哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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中古でまどかマギカポータブルを買ったのですが、さやかが弱すぎ&さやかシナリオが鬱すぎで詰みかけてます。

そして宴会パート。
呉のメンバーって場合によって口調が変わることが多いので書くのが難しいです。


第十二章X節その九 〈β〉

 「乱世を治めんとする同士との新たなる友好を祝して――乾杯ッ!!」

「「乾杯!!!」」

 

 皆が杯を高く掲げ、一息に飲み干す。それを合図に宴は始まった。

 最上座に劉備、孫策、袁術が座っているのは固定だが後は適当。張勲はいつも通り、文醜はいつの間にか袁紹.顔良と合流しているし、馬家は完全に和解……できたのかは定かではないが取り敢えず一緒に座っている。この中で元気が無いのは李典と鑑惺ぐらいなものだ。

 呉の面々と蜀の一部は警戒心バリバリで逆に元気である。

 

「聆殿、そんなに緊張せんでくだされ」

 

下座に陣取り静かに呑み始めた鑑惺の側に、趙雲が酒を注ぎながらヌルリと絡みつく。やはり他人との距離感が独特な人物だ。

 

「こら星!聆殿も色々と疲れているんだろう。始めからそんなに絡むな」

「いや、まぁ疲れとんは疲れとるけどそんな怒るようなことでもないやろ……。相変わらずクソ真面目やなぁ」

「むぅ……」

「愛紗よ、聆殿に言われるとはお主相当だぞ?」

「『聆殿に言われるとは』ってお前……頭ん中で何か変な印象付けしとらん?」

「それは、なぁ……?」

「あの曹操の嫌がらせに耐えてきたのですから」

 

鑑惺も予想していたことだが、蜀陣営での曹操の印象はかなり悪い。それは判断の基準にもなるのだから相当なもの。

 これでは鑑惺の描く絵図の障害になる。

 

「……華琳について色々と反感が有るんは分かるけどなぁ。有ること無いこと噂になっとるし。そんで実際会うたこと無い相手の評価をその情報に頼るのは自然なことやし、それをもとにある程度想定するんも重要や……けど、それを勝手に断定してあたかも真実であるかのように錯覚するんは気に入らんし、自分らのためにもならん」

「錯覚……確かに、負けが込んだせいでいつの間にか反曹操に固執していたかもしれませぬな。ではあるが――」

「まぁ、桃香の主張を華琳に聞き入れさせる……いや、最低限蜀の安定を図るだけにしても華琳が壁になるから反曹操自体は仕方ないんやけどなぁ。ただ、それで固まってもたらアカンやろって話で」

「なるほど……やはり聆殿の話はためになる」

「それで、実際のところ曹操は鬼畜ではないのか?」

「………性欲が強いのは否定せん」

 

 

「――何だ、また嵬媼が小難しい話をしているようだな」

「いただきっ!なのだ」

「張飛っ!?貴様私の小籠包を……!」

 

 所変わって。

華雄は張飛と呂布と一緒になって大量の料理を口に詰め込んでいる。

 始めは華雄と呂布の再会を懐かしむ語らいをし(ようとし)ていたのだがそれも一言二言で終了。何故か、そしていつの間にか、競うように大皿を次々と空にする大食い大会が始まっていた。

 

「よそ見してるカユーが悪いのだ」

「よそ見してる人のは食べて良い……覚えた」

 

呂布が何か不穏なことを呟き、ニュっと手を伸ばす。

 

「おい……おい、恋!私の頭を掴むな!捻るな!!」

「華雄はこっち見てない……」

「無理やり別方向を向かされているんだが!」

「なら今のうちなのだ?」

「今のうち」

 

ふざけているのか素なのか、華雄の不満は無視される。

 

「ぬっ、ぐおおおおおおおお!!」

「う、後ろ向きのまま食べてるのだ!!?」

 

無理やり後ろ向きに拗じられた身体をそのままに、後ろ手で器用且つ素早く箸を操り視界外の小籠包を摘み口に運ぶ姿は紛うこと無き食欲の権化。

 

「……すごい」

「コレが心眼というものだッ!」

「カユーが強くなってたのだ……」

「……恋も本気出す」

「かかってこい貴様ら返り討ちにしてくれるッ!!」

 

 

「――あの人たち何を暴れてるんでしょうねぇ」

「野蛮じゃのう」

 

そしてこちらは優雅にお酒を嗜む最上座。孫策が一人ムスっとしているが……せっかく追い出した暴君がまたデカい面をしているのだから仕方ないと言えば仕方ない。

 

「鈴々さんが暴れてらっしゃるのはいつものことですわ。まったく、おさるさんなんですから……」

 

シレッと袁紹が混ざっているが、指摘すると面倒なことになるので誰も文句を言わない。

 

「まぁ、お酒の席ですし多少は……」

「優しいのも結構じゃが劉備よ、統率の底が知れるぞよ?」

「その発言自分にも刺さってますよお嬢」

「しかもこれから同盟組もうって相手の目の前で悪態ついちゃう辺りホントスゴいですね。ヨッ自由人!」

「そうじゃろそうじゃろ♪うははー」

(なにヘラヘラしてんのよ……ムカつくわねぇ)

「少し羨ましいです……私、自分に自信無くて」

 

コレにはさすがの孫策も苦笑いである。

 

「それにしてもスゴイですね。美羽様がまさか第四勢力として復活するなんて……」

 

一方 顔良、このまま袁術の不良自慢が始まるのはマズいと思い話題を変えることにした。……が、

 

「ええ、本当に。孫策さんにやられたと聞いて心配しておりましたのよ?」

「っ……わ、妾はそのすぐ後に曹操に取り入りましたからのう。麗羽姉様こそ、これまでずっと音沙汰無しじゃて、気がかりでしたわ」

「!!……お、おほほほっ。無名の民に身を窶すのも一興と思いまして!なかなか乙なモノでしたわ!」

 

袁家で互いに傷を突きあって冷たい笑顔を浮かべる結果に。

 

「麗羽さん、こっちに来てからずっと遊んでましたもんね!」

 

そしてこの追い打ちである。劉備に悪気は一切無いのだが。

 

「………」

「そ、それは何よりですわ、うふふふ」

「お、おほほほ」

(このおこちゃまも袁紹には気を遣うのね……)

「すみません……私が余計なことを言ったばっかりに」

「うん?何のことじゃ??」

「どうかなさったの?斗詩さん??」

「い、いえ………」

「……ドンマイ斗詩」

 

 

「――上座 何であんな冷えとんや……?」

「さあ?桃香様と袁紹は何故か仲が良いからそう冷えることは無いはずだが……」

「ふーん……んだらちゃん美羽が原因か?すぐにも魏侵攻に出ることになるやろからここでちゃんと仲良ぉなっといてもらいたいんやけど」

 

この機会を逃せばあとはずっと忙しいだろう。ここでどれだけ存在感を強められるかに今後がかかっている。

 

「仲良くと言うなら鑑惺、呑み比べはどうじゃ?」

「桔梗」

 

どうしたものかと思案する鑑惺の前に現れたのは厳顔と魏延。厳顔は少し非常識な程の大きさの杯を片手に得意気な笑みを見せ、対照的に魏延は何やら不満顔だ。

 

「おー、厳顔か……噂には聞いとる。酒好きらしいな」

「ハッハッハ!知られておったか。……まあ、お主の酒豪伝説には霞むがのう?」

「また何や鰭だらけになっとるんか。私はただ酒浸りなだけ」

「それもこれから分かること。ほれ、まず一杯」

 

並々と酒が注がれた巨大杯をズイとつき出す。

 

「……私もう結構呑んどるし」

「ほう?受けぬと申すか?」

「いや、この酒で始めよ」

 

どこに置いていたのか……鑑惺は黒塗りの大瓢箪を取り出した。

 

「……それは?」

「『蛇鬼殺』……自作の酒や。弱い酒でチンタラやっとったら酔う前に腹張ってまうからな」

「……面白い」

「桔梗様!?そのような得体の知れない物を飲むのは――」

「控えよ焔耶」

「……ッ」

「その酒で始めよう」

 

先程の酒を一気に飲み干し、杯を空にした。

 

「……注いでくれるか?」

「……毒見は要らんか?」

「要らぬ」

「んだら……」

 

杯の底に少し控えめに注がれる。禍々しい名前からは想像できない、よく澄んだ酒だ。

 

「ほう……どんな毒々しいものが出てくるかと思ったが、中々良い香りがするではないか」

 

匂いから相当の濃さであることも分かったが。

 

「やっぱ身構えとったんやん」

「………」

 

鑑惺の含み笑いにはあえて何も言わずに杯を傾ける。

 

「…………ッ!?」

「味はどないや?」

「喉が焼けるようだ……顔に火を受けたような感覚…………が、確かに華やかな甘みと香りも感じる。……ハッキリ言って、美味い」

「そら良かった」

 

言いながら自分の分を注ぐ。

厳顔が相当な衝撃を受けたそれを、鑑惺は何事も無いように飲み干した。

 

「ほれ、もう一杯」

 

 

「――どう見る」

「……どう見る、とは?」

 

皆がなんだかんだと騒いでいる中、諸葛亮.周瑜.陸遜の軍師連中は湿気た空気を漂わせていた。まず弱気を見せないように動く武将ならいざしらず、彼女らには鑑惺などというわけの分からん存在を前に楽しめというのは無理な話だ。

 

「この酒宴を、だ。質問が抽象的なのは許してくれ。全体的にどう感じたかが聞きたい」

「馴染んでますね」

「……馴染んでいる、か」

「ええ。馴染んでます」

 

目だけを動かして会場をサッと見渡す。

 

「……馴染んでいるな」

 

思わずため息が出る。

 

「鑑惺は、反董卓連合の際に接触していましたから……」

「そして袁術と袁紹は血縁関係……袁術の方は苦手意識が有るようだが袁紹は袁術を可愛がっている。もちろん文醜と袁紹の絆も深い。華雄と呂布は元々董卓の将で戦友。馬騰は言わずもがな馬家に収まるし、黄忠とも縁があるとか……」

「まるで狙い澄ましたかのような組み合わせですねー」

「陸遜さんの言う通り、確かに、私もそう感じないワケではないです。が……『当然』で片付けることもまた可能なんですよね」

「蜀の将は他方から劉備の下に集った者達……」

「寄せ集め、と言いたいんでしょう?」

「この高能力集団を果たしてそう表現して良いかは疑問だがな。……そして、それは鑑惺も同じ」

「バラバラになった国や軍の、その片割れを持ち寄れば引き合うのは当然……ですかー……」

「そうです。鑑惺さんのやること成すことは今のところ全て策略以外の道理で説明できるようになっています。………逆に全て策略と見て筋道をつけることもできます」

 

頭の中に鑑惺のあのヌメっとした笑顔が浮かぶ。そしてあの変にスカした訛りも。

 

「不気味だな」

「本当に」

 

初対面で確実に消しておくべきだったといつも思う。

 

「あのー……」

「どうした?」

「それじゃあ、袁術さんを頭に置いている理由は……?」

「かわいいからって言ってましたよ?」

「整合性の取れる理由は……」

「……こちらが納得できないと言えばスラスラと理由を語ってくれるでしょう。『統治者にとって外見的魅力がどれほど重要か……』みたいな語り口で」

「厄介ね」

「本当に」

「…………」

「…………」

「ともかく今は呑みましょうか〜。色々と考える前にまず気晴らししましょう」

「そうですね」

「ああ」

 

 

 宴は夜遅くまで続く……かと思われたが一部の者の暴飲暴食により存外早くお開きとなった。参加した本人達は三者三様良いも悪いも様々な感想を語ったが、翌日経費を確認した文官は一様に顔を青くしたという。




胃袋と肝臓より先に財政がTKO。

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