だって恋姫ってギャルゲーですもの。
基本的に、
聆×恋姫、一刀×北郷隊、一刀×恋姫+聆、一刀×聆
の一通りは毎回やります。
「うぇい、隊長ちょっと遅いでー」
「兄ちゃん、大丈夫ー?」
「すまん。まぁ、何とか大丈夫だ……」
そうは言っているが、一刀の顔は苦痛に歪んでいる。恋姫名物「馬に乗ると尻が痛い」だ。序盤の見せ場の一つ(?)である。気の毒だから今度座布団でも用意してやろうか。私も現代人とは言っても、この身体は十数年前こちらで育ったものだ。薪割りや乗馬など、一般生活レベルのことに特別苦痛は感じない。
「まったく。馬に乗れると言うから少しは上達したのかと思っていたのだけれど……」
「腰をこう……上手く使うんや。隊長得意やろ?(下衆顔)」
「ちょっと聆、なんでお前の中の俺はそんな感じで固まってるんだ?」
「兄ちゃん、そんな感じって?」
「知らなくていいんだ。知っちゃうと聆みたいになっちゃうからな」
「じゃあいいや」
「ん!?なりたいやろ!私みたいなん」
「お給金の七割をお酒に使うのはちょっと……」
「聆、そんなことしてたのか……」
「えぇやんそれで幸せなんやから」
「はぁ……三人とも、馬鹿な話してないで、少し急ぐわよ。今日中には視察を済ませたいから」
華琳は呆れ顔で指示を出し、馬を軽く走らせはじめた。
「お、おい!だから、これ以上は無理だってば!」
振り落とされないようにするだけで必死だと言うように、一刀が叫ぶ。もはや悲鳴に近い。
「少しくらい厳しくした方が身体は覚えるものよ。三人とも、付いてきなさい!」
「了解ー」
「わかりましたー」
「あ、おい、ちょっと待てってば!」
「はよぉせーや」
「心の準備が……っ!」
「行くよ!兄ちゃん。……えいっ」
季衣が一刀の横を抜く瞬間。
「!?」
馬の腹に軽く蹴りを入れたらしい。当然、一刀の馬は勢い良く走り出した。
「アッーーーー!」
アッーーーー!て……
―――――――――――――――――――――
目的地の村に着いたころには、一刀はクタクタになっていた。
「落ちんかったし、上出来ちゃう?」
「お疲れさま。お兄ちゃん」
「し…………死ぬかと思った」
「その程度で死なれては困るわよ。馬に乗っただけで死ぬのなら、戦なら十回は死ぬじゃない」
「ごめん……でも季衣、あれはひどいぞ」
「あれが一番上達するんだよー。ボクもあれで上手に乗れるようになったんだし」
「ある程度無理に走らせたほうが手っ取り早いよな」
「命の危険を感じるんだが。……ていうか、やっぱみんな馬に乗れるんだなあ……」
「軍の関係者ともなれば普通は乗れるやろ」
「私の軍でまともに馬に乗れないのはたぶんあなただけよ。一刀」
「うそだろ……桂花は?」
「普通に乗ってるの、見たことあるよ」
「隊長、若干桂花さんのこと馬鹿にしとるよな」
「運動神経とかのレベルの問題じゃないのか……」
「れべる……?」
「あー、えっと、段階?のこと」
「武芸に関してはいまさら期待しないけれど……馬には最低限乗れるようになっておきなさい。これは命令よ?」
「………努力します」
馬に乗れないと行軍にも影響が出るしな。一刀には尻の痛みに耐えて頑張ってもらいたい。……そのうち塗り薬イベントでも起こすか。
「けど、華琳、ずいぶん急な視察だったな」
今朝の朝議で、開墾できそうな土地の情報が入った。その場で視察が決定され、その数刻後には出発をした。メンバーは、華琳、一刀、護衛として季衣、私。そして親衛隊の一部。個人戦力としては私より凪の方が適任なのだが、判断力と防御面での指揮力を買われたのだった。
「必要だったから急がせたまでよ」
「まあ、確かに仕事不足は深刻だな……」
「無職の数は食いっぱぐれの数。食いっぱぐれの数は賊の数やしな」
「兵役にも限界があるもんねー…」
人口が街のキャパシティを超えてきたのだ。なら、新しく生活圏を作っちまえばいいじゃんjk、というのが今回の目的だ。
「できるだけ早く解決したいもんな」
「それだけではないわよ」
「今回の開墾の中心は田畑やからな、植え時逃したらアカンし」
「あぁ、そうか。今からなら急げば間に合うのか。間に合うのか?」
「今すぐ畑を作り始めれば、秋は無理でも冬野菜には間に合うんじゃないかな」
「種や苗の手配もすぐにできるわけではないしね。次の作物を植える時期まで人手を飼い殺しておけるほどの余裕はないのよ」
「いろいろ大変なんだなぁ」
「こんなもの、辺りの農民でもしていることよ」
「食料の確保だけじゃないんだな……」
もしかして一刀さんは公民受けてない系?
「衣食住、それを支える仕事。全部、どれが欠けても国は回らんで」
「それを管理するのが政というものよ」
「大変なんだな、王者ってのは」
「それをしてくれるから、ボクは華琳様にお仕えしてるんだよ」
華琳って俺様系の割りに謙虚だからな。誰よりも自分に厳しい。
「じゃあ、そろそろ荷物置いて、行かんか?」
「そうね。荷物を置いたら、すぐに視察に出るわ。ここで遅れた半日は、計画を半年遅らせると思いなさい!」
疲れていたので、一旦寝ようと思ったら朝までガッツリいっちゃったという罠。一刀さんの知識は偏りがちだとおもいます。