哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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今日は卒業式ですか。
でもアレですよね。
最近は通信機器が発達してるので寄せ書きとかの有り難みは小さいんじゃないですかね?

それはそうと、最近目頭が痛い


第十一章一節その四

 「互いに死人が出てない……?じゃあ、アレは本気の戦いじゃないってことか!?」

 

ワケが分からない、と、馬超は山から降りてきた兵達を指差す。

 

「ええ。本気どころか、戦いですらないわ。アレは両方が魏軍。好機と見せて私達を誘うつもりなのよ」

「な……」

「このまま突撃するのは危険だわ。大丈夫。兵数はこちらが優っているのだから、落ち着いて陣形を整えて当たれば負けることはないはずよ」

 

黄忠の指示により、突発しかけていた兵は陣に戻り、待機中だった兵は戦闘準備を整える。

 魏軍第一の罠……蜀兵の装備を奪い、成り済まし、敵を誘い込むことで混乱させる策は破られた。

対して、鑑惺、夏侯淵、張勲もまた、作戦が気取られたことを覚る。しかし、さして落胆はしていない。もとより、弓兵である黄忠の目、そして性格から、第一の罠が破られるのは予想済みだった。何の滞りも無く、すぐさま第二の罠へ移行する。

 

「なるほど、さすが永きに渡り益州を守ってきた名将黄忠といったところか!馬超は引っかかってくれると思っていたのだが、どうもそうはいかんらしい!」

 

鑑惺は、全軍に停止、展開の合図を出しながら、前に出て、叫ぶ。

 

「此度のそちらの策略、なかなかにして見事であった!しかしながら、こうも人選を誤っては、それも台無しだろう」

 

「…………」

「何が言いたい……?」

 

蜀の陣形が整うより一足早く、魏の隊列が整う。鑑惺の背後には蜀兵に偽装し、槍を構えた兵が。離れてその隣に、夏侯淵、そして弓を構えた兵が。

 

「もとより、策を成すには、その策を理解し、機を待ち、そして自らの為すべきことを一分の狂いなく実行出来る、そのような将でなければならない。しかし、貴様はどうだ?」

 

一点を見据えて言い放つ。

 

「それは……それは私のことを言っているのかっ!?」

「ほう、言われずとも分かるのなら、まだ救いようが有るかもしれんな」

「あたしは……いち早く母様の……馬騰寿成の無念を晴らすため、仇を討つためにここに来たんだ!そして鑑惺、お前が来た!これ以上の好機がどこに有る!」

「分からん娘だな。確かに私がここに来たのは蜀軍にとって好機かもしれん。私が言っているのは、お前が居るせいで策略が我らに破られる、ということだ」

「そんなことはない!確かに山の中じゃ戦いにくいけど、騎馬隊の機動力が有れば、お前らを逃がすことは絶対に無い!この平野を通らなきゃお前らは帰れないんだからな!」

「私を止める、と……?………ククククク……アハハハハハハハハ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ!!!」

「な、……何が可笑しい!」

「くくく………お前がこの私に勝てるワケがないだろう?」

「なんだと……っ!」

「貴様の如き三下の死に損ないがこの私に勝てる気でいるのが可笑しくて仕方がない。何だ?西涼騎馬隊はあまりの惨敗に戦うことを諦めて漫談家にでもなったのか?ふっ……後釜がこの調子では馬騰も浮かばれまい。全く、気の毒なヤツだ」

「貴様が……貴様が母様を語るなァァッ!!!!」

「姉様!騎馬隊出撃準備完璧だよ!今すぐソイツ殺そう!!」

「落ち着きなさい二人共!相手の口車に乗ってはダメ。鑑惺は私が相手をするわ」

「何だよ!あたし達はアイツを即刻、この場で踏み殺さなきゃいけないんだ!!」

「そうやって突撃した兵を手玉に取るのが敵のやり方なのよ。愛紗ちゃんたちと朱里ちゃんでかなり印象は違うようだけれど、みんな一貫して「鑑惺は自らを囮とする作戦が得意」と言っていたでしょう。それに、見なさい相手の陣形を。普通、前後に配置する槍兵と弓兵を左右に大きく分離させて配置しているわ。ここで貴女達が、鑑惺に突撃したら、私はほとんど逆方向からの弓兵に対処しなくちゃならないわ。満足に援護できないのよ……そんな状態であの鑑惺に挑んで、部隊が無事で済むと思うの?」

「分かってる!でも、たとえ全滅してでもアイツに一撃入れないといけないんだ!」

「バカなことを言わないでちょうだい!」

「……っ!」

「貴女達が全滅することなんて馬騰殿が望んでいるはずないでしょう。それも、敵の罠にみすみす掛かりに行くなんて」

「くっ……」

「逆に、私の弓兵隊は鑑惺隊に、貴女の騎馬隊は夏侯淵隊に相性が良いわ。そしで、そちらを狙えば恐らく負けは無いでしょう。確かに、仇討ちがしたいのは分かるわ。でも、まずは勝たないと始まらないの。分かってくれるわね?」

「……分かったよ。確かに熱くなりすぎてた。まずはきっちり勝たないとな。……でも、できたら生け捕りにしてくれよ?」

「ふふ……善処するわ。では、行きましょう」

「おう!行くぞ!たんぽぽ!」

「うん!」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――

 

 「見事な煽りっぷりでしたねー」

「いやー、靑さんの名前出しただけって感じもするけど。でも、くく……見ぃや。アイツらガチで言い合いしとるわ」

「あ、まだ笑っちゃダメですよ。策は途中段階なんですから」

「いや、ごめんごめん。辺境の山に飛ばされて貧乏クジやと思っとったら予想外におもろいことが続いとるから」

「うむ。聆のあの口調は面白かったぞよ♪『貴様の如き三下の死に損ないが――』くぷぷー。あれはなかなかにして相手を逆なでしたじゃろうなぁ」

「あ、ごめんあれウケ狙いと違ぉてちょいカッコつけたん」

「………あら〜」

「なんと……」

「あ、そんなこと言ってる内に相手が動き始めましたよ!」

「おー……黄忠がこっちか」

「のぉ七乃、笑っても良いかの?」

「マジでメシウマすぎるんやけど」

「ふふふ……まだもうちょっと我慢してくださいね〜」

「「自分は笑っとるのじゃ(やんけ)!」」




天才を描くには作者自身も天才でなければならないそうです。
さあ、読者の皆さんはこの天才ワールド(あっさり風味)に付いてこられるかな!?

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