無印からのプレイヤーなのですが、二作目からなぜかスタイリッシュ路線になって何か好きじゃないんですよね。無印のレトロ系の製作者のおふざけが散りばめられた世界が好きだったのに……。で、そのⅢでは無印の舞台も登場するのです。
サモンナイト5みたいに過去作レイプになりそうで怖い。
さて、長ったらしい前書きに対して本編は少し短め(?)です。
初期の長さに近いとも言える。
「聆〜〜!助けてたも〜〜〜」
戸を開けた途端にちゃん美羽が泣きついてきた。南蛮といいはわわといいちゃん美羽といい、今日はロリ(18歳以上)と縁のある日だなぁ。
「やぁやぁ、もぉ、そんな鼻水まで出してどなしたん?」
「あの強欲の、クルクルの、忌々しい目の上のタンコブがぁぁぁぁ〜〜!!」
袁紹が何かしたらしいが、それ以上のことはよく分からない。まぁ、ちゃん美羽の話が要領を得ないことは最初から分かっていた。顔を拭ってやりつつ七乃さんに目を向ける。
「麗羽さんが仲の統治権を主張してきたんですよ〜。袁家再興の仲帝国なら、当然長子である自分が治めるべきだ〜っとかって」
「な〜にが『今までご苦労さまでしたわ。これからは私に任せてもよろしくってよ』じゃ!」
うわぁ……袁紹もそれが当然のことと思って言ってるんだろうなぁ。
「妾がこれまでどれ程尽力してきたと思っておるのじゃあやつは!?」
多分、そこ考慮したら余計に盗っちゃっていい気がしてしまうと思うが。
「……別に袁家再興のためとちゃう的なことは言わんかったん?」
「それを言って聞いてくれる人じゃありませんよぅ」
「七乃はアテにならんし、猪々子は薄情にも麗羽姉様に鞍替えしたのじゃ……」
「まぁ、元々向こうの人やしなぁ。袁紹が死んでもたと思っとったからこっち居っただけやし」
そんでもって袁紹の主張に頭を悩ませている一人でもあると思う。
「むぅ………かゆうまはアホじゃし、靑のことはよく知らん。頼りになるのは聆だけなのじゃ……」
「えぇ……」
一瞬七乃さんから殺意を感じた。
「七乃さん?」
ちゃん美羽は勢いで言っただけで今も昔も本当の一番は七乃さんですよ?
「ええ、分かってますよ。うふふふふふ」
怖い。
まぁ、それはそれとして。(超速切り替え)
実際、どうしたものか。
七乃さんが言った通り、袁紹は自信過剰で自分が言ったことを間違いだと気付かない。気付いてもそれを認めない。何かを主張されてしまった時点で半分詰んでいるのだ。黙殺という手もある(蜀の連中はそうしている)が、この場合ちゃん美羽と袁紹は元から関わりが大きいため不可能。
「難しいなぁ……」
この後どう運ぶにしても袁紹を敵にしたくない。
袁紹は利己的で向こう見ずであるが、裏を返せば袁紹に気に入られさえすれば有事の際に袁紹配下の力を極めて速やかに利用できるということになる。例えそれが非常な劣勢でその辺の小狡い奴らにそっぽを向かれている状況だとしても、だ。そして、逆も然り。
だが、今 袁紹のご機嫌取りをすることはちゃん美羽の信用を失うに同じ。
どうしたものか……。
「聆……」
ちゃん美羽が不安そうに見上げてくる。
かわいいなぁ……。
かわいいんだが、この表情の原因をガチで解決しなければならないというタスクも同時に有るワケだ……。
何で恋姫世界に来たのか分からないが、ホント、どうせならこんな戦乱の世じゃなくてもっとただかわいい女の子と戯れるだけの世界に行ってみたかった。恋姫OVAの高校編とか。
ここじゃこれから自分で平和な世を作っていかなきゃならないんだもんなぁ。
………『ただかわいいだけ』か。
閃いた。
「袁紹に王になってもらお」
「!?!!???!?」
私が一言呟いた瞬間に声にならない声を上げ、ちょっとなかなかお目にかかれないような絶望顔になる。
「お……お主まで妾を裏切るのかや………?」
そしてみるみる涙が溢れて……あぁ、もう、かわいいなぁ。ダークなサイドに目覚めてしまいそうだ。まぁ、目覚めないが。
「もちろん、美羽様にも王になってもらうで」
「へ……?」
今更ながらちゃん美羽は表情豊かなもので、今度は『きょとん』をそのまま描いたような顔をする。
「袁紹は富を求む者達の王に。美羽様は美を愛でる者達の王に。片や金を数えて暮らし、片や詩を歌って暮らす……」
「むぅ……しかしそれではこれまでと変わらぬではないか」
……うそん。
ちゃん美羽が誤魔化しに気付いた!?
「………確かに、"ただ歌って過ごす"だけやったら魏の下に居った時と同じや。今回違うのは、"文化に関する"国家規模の決定権を持つこと」
「こっかきぼのけんげん……?」
「面倒くさい公共事業やら外交はポイーで趣味のことだけ考えられるっちゅーこっちゃ。むしろ得やない?」
「うむむ……それであの強欲が満足するかのう………」
「主な決定権は譲るとか言って、ただし美羽様の好きな歌等を含む文化振興策の執行権はこっちに残して欲しい……とかいう文面でちょろまかせるやろ。相手には『主な』っちゅう如何にも万能そうな言葉をちらつかせて、こっちの主張は謙った表現にしてできるだけ複雑な言葉を使う。……この点に関してはもっと詰めなあかんやろな。そこで、袁紹さんをちょろまかしたらあとは楽や。多分やけど顔良も猪々子も今回の袁紹さんの行動には乗り気ちゃうはずやから突っ込んで来ん」
「そうか……そうじゃな!うむうむ!中々の策じゃ。褒めてつかわす」
一瞬ヒヤッとさせられたが、やはり基本はいつものちゃん美羽のようで結局は言い包めることが出来た。
「そらどーも。……んだら、今からその調定文仕上げなんならんなぁ。七乃さんは、予定どない?」
「特に無いですけど、良いですか?お嬢様」
「良いぞよ。そなたらであのクルクル頭の頭を中身までクルクルにするような文を考えるのじゃ!」
「おう、任せとき」
踵を返してさっさと部屋を出る。いくら文化面での決定権が有ったところで外交権やら財務権やらが手元にないとクッソ不便だという事実に気付く前に。
「口八丁手八丁ですねぇ〜」
横から七乃さんの声。
……あぁ、顔を見なくても分かる。
「……何笑とんじゃい」
「いえ、よくあれだけスラスラと出てくるなぁと思いまして」
「そら誤魔化し一本でここまでやっとるもん」
「良かったんですか?期待させちゃって」
「予想外の動きやったからなぁ……完全に諸葛亮やら周瑜やらに気ぃとられとった。まぁ、もう応急処置で多少の不具合が出るんはしゃーない。ほんでどーせこの戦が終わったら状況は変わる。その時はまた新しい言い訳ができる」
「帳尻合わせが大変そうですねぇ」
「そらそうよ。やけど、それを我慢するだけで欲しい状況が手に入るとも言える。戦場と違ぉて交渉の場やったら命の危険はそこそこの割合しかないからな」
「へぇ〜、お疲れ様です」
「七乃さんもやるんやで」
「お断りします」
「…………山羊の舌ってザラザラしとるんよ。んで、アイツら塩味好きやから気に喰わん奴の身体に塩水塗っ――」
「やらせていただきます」
読者の皆様が付いてこれてるか心配です。
最近買ったゲームがプレイヤー置いてけぼり系のシナリオだったので。