。

どうして部隊長風情がこうも大きく立ちはだかるのか。或いはこれも罠かもしれない。鑑惺に注目させておいて他の何かが動いているのか。例えば張勲。袁家の名を利用するだけ利用された後は歌い手の真似事をさせられていると聞いていたが、今回の謁見ではきっちり発言していた。

 本物かどうかも分からない地図を手に見知らぬ土地の夜道を歩くような不安が二人を襲い、どちらともなく溜息がもれる。

 

「……いや、儂らはすべき事をするのみ。それに、分からんことはこれから調べれば良いのじゃ」

「……そうですね」

「ふむ……そうと決まれば、まず腹ごしらえじゃな。遠慮なく申し付けろと言われたが……勝手に外に出てその辺の使用人に声をかけろということかのう?」

「状況的にそうなるかと……」

「普通の客人でもそこまで自由にはさせんぞ……。曹操め、鑑惺に言われてムキになっておるのではないか?部屋に籠もっておっても気が滅入るだけじゃから、好都合ではあるのだが」

「取り敢えず出てみませんか?何か言われても、よく分からなかったと言い訳すればいいですし……」

「はっはっは!お主も中々言うのう。そうじゃな。では、行くとしよう」

 

黄蓋と鳳雛は、何とか気分を持ち直して戸を開いた。

が、すぐにまた予想外の光景に辟易することになるのだった。




パターンα→イージーモード
パターンβ→ハードモード

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