哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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第六章戦闘パートRound2〜三節

 「――貴様らを一人でも多くこの大地から消し去ってやる!!」

 

誰だそんな物騒なことを叫んでいるのは……。それにここは……。なるほど。まだ戦場に居るのだな。完全に終わったと思ったが、……状況は悪くない。右手で華雄の肩を掴み、その他はだらりと垂れて、膝をつき、上体を相手に預けている姿勢だ。奇襲をかけるのにはうってつけである。不思議と頭が冴え渡り、おそらくポッカリと穴が開いているであろう腹の痛みもあまり感じない。これが脳内麻薬というものか?とにかく、まだやれる。なら、どうすれば勝てるか。斬撃は相手が上。柔術的な投げは通じない。乙女武将たちはこの細い身体に法外な筋力を備えているからだ。細いよなぁ。乙女武将のステータスの内、唯一常人を下回るであろうものが体重だ。

……これは…いけるでぇ!!

 

「反論する者も居ないのか……。よかろう。これよr……!?」

「ここにおるでェ……」

「ハッいまたんぽぽの自己同一性が脅かされた気がする!」(in西涼)

 

回り込みつつ相手の腰に腕を廻し、高々と抱え上げる。傷口からジュワりと血が溢れるが、所詮は些事だ。

そんなことより華雄よ、どうだ?十尺の高みからの景色は。

 

「――投げっぱなしジャーマンはブリッジできない奴の言い訳――」

 

ゴしャッッ

 

   ―――――――――――――――――――――――――――

 

 春蘭と張遼の一騎打ちが決着し、俺たちも張遼隊員の捕獲を手伝うことになった。戦況もほぼ連合側の有利に落ち着き、中央の呂布も撤退を始めている。

 

「あと一息ってところかな」

「春蘭様の目……心配なのー……」

「ああ……。でもきっと大丈夫だよ。あの春蘭のことだし、次の日にはケロッとしてるだろ」

「心配と言えば……聆も心配です。戦闘の間右翼からの情報は殆ど廻って来ませんでしたから」

「それこそ大丈夫やろ。なんや戦のすぐ前にも劉備んトコの武将と酒盛りしとった言うし」

「それに、よりにもよってあそこに行ったの華雄だからなぁ。また関羽にやられて聆の出番無かったんじゃないか?」

「報告!!」

「どうした!」

「鑑惺様が華雄との一騎打ちにて討死なさりました!」

 

え……、え?

 

「うそやろ……」

「あ………ぁ…………」

「バカなっ!!それは本当なのか!?どうせ聆のいつもの度が過ぎた冗談なのだろう!」

「せ、せやせや!聆はいっつも他人が普通ふざけんとこで敢えてふざけよってんもん」

「い、いえ……。健闘するも、腹部を戦斧の石突で貫かれ、顔面に強打をあびせられ……。しかしながら、倒れても尚敵に掴みかかったままの、御立派な最期でありました!!」

 

信じられない。認めたくない。

 

「ま……まず、どうして聆と華雄が一騎打ちなんかになるんだ?後方支援だったはずだ!」

「それが……開戦早々に劉備陣営が華雄隊に破られ……」

 

うそだろ……そんな…………

 

「聆……」

「報告!!鑑惺様が一騎打ちにて見事華雄を破り、捕らえました!」

「貴様ァっ!!」

 

新しい報告を聞いた瞬間、凪が先にきていた伝令の襟を掴み、捩じ上げた。された方は全く何が何だか分からないと言った表情だ。

 

「えっと、どういうことだ?さっき聆が討死したって報告があったんだけど……」

「はい、たしかに、一度倒れたのですが……。不意に華雄を、見たことも無い不思議な技でこう……ゴシャッ!と……」

「確かなんやな!?聆は生きとんやな!!?」

「……華雄の四肢を拘束した少し後に気を失われたので何とも……」

「すぐ行く!凪、後のことは任せた!」

「はい!聆を頼みます!!」

 

すぐに馬に跨がる。尻が痛いとか言ってる場合じゃない。全速力だ。

 

「鑑惺様より伝令!!」

 

と、意気込んだ瞬間、聞き逃せないワードが耳に入った。

 

「『鑑惺隊の荷物から酒を有るだけ持って来い。劉備んとこで呑み会するから帰るんは明日になるかも』とのことです!」

「………」

「……」

「…………」

「…………」

「…………」

 

何というか……俺の心配を返せ。

 

   ―――――――――――――――――――――――――――

 

決戦から二日後、陳留に出発する直前、私は華琳の天幕に呼び出された。決戦の次の日は華琳は春蘭とイチャコラしてたから二日後だ。

 

「聆、怪我の具合はどう?」

「良くはないけどそうヤバイってわけでもないわ。今でこそ晒と添え木でガチガチにせなクソ痛いけど、治るんには半月もかからんやろ。傷跡も、将として箔が付いたと思えば問題ないし」

 

内臓から来るタイプの痛みは感じられなかった。腹の中央と、背骨の横に傷口が有り、呼吸に問題なく、排便に支障が出ることから、おそらく胃と肝臓の間を抜けたんだろう。筋肉についても、切断ではなく、突きによって裂けた損傷であることと、肉質が極端に柔らかかったおかげで後遺症が残りそうな雰囲気はない。つくづく運が良いものだ。

 

「そう。良かったわ……。では聆。成果を聞かせてもらえるかしら?」

 

そういえばそんな任務だった。

 

「アイツら元々他人に押し付ける戦法やったから指揮については何も収穫無しや。でも呑み会で張飛、趙雲、関羽と真名交換した。で、こっからが本題なんやけど、劉備陣営の構造についてや。主導権……大まかな指針の決定権は劉備に有るし、全体の思想や忠誠の中心も劉備みたいなんやけど、実際の行動の方法、戦略、政策を握っとんは諸葛亮や。しかも、劉備に入れる情報も調整しとる」

「つまり、諸葛亮が劉備を傀儡に、その思想に惹かれた将を利用していると?」

「そうでもないんや。むしろ、将が諸葛亮にそうすることを求めとる。劉備は首領やけど、保護の対象でもあるらしい。劉備自身も具体的なことは将と諸葛亮に任せとる。劉備が心、諸葛亮は頭脳、将が手足って感じ」

「……甘いわね……。それで?その、劉備の思想というのはどういうものなの?」

「あー、そこまで話す頃には皆ぐでんぐでんでまともに話出来てなかったからよー分からんわ。なんか、弱肉強食が気に食わんみたいやで?」

「全く理解に苦しむわね。……分かったわ。出発の準備に戻りなさい」

「あぁ、ちょい待って。会わせたい奴がおるんや」

 

それを聞くと華琳はニマリと笑った。さすが人材マニア。

 

「そういえば、特に親睦を深めた将が居るそうね」

「そうや。呼んでも良えか?」

「ええ。構わないわ」

 

天幕から顔を出し、衛兵に命ずる。

 

「華雄をここへ。私の天幕に居る」

 

中に戻ると、華琳が何とも言えない表情をしていた。どうした人材マニア。

 

「……趙雲じゃないの?」

「華雄やで?」

「どうして趙雲じゃないの?」

「趙雲は劉備と関羽が面白いからあっちに残るらしいわ」

「どうしてよりにもよって華雄なのよ」

「私に痺れて憧れたらしいで?」

「断ってもいいかしら?」

「それは華琳さん自身が決めることやで?」

「あんな猪どうしろと……」

「使い方次第やん?……と、来たみたいやな」

 

華雄が入り口を潜る。

 

「失礼する!」

「華琳さん相手に失礼なんかしたら首撥ねられるで?」

「むぅ……そうか、なら失礼しない!」

 

そして何事も無かったかのように華琳の前、私の横に跪き、一礼。ああ……華琳様ってばすっごい微妙な表情に……。

こ れ は お も し ろ い 。

 

「……面を上げなさい。華雄、ここに参った要件は」

「は。鑑惺殿の、負傷し、一度倒れようとも敵に喰らいつく闘魂と、命を取り合った敵や、自らを罠にかけた悪党にも頓着せず酒宴に招く豪胆に感銘を受け、共に戦いたいと願い、そのために曹操殿の軍下に加えて頂きたく、参上した次第」

 

ちょ、それ、「別にオメーのことはどーでも良い。鑑惺がどっか行ったら多分寝返るぜ」って言ってるのと変わらないだろう。バカ正直可愛い。七乃が美羽を可愛がるのってこういうことなのか?ああ……。華琳さんの眉間が恐ろしいことに……。覇王の器と個人的なイライラの間で揺れているな……。

 

「…………その申し出を認めましょう。下がって良い」

「失礼した」

 

本当にな。

 

「……聆」

「なんや?」

「貴女の連れてきた猪のせいで私、すっごく機嫌が悪いのだけれど……。どう責任を取ってくれるのかしら?」

 

華琳の指がするりと私の頬に伸びる。

 

「残念怪我人でしたーー」

「…………傷が塞がったら覚えていなさいよ」

「じゃあ一生治らんかもな」

「はぁ……。もう貴女も戻りなさい。一刀たちとも色々話すことがあるでしょう」

 

 

 こうして、大陸の諸侯達を巻き込んだ反董卓連合の戦いは終わりを告げた。その後しばらくかゆうまと三課長がしつこく私の下の手伝いをやりたがったのには正直ドン引いた。




六章が意外とサラッと終わってびっくり。
気がついたら超展開しまくってて更にびっくり。
当初の予定では、張遼隊の春蘭の討ちこぼしの小隊長辺りと戦って終了でした。
ど う し て こ う な っ た 。

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