哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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木曜辛すぎです。
……前にも書きましたっけ?


第七章一節その四

 聆が城を出て、そのまま日が暮れて。

 

 何となく眠れなかった俺の足は、自然と城壁の上へ向かっていた。

 

「あ、隊長……」

「なんだ。三人とも来てたのか」

 

階段を登った先には、凪、真桜、沙和がいた。

 

「ここなら、戻ってきたらすぐに分かるからな」

「華雄、それ以上乗り出したら落ちるぞ」

 

そして、城壁の縁にもう一人。

 

「……でも、帰ってくるったって、こんなすぐには帰ってこないだろ?何か策があるらしいけど、さすがに明日か明後日か……」

 

そもそも三十倍の相手をどうにかできる策なんて有るのか怪しいが。

 

「なんや凪が寝られんらしぃてなぁ」

「そーそー。ひたすら型の練習繰り返したりして怖かったのー」

 

二人してからかうようにククっと笑う。真桜と沙和はいつも通りか。

 

「本当ならすぐにでも出撃したいところです」

「そこは『失礼な!怖くなどない!』とかって訂正するとこなのー……」

「……なんやもぅ、ひとがせーっかく普段通りにやっとるのに……」

 

二人も空気の抜けたようにしおしおとうなだれてしまう。

 

「やっぱ真桜でも気になっちまうか」

「あたりきやん!千対三万なんか勝ち目の か の字も無いわ!」

「こんな無茶するなら沙和たちも連れて行って欲しかったの……」

「沙和たちは盗賊討伐に出てたしな。……急ぎだったから仕方ないだろ」

 

聆が出て、すぐ後に季衣と流琉が戻り、少しして凪たちも戻ってきた。

目を覚ました華雄と一緒に再出撃しようとするのを秋蘭と流琉が止め、そこに季衣が加わって大騒ぎになり、華琳がむりやり静めたのだった。

 

「嵬媼め……私には行くなと言っておいて。……北郷、アイツは前から あぁ なのか?」

「"あぁ" って?」

「どうも自分の命を軽く見ている気がする……」

「華雄も突撃しようとしてたじゃないか」

「それはそうだが、こう……意気込みが違う!」

「なんだそりゃ」

「……危険や責任を一人で抱え込もうとする。自分の生死までも損得勘定に入れている……」

「そう!それだ。……あの時もそうだった。アイツは自ら囮になるようなやつだ……。今回も勝つ気などさらさら無いんだろう!」

 

聆の、出発前の妙に落ち着いた表情が浮かぶ。

 

「い、いや、聆は殆ど被害なく城の皆を逃げられるって言ってたし」

「……聆の隊って、指揮官がおらんよぅになったときの動き、かなりしっかり教え込まれとるらしいやん」

「……ちゃんと帰って来てくれないとヤなの……」

「聆は生きて帰って来るさ。この前みたいに。捕まっても、袁紹のとこぐらいなら軽く抜け出してくるって!」

「むしろ壊滅させてくるんちゃう?」

「ついでに文醜と顔良を連れてきたりするかもしれませんよ」

「嵬媼は死んだと思ってからが強いからな!」

「なんにも心配ないのー!」

「そうだな!」

「せやな!」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

結局誰一人として城壁から下りようとしない。

 

「……みんな、そろそろ下りないのか?」

「私はもうここで寝ることにした」

「私はもう少しここに居ます」

「沙和もー」

「そう言う隊長はどないなん?」

「いやぁ、俺ももうちょっと……」

 

やっぱりみんな心配なんだ。

 

「……でも、毛布ぐらい取って来ようかな……」

「あ、じゃあ何か軽い食べ物も持って来てなー」

「それは自分で行けっ」

「えぇやんイケズーー」

「おい真桜、隊長に向かっt

「おい!北郷!!」

 

華雄が突然叫んだ。

 

「どうした!」

「お前ら!あれ……!」

「え!?」

「ん!」

「おい……まさか!」

 

華雄の指し方に見えるのは、もうもうと上がる砂煙。伝令なんかの数じゃない。少なくとも、数百規模の騎馬隊の煙だ。

 

「旗印、誰か見えないか!?霞じゃないのか?」

「んー……?ちょい待って」

「ぅお!?押すな落ちる!!」

「鑑……!鑑惺隊、聆です!!」

「おいおい……いくらなんでも早すぎないか?」

「早いのだからそれでいいのだ!!門を開けに行くぞ!!」

「私は華琳様に伝えて来ます!」

「ほら隊長、行くで!」

「早くするの!」

「お、おう……!」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 私の懸念は杞憂に終わり、結局原作通りに事が運んだ。陳留の城はもう目の前。もう後は知っている内容しか出ない退屈な軍議だけだ。種明かし、鼻血、軍師採用だったな。正直言ってもう眠い。鼻血も「これから曹操のとこに行くから」って言った時に既に見たし。

程昱と郭嘉の護衛として帰還した私を出迎えたのは

 

「嵬媼ーーー!!!」

 

かゆうまの

 

「よく無事だったな!」

 

熱い抱擁だった。

 

「せいっ」

「おわっ!?」

ビターン

 

巴投げで応えた。

続いて沙和と真桜が走ってくる。

 

「聆ちゃーーん!」

「レーーーイ!!」

「はいっほいっと」

ビタビターン

 

「聆!無事だったか!良かったぁ……って、何やってんだ!?」

 

心底安心した様子だった一刀が地面に転がっている三人を見て表情を一転させる。

 

「ただいま〜〜」

「ああ、おかえり。……じゃなくて!なんで真桜たちが倒れてんだ!?おいなんで襟首と袖口を掴むんだ止めろ止めてうわっ!!?」

ビターン

 

とくに意味の無い暴力が一刀を襲う!所謂"深夜のテンション"である。その後出てきた華琳にはなんとか踏みとどまって郭嘉と程昱を引き渡した。

 

肩に手を掛けるまで行ったが。




やっと役者が出揃った……と思ったら出番無いという。
拠点フェイズから頑張ってもらいましょう……と思ったら出番あんまり無いという。

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