デビル因子の力を持った1人の人間の物語   作:幻想の龍巫女

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第4章 暴走する怒りと懐かしき声

第4章:暴走する怒りと懐かしき声

 

天穹学園に入学してから数週間が経ち、天沢零士は学園生活にも少しずつ馴染み始めていた。しかし、彼の心の奥底には、決して消えることのない復讐の炎が静かに燃えていた。

 

かつて、自分の幼馴染を傷つけた男――鹿島直人。

彼の顔を思い出すだけで、零士の拳は自然と震えた。だが、今はまだその機会が訪れていない。いずれ奴を見つけ出し、過去の清算を果たす。それだけが、零士の胸に秘めた決意だった。

 

しかし、その機会は、あまりにも突然訪れた。

 

 

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因縁の再会

 

昼休み、零士は学園の中庭を歩いていた。学園の生活に慣れつつあったものの、彼は未だに深い人間関係を築くことを避けていた。それでも、戦闘訓練や授業には真面目に取り組み、三島流の修練も怠らなかった。

 

ふと、耳障りな笑い声が聞こえてくる。

 

「へへっ、お前、結構可愛い顔してんなぁ。俺と一緒に遊ばねえ?」

 

零士は足を止め、声のした方へ目を向けた。そこには、数人の不良たちに囲まれている一人の少女がいた。彼女の金髪が日差しを受けて輝いている。彼女は怯えた様子も見せず、不良たちを冷たく見つめていた。

 

その中心にいるのは――鹿島直人。

 

零士の視界が、一瞬で赤く染まった。

 

「……鹿島、直人……!」

 

脳内で封じ込めていた記憶が一気に蘇る。あの日、必死に自分を庇おうとした幼馴染が、鹿島の手によって無惨に傷つけられた。零士がそれを知った時には、すべてが終わった後だった。

 

怒りが一気に爆発しそうになるのを、必死に抑える。

 

鹿島直人は、まるで過去の罪など存在しなかったかのように、笑みを浮かべながら少女に絡んでいる。

 

「お前、こんなとこで一人なんて危ないぜ?俺たちが守ってやるからさぁ」

 

「興味ないわ。」

 

少女――ルイス・ユークリッドは、冷淡な声でそう言い放つ。その態度に苛立ったのか、鹿島は笑いながら彼女の腕を掴もうとした。

 

「おいおい、そんな冷たくすんなって――」

 

ドンッ!

 

次の瞬間、鹿島の腕が横から弾き飛ばされる。

 

零士だった。

 

鹿島が驚きながら顔を上げると、目の前には怒りに満ちた零士の姿があった。

 

「お、お前……!」

 

鹿島の目が一瞬、大きく見開かれる。過去に零士と接点があったことを思い出したのだろう。だが、次の瞬間には薄ら笑いを浮かべた。

 

「へぇ、久しぶりじゃねえか、天沢零士。元気にしてたか?」

 

その言葉が、零士の怒りにさらに油を注ぐ。

 

「ふざけるなよ……!」

 

零士の拳が、瞬く間に鹿島の頬を打ち抜いた。鹿島の体が吹き飛び、地面に転がる。不良たちが驚いて後ずさる。

 

「な、なんだこいつ……!」

 

鹿島は地面に手をつきながら、血を拭い、苛立った表情を浮かべる。

 

「おいおい、なんだよ急に?学園で暴力はまずいんじゃねえの?」

 

「お前が言うな……!!」

 

零士は激昂し、今度は鹿島の腹に蹴りを叩き込む。その瞬間、彼の身体から禍々しい気配が漂い始めた。

 

 

 

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デビルの力、暴走

 

零士の怒りに呼応するかのように、その身体から黒いオーラが吹き出す。かつて三島流の訓練で学んだ冷静さを、今の彼は完全に忘れていた。

 

「俺は……お前を許さない……!!」

 

零士の目が赤く染まり、口元から鋭い牙が覗く。

 

デビル因子が発動したのだ。

 

鹿島は異様な気配に驚愕し、周囲の不良たちも恐れおののく。

 

「な、なんだよこいつ……ッ!」

 

しかし、零士は容赦しない。瞬時に鹿島との距離を詰め、拳を振るった。鹿島は防御しようとしたが、零士の圧倒的な力の前では無力だった。

 

零士の拳が、鹿島の腹部に深々とめり込む。衝撃で鹿島の体が浮き、壁へと叩きつけられる。

 

「ぐはっ……!」

 

しかし、それで終わりではなかった。零士の意識はすでに闇に飲み込まれ、さらなる暴力を求めていた。

 

「お前が……俺の大切な人を……!」

 

さらに一歩踏み込み、今度は地面に倒れた鹿島を踏みつける。その目には、もはや人間らしい理性はなかった。

 

しかし、その時――

 

「零士!!やめなさい!!」

 

澄んだ声が響いた。

 

 

 

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止める者、ルイス・ユークリッド

 

零士の肩に、白く細い手が触れる。その瞬間、彼の中で暴走していたデビルの力が僅かに鎮まる。

 

「……ルイス……?」

 

振り返ると、ルイス・ユークリッドが真っ直ぐな瞳でこちらを見つめていた。恐れではない。ただ、静かな決意に満ちた目だった。

 

「これ以上、あなたがそんな顔をするのを見たくない。」

 

ルイスの言葉が、零士の胸に深く刺さる。

 

「あなたが怒るのは分かる。でも、あなた自身を壊してしまったら、それこそ奴の思う壺よ。」

 

零士の拳が震える。怒りの炎は未だに燃え続けていた。しかし、ルイスの静かな声が、その炎に冷水を浴びせかけるようだった。

 

「……チッ。」

 

零士は歯を食いしばり、拳を下ろした。デビルのオーラがゆっくりと消えていく。鹿島は地面に倒れたまま、恐怖に顔を歪めていた。

 

「お、俺に手を出して……無事でいられると思うなよ……!」

 

零士は鹿島を見下ろし、冷たく言い放つ。

 

「次にお前がまた同じことをしたら……今度こそ、容赦しねえ。」

 

そう言い残し、零士はルイスと共にその場を去った。

 

ルイスの後ろ姿を見つめながら、零士は初めて自分の怒りを抑えられたことに気付く。

 

「……俺は……まだ、人間でいられるのか?」

 

その問いの答えは、まだ見えなかった。

 

 

 

 

 

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