哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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なんJすこ。他コミュに沸くホモガキひで。
ネット上での意見の衝突を和らげるために発生したJ語を害悪の象徴にしたホモガキを許すな。

さて、引き続きβ√です。
戦略戦略アンド戦略なので勢いで書けないのが辛いところです。


第十二章X節その八 〈β〉

 聆の反乱から数日。体制を立て直すことを直近の目標とした魏軍は、以前の国境付近の砦に居た。良くも悪くも今は多少落ち着きを取り戻し、本国から追加の兵と物資を入れ、近いうちに来るだろう蜀呉同盟の進撃に備えている。

 そんな中で落ち着きのない者が一人。鳳雛だ。間諜からの報告や、ここ数日の魏軍の動き……物資の移動から何からを書き出した紙の前でうんうん唸っている。

 

「どうしたのじゃ鳳雛よ」

「あわっ……いえ、何か落ち着き過ぎな気がして………」

「確かにこの短い間に体制を立て直した手腕は見事と言うよりないが……じゃが、魏の練度が高いことは以前より明らかであった。そう動転する必要もないはずじゃが」

 

 『魏の練度は大陸一』……それはある程度見聞の広い者なら黄巾の時分から知っていたことだ。整然と一体の生き物のように動けるだけの自律能力が戦場以外でも活かされたなら、それは想像を絶する"打たれ強さ"を産み出すだろう。そして、それがこの状態を作り出したと黄蓋は見ている。

 だが、鳳雛はまた別の考えを持っているようだ。

 

「確かに、魏の統率能力が高いことは予想していましたが……そっちはむしろ予想以下の結果を出しています。鑑惺が自分達の部下以外にも特に有能とされる武官や文官を引き抜いて行った影響か、ここまで退く道程のなかで脱走や抗議が少なからず有りましたし、特に将軍格の動揺が大きかったので」

「ふむ。……ならば『そっち』ではない何かがえらく落ち着いていると?」

「はい。……後方が」

「後方……本国か。じゃが、現場では長く感じる数日も外野にとっては『たった数日』よ。後方が混乱するのはえてして前線が落ち着いてからなものだ。そもそもまだコトが広まってすらおらぬのではないか?」

「しかしその数日の間に本国から物資を搬入し、更に、もっと多くの物を送るように指令も出されています。『予定外の物資の運搬』という鎖によって繋がり、もはや本国も現場と言えます」

「なるほど。……では後方の何が気に入らぬのだ?」

「鑑惺という人気の将を筆頭に多数の将軍格が抜けていながら……民間、もっと踏み込んで言えば商人。……商人の動きがあまりにも大人しい」

「……確かに、下手な諜報より商人の情報網の方が優秀じゃ。それが沈黙しているというのは………」

「特に人や物の動きから情勢を読み取るのは得意とするところ。今回の騒動に気付いていないハズが有りません。そして、戦況の不利に気付いた商人は――」

「買い占めや値上げ、果ては他国へ引き上げることすら有るのう」

 

 あと少し踏み止まれは挽回の兆しが見えるというところで商人のせいで国が乱れて負けたなんてことも珍しい話ではない。

 

「その兆しが未だ見られない」

「抑えがかかっておるのではないか?魏は商売に関する制度も整えておったし、管理もしやすかろう」

「商人というのは『利』以外では決して動きません。例え国が相手でも、自分達商人がそっぽを向けば国が回らなくなるのを彼らはよく知っています。制度によって纏められていたなら、むしろ纏まっていることを逆手に取って増長することも予想されます。彼らが国に協力するのは国が彼らに法や治安という利を与えるから……それは、敗戦国では得られない恩恵です。だから劣勢の国主に対して彼らは冷たく強硬。脅しなど全くの無駄。それは私達がよく実感していることでしょう?」

「まぁ、な」

 

 そもそも魏がここまで影響力を強めたられたのも、蜀呉から商人やらが流れ込んだからだ。

 

「それに、魏には件の新参者も多く、商人に限って言えば愛国心なども期待できるものではありません」

「ならば、商人は魏が勝つとふんでおるのか……?」

「『鑑惺の反逆は策であり、商人連中には予め知らされていた』」

「……!!」

「……いえ………そうなると逆に現場が動揺しすぎになりますね。楽進や于禁なんかは一種危険な状態になっていますから。それに、単に商人の動きが小さいだけだとかまだ始まっていないとか、もしくは間諜が見落としたという可能性もあります」

「まだ情報が足りんか……」

「ええ。ですが、依然として魏は脅威であるということは揺るがないでしょう」

「そうじゃな。………ところで鳳雛」

「はい」

「……お主、意外とよく喋るのう」

「………」

「いや、別に良いのじゃが……」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 ……知らない天井だ。

まぁここで知ってる天井の下で目覚めて『全て夢でした〜』ってされても困るから良いんだが。

 

「おお、やっと起きたか」

「そんな寝とったか?」

「一刻ほどな」

「そんな経っとらんやんけ」

 

 そういうものか、というかゆうまの言葉に心の中でため息をつきつつ、辺りを見回す。

 勇壮というか、ゴテゴテというか……布団の刺繍から机の足の装飾まで細々と龍やらツタやらで覆われている。何と言うか、魏軍に入ってすぐくらいを思い出す。向こうでは私のデザインが華琳に気に入られたせいですっかりシックな家具がトレンドになってしまった。

 

「お水、お飲みになります?」

「おー、それと、食糧から肉をいくらか。常識的な範囲で多めに用意してくれ」

 

 かなり血を失ったからなぁ……。正直ボーッとして食欲も無いが、気合を入れて喰わねばなるまい。本来なら血を啜りたいところだがなぁ。……別に吸血鬼的なアレではない。肝臓悪くしたらなレバーを食べるとか、精力増強に白子を食べるとか、ああいうノリだ。

 

「……どうぞ。水差、ここに置いておきますね。では」

 

と、そんなふうに思考を彷徨わせている間に、三課長はさっさと水の用意を済ませて肉の手配に出ていった。

 

「……できた部下だな。嵬媼の右腕か」

「いや……何か知らんが昔から出しゃばってくるやつでなぁ。有能は有能やけと、特に『一番の部下』ってワケやないし」

「そう言ってやるな。厳しくすることも大切だが、甘やかすこともまた大切だぞ?」

「珍しぃそれっぽいこと言っとるとこ悪いけどなぁ……私が汗拭いた後の手拭いしゃぶっとるん見たらそんな気も起こらんて」

 

 いつものように城の裏庭で鍛錬をしていて、さて休憩するかと後ろを向いたら、置いてあった手拭いを口に含んでいたのだ。その後何事も無かったかのように一礼して去っていったから本当に気味が悪い。あの時ほど思考が止まったことはそうそうないだろう。

 

「ふむ……確かに、臭いを嗅いだことはあるが、しゃぶるのはなぁ」

「うん。しゃぶるんは…………は?」

「ん?」

「いや、え?」

「どうした?気分でも悪いのか」

「え、嗅いだん?」

「そうだが?」

「お前がか?」

「そうだが?」

「なんでや」

「ふと嗅ぎたくなったからだが……別に構わんだろう?汚れるわけでもなし」

 

 『いかんのか?』とでも言いたげな顔をするかゆうま。

 

「おまっ……ちょとは常識っちゅーもんをなぁ――」

「聆殿!」

 

私の言葉を遮って部屋に入ってきたのは泰山の昇り龍、趙雲だ。

 

「取り込み中であったか……?」

「……そうでもない。何かあったんか?」

「いや、城内から門前まで点々と血のあとが、な。聆殿、身体は大丈夫か?」

 

……血の処理を忘れてた。

 くっそう。こういうときに自己判断で処理してくれてたら三課長も評価してやるものを。

 

「衛兵の話では『眠気覚ましの力加減を間違えた』とか……俄には信じられぬ話だが」

 

おお、靑さんが工作してくれたのか!や靑N1。

 

「えー、アレや……離反してから色々あって寝不足でな。孫策と桃香に挨拶した帰りに急に眠ぅなって……眠気覚ましにちょっと刺そ思たらやりすぎたんや」

「はっはっは!間抜けだな!」

「いらんこと言うなかゆうまェ」

「ふむ、如何な蛇鬼嵬媼といえども睡魔には勝てぬということですかな……ところで、この後宴k――」

「鑑惺様、申し付けられた品をお持ちしました!」

 

台車にこれでもかと食料を満載した三課長が戸を破るような勢いで乱入する。嬉しそうな顔をしおって……。とことん空回るやつだ。

 

「まずはご苦労言ぅとっけど、客人の発言を遮ってぶっ込んで来たんは良くないなぁ」

「は、はっ!申し訳ございません!」

「いや、そんな畏まらんで良えけど……星、さっき言おとしとったんは?」

「今夜、細やかながら歓迎の宴を開こうという話になっていたのだが……ここで食事するつもりであるようだし、延期にしようかと」

「予定通りで良えわ。参加させてもらう」

「そうか……では一刻後、中庭に席を取る手筈だから、それまでゆっくり休んでくだされ。寝不足は大敵ですからな」

 

いかにも星らしいネトッとした笑顔を残して去っていった。

あの顔って得だよなぁ。仮に何も考えてなかったとしてもめっちゃ頭良さそうに見える。

 

「宴か……少し体を動かしてくるか。今から腹を空かせておかねばな」

 

続いてかゆうまもいそいそと部屋を後にする。

 気楽なものだ。どうせ宴会の皮を被った腹の探り合いに他ならんだろうに。特に私なんかあの意地の悪い孔明に一言一句、一挙手一投足まで見られるだろう。

 

「それまでに心の準備しとくか……」

 

 モソモソと布団から這い出て、クッソ重たい頭を何とかまわして受け答えを考える作業を始めたのだった。




源ちゃんからの抗議はスルーで。

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