あなたに忘れられない星になりたくて   作:ultimate!!

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すごい伸びてて感謝しています
評価、感想、お気に入り。どれもめちゃくちゃ嬉しいです


底なしの闇と、あなたという一筋の光

 

 朝8時半。キャンプ場から帰ってきた私はソファーに座って動けなくなっていた。

 

 体がだるい。体力とかそんなんじゃなくただただしんどく、だるい。

 

 今日はウタハ先輩に頼んでいたものも取りに行かないといけないし、やりたい事が多いのに。

 そう頭で思っていても、この調子でセミナーに行ってもどうしようもないという気持ちもある。

 

 結局、流石に体調を優先した方がいいだろうということで先輩に連絡を入れる。

 

 

 『すいません、帰ってから体調が優れないので今日は休みます。』

 

 

 そう連絡を入れ、ベッドに倒れ込む。

 

 そのまま、何か考える時間もなく意識が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚める。ふと時間を見ると11時。

 

 体はまだだるくて、動きたくないという気持ちが頭を支配していく。

 

 でも熱を測って、薬を飲んで。そのくらいはしないとなと思って無理やり立ち上がる。

 

 そうしてリビングに着いたところくらいでスマホに一本の電話が入る。

 

 

 「はい、星ノ谷です…」

 

 『トワちゃん?大丈夫ですか?』

 

 「…ノア先輩?」

 

 『はい。返事が遅いので心配になりまして…』

 

 

 何か、通知が来ていただろうか。

 時間を見ただけで気づいていなかったかもしれない。

 

 

 「すいません、しんどくて気づいてなくて…申し訳ないです。」

 

 『そうですか…今日は家で休んでおいてくださいね。』

 

 「はい…」

 

 

 そう返しながら棚から薬を取り出す。

 

 後体温計取ってきて、ご飯作って、タオル取ってきて…

 

 

 「んあ、電話切れてる…」

 

 

 気づいたら電話が切れていた。

 何か話したりしてなかっただろうか。

 

 熱で頭が回っていなくてその辺の記憶が曖昧だ。

 

 

 「まず熱を測ろう…」

 

 

 出した薬を流し込み、体温計まで歩く。

 

 その前にカーテンが閉まっていて薄暗い部屋に日光を入れようとカーテンまで歩き、そのまま開ける。

 

 

 「まぶしっ…」

 

 

 急な日光に目が慣れていないのか、思わず目を細めてしまう。

 

 そこまでして、一度座る。

 

 病気と熱とで普段より数段体力が足りなくなっている。

 

 軽く体力を回復させ、体温計を取り出す。

 

 熱を測ると、37.4℃。

 熱。

 

 あー…明日には下がったりしてないかな。

 

 そう考えながらスマホを開く。

 そしてそのままウタハ先輩とのトーク画面を開く。

 

 

 『今日熱が出て取りに行くの今度になります。すいません。』

 

 

 随分と事務的なメッセージだな、と思いながら座ってしまった体を立ち上がらせようと格闘していると、部屋に一つ音が鳴る。

 

 なんの音だろうと一瞬思ったが、もう一度家のチャイムが鳴る。

 

 

 「はい、待ってください…」

 

 

 誰に聞こえるというわけでもないのにその場でそう言いながら頑張って立ち上がり、マスクを着け、ドアを開ける。

 

 

 「…ノア先輩?」

 

 「はい。とりあえず、家に上がってもいいですか?」

 

 「あ、はい。どうぞ…」

 

 

 考えるのに疲れていた私は、特に深く考えずにノア先輩を家にあげる。

 

 

 「あの、なんで急に家に…?」

 

 「体調が悪いそうだったので、看病してあげようかと。」

 

 

 カンビョウ?看病?

 

 一瞬思考がフリーズする。

 

 

 「看病…ですか?いや、私はありがたいというかウェルカムというかって感じなんですけど、セミナーの仕事とかどうしたんですか…?」

 

 「事情を話したらユウカちゃん達が引き受けてくれました。何より、体調の悪い彼女を放っておくなんてできないでしょう?」

 

 

 彼女、彼女。

 

 改めてノア先輩の口からその言葉を聞くと嬉しくて、熱で暑くなっていた顔がさらに熱を帯びていくのがわかる。

 

 

 「っ…ありがとう、ございます…!」

 

 「喜んでくれたなら、良かったです。とりあえず、冷蔵庫使っていいですか?この荷物も置きたいですし…」

 

 「あ、はい。冷蔵庫とかは、好きに使ってもらって大丈夫です。」

 

 

 そう言ってノア先輩は台所へと向かう。

 

 何を買ってきてくれたんだろう。

 

 私はとりあえずソファーに寝転がり、考えを整理する。

 

 先輩が看病しにきてくれたのは嬉しい。とても嬉しい。考えただけで頬が緩む。でも、それと同時に前のことが頭から離れない。

 

 せっかく先輩が看病しにきてくれているというのに、こんなモヤモヤしたままだと嫌だな…

 うん、後で聞こう。そして、今だけは先輩の優しさに甘えていよう。

 

 

 

 そう考えていると、台所から音が聞こえ始める。

 

 あー、なんだろう。ご飯、作ってくれてるのかな。

 

 先輩の手料理か。楽しみだな。そう考えて自分も何かしたいと思うが、やっぱり体が動かない。

 まぁこんな体調の悪い時に無理することもないか。

 

 そんなこんなでぼーっと待っていると、台所の音が止まる。

 

 

 「ご飯を食べた痕跡が見当たらなかったので作ってみましたが…何か食べてましたか?」

 

 「いえ、まだ食べてなかったので、嬉しいです。ありがとうございます。」

 

 

 出てきたのは簡単なおかゆ。

 シンプルで、特筆すべきところも先輩の手料理というところくらいしかないが、本当にありがたい。

 

 

 「隣、失礼しますね。」

 

 「はい。どうぞ…」

 

 

 「「いただきます。」」

 

 

 マスクを外し、手を合わせる。

 

 おかゆを少し食べる。ちょっと熱いけど、美味しい。

 

 普段だと薄いくらいのこの味が、病気のいまは体にジーンと染みる。

 

 言葉を発することなく、黙々と食べ進める。

 

 

 「ごちそうさまでした。本当、ありがとうございます、先輩。」

 

 「ごちそうさまでした。このくらいでよければ、いつでもしますよ?」

 

 「なら、またお願いします。」

 

 

 そう言って先輩が食器を片付け始める。

 

 

 「トワちゃんは横になっておいてください。またタオルとか持っていきますので。」

 

 「何から何までありがとうございます…」

 

 

 先輩に若干の申し訳なさを感じながら、私はゆっくりとベッドへと向かう。ベッドの端に座り、またぼーっとしてしまう。

 色々考えてしまいそうだったが、一旦それらを思考の隅に追いやり、一息ついてから布団に潜る。

 

 するとすぐに先輩が部屋に入ってくる。

 

 

 「トワちゃん、セミナーのことは気にしなくていいですよ。」

 

 「…バレてました?」

 

 「はい。結構。」

 

 「そうですか…隠してたつもりだったんですけどね。」

 

 「体調不良は仕方ないものです。トワちゃんは仕事のこととか、真面目すぎるところがあると思います。だから、こういう時くらい周りに任せて休んでもいいんですよ。」

 

 「…ありがとうございます。」

 

 

 先輩がベッドに座り、話しかけてくれる。

 

 欲しい言葉を、欲しい時にくれる。本当に、本当に、

 

 

 「…好きです。先輩。」

 

 「知ってます。トワちゃん。」

 

 

 思わず気持ちが口に出てしまう。それにもちゃんと返してくれる。

 

 そう思っているうちに、意識が離れていく。

 

 

 「おやすみなさい、トワちゃん。」

 

 

 ノア先輩が私の頭を撫でながら、その感覚を感じながら、私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと気づくと、私はセミナーにいた。

 

 あぁ、そうだ。仕事を終わらせたから、そろそろ帰ろうと思ってたんだ。

 

 そう思って椅子から立ちあがろうとして、体に力が入らない。

 

 何か声を出そうとしても、声が出ない。

 

 あ、これが死ぬってことか。

 

 そう気づいた瞬間、闇に飲まれるような感覚になる。

 

 いやだ、死にたくない、ノア先輩、ユウカ先輩、コユキちゃん、アリスちゃん、ウタハ先輩。

 

 暗闇に飲まれる感覚の中、必死に光の元に出ようともがこうとするが、体が言うことを聞かない。

 

 まだ、まだ死にたくない。いや、嫌だ、嫌だ…!

 

 

 

 

 

 「…ワちゃん…!トワちゃん…!」

 

 「トワちゃん!大丈夫ですか!?」

 

 「先輩…?」

 

 

 目が覚めた私が見たのは先輩がひどく慌てている様子だった。

 

 何がそんなに慌てることがあったんだろうと思っていたけど、すぐに自分が汗だくになっていることに気づく。

 

 それと同時に、何か酷い悪夢を見ていたことも思い出すが、内容がどうにも思い出せない。

 

 

 「トワちゃん、過呼吸になってうなされていたから心配したんですよ…」

 

 「そう、ですか…すいません…」

 

 

 心配させてしまった先輩に対して謝っているのか、自分でも何に謝っているのかわからなかったが、それを考えられるほど頭がまだ回っていない。

 

 

 「大丈夫そうなら、よかったです。とりあえず、新しいタオル持ってきますね。」

 

 

 そう言って先輩が離れて行こうとする。

 

 また横になろうと思っていたのに、体は別の行動をしてしまう。

 

 

 「トワちゃん…?」

 

 「今は、少しでいいので、近くにいてもらえませんか。」

 

 

 咄嗟に先輩の腕を掴んで口に出るのはそんな言葉。

 

 余程さっきまで見ていた悪夢が酷かったのか、頭と体が違うことになっている。

 

 

 「…迷惑なら、いいんですけど。」

 

 

 口ではそう言っていても、体が先輩の腕を離そうとしない。

 

 嫌だ、離れたくない。どこかに行ってほしくない。

 

 自分の中の不安な気持ちと独占欲が渦巻くのを感じながら先輩からの返答を待つ。

 

 

 「大丈夫ですよ。満足するまでここにいますから。」

 

 「ありがとう…ございます。」

 

 

 先輩がいつのまにかベッドの横に持ってきていた椅子に座る。

 

 そのまま少し沈黙が流れる。

 

 すこし考えて、聞くなら今しかないと思った。

 

 

 「…先輩は、私でよかったんですか?」

 

 「はい?」

 

 「私が告白したから、本当に好きな人を諦めたりしてないんですか。」

 

 

 ここで止めるつもりだったのに、話し始めた口は止まらない。

 

 

 「先生とか、ユウカ先輩とか。私だってわかってるんですよ。先輩が私じゃなくてユウカ先輩といる時の方がいい笑顔してるとか、楽しそうだとか。」

 

 「先輩は、本当に私で良かったんですか。」

 

 

 言葉が止まる。

 時計の音だけが部屋に響き、他は何も聞こえない。

 

 

 「…私は、入学した時から、いろんな人を見てきましたし、勿論、トワちゃんのことも見て、覚えてます。」

 

 

 私がノア先輩の顔をまっすぐ見られないまま、話は進む。

 

 

 「先生、ユウカちゃん、コユキちゃん。他にもたくさんの、本当にたくさんの人を見てきました。」

 

 「当然、私がトワちゃんを迷惑だとか、トワちゃんのせいで諦めたとか。そんなことを思っていたら看病なんてしに来ません。」

 

 

 再び、部屋が静まり返る。

 

 多分、先輩も怖いんだろう。

 

 

 「私は、怖いんです。」

 

 「ユウカちゃんほど気持ちを表に出せていませんし、先生ほど誰がどう思っているのかもわからない。」

 

 「それに、どんな顔していいかわからないんです。」

 

 「恋人とか、友達より上の関係になるのが初めてだったから。」

 

 「私からも、もう一度聞かせてください。」

 

 「本当に、私でよかったんですか。」

 

 

 そう聞かれたが、それに対する私の答えはずっと前から、初めから決まっている。

 

 

 「はい。私は、ノア先輩だから、いいんです。」

 

 「怖いなら、言ってくださいよ。」

 

 「私だって、先生ほど心が読めるわけじゃないんですから。」

 

 

 先輩の目をしっかりと見て、少し笑いながら答える。

 

 お互いに少し笑ってから、軽く眠気がきて、あくびをしてしまう。

 

 

 「すいません。もう一度寝てもいいですか…?」

 

 「はい。私は、ここにいますから。」

 

 

 先輩が私の手を握りながらそう答えてくれるのを聞きながら、意識が落ちていく。

 

 あー…先輩に話してくださいなんて言っておきながら、自分は一番大事なことを言えてないのにな。

 

 そう思った時には、意識が消えていた。

 

 今度は、悪夢は見なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはようございます、先輩。」

 

 「はい、おはようございます。トワちゃん。」

 

 

 目が覚めた私は、先輩と挨拶を交わす。

 

 そこには少しのぎこちなさもなく、心からの笑顔を交わす私たちがいた。




自分の文が改行多くて読みづらくないかと思ってアンケートとってるのでよければ協力お願いします

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