哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

4 / 189
やっと本編に入れる…
と思っていたら違った


原作開始

 行商の間に自然とそれぞれの役割が決まっていった。凪は護衛、沙和は客引きとサイド商品の服作り、真桜は商談と荷車のメンテなど技術担当である。私はその他色々。商売する場所や宿の手配、ナンパ師の撃退、旅のルート決定などだ。行く予定だった町が賊の襲撃で商売できなくなったりして結構大変だ。私は出来るだけ水場を通れるようにした。現代日本に暮らしていた者としてはやっぱり風呂に入りたいし、風呂でなくてもせめて水浴びはしたい。凪や真桜は最短距離で行きたがったが、「旅の間はよく汗をかくし、何時もより衛生に気をつけるべきで、しかも清潔にしていた方が客がよく来る」という旨の話をしたら納得してくれた。

 

 

 「あー!お兄さんの籠なんだかボロボロなのー。でもちょーどいいコトにわたし達籠を売ってるのー!」

 

どんだけチープな客引きだ、と苦笑いが洩れるが、沙和の人懐っこい笑顔と態度のお陰で殆どの客は足をとめる。どうでもいいけど、沙和の知らない人に対する一人称って「わたし」なんだな。

 

 先程声をかけられた男は今、真桜のマシンガントークをうけている。受け流している。おっぱいばっかり見てる。しかたないね。結局竹籠二つと私作の竹細工一つを買っていった。一つはボロボロの奴の代わり、一つはおっぱい代、竹細工は趣味の品だろうか。私と凪は少し離れた所で二人の商売の様子を見ていた。私達が近くに居ると客が引いて客引きできなくなるからだ。行商二日目で判明したのだが、その時の凪はひどく落ち込んでいた。

 

 目が覚めると日が暮れていた。

どうやらまた寝ていたようだ。…ねぼすけキャラも良いかもしれnいやダメだ風とカブる。

 

「あーあ、サボってた聆ちゃんにはお金あげられないのー」

 

竹籠の売上は村のモノなので、服や竹細工や木彫、真桜の技術系便利屋などが私達の小遣いとなる。

 

「なんでどいやそれ言うんやったら凪も立っとっただけやろ」

「私はお前が寝ている間に、真桜にちょっかいをかけた暴漢を撃退したからな。一緒にするな」

「いや、…くそう。それでも何かあるやろ!?私に金を分けるだけの理由が!何か!!」

「無いな。少なくとも今日は無いな」

 

竹細工などを作ったのは私だが、それは義務みたいなものだし、その材料を採りに森に入る時は凪についてきて貰っている。私だけの手柄ではない。

 

「グギギギギギギ……お願いしますもうお酒が無くなりそうなんです」

「我慢しろ」

「ダメです死んでしまいます」

「まぁまぁ…そうカッカせんで。今日はよぉ儲かったからな、聆が好きな酒飲みにいくとしようや」

「真桜先輩マジパネエッス!!私一生真桜先輩に付いていきます!!!!」

「あれー?聆ちゃんは凪ちゃんに付いていくんじゃなかったのー?」

「凪さんは死んでしまいました」

「勝手に殺すな」

「うっし!じゃあ行くか!聆の分は出さんけど」

「真桜さんは死んでしまいました」

 

 三人が呑んでる横でマジ泣きしたらお金貰えることになった。女の涙は武器だ。そうやって手に入れた酒なんだが…薄い。まさか呑み屋で蒸留始める訳にいかず。私がマジ泣きしたせいでちょっと変な空気になったし。あー、他人の会話がよく聞こえるわー。

知り合いの村が黄色い布を着けた賊に襲われたこと。近所のババァが死んだこと。昼間すごいおっぱいの娘がいて竹籠を二つ買ったこと(こいつ竹細工のことは隠してんだな)。……陳留の刺史の下に北郷とか言う天の御使いが現れたこと。

 一刀さん魏ルートかよ祭さん死んでまうやんけふざけんな。

 

 暫くして本日の宿へ。この頃には空気はなんとか持ち直していた。今日の宿は宿泊と風呂が別料金ではない珍しい宿だ。今まで、風呂無しや、有っても何か地味に高い代金が要求されたりしてなかなか入れなかったが、久々の風呂に入れることになった。

 

 水浴びの時とかに何度か見たが…こいつらキレイな躰してんなー。凪も、キズがアクセントになってて良い。なんでコンプレックスなんだか分からん。誰か趣を解さない愚図に何か言われたんだろうか。沙和と真桜も上気してうっすらと桃色に染まった肌が魅惑的だ。魅惑的だが、私は動じない。それくらいで動じるほどウブじゃない。

 

「聆ちゃんまだ拗ねてるのー?」

「いやー、風呂が気持ち良くて呆けとっただけー」

 

沙和が後ろから抱きついてきた。酔うとボディタッチが多くなるタイプのようだ。柔らかな膨らみがむにむにと背中に押し付けられる。前に廻された腕も柔らかく、しかしながら、引き締まり、且つスベスベの肌という素晴らしいものだ。思春期の男子では色々耐えられんだろうな。恋姫ではこれが標準か恐ろしい。だが!私は動じない。それh(ry だから、即座に答えつつ、後ろにある沙和の頭をなでることが出来た。

 

「村帰ったら大浴場つくろかー」

 

グデーっと湯に沈みながら真桜が言った。おっぱいだけ水面から出てて面白い。

 

「あぁ…それは…良いなぁ」

 

堅物な凪も、この時ばかりはだらしなく全身の力を抜いていた。言葉も間延びしている。つーか、酔った影響でもあるのか。あーそういえば酔った状態で風呂入ると危ないんだよなぁ…………。?!真桜ヤバくね?

 

 

 真桜は生きてた。慌てて私が湯から引き上げたのが良かったのかピンピンしていた。死んでたかもしれないというのに。今は他の二人と同じようにすやすやと静かな寝息をたてている。私は三人娘の寝顔を暫く眺めた後、そっと部屋を出た。

 

 宿の外に出る。夜風が心地良い。空には満天の星空。こっちに来てから何度も見たが、それでも感動する。一刀が現代と違うと評したのも頷ける。あっちではあまり夜空なんて眺めなかったから漠然としかそう思えないが。夜には他にヤるコトが有った(下衆顔)。

 

 戸口の近くの切り株に腰掛けた。考えるのはこれからのこと。魏ルートでは祭さんが死に、何より一刀が消える。自分のコトのについてはあまり心配していない。原作で三人娘は死んでない。おそらく、私を入れて「四人娘」としてあつかわれるだろうから、ドジ踏まない限り死にはしないだろう。

 

 祭さんが死ぬのは戦のゴタゴタの内に何とかするとして、…いや、ただ生き延びさせるだけなのは不味い。魏ルートの最終決戦がもし、祭さんが死んでいたからこその勝利だったら?…捕らえなければならないのか。最終決戦で魏が勝たなければ史実と同じように泥沼化するかもしれん。一刀が居ない場合の蜀は若干下衆くなるし。かと言って"天の知識"で超強化すると、圧倒的過ぎて、最後の曹操と劉備の論争がなくなるかも。あれは曹操が劉備を好敵手と認めないと起こらないイベントに違いない。曹操の考えが変わらなければ私の目指す萌将伝は実現出来まい。あの戦い、戦闘で勝ったのは曹操だが、結局は劉備の理想に歩み寄っている。赤壁で戦が始まればこっそりと動くなり遣いを出すなりして黄蓋の船の帆を潰そう。

 

 一刀は…まず、何で消えるんだ?

 本人と占い師は"史実との差異"を原因としているが、そんなはずは無い。蜀ルートでは曹操が天下を諦めているし、呉ルートに至っては魏が消滅してしまっている。そもそも恋姫では、死ぬはずの人物が生きていたり、存在するはずの人物が居なかったりする。あの占い師管理者と関係あるとかじゃなくて適当いってたんじゃねーの?

 では、真桜に新技術を求めすぎたか?さっきよりは可能性が高いが、一刀が真桜に作らせたのって、煙玉と発煙筒付きの矢くらいだったように思う。鎖外す仕組みに新技術が使われたとも思えない。他の変な発明は主に曹操の仕業か、元からのモノだ。そっちの方が問題あるもの多かったよな。技術関係で消されるなら、ルート関係なく真っ先に真桜が消されるはずだ。

 沙和に作らせた天の国の服も…他ルートでもエプロンドレスとかメイド服とか色々やってるしな…。

 何だ…何が他ルートと違う……。個人イベント、戦闘イベント、そもそもの一刀の立ち位置…何がいけなかった……?

 

「どうした?聆、眠れないのか?」

 

うわ、びっくりした!

凪は戸口の柱に背を預け、私の隣にいた。全然気付かなかった。

 

「…凪は何しに来たん?」

「ふと起きると聆が居なかったからな。探しに来た」

「わざわざ?……そんくらい放っとけばええのに」

「お前の身を案じ守るのが、私の役目であり、……願いだ」

 

バカな…!この私が……!!ときめくなど………!!!

 

「お前…まだ酔っとるやろ?」

「酔っていなければお前を想ってはいけないのか?」

 

葡萄色の瞳が此方を見下ろす。普段は、私のほうがかなり身長高いから見下ろされることなどないのだが。……こんなときだけ良い位置取りやがって。

 

「……絶対酔っとるわ…。凪も…私も………」

 

思わず俯きながら答えた。

 

「私は酔わないように気をつけて呑んだんだがな…。で、結局、聆は何をしていたんだ?」

「ちょっとな…先のことを考えとった」

「そうか…。賊やら天の御使いやら、最近は妙だからな…。聆は視野が広いから…色々と不安も有るのだろうな」

「まあ、ちょっとだけな」

 

私の肩に、凪の手が置かれ、そして、そっと頬を撫でた。顔を上げると、すぐ目の前に凪の瞳の澄んだ光が有った。

 

「私は、もちろん沙和と真桜も、聆の味方だ。絶対安心とは言い切れないのかもしれないが、私たちを頼ってくれ。一人で悩んでいるよりも笑顔で冗談言ってるほうが、聆には似合っている」

「……ッ!!早よ帰って寝ぇ!酔っぱらい!!」

 

三十路のプライドでなんとか凪を押し退ける。惚れたら負けだ。こんな刹那的なことで心動かされてはいけない。

凪はフッと笑いとも溜息ともつかない息を洩らし、宿の中へ消えた。と、思ったら戸口から顔を出した。

 

「聆も出来るだけ早く戻れよ。風邪など引いてほしくないからな」

 

それだけ言うと今度は本当に帰っていった。もういいや。凪ならちゃんとしてくれるだろうし。私が戻った時に起きてたらえっちしよう。

 

 一刀もこんなイケメンぜリフをバシバシきめてくるんだろうか。天の御使いでイケメンだったらマジ完璧だな。そら四十人も嫁にできるわ。天の御使いほど完璧な血統なかなか無いだろう。あの曹操にすら効果を発揮する。影響力は凄い。…天の御使いの影響力か……。思えば、一刀が「天の知識だから聞き入れてくれ」的な発言をしたのは魏ルートだけな気がする。それが消滅の原因か!?他ルートでは、前提に天の御使いがあるとしても、軍師や主としての一刀の言葉に従っていた。だが、魏ルートでは、定軍山と赤壁の二回、渋る曹操を、天の歴史だから、と説得していた。これは大体頭痛のタイミングと………曹操に伝える前から頭痛でぶっ倒れてたじゃねーか畜生!じゃあアレだ!天の知識が直接の行動原因になったから?多分これも魏ルートだけだしもうそれで良いじゃん(錯乱)。あ!じゃあ私が消えちゃうじゃん!?一回まではセーフ?定軍山に夏侯淵が行くべきでないことをやんわりと論理的に証明するか?結構異常な動きしてたはずだし、罠かもしれませんって進言すれば回避できるか?じゃあ、普段から切れ者っぽく立ち振る舞わないといけないのか…。

 

 その後暫く考えて基本方針が決定した。

・下ネタ鋼切れ者不気味酒豪キャラでいく

・定軍山は罠じゃないですか?と言う(無理なら一刀が思い出すのを手助けし、カルマの分担をする)

・連環、苦肉の策について一刀に進言させない(しなくても気付くっぽいので)

・袁術、黄蓋の保護(天の知識関係なくただ好きなだけだから多分セーフ)

・ちんぽ大帝北郷一刀の初めてをいただく(アイツ今はブイブイいわせてるけど初めてのときはびくびくしててかわいかったんだぜ的なことを言いたい)

・頭痛が来ないように祈る

…あー、色々考えて疲れた。新しく絞った酒をグイッと一口呑み、若干どきどきしつつ部屋に戻る。…乙女かよ、私は。

 

 凪はグッスリと眠っていた。ホッとしたような残念なような。私は酒をもう一口呑んで、横になった。

 

 翌朝、私の心はすっかり落ち着いていた。流石おとな。これは決してさみしいことではない。決して。




時系列的に本篇はいったのに、全然一刀に絡めなかった不思議。
凪さん酔ったらマジイケメン。
書いてる内に作者自身も凪に惚れそうになりましたが、「不安も」の予測変換にファンモンが出て笑って、醒めました。
魏ルートマジなんでなん?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。