哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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おひさしブリヂストン(橋石)
その五だから呉(適当)
久しぶりにPCの方の真恋姫やろうと思ったら動きませんでした糞が
やっぱpspって神だわ

今回はいつもより文章がモロモロだと思うので後々修正が入ると思います。思います。


第十五章二節その五

「——こう言うのもなんだけれど、見慣れてしまったわね」

 

 さてそろそろ見張りの交代の時間か、と少し早めに起きて準備していた俺に突然招集の使いがやってきた。全員ではなく、そのとき手が空いていたメンバーだけらしい。こういう場合は大して重要じゃない相談事や連絡……もしくは逆に極秘のかなり重い話題かのどちらかだ。このタイミングでハプニングは勘弁してくれよなんて考えながら本営までやってきたワケだけど……。

 

「やろな」

 

 そこにいたのは呆れ顔の華琳と桂花たち軍師、そして担架に横たわって半笑いの聆だった。後から来た面々もそれぞれに『またか』という表情になる。表情だけじゃなく実際に口に出したりもして、それに聆が軽口で答えたりしていた。

 話を聞いてみれば、どうやら呂布に襲われたらしい。なんとか退却させることに成功したらしいけど……。いや、ちょっと待て。呂布!?

 

「いやいやいや、笑ってられないだろ!俺たちの予想と違って、呂布も普通に奇襲に使って来たってことだろ?」

「相当焦っているようですね。諸葛亮は」

「もう成都までの道のりも半ば近く。余裕が有るはずないだろう」

「第二の会戦の前に一撃加えたかったということでしょうね」

「実際喰らったけどな」

「……?」

「いや、これ見てみないなこれ」

 

そう言って首に巻かれた包帯をずらす聆。首の左側に傷薬の軟膏が塗ってある。

 

「骨が折れたわけでも体に穴が開いたワケでもなし。聆にしては健康な方だと思うが?」

「春蘭さんの場合これガチで言うとるかもしれんから怖い。これ首やで首」

「あんたもヘラヘラ笑ってたじゃないのよ」

「あの長い髪を失ったのは残念ではあるけれどねぇ……」

「でも短いのもかわいいよ」

「……平常運転ね」

「何が?」

 

桂花は何も答えてくれず、代わりに心底鬱陶しそうなため息が返ってきた。かなり長い付き合いになってきたけど、桂花のこの態度だけはブレないなぁ。

 

「ほんで、その第二の会戦、敵の布陣はどんな感じになりそうなん?」

「え?そうね、奇襲に現れた将の記録を見て、呉勢の頻度が高まってきてるから多分呉が中心になるでしょうけど」

「孫策の性格からして、早く借りを返したいのでしょう」

「ふーん……まぁ順当やな」

 

視線を宙に漂わせ、何か考えている様子の聆。聆がこういう顔をした後は、大抵何か不思議なことを言い出すんだ。

 

「んだら私非参戦でええか?」

 

そして、今回もその例に漏れなかった。

 

「え……?」

「非参戦?」

「うん」

「ちょっと、本当にどこか重大な怪我を?」

「怪我の方もあるけど……いや、それ単独で休戦の理由になるほど酷ないけどな?他に、死んだ体で進めて欲しいと言うか」

「それはまたどうして?……いえ、まぁ、理由は色々と思い当たるけれど。でも嘘を流布するのは小物のすることよ」

「やから『死んだ』なんか大っぴらに言わんで。暫く私の出番を無くすだけでええ。内にも外にも何の報せも無くな」

「言質取られなきゃ良いって考えもどうなのとは思うけれどねぇ……」

「そもそも、それで『死んだ』と思うでしょうか?『何かあった』とは思うでしょうが……」

「むしろ聆ちゃんのことですから何か策の準備に入ったと思われるかと~。それもまた面白いのですが」

「……もしかして、もう何かやりました?」

「……この髪、この首の傷の一撃で切れたにしては綺麗に揃いすぎや思わん?」

 

 言われてみれば、確かにきれいに揃った後ろ髪。戦闘の流れで切れたようには到底見えない。ここに来るまでに見栄えを良くしようと整えたわけでも無いんだろう。となれば、何かおかしなことをしたのは明白なワケで……。

『短いのも聆のイメージに合ってて良いなぁ』なんて呑気なこと考えるんじゃなくてこういう原因とか現象の先に有る情報を推測できるようにならないとまだまだ二流ってことなのかもしれない。

 

「はぁ、またどうやって誑かしたんだか。諸葛亮が気の毒だわ」

 

  ―————————————————————————————―――———————

 

「むぅ~、全然余裕ってカンジで腹立つぅ~!」

 

 一方の蜀呉同盟、牽制隊。孫尚香がイライラを爆発させていた。

 

「……成果の有った隊の夜間哨戒免除でしたっけ、曹操さんの方策」

「仕事さぼりのための士気とは……この大陸の明日を賭けた戦で何を不真面目な。我々を馬鹿にするにも程が有る!」

「実際バカにしてんでしょ」

 

 一向に魏の士気が下がる様子が無い。むしろ少しちょっかいをかければ嬉々として襲い掛かってくるほどだ。

 

「呂布さんも一回出たら何も言わずにすぐ後方に帰っちゃいましたしね~……」

 

 しかも切り札と期待していた呂布も陸遜の言う通り黙って帰ってしまった。ここまで空振ると、イライラと負の感情を外に出さないと弱気に潰れてしまいそうだ。

 

「それは、呂布に獲物を取られなくて良かったわ」

 

 しかしそんな陸遜のため息を遮るように、天幕の入り口から聞き慣れた声が投げかけられる。

 

「ここに来る途中ヤツの隊とすれ違った。特に連絡は無かったが、……本当に成果無しだったのか」

「雪蓮様!冥琳様も……」

「皆、牽制任務ご苦労じゃった。後は儂らが引き継ぐ」

「祭様まで!?」

「祭様、お怪我は……?」

「もとより手心をこれでもかと加えられておったしのぅ。おかげさまですっかり……とは流石に行かぬがかなり良くなってきた。それに弓兵隊はこういうことに向いておる。足手まといにはならんよ」

「もう姉様たちが出ちゃうの?」

「『もう』って言う程早くもないわよ」

「既に次の会戦の準備にも入っている。貴女たちは本陣へ退がりなさい」

「し、しかし、会戦が近いならなおさらお三方は本陣にいらっしゃった方が……」

「一国の大将自らがギリギリまで牽制に出てるなんて前代未聞ですよぅ」

「冥琳様、何か策が……?」

「策も何も。呉の玉座は蓮華に譲ったわ。……と言っても、ホントの玉座は魏に取られたままなんだけどね」

「じゃから、今回のことは前代未聞でもなんでもない。ただの将軍と軍師が前線に出てきただけのことよ」

「ぇ~………」

「正直、もともと雪蓮より蓮華様の方が君主に向いているもの」

「それ言っちゃう?……でも、そういう考えも有ってね。今、貴女たちは気まぐれか何かだと思ってるかもしれないけど、これは本気の戦略よ。ついでに蓮華の更に後方じゃ蜀の将たちが控えてくれてるわ。矜持には反するけどね」

「次の一戦には呉の未来が掛かっていると言っても過言ではない。……新体制を布くにはうってつけではないか」

「………」

「……姉様?」

「そんな顔しないで。代替わりはするけど、死ぬつもりじゃないわ」

「少し前までそのつもりだったようだがな」

「今日の冥琳は意地悪ね。……桃香たちに言われちゃったのよ。そうホイホイ死なれちゃ士気に関わる、迷惑だ—って」

「そういうワケじゃ。ともかくまずは会戦までの数日、蓮華様を支えてさしあげろ」

「……分かりました。それじゃ、よろしくお願いしますね」

「シャオにまっかせなさい!」

「な、穏!小蓮様まで……」

「なんじゃ思春、儂らの言うことが不満か?」

「い、いえ……しかし………了解しました。この甘寧、全身全霊を以て蓮華様をお助けします」

「よろしくね」

「……はい!!」

 

 

「——真面目すぎるのが玉に瑕よねぇ」

「それは穏が上手く釣り合わせるじゃろ」

「あの娘たちは大丈夫だろう。……それより、直近の奇襲戦だ」

「そうね。さーて、気合入れて行きますか」

「くくくっ……儂を生かしておいたこと、後悔させてやろうぞ」

 

 呉の古豪が再起を誓い、蜀侵攻戦は中盤に突入する。

なお、因縁の相手は出てこないもよう。




ホウ・レン・ソウは大事

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