一回目→聆が酔っぱらっていたから。
二回目→作者が酔っぱらっていたから。
「うーん……予算も人員も足りないな。これはもっと見直す必要がある、か。あんま無茶言うと、桂花に怒られるしな……」
「へいっ!隊長っ!!」
「たいちょー、まいどー!!」
「やっほー!今日もいいお天気なのー♪」
「失礼します」
「な、なんだ!?」
突然、部屋の扉が勢いよく開けられた。俺は地図から顔を上げる。
「イタズラな天使がステキなできごとを運んできただけやで」
蹴破るように扉を開け放った聆を先頭に、真桜と沙和か賑やかに部屋へ入って来た。凪は入り口でビシッと丁寧に敬礼したが……結局は三人と同じくどかどかと部屋に入ってくるのだった。
「悪戯しに来ただけだろ?」
「沙和達みたいなかわいい女の子が部屋に来るって、ステキなことでしょー?」
「時と場合って大切だよな」
「嬉しく無い場合ってあるん?」
「あっ……(察し)」
何かまた聆に妙なキャラ付けされた気がするんだけど……。
「聆が何を考えてるのか知らないけどとりあえず否定しとくよ」
「えー、じゃあ隊長なにしてたのー?」
「一人で部屋に籠もって、暗いやっちゃなー」
「こんな良ぇ日にじめじめしこしこと……」
「仕事してたの!お・し・ご・と!!」
「隊長がー!?」
沙和、どういう意味だソレ。
「し…ゴ……TO………??」
聆が何のことだか理解出来ないというような顔をする。なんでだよ。
「えぇー、うそぉ〜」
真桜は信じられないとばかりに疑問の声をあげた。
「三人共失礼だそ!隊長だっていつも道案内くらいしていただろう」
凪が擁護の形をとったトドメを刺してくれた。
「はぁ……。みんなが俺のことをどう思ってるのか、よーく分かったよ」
「あぁん、もぉ〜、冗談やんかぁ〜」
「私らも隊長が何気に働けるっぽい人間やってのは知っとるから〜」
「元気だすの!」
「そ、そうです隊長。隊長は隊長の出来ることをやっていてくだされば……」
「……それがせいぜい道案内だと……」
ガックリと机に突っ伏す。
「え!?あ、そうではなくてですね!?ええと、あの……」
「あーあ、なにやっとん凪ェ。隊長すねてもたやんか」
「喧嘩最強の凪さんは精神攻撃も最強やなー。さっすが〜」
「楽進先輩流石なのー!」
「くそう、お前たち……あぁ、くっ、どうすれば良いんだっ」
「そらまぁ、隊長の喜ぶことして元気づけるとかやろ?」
「それは、一体……?」
「変態長やしな、分かるやろ?」
「な……っ!」
「とりあえずヨツンヴァイになるの」
「あくしろよ」
「う、うぅ……」
「っだぁーー!もう!ほら、凪、そんなコトしなくて良いから!落ち込む暇すら無いな毎回」
「えー、だって落ち込んで欲しないしなぁ」
「なー。ウチらの迸る遊び心がついつい大暴れしてまうんやもんな」
「玩具にされる側のことも考えてほしいよ……」
「大丈夫やで。そのうちイジられんかったら落ち着かんようになるわ」
「なにそれこわい」
「ところで隊長ー、その紙何ー?」
沙和が俺の手元の紙を指差す。
「あぁ、これがその"仕事"だよ」
俺は紙を四人の目の前に広げて見せた。
「んん〜〜?小さい字がいっぱいで、わかりづらいのー」
「これは……街の地図、ですか」
「そ。街の警備計画の見直しをしてたんだ。最近どうも、区画によって格差が出てきてるからさー」
「あー……西地区のことか?」
「そうそう。ヒドイだろ、このところ」
「籠売りに来たときからちょっと様子おかしかったしな」
「結構柄の悪い奴らが集まっとるなぁ」
「うんうん〜。陳留にしてはめちゃ荒んでるよねー」
「街自体もなぁ……」
「道にはゴミがあふれ、家屋も古くぼろぼろなものが多いですからね」
「雰囲気とかの問題やのぉて物理的にも暗いしな」
「だろ。だからちょっと考えてみたんだ。……ここ、見てくれないか」
俺が指差した紙の見出しの文字を四人はそれぞれ興味津々といった様子で覗き込む。
「なになにぃ〜……『割れ窓理論』?……なんじゃそりゃ」
「初めて聞く単語です」
「えっと……普段なら見逃してしまうような、軽微な犯罪を取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪全体を抑止できるとする……環境犯罪学上の理論のこと」
「けいび……かんきょう、はんざい……?隊長〜!ますますワケわかんなくなったのー」
「名前とさっきの話から察するに、……例えば割れた窓を放置するやろ?ほんだら『この辺は人の注意が向いてないな』って思ってゴミを捨て置いたりするよな軽い犯罪がよぉ起きるようになって、そういう怪し気なとこに居るような奴が集まったり育ったりするようになって、大きい犯罪も起きるようになる。ならその割れた窓を直すように、つまりほんの軽い異常も取り締まるようにすればその後の犯罪は防げるやろ常考。ってことやな?多分」
「あー!そういうことなの!」
「聆、完璧じゃないか!」
多分俺より理解してるぞ。
「悪いことするヤツは治安が良かろうが悪かろうが何かしらしでかすもんちゃうの?」
「……そんなんは叩っ斬るしかないやろ元から」
「そういう特殊例は置いておいて……。大人数っていうか、地域を全体的に良くしようってことだよ」
「なるほど。群衆心理を見事に利用していますね」
「へえぇ〜、そっかそっかー。せやなあー!うち、隊長のことちょーっと見直したわ」
俺は計画書を閉じながら、ぽりぽりと頭を掻いた。
「……とまぁ自慢したいところではあるんだけど、実はこれって俺が考えたことじゃー無いんだよなー」
「天の知識かぁ」
「そう。あっちじゃあすでに有名で、それを活用させて貰おうかなーって思っただけ」
「がっかりやな」
「私は納得もした」
「無能で悪かったなっ!」
「うそうそ。こういうんで大事なんは、どーいう場面でソレを活用するかやろ?西地区の改革にこの方法を思いついたんは、素直にすごいと思うで」
「真桜ちゃんの言うとおりなの!沙和もめっちゃ良い計画だと思うよー!」
「華琳さんが認めた男は伊達やないな。さすがやでぇ」
「ぜひとも実現に向けて頑張りましょう」
「お、お前ら……」
なっ、なんだ!?俺は褒められるのには耐性が低いんだぞっ!……『イジられんかったら落ち着かんようになる』ってのはこのことか!?
「そ、それよりどうしたんだ?四人揃って」
照れくさくてどこともつかないトコロに視線を彷徨わせてしまう。
「あー、隊長照れてるー♪顔真っ赤なのー」
「うわー、乙女かいや」
「うるさいっ!ちょっと部屋が暑いだけだっ」
「熱うなっとるんは隊長だけやろ」
「とにかく早く用件を言え、用件を!」
「ひひひっ、まぁそーいうことにしといたろか」
「くくくっ、もぉ時間もわりかし喰ったしな」
「時間?なんか急ぎの用でもあるのか」
「違うよー。お昼ご飯なのー!早くしないとお昼休みがおわっちゃうのー」
「慌てろ、もう落ち着く時間じゃない」
「えっ、昼!?もう!?」
確かに窓から差し込む陽は高い。警備計画に夢中になり過ぎたみたいだ。
「今から行けば大丈夫やで!ほら、早よ行こ!」
「行き先は歩きながら決めるのー」
真桜が俺の手を取り引っ張る。沙和なんかはもう扉を開けてスタンバっている。
「こら、真桜!強引過ぎるだろう」
「や、いいよ凪。俺も昼食い損ねずに済んで助かったし、親睦も深まって一石二鳥だよ」
「そうですか……?」
「そうやで。それに私が見た限りでは隊長は多少強引なんも有りの人間みたいやし」
「……何でもその方向に持っていけるのは逆に何か凄いな」
五人でお昼ご飯か……。賑やかそうだな。
聆と真桜が見分けにくい。
逆に考えるんだ……見分けなくていいさ、と考えるんだ………。
楽進,李典,于禁伝は基本的に長いですね。
テキストチェックしてて気づいたのですが、
恋姫って醤油存在するんですね。
しかも酢醤油。