余裕で影響されましたが、パクリと言われないくらいには変えてるハズ...。
夜も更けたとある山の森の中。風はふわふわ涼しくて、虫がびーびー鳴いている。
そんなどこにでもある森の中で3匹の猫が今日の獲物を持って、家に帰りながら話している。真っ黒な成猫、クロックが言った。
「だからな、マックス。人間はとても恐ろしい生き物なんだ。この山にいれば少なくとも家族4匹安全に、幸せに過ごしていける。ここを出る必要なんて無い。」
仏頂面の子供の三毛猫、マックスが言葉を返す。
「でもさ、父さん!この前ユーリン...えっと、友達なんだけど...。彼女が言ってたんだ。人間はとっても優しくて、食べ物もくれるし、乱暴な事はしないし、それに僕らよりずっと遅いんだ、って。人間から食べ物を貰えば今よりもっと安全に生きていける!!『今年は獲物も少なくて4匹で冬を越せるかわからない』って父さんも言ってたじゃないか!もし襲われても簡単に逃げられる!今の家を捨てようなんて言わない!山を降りて人間の街も行動範囲に入れようよ!」
同じく子供の白いメス猫、エミリーがマックスに続いて言った。
「そうだー!最近寒くなってきたもんね。みんなでくっついて寝られるから好きだけど、山も降りてみたいよね!人間にも会ってみたーい!」
「こら、エミリー!余計なことを言うな...!」
「えー。だってにいちゃんもこの前言ってたじゃん。『僕は冒険はしたいんだー!』って...。」
「だから静かにしろって...!」
この3匹にもう1匹の虎柄の成猫を加えた4匹はこの山の深い森に住む猫の家族だった。父親がクロック。虎柄の猫が母親のスカーレット。その子供がマックスとエミリー。
4匹はこの山で平和に暮らしていた。
クロックはマックスとエミリーの騒がしい声を聴きながら静かに少し息を吐いた。夜の森はいつもうるさい。鳥や虫の声はいつもよりよく聞こえるし、人間の街が山の近くにあるから変な光が時折目に入ってくる。方向がわかりやすいのは良いがうんざりする。いつでもピカピカと、一体何を照らしているのか、皆目見当もつかない。
益体もない思考と2つの騒がしい声を伴って、3匹は家への道のりを歩んで行く。
「...だからな。ここは父さんを説得するために、良い感じのことを言わなくちゃいけないんだ。」
「なんて言えばいいのー?」
「それはお前...。『人間は本当は良いやつだー。』とか『山を降りると美味しい食べ物がいっぱいあるー。』とかだよ。」
「美味しい食べ物!ほんとー?昨日食べたネズミより美味しいかなー?」
「ああ、きっとそうさ!人間の街はいつも騒がしいから、食べ物もいっぱいある!多分...!」
「おー!...たぶん?」
マックスとエミリーの言葉を目を瞑りながら聴き終えたクロックは一度大袈裟にため息を吐いてから言った。
「何度言えばわかるんだ...。俺の父親、つまりお前たちのお爺ちゃんは人間に捨てられたんだぞ?人間は一度は俺たち猫の命に責任を持ちながら、簡単にその責任を放り投げるんだ。そんな奴らを信用するなんてとんでも無い!」
「それは何度も聞いたよ...。でもさ、現実的に考えて今年も家族4匹で生き抜くための手段の一つとしては悪く無いでしょ?」
「でしょー?でしょー!」
エミリーが自分とマックスの周りをくるくる回っているのが見えた。
考えないわけでは無い。クロックにとって一番大事なのは家族だった。家族を守るためならば自分の矜持など容易く投げ捨てられる。それが、「猫の誇り」だからだ。
だが、どうしても、怖い。
「...。大丈夫だ、マックス、エミリー。俺が必ず家族を守る。これも何度も言ったな。俺たち猫にはみんな、あの『ケット・シー』の血が流れている。『猫の誇り』を忘れなければきっと何もかも、うまくいく。」
「...。」
「かみさまー?われら猫を束ねる王様!どんな時でも守ってくれる!とうっ!とうっ!!」
そう、怖いのだ。人間が?冬が?違う。家族を失うのが、だ。
「今日もみんなでくっついて寝ようね!」
今日の彼女の獲物である何匹かの虫を咥えながら、エミリーは言った。
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「帰ったぞ。3匹とも無事だ。」
大きな木の近くの小さな隙間。そこがその一家の家だった。強い風を防げて家族みんなで暖を取れる。餌が豊富で、天敵に見つかることはない。穴の奥には水が流れていて安全に水を飲むことができる。4匹にとってここは小さな楽園だ。
家に到着したクロックら3匹は家で待っていた母猫、スカーレットにその事を知らせる。クロックがいつも家に帰って最初に言う事は、獲物の量や山の様子ではなく、自分や家族の無事だった。家族を何より大事にするクロックらしい癖であるが、いつ自分が死んでもおかしく無いと自覚しているクロックにとってはとても重要な意味を持っていた。
「おかえりー。ちょっと遅かったわね?何かあったの?」
「いや、少しマックスに狩りの仕方をレクチャーするのに夢中になってしまってな。マックスのおかげで今日は大量だ。」
「父さん...。ちょっと恥ずかしい...。」
「私も頑張ったー!にいちゃんばっかりずるい!わたしも撫でてー!」
「ははっ、悪い悪い。そうだな、エミリーも頑張ってくれたな。」
クロックはそう言ってマックスとエミリーに控えめに顔を擦り付ける。彼なりの愛情表現である事は家族の中では常識だった。
「ふふ、じゃあご飯にしましょうか。」
「ああそうだな。」
「ごはんー!さっきちょっとつまみ食いしちゃったけど。」
「ははっ、まったく...。」
クロック、エミリーはスカーレットに続いて家の中に歩いて行く。
「...父さん。その前に少し良い?さっきの話なんだけど...。」
マックスだった。どこか真剣な面持ちで
マックスの声にクロックを含めた3匹は足を止めた。
「どうした、マックス?」
「にーちゃん、お腹すいたー。」
「『つまみ食いした』って言ってたろ...。いや、さっきの話なんだけど...。」
「さっき?どれの事だ?」
「『山を降りてみても良いんじゃない?』って話。」
「あら、どう言う事?」
スカーレットが不思議そうに尋ねてくるがクロックは顔を強張らせて、少しの間沈黙を守った。別にイライラしているわけでは無い。クロックは意識的にその顔を作った。まだ自分でも結論が出ていない問題に触れられたからだ。
「人間の街に降りたらもっと安全に暮らせるかもしれないって話だよ...母さん。」
「あら、そうなの?へー良いじゃない。何がダメなの?」
「『人間はこわいんだぞー!』ってパパが言ってたー。」
「...事実だ。」
「ふふ、会った事ないくせにー。でも確かに、この前他のママさんも同じ事言ってたわね。」
マックスは一度目を瞑ってから意を決したように言った。
「ごめん。僕は確かに家族が生き抜くために提案をしてたつもりだけど...けどそれ以上に、行ってみたいんだ。挑戦してみたいんだよ。父さんにいろんなことを教えてもらって、母さんにこれまで育ててもらって、落ち込んだりした時はエミリーに励ましてもらって...。そんな僕を、新しい環境で、試したい。冒険が、したいんだ。」
「マックス...。」
夜の森はいつもうるさい。鳥や虫の声はいつもよりよく聞こえるし、人間の街が山の近くにあるから変な光が時折目に入ってくる。
だけど今日は随分と、静かだった。
静寂を裂くように、クロックがゆっくりとマックスの方へ歩いて行く。
「すまなかった。俺は、家族家族と口にするのに夢中で、お前の気持ちを考えることができていなかった...。」
クロックはマックスに控えめに顔を擦り付ける。
「だが、理解してほしい...。お前の好奇心を邪魔するつもりもなければ、お前を縛り付ける気もない。だが、お前はまだ、子供なんだ...。俺たち大人が守らなくてはならない。俺は自身の選択に責任を持たなくてはならないんだ。もう、家族は、失いたくない。」
「...うん。知ってる。そうだよね。」
少しの間、沈黙が場を支配する。一体どちらが正しいのか、答えは出ない。考えるのに、どうにも疲れて目を瞑る。
しばらくそのままでいると、とすとすと足音が聞こえた。何事かと目を開けようとしたその時、クロックとマックスの体に衝撃が走った。
「っどーーん!!!」
エミリーだった。顔を擦り合わせる2匹の上から飛び乗って笑っている。
「ぐえっ!!...なんだよ、エミリー!いきなりこんな事...。」
「...っ。...そうだぞ。今ちょっとマックスと大事な話をしていたんだ。お腹が空いたのはわかるが、もう少し...。」
「猫の王様はイタズラ好きなの!!それでみんなを笑わせて、猫はいつでも笑顔なの!」
「え?どういう...。うわっ!」
「わあああー!」
飛びついたエミリーはそのまま2匹の乗っかって大暴れ。離れて見ていたスカーレットも目を見開いて呆然としている。
「ちょ...!暴れないでよ!エミリー!」
「むぐっ。うむっ。ごっ!」
「あー!今顔蹴ったなー!この...!」
「わああー!わあー!あはははは!」
「あいたたたた。こ、腰が...。」
3匹は揃って揉みくちゃになってどたばたわちゃわちゃ。それをしばらく見ていたスカーレットは楽しそうにふふっと一笑い。
「かなしいのはちょっとで良いの!笑ってたら楽しいの!だからほら、わーらーえー!」
「ちょっ!ぶっ...。べえぃう!」
そう言いながらエミリーはマックスの頬を引っ張って無理に笑わせようとしている。
「ぐにー!ぐににー!」
「ひぃあ...!ひゃ、ひゃなせって!!えぃいーー!」
一方、どうにか難を逃れたクロックは体を震わせながらため息を吐いた。
「昔を思い出すわね、クロック。」
「いたたた...。ん、何のことだ?」
こちらを向くスカーレットが柔らかい声で言った。
「昔の貴方は破天荒で、イタズラ好きで、好奇心を抑えられないような猫だったでしょ?それに付き合わされて随分苦労したわ。」
「...昔のことだ。」
クロックもスカーレットも何となく2匹並んで、未だわちゃわちゃしているマックスとエミリーを眺める。
「あっちへふらふら、こっちでふらふら。木に登ったと思ったら、ネズミ追っかけて。ほんと退屈しなかったわね。」
「...。」
「マックスは本当いい子で、破天荒な貴方と大雑把な私の子とは思えないほどだったけれど、今まで我慢させてただけでやっぱり貴方の子ね。あの子がやりたいことをあんな真剣に言うのなんて初めてでしょ?ご飯もいっぱいあるし、明日は家族みんなで旅行なんてどうかしら?」
「...そういえば、君も面倒にしながらも楽しそうな事には必ず付いてくるような、意気軒昂な猫だったな...。」
少しだけしんみりして、クロックは遠くを見つめた。昔を思い出して胸に熱いものが溢れてくるが、マックスとエミリーの「わーらーえー!」「いててててて...。マジで痛いって!」と言う声が聞こえて思わず笑ってしまう。
『知らないなら行ってみようよ!出来るかわからなかったらやってみようよ!キミと一緒なら僕は何だって出来そうなんだ!』
昔の何も知らない青い自分を夢想するも、その影はゆらゆら揺れて、消えていく。残るのはいつもの景色と子供達だった。
「だから痛いって!もういいだろ、エミリー!父さんも母さんも見てないで助けてよ!」
「あははー!面白い顔!早くにいちゃんもわらえー!」
「そうだな...。エミリー、そろそろやめなさい。明日に響く。」
「え?明日?どういう事?」
「ことー?」
クロックは一度大きく息を吸い込んでから言った。
「出発は明後日だ。明日、俺とマックスで山を降りて人間の街へ下見に行く。スカーレットとエミリーは家を頼む。」
マックスとエミリーは思わずと言った様子で顔を見合わせる。
「下見が終わったら家族全員で人間の街へ降りる。目的は餌の定期確保が見込める場所と安全に生活することが可能な場所。みんなで探して見つけ出す、重大なミッション。つまりは...」
スカーレットが堪え切れないと言った様子で「ふふっ。」と笑った。どこか昔を思い出す笑い方だった。それと同時に、自分も笑顔になっていることに気付いた。
「家族旅行だ。楽しんでいこう。」
暗い夜の森に歓声が響いた。
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幕間
夜も更けた家の中。クロック等4匹の猫は丸まって、寝る用意を整えていた。
季節も暮れて風も冷たくなった森の中は非常に過酷で、寒がりな猫は大変だ。
「スカーレット、もう少し詰めてくれ。入らない。」
「んー?りょーかいよ。よいせっと。」
「んふふー。あったかーい...。」
「エミリー、あんまり動かないで。くすぐったいから...。」
4匹で丸まって寝る準備を整えている最中、マックスの一言でエミリーは何かを思いついたように顔を上げる。
「ん!...そう言えばさっき、にいちゃん結局笑わせられなかった...。」
良いこと思いついた!とばかりにエミリーの顔がぱっと明るくなる。
と同時にエミリーはマックスの懐に潜り込んでわしゃわしゃと足をを動かし始めた。
「ん...?エミリー...?ちょっ...!何を...?って、ぶっ。ふふふ...。あははははは!」
「んふふー。こしょしょー!こしょー!」
「あら。楽しそうね。お母さんもやろうかしら。」
スカーレットはそう言いながら近くで寝転がるクロックの方を向いて、前足を伸ばす。
クロックはにまにまと笑うスカーレットから伸びてきた足を咄嗟に避けて言った。
「俺は付き合わんぞ。マックスが笑い足りないそうだから、マックスにやってやれ...。」
「んもー。しょうがないわねー。じゃあ今日は見逃してあげるわ。」
「え?ちょっ!父さん!!」
「おー、ママもやるー?楽しいよ!」
「ふふ、良いわねー。じゃあ...。」
「「こしょしょー!こしょー!」」
「ぶっ...はははは!はは!あ、げほげほっ。あっはははは!!」
夜も更に更けてきた。いつもよりも笑顔は多く、4匹の夜は騒がしながら過ぎていく。
クロックはわちゃわちゃと騒ぐ3匹から少し離れて目を瞑った。
今にして思えば、少し自分は視野狭窄に陥っていたのだろう。マックスだってエミリーだって、もちろんスカーレットだってみんなそれぞれに考えがあるんだ。それを改めて実感した日だった。
「...本当に、俺には勿体無いほどの家族だな...。」
「んー?パパ、なんか言ったー?」
エミリーが他2匹と絡まりながらこちらに向かって話しかけてくる。クロックは目を開いてそちらを一瞥してから微笑みながら答えた。
「いや、何でもない...。」
何でもない日常の一幕。世界はそれの連続だった。明日も明後日もその次の日も、また似たような事で悩んで、泣いて、騒いで、笑うだろう。環境が変わろうが、季節が変わろうが、未知に恐怖しようが、大丈夫だ。俺にはこの立派で、頼りになって、ちょっぴり騒がしい、誇れる家族等がいる。だからまた、明日も頑張れるのだろう。
クロックはまた目を閉じて、今日という日常に別れを告げ...。
「ふふ...。ふふふ...。何もないなら、僕を売った父さんには少し仕返ししても良いよね...?」
「ん?」
...ようとしたが、後ろで囁く幽鬼のようなマックスの声に目を開く。
「ふふ、良いわね!じゃあ2匹ともいくわよー!」
「「わー!!」」
「えっ?ちょっ...。待っ...!」
「「「こしょしょー!こしょー!」」」
どうやらこの4匹の猫の夜はまだまだ続くようだ。
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