「『蒼』!」
東京高専に面倒に思いながらも出向いた五条悟だったが、高専の入り口にいる化け物を目にした瞬間、術式を最大火力で発動していた。
五条悟は六眼という原子レベルの緻密な呪力操作と、呪力をロスなく効率的に扱うことを可能とする特異な能力を持っており、それだけではなく対象の術式から呪力的な状態まですべてを見通す。
故に東京高専の担当教師である夜蛾正道が隣にいることも厭わずに術式を使った。
五条悟の目には夜蛾正道の隣にいる存在を見た時にまず分かったのは、特級呪霊レベルの術式効果を多量に受けており、呪いまで強く掛けられていること。
しかもその呪いは本人が全て受け入れているのか、全くの素通りで体の全てをいつでも乗っ取られる状態にあることが即座に分かった。
まさか人間が呪霊に惚れ、全てを受け入れており、魅了などの呪いをあえて受けていることは五条悟でも想像できなかったようだ。
補足すると、調伏されている呪霊を呪霊操術で後から乗っ取れないのと同じように、同系統の呪いや能力は大体先に掛かっている方が優先されるという仕組みがある。
それらの能力の予防のためにやっていることだが、普通は調伏しているとはいえ、全てを呪霊に奪われかねないこんな暴挙をするやつはいない。
ただこれだけでは流石に五条悟でも即座にぶっぱなすようなことはしない。
視力で見れば確かに人間のように見えるが、六眼で見るとこの世界の非術師とも術師とも呪霊や呪骸とも違う、異なる生物のように見えた。
ハードとソフトの規格が明らかにおかしいように見える。宇宙人に精神を乗っ取られたのではないか?
そんなありえないことを五条悟は思ったと同時に、直感でこの世の因果が壊れるかもしれないと理解した五条悟は排除に動いた。
「はぁ!? 何故攻撃を」
太郎は時間感覚の感度を弄り、蒼の引き寄せによって迫ってくる木の動きが遅くなり始めたタイミングで呪力感知をして、夜蛾が回避行動に出ていることを感じ取る。
五条悟が襲い掛かってきたのはきっと太郎のせいであり、動けてなかったらどうにかするつもりだったが一安心。
『なんで五条悟は襲ってきた? しかも結構ガチギレしてそうな表情だしな。雫に
思い当たる節のない五条悟の凶行に頭を悩ませるがそれよりもこの後の展開をどうするかを考える。
『まだ拙い領域展延をいきなり五条悟に使うのは論外。無限があるからステゴロも出来ない。武器の棒も今はない。雫もいないし、詰んでるな』
この場に調伏したサキュバス呪霊の夢魅雫はいない。
五条家にも田中太郎が特級呪霊を調伏したことは通達がされているはずだが、学生の頃の五条悟は話を聞いてないっぽい描写があったため、聞いてなくていきなり攻撃されないためにもこの場には来ないでもらっていた。
太郎の感覚では凄くゆっくり飛んでくる木をマトリックスのような動きで避ける動作に入り始める。
「大丈夫か太郎!」
「こ、れし、かないか」
木を避けるモーションには入れたため、時間感覚の感度を下げていき、動画サイトの最低速度くらいにまで倍率を落とす。
「先生、説得頼みます。『領域展開』」
木を避け切ってすぐ、太郎は夜蛾に頼み込みながら領域展開を発動した。
それを見た五条悟は思わず一歩下がるが、それよりも前に結界は閉じられた。
たった数メートル程度の黒い結界が五条悟の目の前に出来上がった。
「俺を含めないの? ……術者は領域内では話すこと以外のあらゆる行動を禁じ、目を閉じた状態で横になっていないといけない。
「五条悟! お前いきなり何をやっている!!!」
五条悟が結界の効果を六眼で読み解いたが、意味が分からず頭を傾けた。
その瞬間傾ける前に頭があった場所に夜蛾の手が通り過ぎ、五条悟は
太郎は五条悟と模擬戦ならまだしも殺意を向けられながら戦う必要はないため、縛りを設けて結界に引きこもり、敵対する意思はないことを縛り効果に盛り込むことで認識させ、あとは全て夜蛾に任せることにした。
ちなみにただの結界ではなく、領域展開で結界の条件を弄ったのはただ最近その分野を練習していたため、とっさに出たのが領域展開であった。
それから数十分後に狭い領域展開の中に夜蛾が入ってきて、五条悟をとりあえず説得できたことが伝えられたため、領域を閉じた。
「というわけで初めまして。田中太郎です。総監部に一番嫌われている薩摩武士気取ってる一族の次期当主やってます」
「あー、その」
敵ではなく勘違いのもと、本気で攻撃してしまったため五条悟でも少し気まずそうにしている。
最近1級の任務が減ったのも、目の前の不思議生物のおかげだと夜蛾にも聞いたため、珍しく彼も少し言いよどむ。
そんな彼に太郎はあの五条先生も学生時代はこんなにガキなんだなと思いながら軽くマウントを取る。
きっと今後一生こんな五条悟を拝めないだろうしと少し悪乗りをする。
「いいよいいよ。後輩君が駄々こねただけだしね。気にしなくていいよ」
「……は? ちょっとせん、チビ先輩調子乗ってません?」
「ハァ!? 俺小さくないけど」
「いや、俺に比べて何センチ差ですか? 20は差がありそうっすけど」
「俺まだ13歳だからね? そりゃ身長差あるでしょ」
「いやいや、先輩なんだし年齢とか関係ないっすよね? じゃ、よろでーす、チビ先輩」
「もういいや。次は俺とか雫……調伏してる特級呪霊の子とかにいきなり『赫』とか『蒼』をぶっぱしないでね。あー、ごめん。まだ術式反転も反転術式も出来ないんだもんね坊ちゃん」
「……チッ! 先生じゃまた」
五条悟もイラっとして口答えをしたが、まだ術式反転も反転術式も領域展開も出来ないのは事実だ。
本来は総監部も詳しくは知らない情報だが、五条悟は有名なため知られていてもおかしくなく、五条悟はそれ以上何も話さず、面倒な先輩を放置して踵を返した。
「ああ。太郎も年齢相応なところもあるんだな」
「……恥ずかしい」
肉体に精神が引っ張られることは何度もあったが、流石に今のはなかっただろうと太郎はため息をついた。
♡♡♡♡♡
五条悟と家入硝子と夏油傑が入学してきてから数週間ほどが経過した。
現時点で五条悟は特級術師だし、夏油傑は一級術師だが、家入硝子にはまだ階級がなく、呪霊討伐をしたことがなかったため、夜蛾と太郎も参加した呪霊狩りなんかも授業として行った。
そして太郎はいつもは別の教室で一般科目を勉強している時間に夜蛾から1年生組の教室に呼び出された。
「よっす、チビ先輩」
「死ね五条」
「うっす」
「うっす」
「悟、やめなよ。こんにちは先輩」
「こんにちは夏油君」
悟は太郎の頭を上からポンポンしたため仕返しに叩かれ、硝子は授業中なのにタバコを吸っていて、傑は正しい姿勢で挨拶をしてきた。
「太郎のことだ、もう一般科目の課題は終わらせているだろう?」
「はい、もう終わらせてますね。ただ自習したいんですけど」
「それはすまんな。こいつらの生存率を上げるためにひと肌脱いでほしい」
「反転術式ですよね。家入がいると思うんですけど説明力ゼロな感じですかね?」
事前に夜蛾から連絡が来ており、悟と傑に反転術式のコツを教えられないかと相談されていたのだ。
だが正直言って難しいだろう。
「先輩だってひゅーとやってヒョイでやってますよね?」
「やってはいるけど、やれてるからその言葉にしっくり来るんであって」
「それだったらこいつらに才能がないだけじゃないですかね」
「おいおいおい。言ってくれるじゃん。で、チビ先輩はどう教えてくれるんすか?」
「理論としては『負のエネルギー』を掛け合わせるんですよね。正直意味がわかりません」
『負のエネルギー』を掛け合わて、呪力を『正のエネルギー』に変えるのは感覚としか言いようがないのだ。
太郎はこの世界の呪力的な技術は
ただ数倍ならまだしも高倍率を他人にやると死ぬため、悟や傑にはその方法は使えない。
「悟と傑の呪力的な感度を上げたりして体感させることは出来ないか?」
「2倍とかなら問題ないと思いますけど、その状態で反転術式を掛けたり、見せても駄目なら当分後回しの方がいいんじゃないですかね」
「それそれ。呪力的な感度を上げられるってどういうことなんすか? 総監部にもそれが出来るって申請してましたよね」
「試してみればいいだろう。先輩お願いできますか?」
「いいけど、多分酔うというか気持ち悪くなると思うから気を確かにな」
「はい」
「俺もお願いしまーす」
椅子を持ってきて、太郎の前に背を向けて二人は座った。
二人の肩に手を置いた。
「呪力感度2倍」
「……おお、なるほど?」
「…………目がっ!!」
「ははっ、ウケる。ムスカじゃん」
「五条だけ一旦戻します。反転いる?」
「目がー」
太郎の感度操作による呪力感度の操作はどこの部位などの指定が出来ない。
視界であれば目の視力を強めればよいとわかるが、呪力を実際にどこで感じているか明確に定義もされていないため、その人自身の呪力感度の操作をしている。それが裏目に出た。
ただでさえ、六眼からの呪術的な情報量の多さから普段は特殊なサングラスで情報量を調整していたのに、今回は反転術式を学ぶために六眼を全開にしている状態で呪力感度を倍にされたのだ。
六眼にも何かしらの倍の効果が適用されたようで、悟はムスカ大佐のように目を抑えて呻いている。その悟を指で突いて笑っている硝子。鬼畜である。
その後反転が不要だと身振りで伝えながらずっと騒いでいる悟を無視して、太郎は傑の手に少しの傷をつけて反転術式を行使したが反応はいまいちだった。
「ちょっとまだ私には難しいみたいです」
「死に近づいたりしたらいきなり習得できることもあるから気長にね」
「目が……ちょっと先輩も傑も先生も放置はよくないと思うんですけどー」
「すぐに痛みは治まったってみんなわかってるからでしょ。子供かよ」
「あぁ!? やるか硝子」
「反転術式が出来ない人はちょっと」
「くっそが。はーい、終わり終わり。授業終わり! 傑とチビ先輩、ラーメン行こうぜ」
この後硝子が折れ、4人でラーメンに行くことになった。
夜蛾はまだ仕事があるため不参加であり、先輩だからということで太郎がラーメンを奢ることになった。
そのラーメン屋に行く途中、2級の呪霊の気配がしたためすぐに討伐し、傑はその呪霊を取り込んだ。
「……」
その様子を太郎はちゃんと見ていた。
多分朝くらいに次の話を上げようと思います。
その際に星漿体編のアンケートがあります。
回答頂けると嬉しいです。
ポケモンのように各戦いには経験値総量が決まっているので、強くなりたいならそういう選択肢を選んだ方がいいかもしれないです。羂索もにっこり。