哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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英雄譚が予想通り微妙で残念です。
キャラ数に対してテキストが少なすぎるせいでキャラに惚れる前に終わっちゃうんですよね。


第十三章一節その六〜二節その二〜三節その一 〈α〉

 一瞬にして天地が何周もする。予備動作無しのローキックだというのに、とんでもない威力だ。私が回転するように受けたという要因ももちろんあるが、それはそうしやすいように重心移動しただけであって回転のエネルギー自体は全て黄蓋がもたらしたもの。こういうのを見せられると、やはり自力で勝つのは無理な話だったのだと実感する。

 

「ハァッ!!」

「ッ!」

 

トドメとばかりに振り下ろされる一撃。何とかその起動上に、残ったもう一本の剣を置くことができたが、それも砕け吹き飛ばされる。

 

「祭!」

 

孫策も もうすぐそこまで来ているか。合流される前に何とか重症を負わせて最終決戦に干渉できないようにしなければ……。

 今の状況はどうか。先程のローキックで左脚の筋組織が破壊された。黒い太いアレも細剣二本もロストした。二本の脚で踏ん張ることはできないし、メインウェポンとするには心許ない武装しか残っていない。

対して、黄蓋は…………右足首付近が抉れ、額に脂汗を浮かべている。

 

 掛かった。

 この鎧をデザインした当初から温めていた策がようやく成った。

この鎧は恋姫世界ではおよそ非常識に思えるほどに装甲で全身を覆い、至る所に攻撃的な衣装が取り入れられている。それは棘だったり刃だったり。また、様々な武装を収納しているためにそれらの刃先が露出している箇所がいくつもある。だが、二の腕と腿にはそれが見られない。多くの日本の甲冑と同じように直垂が剥き出しになっている。

 これは殆どの相手にはさして意味がない事柄である。どうせ甲冑ごと叩き割ってやろうという意気の者ばかりだからだ。だが、極限られた者には大きな意味を成す。黄蓋、夏侯淵、張飛、そしておそらく黄忠の四人だ。……馬騰については完全に予想外だった。さて、この四人は素手、素足、またはそれに近い状態での近接格闘術を使用すると予想される者たちだ。武器を使う場合と違い、素手で硬いものや尖ったものを殴れば当然自分が怪我をする。

 だから黄蓋は脛でもなく脇腹でもなく私の腿を蹴りつけた。これが、鉄脛当を装備している凪だったなら鎧ごと脇腹を蹴り砕いていたはずだ。

 柔らかく、怪我の危険がないはずの腿を蹴った黄蓋が、足を負傷した。……理由を言い当てるのは簡単だろう。

 今回の戦、私は直垂の下に棘を仕掛けていた。黄蓋は弱点を突いたつもりがまんまと罠に飛び込んだのだ。しかも、麻痺毒のおまけ付。黄蓋の強さを目の当たりにして『自力で倒すこと』を完全に諦めた私は『ならもう自爆してもらうしかないな』と、長いこと自粛していたこの技をつかったのである。

 おそらくこのせいで私は卑怯者呼ばわりされることになるだろうが、そのおかげで勝ちが見えた。黄蓋の眼に闘志はまだ有るようだが、取り敢えず右脚は終わっているはずだ。

 

「鑑惺………ッ!!!」

「蛇鬼の面目躍如ってなぁ」

 

せっかくのチャンス。ここでふいにするわけにはいかない。

 

「ここで、キめさせてもらうでッ!」

 

両腕を甲板に踏ん張り、三本足で一直線に突進する。

 

「このッ下衆がッ!!!」

「果てろッ!!!」

 

後ろ脚を強く蹴り、黄蓋に躍りかかる。

眼前に迫る切っ先を一本角で受け止める。その間も、勢いの乗った躰は前進を止めることはない。強く強く四肢を叩き付け、巻き付き、締め上げる。

 

「ぐ、ア゛ァ゛ア゛ア゛ッ ッ」

 

全身から突き出た棘が、黄蓋の褐色の肌を引き裂く。

 

「マトモな鎧を着とればこんなことにはならんかったやろにな」

 

ホールドを緩め黄蓋を開放し、そして、張り倒した。

 

 孫策の方は――

 

「祭様の仇……!」

「ォォォオオ!!!」

 

周泰と甘寧が正に今 跳んできてるところか!

転げ落ちるように河に飛び込み、間一髪のところで退避した。鎧は重いし片脚は思ったように動かないが、自陣までの距離はそう遠くない。ちょっと燃えている船の下を潜ればすぐだ。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 「只今帰還しました」

 

呉の船団に、先行していた二人が戻った。

 

「祭は!?」

「こ、こちらに!」

「………ッ」

「なんて傷……」

「で、ですが止血はしておきました!安静にしておけば必ず……!」

「元より、数は多いですが浅いようです。祭様なら回復なさるでしょう」

「そう……。なら、さっそく相手にお礼しにいかなくちゃね。その様子からすると逃げられちゃったんでしょうけど……」

「すみません……あと一歩のところで河に………」

「そうか……。なら、我々も手早く撤退すべきだろう」

「何言ってるのよ冥琳。ここから敵陣中央を突き破るんでしょう?それに、そうしないとこの戦、負けだわ」

 

 呉軍はその戦力の殆どを陣の中央に集めている。それが引くとなれば前線は完全に機能停止。戦闘の続行は不可能になる。

 

「……もう勝負は決しているさ」

「………」

「中央は完全に炎の壁と成っている。敵が全く消火を行わなかったせいでな。その上、他で出た瓦礫まで集められて燃やされている。炎の勢いは想定の何倍も強い。……そうだな、明命」

「は、はい。船団ではとても……それこそ、鑑惺のように潜りでもしないと」

「なら敵右翼に……。曹操はそこにいるんでしょ?」

「ええ。ここに居るわ」

「曹操!?関羽たちは……!?」

「すまん!一騎討ちの間に兵力で周りを崩された!」

「もう既に畳まれはじめてるってこと……っ」

「伝令!右翼、陳宮様より撤退の催促の文が」

「右翼も、か」

「くっ……江東の地でこんな………!」

「雪蓮……」

「分かってるわ!撤退するわよ」

「逃がすか!」

「夏侯惇……容赦無いわね」

「この状況で容赦するほど姉者は酔狂ではないさ」

「くっ……撤退を急がせろ!」

「急いだところでn――うわっ!?」

「………」

「呂布!!」

「……止める」

「退路は厳顔殿が確保しておりますぞ!でも長くは保たないので急ぐのです!!」

「恩に着る!」

「恋!私も殿をさせてもらうぞ。紫苑、付き合ってくれるか?」

「もちろんよ。必ず防ぎきりましょう」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 「ふふ……非の打ち所の無い勝利ね。相変わらず聆は怪我をして帰ってきたようだけれど」

「今回は軽傷で済むと思たんやけどなぁ」

 

左太腿の打撲だけで済んだと思っていたら、地味に肋骨が折れていた。

 

「まぁでもその代わり黄蓋の手足の筋肉切り刻んで来たし、おあいこやろ」

「一思いに殺してやれよ……」

「殺したら呉の連中がブチギレて士気上がりそうやん」

 

本来の意図は別だがな。

 

「それで、その後の敵方は?」

「はい。呉軍は建業に引くようです。蜀も成都に」

「劉備は共に成都に移ることを提案したようですが、孫策がそれを拒否したと」

「そうでしょうね。孫策が戦う理由は母親の威光を守ることに他ならないから。例え確実に生き延びることができたとしても、建業を離れては意味がない。……ハァ。だから小覇王止まりなのよ。孫呉という鎖に繋がれた哀れな虎よ」

 

したり顔で言っているが、華琳も覇道に捕らわれているよな。口には出さないが。

 

「あと、言いにくいのですが……鳳雛に逃げられてしまいました」

「それは残念ね……。久々に羽目を外せると思ったのに」

「うわぁ……」

 

逃がしてやって正解だったな。小さい女の子が廃人になる様なんてメシマズ以外の何物でもない。それに、あわわ軍師をそんな風にしたとあっては、はわわ軍師との良好な関係は望めなくなるだろう。

 

「まぁ、手引きした者にもそれなりの理由があったのだろうし、不問とするわ……」

 

バレとるやないですかいややーーー。

 

「それに、もっと気になる失せ物も有るものね」

 

あ、それは私も思った。

 

「誰か、一刀はどこか知らない?」




    ■曹北
    ■張■
■■于■■■■■■■■
■華楽■■■■■李文■
■■■■■鑑■■■■■
夏夏■■■黄■■■許典


関張□□甘□周□□厳魏
趙馬□□□孫□□□呂□
黄馬□□□孫□□□□□
   □□孫□□

     ↓

  ■■■■■■
 ■■■■■■■■
■■■■△△△■于■
■曹夏△ 周 △文楽李
■夏関呂孫甘孫□□典許
張趙黄□□孫□□□魏■
■■馬馬□□□□□□厳
■華張□□□□□□
■    □
        ↘撤退

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