第1章:復讐への序章
冷たい雨が降りしきる夜の街を、天沢零士は歩いていた。着ている制服は泥と血で汚れ、周囲の人間からは避けられるような視線を向けられても、気にも留めない。彼の心には、深い憎悪と虚無感が渦巻いていた。
数時間前まで、彼は自ら命を絶とうとしていた。だが、その絶望の淵で目覚めた「力」が、彼をこの場に引き戻した。かつてはただの人間だった彼が、今ではその枠を超えた存在――「デビル」として生まれ変わっていた。
「……この力を手に入れた俺が、何をするべきかは分かっている。」
零士は赤い瞳を静かに輝かせながら、小さく呟いた。雨に濡れるアスファルトを踏みしめ、足を止めた場所は、かつての学び舎の裏通りだった。そこには、彼を地獄のような日々へ追いやった者たちの笑い声が響いている。
「おい、あれ天沢じゃねぇか?」
一人の不良が零士に気づき、仲間たちに声をかけた。彼らは薄汚れた制服を身にまといながらも、零士を嘲笑う余裕を見せている。
「おいおい、こんなところで何してんだよ。まさか仕返しでもしに来たのか?」
中心に立っているのは神崎勇次。かつて零士をクラス中の笑い者にし、日常的に暴力を振るっていた張本人だった。
「……」
零士は無言のまま、冷たい瞳で彼らを見据えた。その瞳に映る自分たちの姿に、勇次は一瞬だけ怯えたような表情を見せたが、すぐにそれをかき消すように零士の胸倉を掴みあげた。
「なんだその目は? 文句があるなら言えよ、ゴミクズが!」
その瞬間だった。
バチッ――
零士の体から黒い稲妻が走り、勇次の腕を弾き飛ばした。勇次はそのまま地面に崩れ落ち、苦しそうに胸を押さえる。不良たちは何が起きたのか分からず、その場に立ち尽くした。
「……なんだよ、お前……」
勇次は震える声でそう言ったが、零士は冷たく見下ろしながら口を開いた。
「お前らがどれだけ俺を傷つけたか、少しは理解できたか?」
その言葉とともに、零士の周囲に不気味な黒いオーラが漂い始めた。不良たちは恐怖に駆られ、次々とその場を逃げ出したが、勇次だけは動けず、零士の足元に転がったままだった。
「許してくれ……頼む……」
勇次は涙を流しながら命乞いをするが、零士の心には響かなかった。
「……今さら謝罪なんて聞きたくもない。」
零士が手を上げると、黒い稲妻がさらに強く輝いた。その時、不意に脳裏に少女の声が響いた。
「やめて、天沢君!」
驚いて振り返ると、そこには幼い頃の記憶の中にいる、一人の少女の姿がぼんやりと浮かび上がった。優しい笑顔で彼を見つめていたその少女は、すぐに消え去ったものの、その影響で零士は手を止めた。
「……俺は……」
震える拳を見つめた零士は、歯を食いしばりながら勇次を見下ろす。そして無言のまま背を向け、その場を立ち去った。
廃工場に戻った零士は、自らの両手を見つめながら深い溜息をついた。
「俺は……本当に人間なのか?」
その言葉に答える者は誰もいない。雨音だけが静かに響いていた。
だが、彼の新たな人生は、これで終わりではなかった。この先、彼を待ち受ける「天穹学園」での生活が、彼の運命を大きく変えていくことになるのだった――。