書いてる時にグールの月島さんの切り抜き見ました。
五条悟達が入学した年の梅雨。
傑の1級討伐任務に太郎は同行していた。
特に窓からの情報に偽りはなく、結局傑一人で呪霊を祓うことに成功した。
そして今、傑の手には黒い玉がある。
呪霊玉と言われる呪霊操術で調伏した呪霊を取り込む方法だが、この方法には致命的な欠点がある。
「…………」
「お疲れ」
呪霊玉を飲み込んだ傑の顔がほんの僅かに歪む。
そう、呪霊玉はとてつもなく不味いのだ。
太郎の知っている味の描写だと『吐瀉物を処理した雑巾』のようだと表現されている。
そんなものを口にしたのに、ほんの僅かに表情が歪む程度で済ますなど普通ではない。
本当ならもっと早く声を掛けてあげたかったが、準備と何よりも覚悟がまだできてなかった。
本格的に呪術廻戦という作品のあらすじからずれる覚悟をしていなかった。
太郎は原作を読んでいなかったので詳しくは知らないが、五条悟の無限を宿儺が突破して殺したことは知っている。
その後がどうなったのかは知らないが、原作では宿儺というラスボス戦に行くことは出来たのだ。
もし太郎がいらないことをした結果、どうしようもない詰み状態にならないかと不安に思っていたが、太郎は傑に心を許し過ぎた。
こんなにも善良でいい子を見殺しにするくらいなら原作など要らんと覚悟を決めた。
あともう一つ覚悟する必要があった。
「いえ、今回も呪霊を解き放っただけなので」
「水とメントス。口がすっきりするよ」
「……先輩もしかして知っているんですか?」
傑は今まで一度も見せたことのない呆けた表情で問いかける。
「くっそゲキレツに不味いってことくらいはね」
「御三家の悟は知らなかったんですけどね。田中家ってもしかして歴史古かったりします?」
「まあね。で、水いるでしょ?」
「メントスもください」
水を一気飲みし、メントスを何個も口に入れて一気にかみ砕いていく。
「話聞いてもらえますか」
「近くに公園があるからそこで聞くよ」
そうして夏油傑は語り出した。
特級術師という位を貰えるほど強いのであれば、一般人を自分が守らないといけないという責任感。
その地位でいるには取り込まないといけない呪霊とその味。
最近は実家で丸いおにぎりを食べようとして吐いてしまい、両親に心配させてしまった後悔。
そんな苦労も知らないで、街中で笑っている人を見て、少しだけ感じてしまった苛立ち。
「一般人を守らないとって話は五条にはしたの?」
「はい。初めて会った時にそれっぽいこと言いましたけど、まあ頑張れば? 程度の反応でしたね」
「あいつはそんな感じだよね」
「先輩はそんな思いはあったりするんですか?」
「ないね。呪霊は殺すべき……もちろん呪霊操術で操れるならその限りではないんだけどさ。そう思ってはいるけど、別に一般人を守るためとかは思っていない」
「やはりそうなんですね」
「ただ俺は、雫とこの世界で暮らしていきたいから、雫を認めてもらい続けるために働いてるだけだしね」
「……相当愛してますね。呪霊を愛するなんて今でも理解できませんけど」
「面と向かっては全然言えないけどね。それに理解を求めてないから」
梅雨の時期なのに空は晴天。
先ほどまでは少しだけ曇っていた気がするが、まだこの場で話せるなら一気に本題に行くべきだろう。
「俺が夏油に気付いていることを伝えたのには理由がある」
「悟たちには言わないでくださいね」
「言わないさ。俺なら呪霊の玉の味をほぼ感じなく出来」
「嘘じゃないですよね!!??」
「ぐっふ」
公園のベンチでコーラを片手に話していたが、夏油は缶を投げ捨てて、太郎の肩を強く掴んで振り回した。
本来は中学二年生である太郎は着実に身長が伸びているが、高身長ズの片割れの夏油とはまだ差がある。
そんな相手に本気で肩を掴まれ、振り回されたことで椅子の角に当たり悶絶することになった。あとコーラがズボンにこぼれた。
「……先輩すみません」
「いいよ。本当に不味かったんだろうし。俺の術式は知っているよね?」
「感度操作ですよね。もしかして味覚の感じ方も弄れるんですか?」
「弄れるよ。ただ最近はその調整をずっとしてた。味覚全体を殺したら流石に可哀想だし」
「呪霊を取り込んだ時だけの味を感じなく出来るってことですか!?」
「そう。感謝してよマジで。何故知っているかは探らないで欲しいんだけど、呪霊操術で取り込む際に感じる味は『吐瀉物を処理した雑巾』で間違いないよね?」
「本当に何で知っているのか気になりますけどあっています。どの呪霊も等しくその味です」
「なら良かった。その味だけを操作するためにここ何週間も頑張ったからね」
「……ちなみにどうやったんですか?」
傑は何となく思いついたのか、泣きそうになっている。
そんな顔を向けられている太郎は顔が真っ青だ。
「皮膚、触覚の感度全体を上げるのは簡単だけど、例えばピンポイントに性的感度だけを上げることも可能。ただ勿論その感覚を知らないといけないんだよね」
「体験したんですか? 『吐瀉物を処理した雑巾』を」
「吐きそう…………」
傑が少しだけ時間を掛けて新しく買ってきた水を太郎は飲み干す。
買いに行く前に比べて少し目元が赤いように見えるが、そこには触れずに太郎は説明を続ける。
「今の俺は『吐瀉物を処理した雑巾』という味の感じ方を指定して、その味覚感度を操作できる」
「全くの無味にすることは出来ますか?」
「それは無理。俺の順転は0よりも大きい倍率にしか出来ないから。ただほぼ0には出来るよ」
「ならそれで」
「ちょっと待った」
口角が上がっている夏油がまた立ち上がったが、まだ太郎のターンは終了していない。
「俺の順転だとそうなる」
「……先輩の術式反転だとどうなるんですか?」
「俺の反転は0よりも小さい倍率に出来る。ただ視覚とかをマイナス倍率にしても何も見えなかったりするけど、味覚なら何か変わるはずなんだけど、ちょっと試してなくて……ごめん」
『吐瀉物を処理した雑巾』を感じる際の感覚を操作できるようになった時点で試すのをやめてしまったため、術式反転した場合の効果はわからない。
流石にそこからはただのサービスなので、その状態で頑張ることは出来なかった。
「先輩は私の味覚のうち、『吐瀉物を処理した雑巾』の味に干渉してくれるってことでいいんですよね?」
「ああ。話したのにやらないとか意地悪はしないさ」
「それなら先輩は順転と反転、どっちを試したいですか?」
「そりゃ結果のわからない反転だけど」
「順転をやれば間違いなくほぼ味を感じなくなるんですよね? 『吐瀉物を処理した雑巾』を味わった時の」
「それは間違いない。試したから」
「もし反転でダメだったら順転をお願いします」
そう言いながら傑は手を差し出してきた。
太郎はその手を掴んで深呼吸する。
確実に原作通りに行かなくなる。下手したらラスボス戦に行く前に詰むかもしれない。
それでも太郎はこの選択に後悔はないとうなずいてから始める。
「了解。『吐瀉物を処理した雑巾』を1として、感度操作で-1に操作するよ」
「お願いします」
「術式反転『感度操作』」
「…………これだけですよね?」
「もう変わっているはずだよ。俺の術式は書き換えだから俺がまた順転で1に戻さない限り戻らない」
「わかりました。試してみます」
傑は探せばすぐに見つかる4級呪霊の蠅頭を捕まえ、調伏して呪霊玉に形を変えた。
1級呪霊よりも呪霊玉は小さいが、それでも味は『吐瀉物を処理した雑巾』であることに変わりはない。
ゴクリ
傑は喉を一度鳴らして、覚悟を決めたのかその玉を飲み込んだ。
「……」
「どう?」
「なんだこの味は!? うまい、旨すぎる!! 好物の蕎麦を啜った時とは比にならない幸福感! ……いや、呪霊だぞ? 落ち着け。もう一度試してみよう」
「おーい」
傑は太郎の言葉を無視して、すぐに4級呪霊の蠅頭を数匹まとめて呪霊玉にした。
そしてそれをすぐに口に入れた。少しだけ口元に涎が垂れているようにも見える。
「旨い。ああ、そうか。この味を体験するためにずっとわた、俺はあの苦悩を味わってきたんだ。そうだ!! 先輩、今は感度が-1なんですよね? -10とかにできますよね! やりましょう!!」
傑曰く、ただただうまいという感覚が脳内を駆け巡るとのこと。どう考えてもヤクです。
「やりません。中毒になっちゃうじゃん。-0.1とかもっと倍率下げるよ」
「ふざけるな!! いくら先輩でもこの味覚は奪わせない。今戦いますか? ここで」
帳も下げず、傑は調伏している中でも強い呪霊を何体も召喚した。此奴ガチである。
「……もういいや。まあよかったね。帰ろうか」
「帰る前に3級以上の呪霊を祓いましょう。一般人のために」
「元気になったからいいか」
その後わかったことで、階級が上がれば上がるほど脳に来る旨味が増すことがわかった。
「もし雫にちょっとでも触ったら『吐瀉物を処理した雑巾』の10倍だからな」
「ハハハハ。わかってますよ」
全然目が笑っていない夏油傑がそこにはいた。
だが、その表情は本当に晴れやかな笑顔で、これならきっと闇落ちなんてしないだろう。
「うま、うまい!」
ただ人が回りにいる時に、一般人からは見えない何かを食べるのはやめて欲しいと思う太郎だった。
これから夏油傑は原作よりも必死に呪霊コレクトを開始します。
あとほぼ闇落ちが無くなりました。うまいもんずっと食ってるからね。
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