哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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咳のし過ぎで吐き気がします。
健康には気を付けてくださいね。
喉が痛いのでミント系のものをいっぱい食べていたら、お腹を壊しました。


第五章一節その四〜二節その一

 「おぉ~燃えとる燃えとる」

 

指揮系統の混乱からか、消火はほとんど行われず、燃え広がる一方だ。終わってんな。黄巾。

 

「聆ちゃんたちが一番ノリノリで燃やしてたのによく言うのー」

「混乱云々よりそれ自体で死人が出ているだろうな」

「これからの時代、火計やと思うんや」

「イヤな時代なの……」

 

SEKIHEKIとかマジでヤバそうだ。圧倒的勝利は望んでいないが、部下が焼け死ぬのなんて見たくはない。その時に動揺しないよう、火計に慣れ親しんでおいてほしい。

 

「聆。鑑惺隊を敵陣に侵入させられるか?」

「え?いや、現に火ぃつけるときもナンボか入っとったけど?」

「そうではない。鑑惺隊全員だ」

「何も無しに入れられるんは分解してせいぜい二課位かな。あとは前線の崩壊に乗じて滑り込ませるとかで何とか。……ってーか、なんでなん?」

「いや……な。この混乱具合だと、張三姉妹が事故死でもしそうな気がしてな。聆には張三姉妹の確保をしてもらいたい。二十万から三人を探すのは骨が折れるだろう」

「分かった。私率いる一課は横を廻って侵入する。残りは隙が有れば潜り込むように指令出しといて突撃に参加させる。これでええか?」

「ああ。頼んだ」

「秋蘭様ー!本隊が突撃開始したのー!」

 

まさに敵の混乱が最高潮となった頃、華琳の本隊が雪崩込んで行く。勇猛でありながら秩序立った動きは、黄巾とは比べるのも失礼だろう。

 

「では、これより、我々夏侯淵隊、鑑惺隊、于禁隊は本隊と合流。右翼として攻撃を開始する。ただし張三姉妹は生け捕りにせよ。……盗人共に鉄槌を下してやれ」

「応っ!」

「全軍突撃!」

 

 

 「敵がもうこんな所まで!?」

「嘘だろ!?前線はもう破られたのか!?」

「ダメだ!!早く逃げよう!!」

「こんな危険な所に居られるか!俺は故郷に帰らせてもらう!!」

「あぁァンまぁァァリダァァァァァ!!」

 

黄巾に成りすましていた部下の手引で陣内に入ると、そこに広がるのはそれはそれはヒドい有り様だった。変装して侵入して、こっそりと行動した火計のときとは違い、今回はフル装備で百人超えの集団だ。それに、変装した味方がワザと恐怖を煽るように悲鳴をあげ、弱気な泣き言を叫ぶ。食料も武器も不十分な非戦闘員達には少々酷だったかもしれない。どうやら戦える者は全て前線に投入していたらしく、本当に近づくそばから逃げていく。これなら一班毎に分かれても大丈夫だろう。ここまで「始まる前から勝負がついている」戦いもそうそう無い。偶に発狂して襲いかかってくる奴もいたが、そういう手合いはことごとく針山にされ、余計に周囲を青褪めさせた。

 私たちは、張三姉妹を探して、地面に水が染み込むように奥へと進んでいった。

 

     ―――――――――――――――――――――――

 

 「けど、これでわたし達も自由の身よっ!ご飯も食べ放題、お風呂も入り放題よねっ!」

「……お金ないけどね」

「う……」

「そんなものはまた稼げばいいんだよ。ねー?」

「そう……そうよ!また三人で旅をして、楽しく歌って過ごしましょうよ!」

「で、大陸で一番の……」

「そうよ!今度こそ歌で大陸の一番に……っ!」

「……逃亡中に夢を語り合った少女達が結局捕まって悲惨な末路を辿る確率約八割…………」

 

墜ちる陣から何とか逃げ出したわたし達の背後から、地を這うような不気味な声が聞こえてきた。

 

「な……っ!」

「楽しそうなトコ悪いけど……お前らが張三姉妹やな」

 

振り返るとそこに居たのは、見上げるような巨体の……鬼だった。その周囲には黒い兵。曹操の軍だ。

 

「く……っ、こんな所まで……!」

「どうしよう……もう護衛の人達もいないよー?」

「くぅぅ……っ」

「大人しぃ付いてきたら悪いようにはせんけど……」

「……付いて行かなかったら?」

 

冥く濁った目がわたし達を舐め回すように見下ろす。

 

「ククク……その方がオモロいかもしれんなァ……」

「ちょっと……っ、何する気よ……!」

 

ちぃ姉さんが睨みつけても、それすらも愉しむように、一層笑みを深くする。

 

「なに、八割に仲間入りするだけや。安心せぇや多数派やから」

「そういう問題じゃないっ!」

「すぐにそんな事も考えられんようになるわァ」

 

一歩。ただ一歩近づくだけで威圧感と絶望感が膨れ上がる。

 

「張角さまっ!」

「テメェ!俺達の張宝ちゃんに何をしようとしてんだっ!」

 

助けに来てくれた……!わたし達は見捨てようとしていたのに。そのことには本人達も気付いていたはずなのに。でも来てくれた。人数も装備も到底足りないけれど、来てくれたその事実だけで、救われた気がした。

 

「本当に何やってんスか隊長……ぷぷっ」

「三姉妹には手を出すなって言われてたじゃないですか」

「いやぁ……最終命令は『生け捕りにせよ』やったし」

「と言うよりそもそもそう言うの鑑惺様の趣味じゃないでしょう」

「うん。何かノリで……」

 

気がしただけだった。助けに来たと思ったら、潜入していた敵だった。

 

「な……!!オンドゥルルラギッタンディスカー!」

「……諦めましょう、姉さん。ど う し よ う も な い わ 。……いきなり殺したりはしないのよね?」

「曹操はそない言いよったわ」

「……ならいいわ。投降しましょう」

「人和……」

「れんほーちゃん……」

「良し。ほんだら幸運な二割の仲間入りやな」

 

そう言って鬼は人の良さそうな笑顔を見せた。




次はついに呂布登場の時間です。
シーンカットするかもしれませんがね!

COMライセンスが欲しいです。

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