哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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最近白髪が増えました。白髪くんまだ早いですよ!

策略が発動する前に種明かしするは失敗フラグだと思い、ついつい全伏せしてしまった結果がこれです。
「わけがわからないよ」→仕様です。
「バレバレすぎんだよ」→これが作者の限界です。
「何かややこしいの書こうとして失敗した感じ?」→否定はしません。


第十章二節その一

 「伝令。本隊の涼州入りを確認しました。兵数自体の損失は少ないものの、断続的な奇襲により疲労が蓄積しているとのこと」

 

涼州、馬家本城最寄りの山の中。狒狒に擬態した三課長が華琳たちの戦況を告げる。

 

「んだら、行軍速度は落ちとるか……。突撃できる範囲に入るんは五日後以降になりそうやな。でも、まあ、張三姉妹の活躍も有るし、奇襲自体は少ななるやろから」

 

応える私は熊の毛皮をまるまる被っている。

 

「は。そちらについても、加速度的に支持者を増やしていると。それに、潜入の方は……」

「おー。結構な数が徴兵に乗じて成功しとるな。本城警備にいくらか入ったし、上出来や。前線も割と。どっちにしろ私らは決戦まで待機。……いや、二日後辺りから山中に散らばっとる隊員を集めにかかってくれ」

「了解しました」

「……あと、ちゃんと水浴びしとけや?お前、若干野性的な臭いがするで?」

「……急いで行ってきます」

 

本物の狒狒のように顔を真っ赤にして走り去る。少し直球過ぎたかもしれないが、衛生管理は重要だからな。このくらいでちょうどいい。

 

 ともかく、これで西涼攻めの約九割が完了した。本隊の行軍が半分済んだ時点で九割、というのはなかなか珍しいことだが、嘘ではない。実はこの作戦、蜀軍撃退の翌日には既に始動して、色々と仕込んでいた。私的には、原作からしてほっといても勝てる戦なので余計なことはしたくなかったのだが、華琳が色々と思いついてしまったらしいからしかたない。馬超には原作以上に惨めな目にあってもらうことになるかもしれない。

その辺は心苦しいが、私も魏の将である以上、華琳からの命令はよっぽどのものじゃなければ従わなければならないのだ。

でもその代わりに良いことを思いついた。これが成功すれば恐らくだが、より幸せなエンディングを迎えられることだろう。

 

「とりあえず、今私にできるんは馬家の健闘を祈ることぐらいやな」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――

 

 「……最近、奇襲成功の知らせが全く来ないんだが」

「ああ。急にどうしちまったんだか……」

 

曹魏の西涼侵入から数日。重々しい空気に包まれた玉座の間。それもそのはず。対曹操戦の要である奇襲が全く機能していないのだ。

はじめの頃は、夜毎敵陣に火矢を撃ち込んだり陣外周の小隊の天幕を襲撃したりと、何かしらの成果が挙がっていた。相手は大軍であり、夜間行軍は難しい。昼動いて夜には寝るしかない。そして、その夜に襲撃をかければ確実に睡眠不足になる。少し前の偵察では明らかに疲弊した敵軍の様子が見て取れた。

しかしどういうわけか敵が目前に迫ったこの時期になって、奇襲の失敗、こともあろうに出撃さえしていなかったなんていう事態が発生している。

 

「たんぽぽ、お前は何か聞いてないか?」

「え?いや、なにも?」

「そっか……ま、奇襲なんて姑息な手段、元から取りたくなかったしな。もう、こうなったら決戦に向けて訓練有るのみだ!」

 

議論を切り上げ、今できることを優先しようとする馬超。思考の放棄とも言う。だが、馬騰は違った。

 

「……蒲公英」

「な、なに?おば様」

「お前、何か隠してるな?」

 

別段確証が有るわけでもないが、何となく、しかし、はっきりと分かった。

 

「え、やだなー。たんぽぽだって不思議に思ってるんだよー」

「蒲公英」

「え、えーっと」

「…………」

「あぅ………」

「知っていることを、今、ここで、全部、話せ」

 

普段は飄々として掴みどころのない馬岱も、長年五胡を相手に戦い抜いた貫禄の前にはかたなしだ。

 

「えっと……その、旅芸人の舞台がね……」

「そこに集まった奴に寝返り工作がかけられてるのか?」

「違うの!そうじゃなくて、純粋に楽しくて……時間を忘れるっていうか……」

「……とりあえず、そいつらを捕らえるか」

「え!? だから!間者とかじゃなくて……!」

「直接何かやってるワケじゃねぇだろうが、実際に邪魔になってるからには放っておくわけにゃ行かんだろ。それに、そもそもこれから戦争しようって言う時期に芸人が来るってのが怪しいもんだ」

「それは……」

「ともかく、まずはそいつらをとっ捕まえて色々と訊かにゃならん。翠、蒲公英」

「あ、あぁ。……たんぽぽ、その芸人の特徴とか教えてくれるか?」

「うん……」

 

馬岱も渋々応じる。

 

「じゃあ、まず見たm」

「伝令ーーーー!!」

「どうした!」

 

さて取り調べを始めようという時に、伝令が飛び込んできた。酷く焦った様子で。

 

「曹操が戦闘準備始めているようです!ここまで一足に攻め入る算段かと」

「バカな……連中の士気ではあと二日は……」

「それが……士気は異様に高いようで……」

「見間違いではないのか?」

「装備を整えているようだったので、間違いないかと」

「信じられん……」

「どっちにしろ、来るってことだろ?じゃあ、迎え討つしかないだろ」

「……そうだな。こっちもすぐに兵を纏めて出撃の準備だ。翠、お前に名代を任せる。蒲公英、翠を助けてやってくれ」

「……おう」

「おば様は?」

「アタシは城の防衛に専念するさ」

「そっか……」

「……うし!そうと決まれば即行動だ!行くぞ!たんぽぽ」

「うん!」

 

戦場に向かう二人を、馬騰は無言で見送った。前線に立てない悔しさと、娘たちへの惜別を押し殺して。

 

「……城の防衛……か」

 

強がりだ。守る力も残っていないし、守れるだけの兵をここに置いておくつもりもない。

 

「でもまぁ、最後に"釣り"でもするか」

 

馬超を主とした西涼連合と、曹操率いる魏本隊がついに激突する。しかし、そこに戦は無い。決まっていた結果が明らかになる、ただそれだけの場だった。




さあ!無駄に出しまくった伏線()を無事回収できるかな!?

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