あなたに忘れられない星になりたくて 作:ultimate!!
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スミレ好きです
先輩に告白して、それが受け入れられて。
でも、余命のことは話せなくて。
私はこのことを文字通り墓まで持っていくと決めて家に帰る道の途中、モモトークの通知音がかばんを揺らす。
「ん?コタマ先輩からだ。」
『今度、副部長とキャンプに行くんですが、一緒に行きませんか?』
キャンプか…最後に行ったのというか行ったことあったかな…
ちょっと行ってみようかな。
『行きたいです!日程と持ち物だけ今度教えてください!』
そう送って、私は家のドアを開ける。
「そろそろ整理を始めないとな〜。」
そう口に出しても、帰ってくるのは自分の声と外の音だけ。
少し寂しくなりながらも風呂の準備を始める。
「はぁ…へへ…」
湯船に浸かりながら、今日のことを思い出す。
ただ、あの夕焼けに照らされて、頬を赤らめるノア先輩の顔ばかりが思い出されて、それ以外のことが思い出せなくて、つい顔が赤くなる。
「OKもらっちゃった…」
その事実を思い出して、さらに頬が赤くなる。
湯船に顔を半分くらいつけてブクブクしていると少しづつ冷静になってくる。
…そっかぁ。気づかれてたかぁ。
思い出すのはネル先輩との会話。
ユウカ先輩には自分から言った。軽く口論になった時に。
今考えればなんであんなことで言ってしまったのかと思うけど、結果的に相談相手になってくれたし、後悔はしてない。
「というか、今まで考えてなかったけどコユキちゃんにもバレてそうだよなぁ…」
その事実に気付いた時、湯船に浸かっているのに寒気が走る。
…あれ?コユキちゃんなんかのはずみにこのこと言ってないよな?
ま、まぁ。気にしててもしょうがないしな。
そう自分に言い聞かせ、風呂から出る。
「寒っ…」
さっきの寒気とは違う純粋な寒さによる体の震え。
さっと体を拭いて服を着て、髪をドライヤーに当てているとスマホに着信が入る。
『ありがとうございます。日付は今週末の予定です。』
「今週末か…特に予定は無い、というか私の予定がなさすぎてちょっと悲しくなるな。」
友達は結構多いと思っているけど、今月は特に予定が無かった。
「…別に、今月やり残したことをやり切るために予定を空けてたわけじゃ無いんだけどな。」
そう言いながら、今週の予定をもう一度見返す。
「あ、明後日また当番か。」
今回はアリスちゃんと一緒の当番。アリスちゃん本当にいい子だし楽しみだなぁ。
そしてそのまま来月以降の予定に目を向ける。
アニメが始まる、テストがある、ライブに行く。
それらの予定を一つ一つ消していく。
そうしていくと最後に残った予定が一つ。
「ノア先輩の誕生日…」
あー…たとえ私が死んでも、これだけは渡さないとな。
そう思って、その予定だけ残しておく。
どうやって渡そうかな。誰かに頼むか、時限式の何かにするか。
そう考えながら、部屋の電気を落とす。
疲れ切っていた私はそのまますぐに意識を手放す。
おはよう、世界。
今日もまだ私は生きている。
相変わらず夢見は悪いが、どんなことを見ていたのかは思い出せない。
「時間は大丈夫。よし、ちょっと早いけどセミナー行っておきますか!」
セミナーは特に何も無い日でも仕事が多いし、早くいくことに越したことはない。
何より、ノア先輩の顔を早く見たいし。
「行って来ます!」
高らかに宣言をして、朝日が差し込む部屋を後にする。
体力は無くなって来ていても走り出す。
朝一番の風ほど気持ちいいものを私は知らないから。
電車から降りて、改札を通る。
そのまま道を進み、校舎へ。
「トワ、おはよ〜」
「おはよ〜!」
友達に軽く挨拶を返しながらセミナーへと向かう。
「トワちゃん、おはようございます。今日は早いですね?」
「はっ、はいぃ!?」
私の背中から声がかかる。
セミナーに入る前に話しかけられるとは思っていなくてつい動揺してしまう。
「おはようございます、先輩!」
「はい、おはようございます。」
改めて挨拶をし直して、私たちはセミナーの部屋に入っていく。
カタカタ、カリカリ。
ユウカ先輩や他の人とは話しているけど、ノア先輩と話せず、ノア先輩以外とも事務的な話以外していない。
カタカタ、カリカリ。
話が無い。普段なら嬉々として話したりしているが、いざとなると何を話せばいいかわからなくなる。
ノア先輩と話したいが、謎の気まずさで話しかけられない。
そういえば、他の人はこの状況を見て何か察したりしているんだろうか。
…どこかニコニコしながらこちらを見ているのってそういうことだったりするんだろうか。
「トワちゃん?ここ間違えてるわよ。」
「あっ、はい。直します!」
ダメだ。色々と気になってミスが増えてきてる。
時間は…まだ10時半か。
12時くらいになっていたら昼ご飯でも食べに行って気分転換しに行っていたんだけど、まだ昼というには時間が早いからなぁ。
「すいません、ちょっと休憩してきます!」
そう言ってセミナーから外に出る。
後ろから「りょーかーい」とか「いってらっしゃーい」とか聞こえてきたので理解されたものとしてエレベーターに乗る。
ノア先輩と話がしたい…が、このままだと何も話ができないし、何を話せばいいのかもわからない。
なんの当てもなく部屋から出てきてしまったが、どこに行こうかと考えているうちにエレベーターが来る。
「何階に行こうか…」
別にどこに行きたいとか考えて出てきたわけではない。
だからどこに行こうか考えてしまう。
「あぁ、最近顔出してなかったし、気分転換にもちょうどいいから、あそこにでも行こうかな。」
そう決めて、エレベーターのボタンを押す。
徐々になくなるものだとしても、体力が、体力さえあればもっと残りの時間を楽しめるかもしれないし、長生きも…できるかもしれないから。
希望だけは、自分の中に持っておきたいし。
ゴウンゴウンと下るエレベーターの重力を感じながら、そう考えていた。
「スミレせんぱーい!いますか〜?」
私がきたのはそうトレーニング部!
ミレニアムでの私の交友関係はかなり広い。
だからこそ突然こういう場所に来ても受け入れてもらえることが多い。
「トワちゃん、お久しぶりです。今日はどうかしましたか?」
「セミナーの仕事に疲れたので、少し気分転換に。」
汗を拭いてスポドリを飲みながら出てきたスミレ先輩。
やっぱり、かっこいいな。スミレ先輩。
「そうですか、では使いますか?そのために来たんでしょう?」
「はい!せっかくなので使わせてもらいます!」
そう言って私はランニングマシンをつける。
ゴウン、と音を立てながら起動する。その上に乗って、ゆっくりと走り出す。
スミレ先輩は私の隣のランニングマシンを使って走り始める。
流石に毎日やってる人は違うなと思うほど走るスピードが速い。
それを見て私も火がつき、少しづつスピードを上げていく。
「トワちゃんは、今日の仕事の調子はどうですか。」
「仕事は、進むんですけど、ハァ、いつものように、周りと話せなくて、休憩がてら、こっちに来ました!」
息が続かない。体力がない。一ヶ月前なら余裕だった時間走っているだけでもう息が絶え絶えになる。
「トワちゃん、大丈夫ですか?」
「ッハァ、まだ、大丈夫、ですっ!」
まだ強がる。というか、運動中は強がりたくなってしまう。
なんというか限界に挑戦したくなって。
「トワちゃん、一回止めましょうか。」
「んえ、っはい、ハァっ…」
スミレ先輩に止められた私はそのまま地面に倒れ込む。
体力が落ちていることはわかっていたけど、まさかこれほどまでに落ちているとは思わなかった。
息を整えていると、スミレ先輩がタオルとスポドリを手渡してくれる。
「大丈夫ですか?とりあえずこれを飲んでください。」
「っはい…。」
息が戻るまで待ってからスポドリをのむ。
「んくっ、んくっ、んくっ、っぷはぁ。ありがとうございます、スミレ先輩…」
「いえ、気にしないでください。」
そう言ってくれる先輩にタオルを返しながら私は聞く。
「前までそんな止めてくれるなんてことなかったのに、どうしたんですか?」
「あぁ、そのことですか。以前は私も倒れるまでやっていましたが…トレーナー、いや、先生に止められまして。」
「トレーニングのことになるとすぐ熱くなって、没頭してしまうから、先生に見てもらったりもしていました。」
「ただ、先生がいない時の方が多いので、最近は自分で制御できるようにしているんです。」
「今日は、隣に私よりも熱くなってる人がいたっていうのもありますけどね。」
「あ、あうぅ…」
先輩はそう言いながら私のおでこをスポドリでコツン、としてくる。
「トワちゃんがどう悩んでるのかは分かりませんが、また困ったら来てください。」
「倒れない程度なら、トレーニングしていっていいですから。」
「はい!」
なんか、元気がもらえた。
そう考えると、私は少し無理をしていたのかもしれない。
余命という時間制限と、落ちていく体力に急かされて、自分の体も考えずいろんなことに向けて走り続けて。
嬉しいこと、悲しいこと、やるべきこと、やりたいこと、やった方がいいこと。
その全てを等しく優先度最高に置いて、その全部に追われて。
自分が潰れかけていたのかもしれない。
「そろそろ私はセミナーに戻ります。ありがとうございました、先輩。」
「はい。残りも頑張ってください、トワちゃん。」
そう言ってトレーニング部から出て少しすると、ノア先輩が出迎えてくれた。
「あ、ノア先輩!」
「トワちゃん、いましたか。そろそろ12時なので、お昼ご飯でも、と思ったんですが、一緒にどうですか?」
「はい!ぜひ!」
そう言って私はノア先輩と共に食堂に行く。
今日はラーメンを食べようかな。
そんなことを呑気に考えながら。
「トワちゃん、ちなみにですがまだ仕事はかなり残ってますからね?」
「…ハイ。」
現実を突きつけられながら。
スミレ好きなんだけど持ってないからこれでいいのかがわからない
僕の小説って改行多いですか…?
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