術式:感度3000倍   作:病んでるくらいが一番

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前回傑に九十九由基の術式をボンバイエ(重さの付与)ではなく、重力操作だといったのは億が一乗っ取られた時の対策と、その時羂索に対する煽りになるからです。(お前の術式知ってんだけど???)


原作知識持ち原作体験済み両面宿儺

「……」

 

 特級呪霊でサキュバス術式を持つ夢魅雫は目の前でお茶を入れ、この前太郎が買っていたひとくちずんだ餅を茶請けとして用意している両面宿儺を見る。

 太郎の体よりも一回りも二回りも大きい。だが普段は服で隠れたところにある黒い線、雫は呪印と呼んでいるものが太郎と同じ配置にあることがわかる。

 太郎の体のことなら本人よりも詳しいサキュバスさん。

 

 部屋を見回す。

 この場所は間違いなく太郎の部屋なのだが、とても目立つ神棚が存在しない。存在はしていたみたいだが、壊されているので両面宿儺がやったのだろう。

 

「俺様が初めて手ずから茶を用意してやった……いや、この言い方だと色々誤解しそうだな。太郎を正常な人の感性に戻してくれた礼だ。これくらいしかないがとりあえず飲め」

「い、頂きます……うまっ」

 

 茶は茶でも抹茶であり、太郎の部屋には絶対にない茶道をやるにあたり必要そうなものが一通り揃っている。

 というか、先ほど火をつける時にいきなり火がついたため、宿儺は(カミノ)で火を出したのかもしれない。

 植物で装飾を作成して、それも一瞬で綺麗に切れていたが、もしかして両面宿儺の術式は料理術式なのかな? と一瞬雫は考えるが、そんなわけがないと頭を振る。

 ここに人類および呪霊で初めて両面宿儺の茶を飲んだ呪霊が誕生した。

 

 どうやら一通り茶を楽しんだら話始めるようだ。

 

「まずは先ほども伝えたが、田中太郎をただ強くなるだけの化け物ではなく、人間に戻してくれたことを感謝する」

「あ、はい。意図したわけでもなく、ただ調伏されちゃっただけですけど」

「生まれてからあ奴が強さ以外に執着をしたのは初めてだったからな。それもそういう風に改造されていたからだが」

 

 改造。その言葉に雫はやっと確信を得た。

 太郎の祖父が異常に太郎の両親を嫌っていて、一度は勘当したという話は本当だったのだろう。

 太郎は祖父と話すときは笑っているが、両親と話すときは無表情だった。

 そして田中家の敷地内には異常なほどの結界が貼られていて、悟たちと比べて明らかに弱いがそれでも一応特級呪霊下位くらいの雫が力押しでも入れなさそうな場所があった。

 

「何故太郎様の中に両面宿儺が居るのか。太郎様のご両親のこと。太郎様が次元を切り裂く斬撃を放てたことなど教えてもらえますか?」

「いいだろう。太郎は契約によって全く覚えていないからな。隣にいるお前が知っていれば、分岐点で止めることも出来るだろう」

「分岐点ってなんですか?」

「あ奴が正真正銘の人造両面宿儺になる可能性の分岐のことだ」

 

 そこからゆっくりと太郎との馴れ初めを宿儺は語り出した。

 

「まず太郎の両親は先に言ったように、『両面宿儺』という()()()()()()を生み出そうとした」

「ちょっと待って下さい」

「アァ!?」

「あ、あの。ごめんなさい」

「……すまんな。俺はずっと張りつめて生きてきた。故に威嚇する気がなくても癖でしてしまう。そういう時は見逃せ」

「は、はぃ。両面宿儺が英雄ってどういうことですか?」

 

 両面宿儺が英雄という聞きなれない言葉に雫は声を上げ、顔に骨が出ていないがそれでも怖い顔で凄まれ、少しだけちびりそうになる。

 

「そこからか。確かに呪術界で俺は怪物や厄災と言われている。だがな、まず俺は喰うに困った時しか人食いをしていない。それに平安の時代においては稀にあることだった」

 

 両面宿儺と言えば人食いの化け物というエピソードはいくつもある。

 だが平安時代に迫害され、まともに土地も持てず、狩りはし過ぎても後の獲物のために取り過ぎは駄目で、金銭や物々交換での物資補給も出来ない。

 そんな時に敵が襲撃してきて、その敵の物資を鹵獲し、その物資を使い果たした時、残りの手段はその敵を喰らうしかなかった。

 

「まあ、たまに憂さ晴らしで喰ったこともあったが」

「ヒェッ!?」

「お前は本当に人間みたいだな。昔は現代に比べて至る所に恐れがあった。現代は恐れの伝播は早いが、早々に人は恐れなくなった。だが、平安の世では夜というだけで恐れを抱いたものだ」

「恐れで呪霊が生まれ、その呪霊を両面宿儺が狩っていたから英雄ってことですか?」

「そうだ。その時代にも偉そうなやつらはいたが、そういう奴らは人が多い場所では積極的にアピールのために呪霊狩りを行うが、人が少ないところは見捨てる。今ほど移動手段がなかったから仕方がない面もあったのだろうがな」

 

 宿儺は咳払いしてから話を戻す。

 

「岐阜県のお前らが行った神社では俺が祀られていたりするしな」

「やっぱりそうなんですね」

「ああ。その英雄的な面、荒魂ではなく和魂の部分を持ってくるために色々したのだろう。あの神社の奥で太郎が作成されたからな。結果的にうまく俺様を呼び寄せたわけだが、太郎の中に引き篭もっているから人造宿儺としては失敗作扱いされている」

 

 岐阜県に任務で向かった際、宮司が何とも言えない顔をしていた。

 あれはまだそこまで大きくなかった太郎が任務に出ていて哀れんだわけではなく、失敗作として切り捨てられたことを知っていたからの顔だったようだ。

 

「太郎様のご両親、親のこと、それに太郎様が人為的に両面宿儺を造る為に生まれた実験体というのはわかりましたが、何故太郎様の中で大人しくしているのですか?」

「それも前提を話す必要がある。平安で生まれた俺は元々双子だった。だが生まれる過程で俺はもう一人の兄妹を喰らい、両面宿儺が誕生した」

「……双子がお腹の中で1つになってしまうことは稀にあるはずですけど」

「いや、意識もなかったはずだがわかる。俺は生きるために明確に喰らったんだ。そして色々あって生に飽きた俺は呪物となり、両面宿儺の指というモノに成り下がった」

「それらを一つの体に集めて両面宿儺を後の時代に復活させようとしてたんですよね?」

「そうだ。太郎の両親は狂っていてな、そして天才でもあった。母親は自分の体内にしか結界をまともに貼れぬが、体内の結界術に関しては天元にも迫るほどの才があった」

 

 何となくこの後言われることがわかり、雫は顔を大きくゆがませる。

 

「母親は自らの子宮を結界で異界化させ、どうやったのかわからんが胎児を二人造り、そのうち一人に俺の指を埋め込んだ」

「それって羂索が調整して産んだ虎杖悠仁だからこそ出来たことで、普通は死にますよね」

「普通はな。あの神社で『両面宿儺』の信仰を活用して、他宗教の再誕などの概念も利用してうまく造り出したようだ」

「……」

「指が埋め込まれた時点で俺という魂はその胎児に宿り、そして『両面宿儺』の再誕のシナリオ通り、双子の兄妹を喰らってしまうところだった」

「ゴクリ……」

「だが、もう一人の体には俺が平安で喰った魂と全く同じ色をしている魂が宿った。それは明らかにこの世界の魂ではなかった。別世界から俺の兄妹と全く同じ魂が宿ったのを認識した時、俺は喰らえなくなった」

「何故ですか?」

「俺の生において、バケモノとしての生き方をしない選択肢を選べるタイミングが2度ほどあった。そう、その一度は双子の片割れを食べない選択だったんだ。故に俺の口は止まった」

 

 宿儺は最初からバケモノではなかった。そうあれかしと世界に、人に望まれ、それを受け入れたことで厄災になったのだ。

 

「そして面白い事が起きた。太郎の前世の人格と今のお前と会話しているように話せたのだ」

「太郎の前世はまともに体を動かせず、死ぬまで病院の中に居た。そしてあ奴が読んだ『呪術廻戦』という漫画の話に『両面宿儺』が出てくると聞いた際、俺は強く思った。知りたいとな。その願いを前世の太郎は叶えてくれたのだろう。自分の人格や記憶を贄に、『二次創作』という術式を発動させた」

「……え? 『感度操作』ではなく? というか太郎様の人格も記憶も贄にってなんでそんな! 前世では病院で寝たきりだったのなら」

「出来ぬのだ」

「出来ない?」

「あ奴の魂はこの世界に転移してきた時点で摩耗していて、あのままでも生まれる前に死んでいた。そのことに本人も気が付いていたのだろう」

「そんな!」

「『二次創作』は自分や触れたモノのパラメータを操作出来るが、真髄は領域展開にある。あの時は確か『世界再編』と言っていたか。領域内のあらゆるものを小説に加筆や修正するように編集できる能力を持つ領域だった」

「その術式で俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 虎杖悠仁が指を食べた話から始まり、最後は虎杖悠仁に負ける話、死ぬ間際に真人という呪霊にあったこと。

 その時の宿儺は負けたのに清々しい姿をしていた。追体験した宿儺もそれを感じていた。

 

「その時に得た満足感を捨ててまで俺様は『両面宿儺』に()りたくなかった。故に虎杖悠仁が御廚子を使ったように、伏黒恵の肉体で影法術を使ったように、同一の存在になりかけていたが故に俺にも操作権限のあった『世界再編』でこう書いた」

 

『両面宿儺を喰らってでも生きろ』

 

「で、今いる俺は虎杖悠仁の中にいた両面宿儺と同じような存在になったというわけだ」

「……今の太郎様の人格はなんなんですか?」

「あ奴は生まれた時から育まれた田中太郎の人格だ。ただ呪術廻戦という話を覚えているだけで、本質は前世の太郎と変わらん」

「でも幼少期から転生前の世界の知識を使って、会社を建てたりしてましたよね? 例えば私が所属しているVtuber会社とか」

「俺が追体験したのは『呪術廻戦』だけではない。太郎の前世も追体験している。その中で俺が面白いと思った知識を奴に授けているだけだ」

「なんでVtuber?」

「仮初の仮面を被り、人と交流が出来る。それで人々を楽しませる。良いではないか、たとえ太っていても、たとえブサイクでも、たとえ4本腕の異形でもあっても、Vtuberという仮面を被れば別の一個人に成れる」

 

 あの時代に別の個になるなんていう方法はなかったからなと小さな声で宿儺は呟く。

 

「ぶふっ」

「どうしたいきなり。俺に吹き出し、唾を吐きかけて生きている存在もお前が初めてだぞ」

「ご、ごめんなさい。いや、太郎様は前世の知識でイキってますけど、それも宿儺がくれたからというのが少し面白くて」

「お前はたまにあ奴に対して辛辣だな」

「そういうところも含めて愛してますから……あの、宿儺様? できればお願いがあるのですが」

 

 雫はあることを思い出し、宿儺に対して土下座した。太郎にも一度行っているのでもう慣れたものだ。

 

「太郎が高校を卒業したら性行為の本番を解禁する件か」

「はい! 可能ならヤってる時に見ないでいただけると嬉しいのですが」

「お前らが風呂場や寝屋で盛り合っている時、一度も見ていないから安心しろ」

 

 太郎は嫌々というポーズをしながら雫とAとBまでは済ませている。

 だが、太郎の中ではパーフェクトドスケベボディの雫とセックスすれば絶対にドはまりすると太郎は確信していたので、一通りの裏工作が終わる高専卒業までは禁止していた。

 

「あとは何故ガネーシャ呪霊の時に領域展開をまともに扱えるようになり、世界斬を使えたかだったか」

「結局今も太郎様は領域展開の効果を発揮できないみたいです」

「『世界再編』はあくまでも筆者、高次元の存在として作品に手を加えているだけだ。今の太郎はお前に惚れたからこそ、この世界をモノ、この世界の人をキャラクターとして見れなくなっている。故に領域展開の術式効果を発動出来ない」

「ガネーシャ呪霊の時はそう思えたってことですか?」

「羂索の馬鹿が恋愛拗らせてるガキ(太郎)を煽った結果、その童貞(太郎)がぶち切れて羂索を原作知識の相手と認識し、キャラクターとして見れたのだろう」

「羂索が煽ったんですか?」

「羂索にとってお前は対五条悟対策の3本指に入っていたはずだ。憤怒していたからな。故にやりすぎた。お前を寝取るなどと言わなければ殺せていたろうに」

「ふふふ」

 

 太郎は領域展開で世界を断つ斬撃を出してガネーシャ呪霊を倒したことは伝えていた。

 だが、その前後にどのような会話を羂索としたのかは伝えていない。あまりにも必死過ぎて引かれちゃうかもしれないと思ったからだ。

 しかし太郎もそうだが、雫もガチ恋しているためむしろ大幅加点ポイントだ。

 

「あと気になることはあるか? 遠慮するな。ある意味でお前は義姉になるのだからな」

「その顔で凄みながら言われると怖いんですけど。太郎様が覚えてない理由とか、知っていたら教えて欲しいんですけど頭痛に悩まされている原因も知ってたりしますか?」

「太郎が覚えていないのは当然だ。前世の太郎の人格と契約……この言い方は良くないな。約束をした。世界を守るなどの使命感で生きないようにして欲しいと」

「でも使命感自体は感じてませんけど、太郎様は似たようなことしてますよ?」

「本来は金銭を適当に儲ける知識だけを少しずつ渡そうとしていたが、あ奴の両親があまりにも()()()()()な。『呪術廻戦』の知識を与えなかったらこの時期にはバケモノになっていただろう。多少は量を減らして渡したがな(アニメ範囲)

「その実家にそろそろ戻ろうとしているんですけど」

「潰せ。あ奴らは羂索と同じだ。放っておいたら世界を破滅させるぞ。あと頭痛だったか。それはこれだ」

 

 宿儺はこれと言いながら、窓の外に向けて斬撃を放った。

 

「……まさか頭痛の原因は宿儺?」

「あ奴はよくやっているが、注意力が少し足らん。何か気が付かないといけないことがあれば、俺様が優しく諭してやっている」

「物凄く辛そうですけど」

「死ぬよりも良かろう」

 

 もう話すことがないことを確認した宿儺は指パッチンすると、雫の姿が少しずつ薄れていく。

 どうやらこの場所の主導権は完全に宿儺が所持しているようだ。

 

「この場所で伝えたことは太郎に言うな。あ奴自身が気が付かなければ、契約が失効する可能性がある。下手したら弱くなるぞ」

「わかりました。両面宿儺、太郎様を守っていただき、ありがとうございます」

「良い。太郎の前世に感謝せよ」

「わかりました……そういえばなんでパーカーにスラックスなんですか?」

 

 後十数秒で消えるくらいになった時、聞き忘れていたことを何となく聞いた。

 

「着物など重いだけだ。軽く、簡単に着れるこのパーカーは良いな。あの虎杖悠仁と恰好が似るのは好かんがな」

「虎杖悠仁は好きじゃないんですね」

「好かん……念のために伝えておく。太郎が思い出せん可能性があるからな。裏梅を頼んだ、()()()

 

 宿儺は4本腕を組み、目を閉じながら軽くではあるが頭を下げた。

 それに答える前に雫はその世界から弾かれた。




ちなみにこの宿儺様はちゃんと復活する気はあります。
ただ肉体奪わないで創ってもらおうとしてます。『世界再編』を完全習得するのを待ってます。

上の後書きまで書き終わった作者の脳内。
やめて!太郎の領域展開の、『世界再編』を完全習得したら、
原作知識持ちの原作ラストよりも丸くなった宿儺が爆誕してしまうわ!
頑張れ、急ぐんだ羂索!
あんたが今ここで太郎を殺さなかったら、新たな可能性の探求はどうなっちゃうの?
時間はまだ残ってる。ここで殺せば、羂索も勝てるんだから!
次回、裏梅との邂逅。

もしこんな話を!やご意見があれば下記に頂きたいです。参考にします。
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