哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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最近お酒を呑んだら酔う前にすぐ頭痛くなるようになってきました。
お酒は呑みたくて仕方ない。でも呑むと苦しい。
呑むも地獄呑まぬも地獄。私が何をしたというんだ。
更新期間空いたのがいけないのか。ゴメンネ!

さて、本編はついに刃がぶつかり合いはじめ(←本当に始めただけ)ました。もはや某オサレマンガの方が一話ごとの話の展開早いと思います。
そして最後の方に少しネタばらしも。


第十二章X節その十七 〈β〉

 北郷隊が久々に顔を合わせることになったのは……俺も向こうも最前線だったんだから当たり前だけど、開戦の号令がかかってほんのすぐのことだった。

 ゴクリと唾を飲み込む沙和、険しい表情のまま眉一つ動かさない凪、目をそらしてこちらを向かない真桜……みんな、敵と味方に分かれそれぞれの反応を見せる。

 そんな中――

 

「いや〜、ほんのちょっと前やっちゅうのにだいぶ久々な感じするなぁ」

 

真桜と同じく、いや、叛乱組の筆頭として対峙した"はず"の聆は、水牛から下りながらそんな風に話しかけてきた。

 兵に停止命令も出さずに。

ほんのすぐ近くの兵だけが不可思議そう……混乱したように見つめているだけで、ワザワザ見ようと思わなくても目に入るような範囲で両軍が殺し合っている。

 あからさまな異常。

 だけど俺は、すぐさま氣を高めた凪を制してできるだけ"今まで通りに"かえす。

 

「まぁ、今まではその『ちょっと』の間も無く一緒に居たんだから長く感じても不思議じゃないだろ」

「ふん……そーやなぁ」

 

 何が狙いだ……?この場面で話しかけてきたのには何か理由があるはず。……だけど、さっきの相槌……"用意していた"会話なら、意味の無い余計な言葉や淀みは無く、スラスラと語るはずだ。

なら、ただの時間稼ぎ?誰かの到着を待っている?……いや、それも……。それならワザワザこんな場違いなテンションじゃなくてガチガチの論戦でも吹っかけてくればいくらでも自然に時間を潰せるはず。

 

「こっちは色々と大変やったけどそっちはどないや?」

 

尚もにこやかに歩み寄ってくる聆。

……そういうことか。

 

「おかげさまで大騒ぎだったよ。聆はいつもやることが派手すぎる」

 

聆と同じように俺も馬から降りた。

 聆の狙いは間合いを詰めること……もっと具体的には、凪の氣による広範囲攻撃を封じること。

 

「私程度で派手なんやったらそれこそ華琳さんやらはどうなってまうんや……。『豪華絢爛』?」

 

 聆は頻繁に春蘭たちと比べれば自分は格が落ちるという節の発言をしていた。ほとんどだれもそれを真に受けてなかったけど、もしそれが本当だとするなら、聆はきっと見た目に反してテクニックタイプだということになる。……それも凄く極端な。

様々な流派の武器と動きを自在に操り相手の攻撃を避け隙を突く(あるいは作り出す)ことに長けるが、反面マトモに刃を交えて押し勝っているのを見たことは無い。だから凪が天敵になる。

 凪は氣を弾や爆風にして使うことができる。爆風……これは、所謂雑魚用の攻撃で、春蘭なんかは『そんなそよ風では私には効かん!』と真正面から突っ切ったりするものだ。だけど、逆にいくら身体を捻ろうが仰け反らせようが避けることができない。それに、氣弾……これも、速く多く撃とうとすれば威力が下がるけど、逆に言えば威力を無視すればその制圧力は魏の中、いや、この大陸でもトップクラスになるだろう。

 隙間を利用する聆にとって、隙間のない凪の制圧攻撃は脅威で、使われればすぐに終わってしまう。

だから無駄な会話をしてその間に距離をつめる必要がある。

 

「うん。ぴったりな評価だな」

 

 相手の陣形を見れば、聆が"使い物にならない"ことを予想しているのは明白。何をするにしても"すぐに"じゃダメだ。

 それに、さっさとケリをつけては"おもしろくない"。

 

「あれ、……もしかして私の派手評価覆ってないん?」

 

狙い通り、俺につられてか他の三人も馬を降りた。

 

「もしかしなくてもそうだぞ。……そもそも自分でも派手だって分かってるだろ」

 

ホントにな。

 なんてったって、これからこの戦場に集まった何十万という観客に一芝居見せようという大女優様だ。

 

「いやぁ、まぁ、良え女の辛いとこか?」

 

そして俺の役目は、華琳と聆が仕掛ける『戦舞台』の行間を繋ぐこと。

 

「あはは。そうだな」

「ええ……突っ込んでぇや。………いや、下な意味ちゃうで?」

「言われなきゃ思いつきもしないからな!?俺といえばソレみたいな考えはやめてくれよ……」

「そら無理な話やろ」

「何でだよ……警備隊の仕事とか頑張ってたろ?俺」

 

さぁ……そろそろだろ、聆。

 凪も、多分聆の『飛ぶ斬撃』の射程圏内には入ったはずだ。……そして、そもそも俺を盾にすればある程度は立ち回れる。

 

「隊長が組み伏せた盗っ人と押し倒した女の子の数、それぞれ数えてみぃ」

「ふっ……俺はどちらかというとだいたいいつも押し倒されてた側だ!………って何言わせんだ」

「えぇ……そっちが勝手に言うたんやん」

 

「聆ちゃん……!」

 

我慢できない、という風に、ついに沙和が口を開いた。

 

「ん?なんや?」

 

おそらく『キッカケ』として待っていたんだろう。

だけど、聆はあくまで穏やかにそちらへ振り向く。

 

「その……やっぱり裏切りなんて嘘だった……んだよね?こんなに楽しそうに喋ってるのー……こっちが本当なんだよね?」

 

一瞬、聆と目があった気がした。

 

「ホンマもウソも――」

 

キ゛ィンッッ

 

 顔のすぐ近くで響いた刺々しい金属音。

 

「――なぁ?」

 

二本の指で弾かれるように放たれた細剣を、反射的に抜いた刀が辛うじて止めていた。

 

「あぁ……」

 

『談笑してるのも裏切るのも本当の私やぞ』みたいなことを言おうとしてると思わせようとしてるんだろ?

 

「そんな……っ」

 

聆の頬が釣り上がる。

一気に腰を入れて俺を押し下げて、

 

「……!!」

「ふヒッ……」

 

二檄目は飛び込んできた凪に防がれた。

正確には、凪によって聆の顔に放たれた正拳を躱すためにモーションが流れた。

 

「………っ」

「……ァァ」

 

凪が着地し向き直ったのと、聆が両手の指に細剣を引っ掛け腕を広げたのがほぼ同時。

 

否、次の衝突音が響くまで含めて同時だ。




センター試験後は板にいろんなキチガイが湧くのでウキウキです。

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