哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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咳、鼻水が終わったと思ったら貧血がきました。
なんじゃこりゃ。

今回は短いです。
オチがやりたいがためだけに書きました。


第五章拠点フェイズ :【鑑惺伝】鍛錬系イベント初回

 「はあっ!」

 

掛け声と伴に木刀を振り下ろす。引き戻してもう一度。ゆっくりと動きを確かめるように繰り返す。踏み込み、振るい、また構える。その動作が淀みなく混ざり合い重なり合うように。更に速く更に柔らかく。身体にこの動きが刷り込まれ、実践でも、浮足立っていても、敵が襲ってきたら縦一文に叩き斬れるように。

 

「っほぃ」

 

カツーン

 

「いてっ!?」

 

横から何かが投げ込まれ、振り下ろす木刀にちょうど当たった。予想していなかったせいか、叩いたのはこっちなのに反動で手が痺れる。

 

「無心なり過ぎや。それに途中から雑くなっとった」

「聆……。うーん、確かになぁ……」

 

反復で途中から動きの細部への意識が抜けるのは昔からの悪いクセだ。じっちゃんにもよく注意されたっけ。

 

「そう言えば前、一緒に鍛錬しよ言うとったなぁ」

「お!相手してくれるのか?」

「私も丁度体動かそ思とったとこやし。部下として隊長にはある程度強ぉなってもらわんと。……ちょっと目ぇ離した間に雑魚に討ち取られとったとか情けなさすぎるやん?」

「……有り得そうで笑えないな」

 

三人程に囲まれたら軽く死ねる自信有るぞ……。

 

「じゃあ、とりあえず実力とか傾向とか見たいから、私と打ち合おか」

「……手加減はしてくれよ?」

「さー、それはどないやろな?」

 

いや、確定だろ。

 

    ――――――――――――――――――――――――

 

 適当な距離を空けて向かい合う。中段に構えた俺に対して、聆は木刀を右手に軽く握り、だらりと地面にたらしている。……のだが、威圧感がすごい。普段普通に話してるけど、やっぱり聆も武将なんだな。鑑惺って人物は聞いたことないけど。

 

「あれ、聆っていつも左手に武器持ってなかったっけ?」

「確かに左手中心やけど、アレって一応両手持ちやし、私がもし補助で片手剣使うんやったら多分右手やろから」

 

よかった。露骨な手加減アピールじゃないんだな。

 

「じゃ、そろそろ始めるか」

 

そう言って聆も、片手ながら、俺と同じく中段の構えをとった。

 

「構え無しとかじゃないんだ……」

「それ、いかにもナメとるって感じで嫌やろ?」

「そうだけど、ちゃんと手加減してくれるんだろうな」

「何?フリなん?」

「いや、真面目な話、聆に本気出されたら何も分かんないまま終わっちゃうだろうから」

「……せいぜい祈れや」

 

周りの空気がスッと沈む。凪が集中した時は炎のようなオーラが出るんだけど、聆はやっぱりかなり違うタイプなんだな。

 

 

 「っ!!」

 

聆の挨拶代りの真正面からの袈裟斬りを合図に試合が始まった。意外にも聆の太刀筋は直線的で、受け流すのに苦労はしない。……戻りが速すぎて反撃する暇はないけど。

 

「せいっ!!んな!?」

 

流したと思った剣がそのまま戻ってきた。飛び退いて距離を取ろうとするも、軽い一歩ですぐに詰められる。体格の差がモロに出ている。たった数センチの差でもその影響は大きいものだ。さっきとは違い、上から圧し潰すような剣戟が降り注いで、上体が仰け反ってしまう。一気に畳むつもりか!?

 

「っらァっ!」

 

トドメとばかりに大振りに振るわれた剣を左に流すと同時に、右前に踏み込み、

 

「胴ッッ!!」

 

が、これはスルリと退がって避けられた。なら、もう一撃!

 

「ハッっ!」

 

聆はゆっくりと退がりながら確実に俺の攻撃を受け止めていく。なんとか攻め徹さないと、ここで覆されたらそのまま負けてしまいそうだ。

 

「せいっ!はっっ!!ったァッッ!!」

 

手を休めず、ひたすら打ち込んでいく。が、聆の後退が止まり、逆にジリジリとこちらを押し返し始めた。斬撃を尽く流され、間合いより内に入られ、攻めている筈なのに追い詰められる。たまらず横にズレて間をとった。聆もそれにシンクロして逆に動き、始めよりも大きな間が空く。

 

「……仕切り直しってことか」

「トドメやで?」

「何言って……っ!!」

 

いきなり目の前に斬撃が飛んできた。何とか防げたが殆ど運だ。間合いを詰められたわけじゃない。聆は未だ三メートルほど向こうに立っている。

 

「私の間合いは素手でも八尺有るんや」

 

ゆらり、と聆の身体が揺れた。

 

/ヽ゛シィッッ

「ガッっ!!?」

 

腹に激痛が走り、膝が崩れ落ちる。間違いなく今回で最速の一撃。もはや目には見えず、防ぐ手立てなんて無かった。これが本当の聆のスタイル……。直線的な動きは、本当に、ただ俺の力量を試していただけだったみたいだ。

 

「おぉ……。ちょいやり過ぎたかな」

「いたた……。分かってたけど……あんなに鮮やかにキメられると凹むなぁ」

「ホンマは一発目で終わるはずやったんやけどな。よぉ止めれたわ」

「……なぁ、これで、聆は凪には敵わないって、マジ?」

「凪、氣弾爆発させるし……」

「ああ……」

 

確かにアレは何というか、理解を超えすぎて逆に自然な感じがするレベルだ。

 

「で、隊長の問題点やけど、……特定の動きは滑らかやのに他となると素人みたいな適当打ちになる感じ?あと足元への攻撃に弱すぎ。ただ、流しと根性と反応速度はそこそこや。素振りより対人練習増やした方がええんちゃう?」

「……なかなか、人とか時間の都合がつきにくいんだよなぁ。皆、もちろん俺も何かと忙しいし」

「じゃあやれるときにやっとくか!」

「え゛っ」

 

    ――――――――――――――――――――――――

 

本日の成果

腹筋が割れた(外傷)




私が強いんじゃない。お前が弱すぎるんだ。

一刀さんvsその辺の雑魚でも同様の現象が起きます。
一刀さんは春蘭の斬撃を木刀で往なすことができる変人。

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