哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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また初心に返って一文一文思いつくままに書いたのでやはり今回も前々回と同じく初投稿です
「何言ってんだこいつら」の連続かと思いますがそれは酔っぱらいの言動を再現したものであって決して作者の文才の問題ではないです(早口
誤字脱字主述の捻じれ設定矛盾があってもそれは酔っぱらいの言動を再現したものであって決して作者の文才の問題ではないです(嘘も言い続ければ真実


結成!仮面討伐五大老!? 下

「ははぁ、私ったらとうとう消されちゃう感じですか?」

 

 扉を開けるなり、七乃さんは後から入った私の方へ振り返りった。円卓に着いた桔梗たちの視線の前で、私は内鍵を閉め、眉一つ動かさず細剣を抜き放つ。夕日を反射してギラリと輝く。それで薄ら笑いが消えた。さすがの七乃さんも驚いたようだ。私が一歩踏み出すのと連動するように力なく一歩後ずさる。何歩目かで円卓にぶつかった。

 

「……理由だけ、訊かせてもらってもいいですか?」

「………――から」

「え……?」

「冗談やから!(半ギレ」

「えー……」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――

 

「聆さんが突然始めた悪ふざけで、お三方も何が何だか分からなかった、と」

 

 席に着いた七乃さんはじっとりとした視線を私に投げかけた。

 

「いやぁ……なんか七乃さんの一言にピーンと来てもてな」

「悪趣味過ぎますしなんでネタバラシのときそっちがキレ気味だったんですか……」

「ごめん」

 

 最近大人し過ぎたと久々にはっちゃけてみたら、ふざけ過ぎて少し難解だったようだ。これまた反省が必要である。

 

「それにしても目といい仕草といい、どう見ても本気じゃったな」

「面子からして殺される理由に心当たり有り過ぎて本当に心臓止まりかけましたよ」

 

 そう言って七乃さんは深いため息をついた。祭とは呉での因縁が有るし、紫苑とは言うまでもない定軍山だ。加えて自分は魏にとっても外様。目の前に刃をちらつかされれば、和平の生贄に捧げられる恐れに思い当たるのも仕方ないかもしれない。

 

「……よくあるの? こういうことは」

「有る有る。魏やと華琳さんに死刑宣告されたら一人前みたいなとこあるし」

「まぁ、それは確かに、刃物で距離感測ってますものね」

 

 激励の言葉が「しくじれば命は無い」である。それに一刀も私も、何度物理的に鎌をかけられたことか。

 

「睦言の代わりに殺気で仲を深める、みたいなな」

「今回深まったのはたぶん溝ですけどね」

「水に流そやないか。溝だけに」

「はぁ……、これ以上の文句は飲んでおきますけどね。水だけに」

「仲良いなお主ら」

 

 まぁなんだかんだと私と七乃さんの付き合いも長い。このくらいの冗談はもう許されたようだった。

 

「それで、この場に呼んだ理由というのは?」

「そろそろ本格的に仮面騒動を鎮圧しよ思てな」

「やっぱり私ヤられるんじゃないですか」

 

 私の言葉に再び身構える。やはり七乃さんもこちら側……仮面をつけたところで正体が隠せるワケではないと分かっている人間のようだ。それを見て面白くなったのか、桔梗が「今から言うことに首を横に振れば、そうなるやもしれんのう」と意地悪な顔をする。

 

「……どういった要件です?」

「なに、簡単なことじゃ。美羽のヤツを上手く乗せながら、他の仮面どもの動向をこちらに流してくれれば良い」

「相手しやすいように誘導してくれたらもっと良えけどな」

「構いませんけど……今みたいに一人ひとり囲んじゃえば良いんじゃないですか?」

「他の者はお主と違って本当にどうにかされるやもしれんという心当たりが無いじゃろうからな」

 

 言いながら、祭はやれやれと頭を掻き「まぁ、そういうことだ」と話を切りかえた。

 

「して、会の名前はどうする」

「それは、あった方が便利ねぇ」

「『仮面対策の会』でええんちゃう」

「なんじゃ味気無い」

「先ほど見せた冗談への情熱を少しは回してほしいものだ」

「じゃあ『五大老』なんてどうでしょう」

「一つ確認なのだけど、老の字は『老師』とかの意味の老よね?」

「当たり前じゃないですか。私が居るのに」

「待ってそれ私も向こう側扱いなんか」

「『向こう側』とは何じゃ。儂はともかく紫苑と桔梗はまだその辺諦めとらんのじゃぞ」

「『四大姉』にしましょう」

「なんで一人減って……て私かぁ」

「自分でワザワザ『姉』言うたらホンマに後が無い感じするな」

「しかし認めたら終わりだろう」

「終わっとるのか、儂」

「齢には勝てんっちゅーこっちゃわな」

「どうやっても時の流れに逆らえないなら、みんな死ぬしかないじゃない」

「そら(生まれ落ちれば)そう(いつか老いて死ぬ)よ」

 

 生まれ変わって若返るなんてことはそうそうあるまい。

 

「ま、こなして無事結成できたことやし」

「無事?」

「うん、無事。で、景気付けに呑もういうんがホンマの本題や」

「そう言って呑みたいだけでしょう」

「言い出したんは桔梗さんや」

 

 そして「私は呑んでばっかりもどうかと思うけどな」と最近の反省点からくる補足をしたが、酒飲みキャラが定着してしまった今となってはワザとらしい冗談にしか聞こえないらしい。大小差は有れど皆に笑われてしまった。

 

「まぁ、まずは一献」

 

 手始めに桔梗が七乃さんの盃に注ぐ。しかし七乃さんはそれを受け取ったまま、なかなか口につけない。

 

「……いや、毒はさすがに無いって」

「うふふ、冗談ですよ」

 

 暗殺ネタ合戦がまだ続いていたようだ。

 

「じゃあいただきますね」

「さぁ、お主らも」

「ありがとう。……でも、酒だけというのもね」

「もちろん、料理も用意させよう」

 

 異様にレベルが高い魏の城ほどではないにしろ、ここの料理人も相当なものである。一声かければ肉魚問わず次々と豪勢な料理が運び込まれて来た。そこからは、給仕に仮面の息のかかった者が居ても困るからと五大老の話は一旦無しに。やはりなんだかんだと呑みたいだけである。

 そうして日が沈んで少し経ち、今は皿に残った肉の切れ端やタレに浸かった野菜の残りをつついている。料理だけ見るとお開きかと思われるが、酒のペースはむしろ上がってきていた。

 

「揃いも揃ってザルすぎません?」

 

 夕日の色が抜けきらなかったのか、赤い顔の七乃さんが呻いた。それかもう酔っぱらってしまっているのかもしれない。

 

「どうした藪から棒に」

「何本空けてるんですか」

「15本じゃな」

「いま16本になった」

 

 一本目の盗品はともかく、どこから出して来たのか、桔梗たちが結構大きな甕を11本。私も4本私室から持ち寄ってきていた。濃い薄い、甘い辛い臭い、なかなか色々な酒が呑めておもしろい。

 

「良い感じに温まってきたわね」

「おうおう、早いな紫苑。儂はまだまだだがのう」

「そんな赤ら顔で見栄張ったって駄目よ」

 

 また一本空になった。負けず嫌い同士で肝臓のイジメ合いだ。

 

「しかしどうしたことじゃ。音に聞く呑兵衛鑑惺がさほど盃を進めておらぬではないか」

「いやぁ、呑み比べるような酒でもなし、ゆっくりやろうかなと」

「ほほう、これとてそれなりに値が張るものだが、役者不足と」

「味で言えば香りが強くて美味いけど、呑み比べとなれば、これやと酔いの我慢より花摘みの我慢比べになるやろ」

「言うではないか。ならば、呑み比べに相応しい酒とは?」

「ちゅうて私ら程ともなるとって話やが――」

 

 また私室に戻り、細かい傷のたくさんついた鉄の小甕を手に取った。これはキくぞ。私は少し汚い微笑を堪えつつ、皆が待つ部屋に戻った

 

「じゃーん」

「ああ、鎧の腰に提げてるやつですね」

 

 七乃さんが甕の見た目にピンと来たようだ。その言葉通り、この甕は私が戦に出るときに持ち出すものである。とは言え中身の種類はこれまで何度か変わってきたのだが。そして、今回はその最新版。蜀侵攻戦からのものだ。

 

「ほほう……銘は?」

「『戦』」

「なるほどのう……」

 

 桔梗は興味津々といった様子で甕を眺めた。同じく戦に酒を持ち込む者として思うところも有るだろう。ちなみに、その桔梗の酒は少しトロりとした甘味の強い濁り酒だった。こっちも時により変わるのかもしれないが。「早速開けてみてよいか」と、祭も待ちきれないという様子である。

 

「その前に窓開けて灯りどけて……」

「ふむ……?」

「爆発するから」

「たぶんそれ飲んじゃダメなやつだと思うんですけど」

 

 それはそうだ。いつの間にか異様に酒に強くなってしまった私でも一口で火照り上がるように作った"薬品"である。火にかかれば燃え盛るし、常人では酒気だけで目眩を覚える。吹きかけたりばら撒いたりすれば立派な兵器だった。

 それが、五つの盃に満ちた。眺めている暇は無い。さっさとしなければ空気に溶けて無くなってしまうからだ。

 

「……いっそ自分の腕に小刀を何度刺せるか競う方がマシじゃろう」

 

 三杯目でとうとう祭が弱音を吐いた。私も同じ気持ちである。

 

「これはこれで苦痛との戦いであって呑み比べではない気がするな」

「七乃さんなんか一杯で死んだしな」

「幸い、寝てるだけみたいだけれど」

 

 皆一様に顔を桜色にして机に伏せった七乃さんに目を移した。呑み比べはやめのようだ。賢明な判断である。

 

「この女も寝ておれば人畜無害よのう」

 

 起きていれば鬼畜有害か。ともかく今は可愛らしい寝顔を見せてくれている。そうして何という気無しに軽く頭を撫でてやっているうちに、七乃さんはうっ、うっ、と小さく震え出した。

 

「泣いておるのか……?」

「どうかしら……えずいてはいるわね」

「……寝ゲロやね」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――

 

「いやぁ、……ご迷惑おかけしました」

「この貸しは今後の働きで返してもらおう」

 

 七乃さんはまだかなりフラフラした様子ながらなんとか礼の言葉を絞り出した。

 幸運にも、今日は城の大浴場に湯がはってあった。どうやら先に麗羽と二枚看板が使ったらしい。この後誰か入る予定は有るかと担当の者に訊けば、無いとのことなので、たった三人のために大量の水と薪を使ったことへの苦言を胸に収めつつ、ありがたく身体や服やを洗うのに使わせてもらった。入れてから時間が経っているためか大分ぬるいが、酔った身にはむしろ冷ますくらいで良い。

 

「このぬるま湯が今は心地良いのう」

 

 岩風呂の縁に背中を預け、祭はふぅと息を吐いた。その姿に七乃さんがねっとりとした目を向ける。

 

「それにしても凄い身体ですねぇ」

「羨ましいか?」

「自分に欲しくはないですけど、ちょっと触らせてもらっていいですか?」

「おう触れ触れ」

「では失礼して……おおっ、……柔らかいですねぇ」

 

 押したり引いたり持ち上げたり、どうにも私の目には「ちょっと」には見えないのだが、触られているほうも気にしていない様子である。私がとやかくいうことではないか。

 

「ふむふむ……」

 

 当たり前のような顔で次に紫苑の胸に移っても、

 

「ほほぉ……」

 

 桔梗の方へ行っても何ら問題ないワケだ。

 

「なるほどなるほど……」

 

 そしてまぁ私の胸とて、この流れで触れられて怒る程小さくはない。

 

「で、感想は?」

「そうですねぇ……まず、大きさは上から紫苑さんと桔梗さんが同じくらい、ほんの少しの差で次が祭さん、最後に聆さんですね」

 

 何のスイッチが入ったのか知らないが、いやにスラスラと話し始める。この場のノリか、それとも普段から胸についての一家言を胸に秘めていたのか。ともかくあんな顔よりデカいおっぱいと比べられても困る。

 

「でも張りの違いで桔梗さんの方が大きい印象を受けました。ああ、張りは聆さん、桔梗さん、紫苑さん、祭さんの順です」

「くっ……やはり儂とて衰えたか」

 

 悔し気に自分の胸に目を落とす祭に、七乃さんは気を良くしたらしい。ペラペラと評論を続けた。

 

「しかし美しい尖りを保ちながら少しだけ崩すこの形は衰えよりも余計な力の抜けた懐の深さを感じさせます。それに乳首のいやらしさで言えば一番ですから自信をもって下さい。ああ、乳首のいやらしさ……言い換えれば触られ慣れた感だと祭さん、紫苑さん、桔梗さん、聆さんの順ですね」

「生々しい尺度の論評はやめろぉ」

 

 またもニタリと笑い、ますます口の滑りが良くなってくる七乃さん。全く、確かに寝ていてもらった方が良い。

 

「それでは個々に対する総合的な考察といきましょうか」

「いかないで」

「はやくいけ」

「いったりいかなかったりしろ」

「ではまず桔梗さんから。張り、大きさに優れ、その存在感には感嘆するばかりです。言うなれば攻めのおっぱい。一方でその威風ゆえに並みの相手では気おくれして手を出しにくく感じるかもしれませんから、積極的に触らせていき、圧殺するような戦いが合うでしょう。そういった意味でも、攻めのおっぱいですね」

「おっぱいに攻めや守りがあるのか……」

「もちろんです。紫苑さんがそうでしょう」

「そうでしょう言われてもな」

「大きさ自体は桔梗さんとほとんど変わらないのですが、見て取れるほどの柔らかさで接しやすく触りたくなるものです。しかし触られ慣れしていますから、それに余裕をもって対処できる」

「頭の良いバカとはこやつのことを言うのじゃろうな」

「さて、祭さんですが」

 

 妙に活き活きした顔で向き直る。声に反応してか、次のターゲットは祭に決定したようだ。まぁ、後は私か祭かの二人だけなんでさして変わらないのだが。

 

「祭さんは『自然体』ですね。これまた相当な大きさですが、先ほども述べた円熟した脱力感によりあまりおっぱいおっぱいと主張してはこないんです。しかし有する実力は随一。いざそれを認識する機会、触れる機会が訪れれば一瞬で相手を虜にしてしまうでしょう」

「いっそ怖いわ」

「確かにある意味怖ろしいおっぱいですね」

「お前のことやぞ」

「そして最後に聆さんです」

「もう好きにしてくれ」

「聆さんも、あまりおっぱいという感じではないですね」

「『おっぱいという感じ』って言葉のたわけ具合よ」

「しかしこちらは祭さんとは逆に観察するほどおっぱい自体の存在感が薄まっていきます。おっぱいも大きいですが、その下の筋肉こそ特筆すべきだということに気付かさるんですね。そこから腋、腕へとつながる曲線へ……あるいは胸の内側から鎖骨、首へと視線が滑っていきます。高い身長、強い骨格、しなやかな筋肉……優れた身体の一部としての、優れたおっぱいということです」

 

 たぶん褒められてはいるのだろうが、この釈然としない心持はなんだ。釈然としない心持をそのままに、「自分の乳はどないなんや? むねむね団とか言うて」とやり返してみるも本人は涼しい顔である。顔色は依然として赤いが。

 

「お嬢様も私もつき合わされただけですし。それに私の胸はどうだこうだとかじゃなくただお嬢様専用ですから」

「そんな答えでは到底納得行かぬな」

 

 と、どうやらやり返す気なのは他の三人も同じようで。まるで雌獅子が獲物に狙いをつけるような眼光だ。

 

「どれ、儂らが測ってやろう」

「ダメですー。おっぱい鑑定士免許無しのおっぱい査定は禁止されてるんですー」

「ええい、観念しろ」

「うわ、ちょっと、助けてー! たすけてー!」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あまり覚えてないんですけど、かなりひどい目にあった気がします」

 

 翌日、それぞれ寝台や長椅子、床から起き上がりながら目をこすっているところ、七乃さんが唇をとがらせた。どうやら呑み比べから風呂、さらにそこからここ、私の私室に来て今朝までの記憶が曖昧なようである。

 

「んあー? いやいや、それはこっちが言いたいで」

「ああ。寝たり吐いたり、しまいにはおっぱい鑑定なんぞ言い出して大暴れじゃったぞお主」

「そうでしたっけ? それはすみませんでした」

「ともあれ、皆大いに楽しんだことじゃ。この五大老、強い結束を以て仮面討伐を成し遂げようではないか」

「「応っ!」」

 

 平和となった後の新たな使命に、名だたる将が声を揃える。

 各々裸でなければさぞ勇壮だったろう。




某有名な寝ゲロ音声聞きながら書きました

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