もしオカルンに宇宙人の友達がいたら 作:ダンダダン二次もっと増えろ
あとオカルンの性格がむずすぎる
高倉の気分は舞い上がっていた。
それはそうだろう。夢にまで見た唯一無二の友人を手に入れたのだから。
彼は隣に座る友人を見る。
可憐な少女のような面立ち。されどそのアーモンドのような巨大な目がその者を地球上の生物でないこと伝えている。
彼女?の爬虫類を連想させる大きな瞳は本――それも高倉が貸したオカルト本――に向けられている。
その内容に思うことがあるのか、瞳を忙しなく動かし、時折彼女の長く伸びた尻尾が地面を叩いている。
一見不機嫌にも興奮にも見えるその様はどことなく威圧感を覚えるが、念願の宇宙人を前にした高倉にとっては彼女の一挙手一投足は全て興奮すべき未知であった。
彼女には聞きたいことが数えきれないほどある。しかし、本に集中する彼女の邪魔をするわけにもいかないので、それらの疑問を彼は必死に飲み込んだ。
そもそも何故こうなったのか。話は十数分ほど巻き戻る。
ー
高倉が宇宙人に友人になってくれと頼んだとき、彼女は見定めるような瞳で問うてきた。
『なんで? ぶっちゃけちょっと怖いんだけド』
宇宙人は思った以上にフランクだった。
高倉は少し戸惑いつつ、己の心のうちを明かした。
「そ、その自分、学校でいじめられるし、仲間も友達もいなくて…。そこで宇宙人なら友達になってくれるかもって…」
『フーン』
「だから!! 友達になってください!! お願いします!!!」
『いいヨ』
「この通りです!! お願い―――……え?」
『哀れな地球星人の友達になってあげるってコト』
「―――っ!!」
高倉は嬉しさのあまり飛び上がった。
人生初めての友達の獲得(しかも宇宙人)と言う、地球上探しても自分しかいないであろう偉業を成し遂げたのだ。一生の自慢話になること間違いなしである。
彼は喜びに包まれたまま、己の全オカルト知識をもって初めての友人と話をすることにした。といっても、ほとんど彼の質問攻めであった。
「まず聞きたいんですけどあなたってグレイなんですか!? それともレプティリアンなんですか!?」
『グレイ? レプティリアン? なにそレ』
「もしかしてどちらでもないんですか!? 名前はなんて言うんですか!? そういえば自己紹介がまだでしたね僕高倉健って言います!!!」
『個体識別名のことを聞いてる? それとも種族? あとタカクラケンね覚えたワ』
「あぁ! 宇宙人が僕の名前を憶えてくれるなんて…!!! あ、名前に関してはどちらもです!!!」
『◆◆からきた◆◆◆◆』
「それって何語ですか!!?」
『◆◆語。気にしないで良いよ、日本語に合わせるかラ』
「そういえば何で日本語が分かるんですか!? やっぱり政府は宇宙人と繋がっているということなのでしょうか!」
『……』
「沈黙は肯定と見なします! やっぱりそうなんだ! この本に書いてあることは間違ってなかったんだ!!」
『そういえばその本なに? うわ、紙じゃん。原始的だネー』
宇宙人は高倉が抱えていた本を抜き取る。その力は強く、高倉は小学生の身ではあるが、一切の抵抗を許されない程だった。
彼女はペラペラと物珍しそうにページをめくる。
最初は軽薄そうな表情をしていたが、読み進めていくにつれてその表情は真面目なものに強張っていった。
その変わりように高倉は不安を覚えた。
『これってさ、地球星人は誰でも持ってたりすル?』
「えっ、いえ、持ってる人はかなり少ないと思います…」
『フーン。…宇宙進出が出来てない弱小文明だって聞いてたけど、やるじゃン』
「あ、ありがとうございます?」
『ちょっとじっくり読みたいから黙ってテ』
「え、あ、はい…」
ー
以上が事の顛末である。
あれから十数分。2人の間には沈黙が流れている。
その間に高倉はあれこれと次に投げかける質問を考えていると、ふと、この静寂は彼女が自分と話したくないからなのではないか、という考えが過ぎった。
自分の言動をよくよく見返してみると、呼び出してすぐに友達になれと頼み込み、こちらから一方的に質問を投げかけるというのは、もしかしなくても失礼なことではなかろうか。
「ああ、やってしまった」と彼は頭を抱えた。
生まれて初めての友達を逃がすまいと必死になったのが仇になってしまった。今まで気にする必要がなかった己の”人間関係の経験の無さ”が浮き彫りになる。
そもそも、同じ人間同士でさえ友達になれないのに宇宙人と友達になれるわけがない。日本だと友達が出来ないから英語を勉強して海外で友達を作ると言っているようなものだ。
そんなことも考えられないのだから自分は友達を作れないんだと自責する。
(…帰ろう。彼女が本に夢中になってる間に。その方が、お互いにとって幸せだ)
そう思い、彼が立ち上がろうとしたとき、パタン、と本を閉じる音がした。
『逃げるつもリ?』
「え…」
気が付けば、空が真っ黒に染まっていた。
まるで夜のようだが、ここらには大した光源が無いのにもかかわらず、薄暗いながらも目はしっかりと見えていた。
「これは一体…」
『タカクラケン』
「は、はい! なんでしょう?」
『あなたに友達は1人もいないんだよね? 私を除いテ』
「え、はい、そうですけど」
『フーン…』
興味深そうに鼻を鳴らしながら、彼女はある一方を見つめた。
『じゃ、あれはあなたにとって何でもない存在ってことだネ』
瞬間、彼女は空間に溶けていくように消えた。
彼女の突然の行動に目を見開く高倉。いつもなら未知のテクノロジーに興奮していただろうが、彼女の言う
幸い、彼女はそこまで離れていなかったようですぐに見つけることが出来た。
彼女は見知らぬ子供の顔を鷲掴みにしていた。
よくよく見れば、その子供は決して見知らぬ者では無く、学校のいじめっ子のリーダー格の男の子であることが分かった。
何故彼がここにいるのか分からないが、恐らく、高倉と宇宙人の会話(といっても殆ど無言)を目の当たりにし、その様子をずっと物陰から見ていたのだろう。
男の子は口を手で覆われているため悲鳴を出すことも息をすることも出来ず、荒い鼻息をしながら必死に抵抗している。が、彼女は微動だにしなかった。
「何をしてるんですか!?」
高倉がそう叫ぶと、彼女は振り返って無感情な目を向けた。
『…そういえば私がこの星に来た目的を言ってなかったね。私はね、地球を知るために来たんだ。特に地球星人にはたくさん
実験、という言葉を聞いて高倉と男の子の顔が青ざめる。
「!! で、でも、僕は君をここに呼びだして…!」
『あれは何か目立つ奴が1人でいるからちょうどいいなと思っただけ。本来なら速攻実験室送りにするつもりだったけど、まさか出会って早々友達になろうって言われるとはね。面白そうだったから了承したんダ』
『だからそう警戒しないで。あなたを傷付けるつもりはないかラ』と付け加え、彼女は男の子に向き合った。
このままでは男の子は実験室送りにされるだろう。そこで何が起こるのかは分からないが、オカルトを嗜む高倉は宇宙人が行う実験に碌なものはないと知っている。
あの男の子はいじめっ子のリーダー格。ここで見捨てても問題がないどころか、学校でのいじめが少し緩和される可能性すらある。だが、しかし…。
「その人を離してください!」
『なんで? 折角のサンプルを手放す理由が欲しいナ』
見定めるような視線が高倉を貫く。彼はそれに臆せず叫んだ。
「その人は関係ないからです! どうしても欲しいのなら、僕を使ってくれて構いません!! だからお願いします!!」
『んー…どうしてそこまでするノ?』
心底分からないといった目で聞いてくる。何故親しくもない相手を庇うのか、それが己をいじめている相手ならなおさらだ。
しかし、高倉という少年は、嫌っているからといってその人の不幸を願う質ではなかった。
「自分のせいで誰かが傷つくのは嫌なんです! だから離してください!」
『高貴な精神だネ…』
彼の主張に彼女は感心したような様子を見せる。この広い宇宙でも、彼のような人物はそういないのだろう。彼女は物珍しそうに目を細めていた。
彼女は空いている方の手で男の子の額をちょんとつつく。すると、男の子の眼がぐりんと回転し白目を剥いて気絶した。
その様子に高倉は声が出かかるが、その前に彼女は手で制し、口を開いた。
『今離したら騒がしくなるから、ちょっと眠ってもらっただけだよ。このことが明るみに出たら大変だろうし、記憶を消してこれの家に帰しておくから安心しテ』
「あ、ありがとうございます…」
『敬語は良いよ。友達なんだかラ』
「!! はい!!! あ、うん!」
友達。こうして相手から言葉にされるとより実感が沸いてくる。心の底から喜びの感情が溢れ出すようだ。
その感情のままに「これからよろしく」と言おうと口を開こうとしたその時―――。
『じゃ、さっそく地球星人の
「え」
彼女が消え、高倉の頭部がちょんとつつかれる。
次の瞬間、彼の意識は暗転した。
ー
地球衛星軌道上を浮遊する飛行船にて。
そこの実験室ではまず高倉の身体の検査が行われていた。
そして、宇宙人は衝撃の事実を知ることになる。
『え、なにこの睾丸? なんで艦隊を転移させられるほどのエネルギー秘めてるノ?』
宇宙人は困惑した。
オカルンの睾丸オチ。
…ただのダンダダンだわ。