調子が悪い時に書くもんじゃないですね。
初め書いたとき、二千字くらいひたすら華琳様をdisる文章になっていて驚愕しました。
蜀側……というか、孔明の描写をしていると作者自身が下衆くなってくる不思議。
何故だ……。孔明は間違ったことしてないのに。
世の中は正解だけじゃ回らないってことですね。
「むぅ……思ったより粘るな……」
「挟撃を無視して全軍突撃すれば容易にカタがつくと踏んでいたのだがな」
「やはり曹魏の兵は練度が高いですね……」
蜀軍本陣。
今回の戦、諸葛亮は、五倍という圧倒的兵力差に任せて、相手のあらゆる動きを無視し、曹旗目掛けて全凸する作戦を取った。慢心故の思考放棄ではない。大群にとって最も恐ろしいのは撹乱だ。大群では、末端の兵に指示が通りにくい。だから勝手な自己判断で策に乗せられ混乱し瓦解する。ならば、はじめから突撃しかしない、曹操以外のものは見ない、と言い聞かせておけば大群の破壊力を最大限活かすことが出来る。事実、相手の挟撃は空振りに終わり、単に道を開けるだけになった。そしていとも容易く曹魏本陣を飲み込んだ。……だが、"消化"がなかなかできない。激流を掻き分けて立つ河中の巌のように、攻撃を撥ね退けてそこに在り続ける。
「しかし、兵の体力は有限です。このまま攻めれば必ず終わります。……鑑惺隊が分解されているのは幸いでした。アレがあるともっとやっかいでしょうから」
「確かに妙な用兵を行うとのことだが……。五万の突進をどうこうできるものなのか?」
「……これは賊討伐でのことですが、賊の生き残り曰く『決死の思いで突撃して敵陣を突き抜けたら、目の前に自陣があった』」
「……?」
「どういうことだ?」
「直進していると錯覚させられていた、ということです。戦場では、敵兵や仲間との位置関係で方向を掴みますから……。理 論 上 は 可能な作戦です。結果、仲間の攻撃の邪魔になると同時にいとも容易く背後を取られ壊滅」
「……鈴々辺りなら簡単に掛かりそうだな………」
「ええ。ですので、鑑惺隊は、例え戦の結果が覆らないとしても、危険な存在なのです」
それ故に、諸葛亮は曹魏を嘲笑する。
何故鑑惺隊を再編して本陣に組み込んだのか、と。
優れた兵を持ち、完璧とも言える政によってその勢力を拡大する曹魏だけに、偶に出る、気分任せのような戦略や戦術が余計に目立つ。
「仕方ありません。あまりこうしたくはなかったのですが……。愛紗さん、星さん。呂布さんと鈴々ちゃんと一緒に、 先 頭 に 立
っ て 突撃してください。敵本陣を叩き割ります」
「分かった」
「任せるがいい」
待ってましたとばかりに快い返事がかえる。しかし、諸葛亮の気分は晴れない。将軍の武に頼った、単騎での陣の破壊など、軍師にあるまじき下策。流れ矢やマグレによる、所謂「事故死」の危険があるからだ。だが、まぁそれも仕方ない。現状では残念ながら最善手だ。ここで曹操を刈れるなら。それに、もし失敗しても、も う 一 人 は確実に潰せる……。
「雑兵とは言え、十分に気をつけてくださいね」
「ああ。それは良いのだがな」
「……?」
「どうやら雲行きが怪しくなってきたぞ」
趙雲の指差す方を見る。
ぴくりとも動かなかった黒い塊が、俄に蠢き始めた。
――――――――――――――――――――――――――――
「ふふふ……。圧倒的だわ、我が軍は」
「いやぁ……力技やなぁ……」
驚くべき……非常に信じ難いことなのだが……なんか、魏軍から勝ちオーラが出ている。華琳直属が攻撃を受け止めて、私の隊の構成員が隙間からド突くのを繰り返していると、何だか敵がげんなりしてきた。無理もない。明らかに勝ち戦なのに一向に終わらないのだから。攻め手は蜀。死ぬのも蜀。不安が広がっていくのが手に取るように分かる。
「力技?違うわね。……私たちは、コレができるようになるだけの訓練を積んだわ。当然の結果よ」
「嬉しそうやなぁ……」
「嬉しいわよ。今から甘ったれのあの娘を泣かせてあげられると思うと余計にね。貴女もそろそろ鑑惺隊を纏めなさい。私は真っ直ぐ 赤 絨 毯 の上を歩いていくから、貴女は 飾 り 付 け をしておいて」
「また芝居がかったこと言うて……数年後思い出して悶絶しても知らんで」
「そんなことあり得ないわね。あるとすれば、自分の美しさに、かしら?」
ちょっと袁紹入ってない?
ともかく、本陣がゆっくりと進み始める。蜀軍をなぎ倒し、紅い屍の道を踏みしめて。ああ、絨毯ってこのことか。
「んだら行ってくるけど、世話焼きの侍女には気ぃつけてな」
蜀の将軍共のことを言ったんだが、通じただろうか。どうでもいいか。
「ええ。行ってらっしゃい。貴女のところにも来るでしょうから、張飛以外なら連れ帰ってきていいわよ」
いや、死ねる自信有るから勘弁してほしい。
――――――――――――――――――――――――――――
端的に言おう。
死んだ。
いや、正確にはまだ死んでないのだが。呂布がこっち来た。いい調子で敵を撹乱したり削ったりしてたら、呂布がこっち来た。凄い勢いでこっち来た。マリオのスター状態みたいに、魏軍を撥ね飛ばしてこっち来た。愛紗と鈴々と星は華琳の方に行ったのに、呂布がこっち来た。多分、来るとしても愛紗か星だと思って、時間稼ぎの演説を考えていたのに、何故か呂布がこっち来た。
解せぬ……。命懸けで戦って、何か残るのなら良いが、呂布とかほんの数秒で決着付いて何も変わらないじゃないか。
どうする?逃げる?でも何かめちゃくちゃ速いぞ?赤兎って犬になってるから速さに関してはそんな伝説級のものじゃないはずだ。なのにめちゃくちゃ速い。逃げられる気がしないっていうかもう目の前にいる件について。ちなみに速さの秘密は徒歩移動だった。そして視界が何回転かして、目の前にあるのは乾いた地面。口の中に生臭い液体が溢れる。呂布ダンチ過ぎワロ。
「落ち着け………… 心を平静にして考えるんや…こんな時どうするか……2… 3 5… 7… 落ち着くんや…『素数』を数えて落ち着くんや…『素数』は1と自分の数でしか割ることのできん孤独な数字……私に勇気を与えてくれる」
「ダメ。殺す」
ヒィっっ!!怖いよこの子!!年頃の娘さんがそんな殺すだなんて!
あどけない表情で方天画戟を構える呂布。まだ構えの段階のはずなのに、もう既に頸に突き付けられているような錯覚を覚える。死んじゃってもいいさと考える暇もなく本能に恐怖を叩き込んでくる。一刀!早く煙玉使ってくれ!!
「待って!何でそんな殺る気満々なん?攻めてきたのそっちやん?私悪ないやん?」
自分でも笑えるくらい情けない声が出てるんだが。
「……殺したら肉まん」
「誰どいやそんなちょっとしたお使い感覚でワイの命狙っとるんは!!」
「……はわわ」
孔明ェ………私何かしたか?
「えーっと……そのことについて愛紗……関羽は何て?」
「………?」
「二人の時に言われたん?」
「……ねねも」
うん。これギルティですワ。孔明の八百一趣味晒し決定。
怒りと恐怖が綯い混ぜになって何か逆に冷静になってきた。
「だから殺す」
おちけつ私。呂布は確かに意味分からんくらい強いが、一刀さんのおちんぽにひんひん言わされるメスガキの一人に過ぎない。恐れるな。冷静になれ。なんとか相手の戦意が無くなるまで話し続けるんだ……。だから寝っ転がってる場合じゃない。
「よぉ考えぇよ?」
『魏の方が良えもん食べさせたげられるで』という言葉をギリギリで飲み込む。呂布動かしたらパワーバランスがメチャクチャになってしまう。今更だろうか……。いや、バカ効果でプラマイゼロだよな?ああ……バカたちの顔が浮かぶ。脳天気な表情が私に勇気を与えてくれる!素数とは一体何だったのか。
「諸葛亮は別に、今殺せとは言っとらんよな?」
頼む。言っていないでくれ!
「……言ってない」
よっしゃあぁぁぉぉぁぁぁぉあ!!!
「じゃあ今殺さんでええやんな?な?」
「……殺したら肉まん。…………早く食べたい」
くっ……この食い意地お化けがっ。
「えーと、んだら、コレあげるわ」
腰につけていた瓢箪を手渡す。
「……………?」
不思議そうに色々と角度を変えて眺めたりしている。
「酒や。なかなか珍しいもんやで」
「……要らない」
お腹にたまるものじゃないとダメってか。
「じゃあ趙雲に売れ。多分肉まんより良えもんと取り替えてくれるわ」
「……………」
じーっと私の目を見て視線をずらさないんだが……。もしかして売り買いの概念が分かってないとか?いや、流石にそれはないよな。
「………また、会う」
「へ?」
「会ったら、何かもらえる………?」
「それって一種恐喝の類とちゃう?」
見逃してやるから何か寄越せ、ってことだろ?
「………おまえを捕まえたら食べ放題?」
「当店ではそのようなサービスは承っておりません」
「さーび………………?」
その時。突如として視界が白く塗りつぶされた。やっとか……遅いぞ一刀さん。
「まっしろ…………?」
「んだら、孔明によろしく言っといてくれ」
さっさと背を向けて退散する。よくよく考えれば、呂布に煙幕がどの程度通用するのか怪しいものなんだが、ともかく追っては来なかった。
原作では、この後城に籠もるんだったよな。確か水を止められてしまうはずだ。はぁ……。嫌だなあ。ちょっとチビってしまったから下着を洗いたいのに。
ビビりすぎて本気出せてなかった模様。
本気になれば三回くらいは打ち合えます。
ちなみにショーツじゃなくて褌。