哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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ハイリョヌキネタマシシュンパツカラメ
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。

霞姉と聆のセリフの見分け方
→聆は「〜ねん」って言わない
霞姉アンチではありません。運が悪かったんです。


第六章拠点フェイズ : 聆(3X)の兄貴 後半

 「……随分賑わっているな」

 

昼時の陳留。おそらく今世界中で最も賑わっている場所だ。

 

「ホンマ、洛陽より景気良えんちゃうの?」

「華琳さんがつまらん役人消したし、税の匙加減が抜群やからな。都は宮中のイザコザで大変やったんやろ?」

「まぁな。でももう過ぎたことやし。これからはこの陳留がウチの街や」

「月や恋はどうなっただろうか……」

 

かゆうまが猪に似つかわしくない遠い目でつぶやく。董卓と賈駆は劉備のとこで……呂布とチンQは放浪だったような。でも立場上私が知っているのは不自然だ。答えるわけには行かない。董卓の居場所に気付いてる霞さん何か言ってやってくれ。

 

「まぁ、月には詠がおるし、恋は何とかなるやろ」

 

ってか、霞はかゆうまに董卓の居場所について話してないのか?話してないよな。ポロッとバラしてしまいそうだものな。

 

「あ、月とか恋とかってのは、ウチらの洛陽での友達のことな」

 

霞が取り繕うように言う。

 

「おー。なんとなくそんな感じやろなって分かっとった」

「よぅ一緒に出かけたりしたもんや。聆もどっかええ店紹介してくれん?ウチらやっぱ陳留の店ってまだあんま分からんから」

 

露骨な話題転換だが乗ってやる。さっきの話を掘り下げる必要も無いしな。

 

「じゃあ怪我する前まで良ぉ行っきょった店久々に行くか」

「ほう……そこは旨いのか?」

「かゆうまは気に入ると思うで?」

「ウチは?」

「二度と行かんと思うで?」

「なんやそれ……」

「まぁそのうち分かるわ」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 九条西五坊辻……若手兵士や力仕事に従事する野朗共が集まり、活気のある陳留でもとりわけパワフルな昼食模様が展開されるデスゾーン。女というだけで奇異な目を向けられる。その中でも一際濃い脂と大蒜の臭いを漂わせる店が今回の目的地だ。

 

「チャーハン兄貴……?」

「めっちゃ混んでない?時間、間に合うん?」

「問題無い。並ぶで」

 

三人で最後尾に立つ。臨時の報告のためにいつも携帯している竹簡と筆でメモを書き、二人に渡した。

 

「店入ってすぐのデブの男に一番上の段を言って代金渡して木簡受け取って。店の中で待って、席が空いたらチビの男に木簡渡しながら真ん中の段。最後に、アニキに『ニンニク入れますか?』って言われたら下の段な」

 

初心者には難しいシステムなので先にこのくらいなら食べられるであろうカスタマイズを指定しておく。単純な量では何を言っても問題無いだろうが、味的に好みが別れるからだ。

 

「なんでウチは炒飯の脂少なめ野菜少なめで華雄は大炒飯の脂増し大蒜なん?」

「そのうち嫌でも分かるわ」

「そればっかりだな」

「アカンか?」

「私は一向にかまわんッッ」

「じゃあ何で聞いたねん……」

「ダメなのか?」

「ウチは一向にかまわんッッ……って何言わせとんねんっ」

 

不意に後ろ……列の前方の男に肩を叩かれた。

 

「アンタ……『雪崩の嵬媼』だな?」

「……そう呼ばれとるらしいな」

「長らく爐途から姿を消したと思ったら……こんな喧しい女を連れてきて…………どういうつもりだ?」

「喧しいんについては謝るけど、今日はそれ以上に期待の人材も連れてきた……。お前らそろそろダレとるやろぉから」

「ほぅ……。爐途戦の申し込みととって構わないか?」

「いーや。今回は準備運動や。私も腹ブチ貫かれてから初兄貴やし」

「ふん。せいぜい爐途を乱さないように注意するんだな」

 

そう言い残して男は店の中に入った。と、もう次私達か。相変わらず回転が速い。

 

「次私やから動き見て流れ掴んでくれ」

「……ウチらって食べもん屋に来とるんやんな?」

「違うわ。兄貴に来とるんや」

「次なんだな〜」

 

デブの声がかかった。

 

「回回炒飯一つ」

「んだな。次なんだな」

 

二連か。次は霞の番だ。

 

「炒飯一つ」

「んだな」

 

店内の椅子に座り、席が空くのを待つ。どうやら霞までで一爐途のようだ。かゆうまは別か……。まあ、仕方ない。

 

「凄い匂いやなぁ。ウチ匂い嗅いだだけで汗出てったわぁ!」

 

霞の話し声に、店の中の空気が一瞬ピシリと凍った。今日はよく訓練された奴らが多いのか……。

 

「店内では静かにな」

「……聆ってウチのこと嫌いn」

 

二席空いた。

 

「行くで」

 

「何にしやしょう?」

「回回ジットリ」

「へい。次の方」

「炒飯脂少なめ」

「かしこまりやした。席についてお待ちくだせぇ」

 

手を膝の上に乗せて待つ。カウンターはベタついている。迂闊に触らない方がいい。霞はうっかり肘をついてしまい顔を顰めていたが。

 

「回回炒飯ジットリの方、ニンニク入れますか?」

「ヤサイマシアブラニンニクカラメ」

「炒飯脂少なめの方、ニンニク入れますか?」

「……ヤサイマシカラメ」

 

あ、増した。でも、まぁ野菜だから大丈夫か……?

かゆうまも席に付いた。さっき声をかけてきた男を挟んで右だ。腕を組んで目を瞑り黙っている。かゆうまはやはり兄貴に馴染むな。

 

「大炒飯脂少なめお待ちどー」

 

右隣の男の炒飯が来た。大脂少なめヤサイマシニンニクダブルと言ったところか……。これであんな偉そうにしてたのか?

 

「回回炒飯ジットリお待ちどー」

ドズンッ

「デカっっ!!」

 

霞が声を上げた。

 

「チッ……」

 

その声に、どこかから舌打ちが聞こえた。

でも霞が声を上げてしまったのも仕方がない。

私の前に置かれたのは……山。大量の米、野菜、豚肉が堆く積まれ、圧倒的存在感と臭いを放つ。反董卓連合以前の、日の出前に起きて鍛錬して警邏して鍛錬して調練して鍛錬して勉強して寝る生活を支えてきたメニューだ。いや、そのときはヤサイマシマシアブラニンニクダブルカラメだったな。

ともかくこれを片っ端から掻き込んでいく。豚肉を始めに全部食べる奴とか、底の方の米がベチャベチャになるのを恐れて野菜と米の上下を逆転させる奴も居るが、私は面倒なのでそれをしなかった。山の形が残ったまま端から無くなっていく様を、他人は「雪崩」と称した。

ちらりと横を見やると、霞も食べ始めているようだ。正直あまり美味しそうにはしていない。霞は普段おしゃべりで、時に繊細な乙女だからな。半分くらいでもよかったか……。

右隣の男は私の方をチラチラ見ながらガツガツと炒飯を頬張っている。何だ?大ごときで私に張り合おうとしているのか?それよりも逆サイドに気をつけた方が良い。かゆうまが自分の前に置かれた炒飯を食べ始めた。こちらは実に美味しそうに食べている。脳筋系乙女武将の胃は、嫌いなもの以外を無限に受け入れる。物理法則を無視して。これは……逆爐途崩しが実現するかもしれない。

 

 臭気が充満する魔窟にて、それぞれの食事が繰り広げられていた……。

 

   ―――――――――――――――――――――――――――

 

 「いや〜、久々やったけど結構イケたな。かゆうまどないやった?」

「なかなか良い店だった。気に入ったぞ」

 

だろうな。猪が豚のエサを好むのは当然だ。

 

「いっつもこの後小川に水浴びしに行くんやけど、どや?」

「良いな。少しさっぱりしたい。あと体も動かしたい」

 

ああ、水場で遊ぶ気まんまんなんだな。

 

「霞はどない?」

「……胃もたれが酷くて動きたない。早よ帰りたい」

「あー、じゃあ帰るかー」

「残念だな。今度また来て水浴びまでやろう」

「……二度と行くかいあんな店!」

 

以上レポっす。




インスパイア系の店に行って大を食べてみました。
スープの辺りで吐き気がしました。
しばらく麺類は要りません。
インスパイア系に行った時点で作者はギルティ。

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